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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第三章【襲撃】
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追跡と水王




「ど、どうですかゼノ?」

 レイナは期待に胸を膨らませながらゼノに尋ねた。


「凄いぜ姫さん! 本当に姫さんのスキルが全然違って視えるぜ!」

 ゼノも楽しそうに答える。



 どうやらレイナの【魔眼<王>】が【邪眼】を覚えたようだ。

 相変わらず反則級の特殊スキルだ。

 マジで【神眼】より有能な気が……まぁその邪眼を見破れるのも神眼だけなんだけど。


 そして魔眼<王>は、レイナの魔力の約1/5は消費する。


 こらこら、遊びに使うんじゃありません!

 今のところは特に問題なさそうだが、いつ追手がくるか分からない。

 レイナに気をつけるよう、促しとくか。



 ちなみにだが、ネムとナスカはアルカディア国で迎え入れることになった。

 むしろ2人の話を聞いて皆、感動したようだ。

 アルカディアに帰っても暫くは監視がつくみたいだが、2人は構わないと言っていた……それよりも2人で暮らせるのが嬉しいみたいだ。


 2人とも幸せそうだ。



 ただゼノやレイナも気にしていたが、ネム達を追いかける追手のことが気になる。

 話を聞く限りネムの邪眼を歯牙にもかけずに、正確に追跡してる節があった。


 ゼノによれば【追跡】と呼ばれるスキルがあるらしい。

 指定した相手の位置が常に分かる、究極のストーカースキル……ネムとナスカは恐らくこの能力で常に追われているみたいだ。


 スレイヤ神国のSランク者に、この能力の持ち主がいるみたいだ。

 国の位置がバレるのでそいつを倒さないことには、2人を連れてアルカディア国に帰還できない。


 基本的にスキルの解除方法が、使用者を倒すか、神器を破壊しなければならないので、改めてスキルの恐さを実感した。



 捕縛や服従のスキルも相当ヤバイし……



 本当ならバアル・ゼブルの村を目指したいが、村に迷惑をかける訳にもいかず……現在、俺達は見晴らしのいい荒れ地でキャンプをしていた。


 敢えて移動しないことで、相手の出方を待つ作戦。

 上手くいくかは分からないが、相手の力量次第だな。

 数に頼って正面から堂々と来てくれたらラッキーだ。

 後は、次元属性で一刀両断だす。



 鬼が出るか蛇が出るか?




