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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第三章【襲撃】
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魔神姫と龍騎士



「崩龍拳!」

 レイナの右正拳突きがルキの脇腹を捉えた。


「ぐはっ!」

 あまりの衝撃にルキは吹き飛ばされる。


 受け身をとろうとするが、衝撃に耐えきれずそのまま転げていった。

 粉塵が舞い、一瞬ルキの姿が見えなくなった。



「どうしました? この程度ですか?」

 レイナがルキに問い掛ける。


 すると、粉塵の中から1つの小さな石ころがレイナの足下に飛んできた。

 レイナは石ころに目をやるが、直ぐにルキがいる方に視線を送った。

 突如、レイナの直ぐ傍に【ドラゴンテイル】を振りかぶるルキが現れた。



「なっ!?」

「遅い! ドラゴンノヴァ!!」


 ルキの、水属性を纏ったドラゴンテイルがレイナの顔面を襲った。

 しかし流石はレイナで、ルキの鋭い突きを首を振ることで、間一髪躱した。

 レイナはそのままルキから間合いを取った。



「流石だな魔戦姫……あの距離でドラゴンノヴァを躱すとは……そんなことが出来るのは、薔薇のゼータくらいかと思ったのだが」



 レイナの綺麗な頬に、紅い一線がつく。



「……もしかして先程の小さな石ですか?」


 レイナは粉塵の中から突如現れたルキが、直前で自分の足下に転げた小さな石と関係しているとふんだ。

 事実、ルキは神器【チェンジ】を使用し、近くにあった小さな石を対象にし、レイナの足下に投げた。

 後は、石と自分の位置を入れ替えたのだ。



「さぁどうだろうな?」

 ルキは小さく笑って見せた。


 しかしレイナと比べるとルキのダメージは大きい。

 脇腹の傷がそれを物語っていた。

 ルキは神器【薔薇の盾】を発動させた。



「次はもう少し本気で行くぞ」

 ルキは半身になり構える。


 ドラゴンテイルに水属性が渦を巻くようにして纏わりつく。

 ルキはドラゴンテイルの能力【噴射】を使い、一気にレイナ目掛けて突撃する。



「ドラゴンメテオ!!」

 ルキは無数の突きを繰り出す。


 レイナはルキの攻撃を躱すが、次第に躱しきれなくなり、籠手の神器【大和】で(さば)き始める。



「くっ」

「どうした、魔戦姫! この程度か!」



 ルキは水属性を纏ったドラゴンテイルを何度も突く。

 次第にその速さは目で捉えきれなくなる。



「し、しつこい!!」



 レイナは神器【巴】を発動させる。

 発動させると振りかぶり一気にルキ目掛けて降り下ろした。



「甘い!!」


 ルキはドラゴンテイルで、振り下ろされる巴を振り払った。



「それは悪手ですよ」

 レイナは小さく笑った。


 ルキは折角【薔薇の盾】を発動させているのに、盾で受け止めず、敢えてドラゴンテイルで振り払った。

 もしかしたら斬り裂かれるのではないかという思いがルキをそうさせた。

 事実、レイナの言葉通り、ルキのその判断は良くなかった。

 ドラゴンテイルに纏っていた水属性が露となって消えていく。



「なっ!?」


 ルキは自分の意思とは関係なく、ドラゴンテイルの属性が消えていく現象に戸惑った。

 レイナは瞬時に【巴】を解除した。



「崩狼牙!!」


 レイナは両の手首を合わせ、指を開き、爪をたてた。

 その様はまるで獣の(アギト)を想像させた。

 そしてそのまま両の手を突き出し、ルキのドラゴンテイルを持つ右の肩を顎が喰らった。



「がっ……ぐっ……まだだ!!」

 ルキは【薔薇の盾】を振りかざした。



「!?」

「ドラゴンバッシュ!!」


 ルキは薔薇の盾をそのままレイナに振り下ろした。



「が……は……!」

 レイナはルキの足下に叩きつけられた。



「もらった!!」

 ルキはドラゴンテイルを倒れているレイナに突き出そうとしたが、崩狼牙のダメージにより一瞬腕が思うように動かなかった。

「ぐっ……」



 レイナはその隙を見逃さず、態勢を変えルキに足払いを仕掛けた。

 手を地面につけたままだったので、その動きはカポエラみたいな足技に見えた。



「崩麗脚!」

「くっ……!」


 ルキはバランスを崩した。

 そのままお尻が地面に着きそうになるが、即座にドラゴンテイルの能力【噴射】を使った。

 勢いよく放たれる水は圧力となりレイナとルキに距離を取らせた。


 噴射により後方に押し流されたレイナはゆっくり立ち上がり、顔についた水滴を拭き払った。

 ルキも自身の神器の噴射により、レイナとは逆の方に吹き飛んでいた。




 えっ……何これ?

 俺は自分の目を疑った。

 こんなのは女の子の戦いじゃない。

 確かに今まで2人が迷宮で魔物相手に戦う様は見てきたが、2人ともお互い全力で……殺す気で戦ってる。


 手合わせのはずだよな?

