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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第二章【羅刹と夜叉】
42/318

羅刹と夜叉 前編


2話同時投稿です。




 俺達は長い階段をゆっくりと上がって行った。



 木の階段はギシギシと音を鳴らして若干、今にも崩れそうに感じた。


 階段の壁は一面、木の壁で出来ており、要所要所で小さな棚があり、棚には蝋燭が立て掛けられていた。

 蝋燭の火は、息を吹き掛けても消えることはなく、蝋も溶けている気配はなかった。


 恐らく迷宮にある、俺が勝手に名付けた【光玉】みたいなものだろう。

 消え入りそうな火はなんとも頼りないが、決して消えない力強さも兼ね備えていた。



 みんな黙々と階段を昇っていき、暫くすると目の前に鉄の扉が現れた。

 シンプルだが重厚そうで、人一人では開かなそうな雰囲気を醸し出していた。



 俺とガオウは横一杯に並んで両手で力一杯押した。


 が、開かない。



 ガオウも血管が切れそうな程、力一杯押すがびくともしなかった。

 するとサラとルキは扉にあった2つの窪みに気づき俺達に教えてくれた。



 俺とガオウはまさかと思い、扉を横に開くと簡単に動いた。



 少しやる気が無くなったのは言うまでもないが、そんなのはすぐに吹き飛んだ。

 目の前にいる2体のボスモンスターがそんな気持ちでいさせてくれなかった。




ー迷宮【城】、階層【40】、【百畳の間】ー




 ガオウの魔眼【地】で視てもらった通り、百畳はある畳が敷き詰められた大広間であった。

 左右の壁一面には襖があったが、どう見ても開きそうにはなく、綺麗に敷き詰められていた。


 2体のボスモンスターの奥の壁には巨大な掛け軸がかかっていた。

 中には【毘沙門天】の4文字。



 大広間のど真ん中には、少し間隔を空けて黒の座布団が二枚敷かれており、そこに座すのは姿勢が良く正座している鬼種。



【羅刹王】

スキル

【剣才】【属性<雷>】

神器

神鳴(かみなり)】<刀/雷/?/S>

弱点

【地】

ランク

【S】


【夜叉姫】

スキル

【身体強化】【舞踊】

神器

【銀鶴】<具足/無/?/S>

ランク

【S】




「おいおい、マジかよ……」

 俺の【神眼】が信じられないものを捉えた。


「どうした?」

 ガオウは目線をボスモンスターに向けたまま尋ねてきた。


「あいつら神器持ってる……」


「「!?」」

 俺の発言に3人が驚いた。



 当然だ。

 まさか魔物が神器を持ってるなんて夢にも思わなかった。

 ガオウやルキ、サラも今まで神器を所持してる魔物なんか見たことないらしい。



 だが2体のボスモンスターは目を閉じたまま動こうとしない。

 このまま【絶刀・天魔】の【属性<次元>】で斬ったらいいかな、と考えたが何故か躱されそうな気がして止めた。


 あの2体からはそれほどの武の雰囲気を感じた。

 俺が奥義に認定した、【極みの位 終】は現在魔力全快で2回、よくて3回だ。

 躱しそうな雰囲気を出してるこの2体には余り使いたくない。


 普段は無駄によく使ってるけど……



 俺達はそのままゆっくりと2体に向い歩き出した。


 ある程度まで近づくと羅刹王の方が片手を開いたまま突きだしてきた。

 まるで止まれといわんばかりであった。

 俺達もここまでだなと歩みを止めた。


 2体はゆっくり立ち上がり目を見開いた。

 強烈な眼力がこちらを睨んできた。



 【羅刹王】は着物の上に全身甲冑を身に纏う、武士をイメージしたような出で立ちだった。

 白髪は若干輝いてるようにも見え、赤い肌とよく合っていた。

 額からは2本の小さな角が生えている良い漢だった。


 【夜叉姫】はサラと同じ着物を纏っていた。

 ただ違うのは褄下(つました)は短く『夏祭り』の歌手みたいに太ももまでしかなかった。

 腰に巻いてる帯が後ろから垂れ下がっており、袖口下と一緒で畳につきそうな程異様に長かった。

 額からは太く長い1本の角が生えており、肌は薄い紫で黒の着物と似合ってるかは分からなかった……

 サラのピンクを基調にして赤い花びらが画かれてる着物とは違うが、こちらも妖艶そうな女性?だった。




「ようこそ【百畳の間】へ。この階の守護者を務めます夜叉と申します。こちらは連れの羅刹です。そちらの名前を伺っても?」


 夜叉姫の方が当然のように喋ってきた。

 まぁAランクの吸血鬼が喋ったし当然か……

 どうやら【鬼種】は【スライム種】や【蛇種】とは一線を画す様だ。



「……竜斗だ。こっちは仲間のガオウ、サラ、ルキだ」

 俺は何故か返事した。


 無視しても良かったが何となく名乗るのが礼儀のような気がした。



「名乗って頂き感謝します。では侵入者に対して排除行動に移らせて頂きます。よろしいでしょうか?」

 いちいち丁寧な物言いだったけど容赦はなかった。



 夜叉は神器【銀鶴】を発動させた。

 綺麗な薄紫の脚に銀色に輝くブーツ型の神器が装着された。



((クロ)……というよりかは、某エクソシストの漫画のヒロインみたいだな……)