◆◆




 スレイヤ神国領内にある、とある軍事基地。

 基地内の1番奥にある部屋にて1人の騎士が、部下から報告を受けていた。



「何? 定時報告がこないだと?」

 報告を受ける騎士は怪訝そうな顔をしていた。


「は、はい……」

 部下の男は、部屋の入り口にて上司である騎士に報告を行うが、ガチガチに緊張していた。


 しかし、それは仕方なかった。

 男の目の前にいる騎士は、現在スレイヤ神国内にて6人しかいない最強の一角、【七極聖】の称号を持つ騎士であったからだ。



【七極聖・水王 レインバルト】



 長い髪をオールバックにし後ろで束ねた、精悍な顔をした男だった。

 歳は30になるかならないかくらいで、青い鎧を身に纏い、白いマントにはスレイヤ神国の紋様が刻まれていた。


 レインバルトは部屋にある自分の椅子に腰掛けると、腕輪の神器を発動させた。

 レインバルトの目の前に丸い水鏡のような物が現れ、その中に赤い点が2つほど隣接して表示されていた。



「ダーラの町より若干北東か……」

 レインバルトは手を顎に当て、水鏡を視ながら呟いた。


「ぜ、全滅したのでしょうか?」

 入り口に立つ男は直立不動を崩さぬまま、上司であるレインバルトに尋ねた。


「有り得ん……神器を所持してるとはいえ、相手は魔人族の男が1人。もう1人もたかが貴族の女だ。我が騎士達が負けるとは思えん」

「でしたら逃げられたのでしょうか?」


「……あの包囲を抜けてか?」

「し、失礼しました……」


 レインバルトは表情には出さなかったが、内心は困惑していた。

 事実、追跡していた2人はダーラの町から離れていたからだ。部下達が2人を捕らえたのなら何故ここに帰還してこないのか……



 本国から逃げ出した貴族の女と魔人族の男。

 部下達に持たせた発信器のような物を2人につけて、後は自身のスキル【追跡】を使用して捕らえるだけの簡単な任務だった。


 それがここにきて、まさかの失敗。

 取り逃がした程度いつもなら問題はないが、今回はそうもいかなかった。

 なぜなら、それが女王自らによる極秘任務だったからだ。



 レインバルトは現在、ホウライ王国との国境にて軍を展開させており戦時下にあった。


 アルカ大平原に展開されている、アーク帝国【薔薇・竜胆・百合】対スレイヤ神国【炎王・地王・闇王】程の大規模な戦ではなかったが、自分もアーク帝国【桔梗】とホウライ王国のSランク者との三つ巴の戦の中にあった。