 これじゃあ……死合だ。


 俺は止めるべきか迷った。

 皆の方を向くが皆黙ったままだ。

 2人が本気で殺す気だとは思えない。

 が、レイナとルキは互いに全力で戦っている。

 そんな2人を邪魔したくない……恐らく皆もそんな気持ちだと思う。



 何より2人とも笑っている。




「流石だな魔戦姫……我が主に相応しい力だ」

「貴女こそ、竜騎士の名に恥じない強さです」



 2人はお互いを見つめあった。



 次が……最後か?



 レイナは神器【銀鶴】を発動させた。

 黒銀に輝く【大和】と白銀に輝く【銀鶴】がその身を包んだ。


 ルキは【ドラゴンテイル】を解除し、神器【竜槍<紅>】を発動させた。

 【竜槍<紅>】はドラゴンテイルと似たような形状で突撃槍だった。

 【竜槍<紅>】と【薔薇の盾】は2つとも真っ赤な色をしており、ルキは真紅の騎士へと変貌した。



 場は静寂に包まれた。


 【修練の間】は先程まで2人の魔力が充満していたが今は一切感じられない。

 その代わり2人の神器からは膨大な魔力の奔流を感じる。



「いきますよ……」

「こい!」



 誰かの唾を飲み込む音を微かに感じた。


 レイナは脚に力を込め、一気にルキ目掛けて跳躍した。

 レイナのいた場所はクレーターみたいな巨大な穴が形成された。



「崩麗旋脚!!」


 レイナの廻し蹴りがルキを襲った。

 ルキは【薔薇の盾】でそれを防いだ。



()ぜろ!!」

「ぐぅっ!!」


 レイナの叫びと共にルキは衝撃に襲われ吹き飛ばされる。

 そのまま壁に叩きつけられるかに見えた。



「なっ!? またっ!?」


 レイナは後ろを振り返った。

 そこには【チェンジ】を使い、【竜槍<紅>】を構えたルキが立っていた。



水竜紅爪(ドラゴンネイル)!!」


 ルキの一突きが今度はレイナに襲いかかった。

 レイナは間一髪躱すが脇腹を(かす)めた。

 しかし、ルキの技はそれだけで終わらなかった。

 槍に纏っていた水の渦もレイナに襲いかかり、掠めた程度の脇腹は一気に(えぐ)られた。



「がっ……ぐっ……」


 レイナは痛みの余り脇腹を抑え、地面に膝を着けた。

 対照的にルキの傷ついた脇腹と右肩はほんのり赤く光り、先程より傷が癒えてるように見えた。



「そ、それが……その神器の能力ですか?」

「そうだ……これが我の新たな神器【竜槍<紅>】の能力、【吸収】だ!」


 ルキの新スキル【吸収】は同能力の神器を使用することで発動する能力。

 相手の血を(すす)り己の肉とする、自己回復の力だった。



「今度こそ終わりだな……水竜紅爪!!」


 ルキは先程の技を繰り出した。



「ま、まだです!」


 レイナは痛む脇腹から手を離し、そのままバク転をした。

 バク転による足で、ルキの【竜爪<紅>】を下から上に弾いた。



「なっ!?」



 レイナはすかさず両肘を曲げ、両の手に魔力を込め一気に突きだした。

「崩龍双拳!!」



 レイナの双拳がルキのお腹に突き出された。



「がっ……」


 ルキは痛みにより惚気(よろけ)る。

 直後……【衝撃】によりルキは後方に吹き飛ばされ、地面を転げていった。



「はぁ……はぁ……はぁ……うっ!」

 レイナは息を切らして、なんとか呼吸を整えようとするが、脇腹に痛みが走りだした。

 レイナの脇腹からは血が滴り落ちている。



 倒れこんでいたルキは必死に痛みを堪えながら起き上がろうとしていた。


「ぐぅ……くっ……!」


 槍を地面に突き刺し支えにして、柄を両手で力強く握り締めゆっくりと起き上がった。

 いつの間にか【薔薇の盾】は解除されていた。



「ま、まだだ!!」


「ま、まだです!!」



 2人はボロボロになりながら、互いに向かって走り出した。

 神器には最大の魔力が込められる。



「真・崩龍拳っ!!」


水竜覇星(ドラゴンノヴァ)っ!!」






 レイナとルキ、互いの全力がぶつかる刹那……

 突き出す拳と槍が交わる瞬間、2人の間に刃による亀裂が走った。



「!?」

「!?」


 2人は動きを止めると、竜斗の方へ振り向いた。



「悪いけどここまで、これ以上はダメ」



 2人の視線の先には【絶刀・天魔】を発動させている竜斗の姿があった。

 そして力を使い果たしたのか、安堵したのか分からないが2人はその場にゆっくりと倒れこんだ。


 ルルとサラは2人に駆け寄り急いで治癒を始めた。

 竜斗達も2人の元に歩み寄っていき顔を覗き込んだ。



 2人とも満足そうに笑ったまま気絶していた。




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