「珍しいな、具足の神器か……」

 ガオウが呟いた。


「そうなのか?」

「ああ。剣や籠手、鎧の神器が一般的だが……刀や具足、胸当は珍しい神器に分類されるな」


「……ふ~ん」

 俺が銀色に輝く神器を見つめていると、サラとルキも神器を発動させた。



サラ

【百花繚乱】<鎌/風/無/A>

【花樹園】<胸当/風/治癒/B>

【鎌鼬】<腕輪/風/斬撃/C>


ルキ

【ドラゴンテイル】<槍/水/噴射/A>

薔薇の盾(ローズシールド)】<盾/水/守護/A>

【チェンジ】<腕輪/次元/転移/B>



 結局俺はチェンジの神器もルキに渡した。


 ルキは腕輪の神器をサラに(かざ)した。

 どうやら自身と対象の位置を変える神器らしい。

 ゼータは部下数十人から数百人くらいを対象にしてたそうだ。


 光っていた腕輪の光がゆっくりと収まっていった。

 どうやら対象をサラに選んだようだ。



 2人は夜叉姫に向き直った。



「待たせたな」


「いえ、構いませんよ……しかしお2人だけでよろしいのですか?」

 夜叉姫はクスリと笑い俺とガオウに視線を送った。



「問題ない、そっちこそいいのか? 2人がかりじゃなくて?」

 今度は俺が羅刹王に視線を送った。


「……こちらも問題ない」

 羅刹王は静かに答えた。


 まさかのサラ・ルキ対夜叉姫の構図になった。

 羅刹王は手を出さないみたいだ。



 ルキはドラゴンテイルに魔力を込め、腰を低く落とした。



「行くぞ!!」


 掛け声と共にドラゴンテイルの(つか)からは一気に水が噴射され夜叉姫目掛けて突撃した。


 しかし夜叉姫はドラゴンテイルの側面を軽く脚で弾き軌道をそらした。

 間髪入れずにもう片方の脚でルキの顔面目掛けて蹴りを繰り出した。



「くっ……」


 ルキもなんとか盾で蹴りを防いだ。



「クスッ、残念ですが私の蹴りは()ぜますよ」


 夜叉姫の言葉と同時にルキは後方に吹き飛ばされた。

 ガオウが吹き飛ばされるルキの体を支えた。


「す、すまない……」


「構わん、油断するなよ」

「ああ」



「ふふっ……良かったですね、頼りになる殿方がいらっしゃって……」


 言い終わると同時くらいに、今度はサラが夜叉姫の後ろを静かにとり、一気に喉元目掛けて鎌を振り抜いた。


 夜叉姫は2回転くらいしながら高く飛びあがりそれを躱した。

 着地と同時にサラ目掛けて一気に間合いを詰め、相手を吹き飛ばすように真っ直ぐに蹴りを突き出した。



 サラは百花繚乱の柄でこれを防ぐが……


「爆ぜると申しましたよ」

 夜叉姫が笑顔で答えると、サラも後方に吹き飛ばされた。


「きゃっ…!?」


 これまたガオウが吹き飛ばされるサラの体を支えた。


「大丈夫、か?」

「は、はい……すみません」



「クスクス」

 夜叉姫は不敵に笑った。



 サラとルキは横並びになって夜叉姫と対峙した。


「なんだ奴の神器は?」

「【爆発】の能力でしょうか?」



「クスッ、いえ……」

「【衝撃】だな」


 夜叉姫が答える前に俺が2人の後ろから答えた。

 終始笑っていた夜叉姫の顔が一瞬だけ鋭くこっちを睨んだ。


「……正解です」

「やっぱな……レイナの神器【大和】の能力【衝撃】と似てたからもしかしてと思った」


「勘、ですか……何やらあなたの眼は異様だったので、てっきり魔眼なのかと思ったのですが……」


「ああ、間違ってないよ……神器の能力までは分かんないけどね」

 俺は不敵に笑ってみせた。



「…………」

 夜叉姫は少し黙ったあと、2人に向き直った。

「しかし、あちらの殿方達と違って貴女方は弱いですね。大方ランクを上げにきた、といったところでしょうか?」


「ああ、間違ってない」

 ルキはあっさりと答えた。


「クスッ、同じ女性として情けないですね」

 夜叉姫は再び笑った。

 男性に助けられる女性を情けないと思っているようで、2人を嘲笑い挑発した。



「今はな……だが竜斗は私達を必要としてくれている。今は情けなくても、これから強くなればいいだけのことだ」


「そうですね。私達は皆、竜斗さんに感謝しています。命も救われました。あの方の期待に応えるためにも貴女は倒させて頂き……ます!」


 サラは神器【鎌鼬】を発動させた。

 見えない風の刃が夜叉姫を襲った。


「ちっ……」

 夜叉姫は舌打ちしたが、これを簡単に避けた。



 マジか!?