 そんな大事な戦よりも優先される極秘裏の任務。

 レインバルトは何かあると感じていた。

 まぁ女王直々の命なら、誰でも何かあると感じるのは当たり前であったが……


 女王からは人間の女の方は無傷で捕らえよ命じられていた。

 たかが貴族の女に何故という疑念はあったが、ここにきて一抹の不安を覚えた。


 レインバルトは、ダーラの町に差し向けた部下達に、本国から逃亡した貴族の女と魔人族の男を捕らえよとしか命令しなかった。


 部下達に伝えるべきだったか……



「ここから東か……」


 レインバルトは呟くと、勢いよく立ち上がり、部屋を出るように歩き出した。

 レインバルトは長い廊下を足早に歩くと、目の前に道を空けるようにして立つ1人の騎士を見つけた。


 レインバルトは騎士を横切ると、騎士はそのままレインバルトにくっつくように後ろをついて歩いた。



「精鋭部隊を編成しろ! 例の件は私自ら指揮を執る!」

 レインバルトは視線を変えずに、そのまま後ろをついて歩く騎士に命じた。


「しかし現在我が軍は作戦行動ちゅー」

「そんなことは分かっている! これはそれよりも遥か上の任務だ!」

「!?」


 レインバルトは部下の言葉を遮った。

 部下の男もレインバルトの言葉で、これが女王からの直々の命だと気付いた。



「今はアーク帝国の【桔梗】は停戦している。私が行動出来るのは今しかない」

「…………」


「本軍の指揮は副隊長である貴様に任せる。【桔梗】が動かない限り、此方からは手を出すなよ」

「はっ」


「私はここより東、ダーラの町北東にて女王からの任務を遂行する! 失敗は許されん! 部下達にもそう伝えろ!!」

 レインバルトはここにきて更に強い口調で副隊長に命じた。


「はっ!!」

 副隊長も強く返事をし、レインバルトの後に続いた。




 こんな時、同じ七極聖であった、あのお方……【光王】アーシャ様が居てくれたら……


 レインバルトは心の中で小さく呟いた。




◆◆




 スレイヤ神国領内にある、とある洞窟。



「準備はいいかジェガン?」

 武骨そうな男は隣にいる男に尋ねる。


「ああ……問題ねぇ~よ、オークスの旦那ぁ~」

 ジェガンは椅子に座したまま答える。

 指にはAランクの神器が5つ装着されていた。


「そっちはどうだ、バアル?」

 オークスも指に自分の神器を嵌めながら、隣に立つもう1人の男に尋ねた。


「…………」

 オークスの隣に立つ、白い外套を纏いフードを深く被り顔を見せないようにしている男、バアルは黙したまま小さく頷いた。



「よし。部下達の報告だと、竜斗……あの小僧はアルカ大森林より北東を目指しており、現在は例の魔族の国にはいないそうだ」

 オークスは自身の準備を終えると、(おもむ)ろに部下からの報告を整理し始めた。


 2人は黙ったままオークスの話を聞いていた。


「作戦は簡単だ。奴がいない間に、魔族の国を制圧しジェガンのスキル【捕縛】で魔族を捕らえるだけだ」

「なら……とっとと行こうぜぇ、オークスの旦那ぁ~」


「まぁ慌てるなジェガン。アルカ大森林に着いても直ぐに行動は起こさん。部下達だけの報告では作戦に支障が出るかもしれんからな」


「慎重だなオークスの旦那。スキル【統率力】のせいか?」

 ジェガンは若干皮肉を込めた。


「ふっ、そうかもしれんな……だが国の規模に、魔族の数に調べることはまだ山のようにある。慎重すぎるくらいが丁度いい。あそこにはまだ賞金首の魔族もいるからな」

 オークスは小さく笑った。


「ホントに慎重だな旦那。まぁ俺はあの糞餓鬼の泣き崩れる顔が見れたらそれでいい……旦那の指示に従うぜ」


「本当なら魔族を捕獲したら、直ぐに転移の神器で撤退するのがいいんだがな……」

 オークスは自身が考える最良の作戦を小さく呟いた。


「それはダメだ! あいつの目の前で魔族を殺して、己の非力さを嘆かさせてやる! じゃなかったら何の意味もねぇ!!」

 だがジェガンはオークスの作戦を否定した。

 それは何の意味もなかったからだ。


 ジェガンはかつて竜斗に斬られた左腕を復元させていなかった。

 竜斗の目の前で魔族を一匹一匹殺して、最後に竜斗を殺す。

 そしてその後に左腕を復元させることでジェガンは復讐をなそうとしていた。


「やれやれ……いいさ、これはお前の復讐だ。魔族の捕獲はそのついでだしな。お前の気のすむようにしたらいい。ただ作戦には従えよ」


「了解だオークスの旦那ぁ~……ククッ」

 ジェガンは小さく笑うと立ち上がった。




(ごめん、魔族の人達……僕は妹を見つけないといけないんだ。ここで、今こいつらから怪しまれるわけにはいかない……許してくれ……)

 バアルは心の中で懺悔した。


 【ギルド・魔族狩り】は最大規模のギルドであり、情報において、ここ以上の場所はなかった。

 バアルは妹を見つけるなら、ここで情報を集めるのが1番だと感じた。


 そしてメンバーであった治癒士の1人に分身体を【寄生】させた。

 【寄生】にはデメリットがあった。

 寄生する為の条件もあるが、何より1度寄生した相手から離れると2度とその者には寄生できないことだ。


 バアルは、ここまで信用を得たのに、ここで宿主から離れるのを惜しんだ。

 スキル能力としても申し分なかったからだ。

 妹を見つけるまでは、例え魔族を裏切ることになっても心を鬼にすると決めていた。



 ジェガン、オークス、バアルは部屋を出て階段を上がり洞窟を後にした。




 3人が洞窟を後にすると、部屋に転移門が開かれた。

 中から出てきたのは、ジェガン達のボスである【ギルド・魔族狩り】の最高幹部の1人。

 そしてギルドマスターである、【アーシャ・スレイヤル】であった。



「彼等は行きましたか?」

 アーシャは白と赤を基調とした綺羅びやかなマントとフードを被ったまま、部屋の中を見回した。


「そのようです」

 最高幹部の男は答えた。



「ふふっ、ホウライ王国はまだ関与してませんが色々と動き出してきました。アーク帝国にスレイヤ神国、我々のギルドに魔族……そして竜斗と名乗る人間ですか……」

 アーシャはゆっくりと置いてあった椅子に腰掛けた。


「…………」

 男はアーシャの目の前で立ったままであった。


「神話の時代……【天魔戦争】が起こってから数百年、世界は争いつつも均衡を保たれてきました……それが今、少しずつですが崩れようとしています」

「…………」


「しっかりと何が起こっているか把握しておかなければ、我々も一気に変革の波に呑まれてしまうかもしれません」

 アーシャは淡々と感情を出さずに呟いた。



「……嬉しそうですね?」

 男はフードを深く被り表情の見えないアーシャに尋ねた。


「……ふふっ、そうかもしれません。七極聖として戦ってきた以上の興奮を感じています」

 アーシャは体が火照るのを抑えるかのように、両腕を交差させて自分の肩を握りしめた。


「…………」



「ナーガ、今は情報が何より大事です。些細なことでも逐一報告して」

 アーシャは落ち着くと最高幹部の1人、ナーガに指示を出した。


「了解です、マイマスター」

 ナーガは手を胸に当て一礼した。




「さて、まずはどう動きますかね……」




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