 マジで【極みの位 終】も避けそうだな……俺は内心焦った。



「小賢しい真似を!!」

 夜叉姫は何度も繰り出される鎌鼬を事も無げに避け、あっという間にサラとの間合いを詰め回し蹴りを繰り出した。


 サラは今度はこれを躱すが、衝撃の余波で少しだけ後方に飛ばされた。



 ガオウが支えに行こうとしたが、


「大丈夫です!」

 サラはきちんと受け身をとり、大したダメージにはなってないようだった。

 サラは再び鎌を握り締め夜叉姫と斬りあった。


 2人の動きはスキル【舞踊】があるからか、まるで舞っているかのようだった。

 2人の格好は和装で、場所も和風だった為、観ていて感動さえした。



 同じようなリズムで戦う2人にルキの攻撃が加わると、夜叉姫はリズムを狂わされたかのように、バランスを崩していた。

 2人のコンビネーションは息ぴったりで、Sランクの魔物相手に2人だけで互角に戦えていた。



 ガオウがゆっくりと俺に近づいてきた。


「余計な心配だったな」

「ああ、女は強い……俺の姉ちゃんがよく言ってた」


「なるほど、だから最初から手出ししなかったのか」

「まぁ、様子見もあったかな……て、いうより2人が倒さないと意味ないし。それに……」


「それに?」

「あいつが1番油断できない」


 俺は羅刹王に視線を送った。


「……なるほど」

 ガオウは唾を一飲みした。

 羅刹王は微動だにせず、腕を組んだまま直立不動を維持していた。


「間違いなく今まであったSランクの中じゃあいつが1番だ……あいつは俺がやる」

「お前が!? サラ殿とルキではないのか?」


「ああ、多分今のあの2人じゃあいつには勝てない……てか、あいつ本当にSランクか? 絶対それ以上だと思うんだけど……」

「まぁランクは単純な強さと魔力の大きさとの2つを合わせて判断されているようだから一概には言えん。同ランクでもピンキリだ。ルルはBランクだが、戦闘においてはCランクのシューティングスターに勝てんだろうしな」


「確かに」

 俺はなるほどと納得した。


「まぁガオウはしっかり援護を頼むよ。折角新しい神器創造したのに出番なしだからな」

 俺は笑ってガオウの方を向いた。


「……お前のせいだぞ、吸血鬼をあっさり倒しおってからに」

 ガオウは少しだけ恥ずかしそうにして、俺と視線を合わせず答えた。



 俺達が無駄な話をしている間に3人の状況が変わってきた。

 一見優勢そうに見えていた2人だったが、ランクの差が徐々に現れ始めた。

 2人の攻撃はあまり効いておらず、反対に夜叉姫の攻撃は威力が高く2人とも傷ついていた。



「はぁ……はぁ……はぁ……」

 ルキは槍を畳に突き刺し足を止めていた。


「はぁ……はぁ……」

 サラの方も片膝をついて肩で息をしていた。



「……どうやらここまでですね」

 夜叉姫は笑って余裕そうに答えるが、実際には最初ほどの流麗な動きもなく、夜叉姫の方も疲れていた。


 夜叉姫は俺とガオウに視線を送ってきた。

「どうしました? 彼女達を助けなくてよろしいので? このままでは死んでしまいますよ?」

 夜叉姫は笑いながら必死に疲労を隠しながら問いかけてきた。


 健気だな~とも思ったが、実際にはこれは真剣なんで、容赦なく援護させてもらう。



「なら、お言葉に甘えて」

 俺は神器【森羅万象】を発動させた。


 サラの【百花繚乱】には【水属性】、ルキの【ドラゴンテイル】には【風属性】を、付加させた。



 恐らくだが、属性同士を融合させることが出来たのはスキル【合魔】のおかげで、俺は【嵐属性】を創れたが今のところ2人に付加させても融合させることは出来ない。


【百花繚乱】【風・水】【S】

【ドラゴンテイル】【水・風】【噴射】【S】


 2人の神器に別々の属性を付加させた。

 傷つき疲労もあるためこれが最後の攻撃だ。



「……やはり、貴方はこの中でも別格のようですね。何をしたか解りませんが、お二人からただならぬ魔力の奔流を感じます」

 夜叉姫は俺を見ながら話すが、常に2人への警戒は怠っていなかった。



 兎にも角にも、次の攻撃で決着だ。




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