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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第二章【羅刹と夜叉】
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異端と小鬼



「ぶふぅっーー!?」

 その場にいた全員が一斉に飲み物を吹き出した。


「えっ!? 今、なんて……?」

 誰かがそう呟いた。



「いや……だから俺、魔人族(レイナ)と婚約してるよって……」



「そ、それは愛人や奴隷としてではなくてか?」

 ルキウスが尋ねてきた。


「勿論だよ……てか俺ってそんな下衆に見える?」

 心外であった。


 こっちの世界の人間では当たり前かもしれないけど、正直俺にそんな趣味はない。

 確かに異世界といえばハーレム物だと思うかもしれないが、レイナがいれば充分だ。

 てか、他の女性にも同じ様に愛を注ぐなんて器用なこと、俺には出来ない。


 改めて漫画や小説の主人公って凄いと感心した。

 どこかで誰か一人に偏りそうだ。

 いつか誰かに刺されるかも……



「そうか……魔人族と人間か……」

 ルキウスが呟いた。


「えっ? 急にどうした?」


「いや、お主を見ていると……」

「竜斗でいいよ」


 いちいちお主とか言われると変な感じがするし、ここらでしっかり名前呼びしてもらおう。


「……では私のこともルキウスではなく、ルキでいいぞ」

「いいのか?」


「ああ。ドラグナー国では一応、王をしていたから呼ばれることはなかったが、父様や母様はそう呼んでいた。今ではそう呼ぶのは弟のルークだけだな」


 ルキはそう言うと弟の頭を撫でていた。


「へへっ」

 ルークはお姉ちゃんにべったりだった。



 そういえば、俺も小さい頃は翔兄や智姉にべったりだった気がする。

 少しだけ元の世界が気になった。

 新作の漫画やアニメ……



 そして俺はふと気づいた。


 あれ?

 ランク【ZERO】のドラゴン倒した時、元いた世界に帰る神珠じゃなかったな……

 俺ってそんなに帰りたいと思ってないのか?

 それともやっぱ帰れる神珠は存在しないのか?


 以前ガオウが神珠は神の恩恵等と言ったことを思い出した。

 本人に必要、或いは欲しいと願った神珠が手に入るとかなんとか。


 ま、いっか……




「で、話戻すんだけど……さっき言った魔人族と人間だと何か問題があるのか?」

 俺はルキに先程の言葉の続きを聞いた。


「いや、大したことじゃない……本当に竜斗は異世界から来たのだなと」

「そんなに変かな?」


「ああ……まさしく異端だな。こちらの世界の人間とは似て非なる存在だ」


「それは私も同意します」

 ここでサラが話に加わってきた。


「サラ殿もそう思うか?」

「ええ。私が初めて竜斗さんを見たときなんて、いきなり同族である人間の首をボトリ……でしたからね」


「ああ、私の時なんてゼータの腕をボトリ……だったよ。最初何が起きたか分からなかったよ」


「ふふっ」

「くくっ」


 女の人が、嬉々として人間が斬られる話で盛り上がってる光景は異様だった……




 現在、俺達はアルカ大平原のど真ん中で夜営を張っていた。

 あれからドラグナー国を後にし、かれこれ数日が経っていた。


 俺達はアルカディア国に帰還するのと同時にSランクの迷宮がないか探っていた。

 現在、アルカディア国で把握している迷宮の中にはSランクのダンジョンはないとのことだった。


 ガオウの【魔眼<地>】を頼りに手探りで探していた。

 ただ真っ直ぐ北上したのでは、アーク帝国の連中に見つかるので、サラの【占術眼】も駆使しながらゆったりとしたペースで探していた。


 50人にはなる大所帯なので、最初は心配であったが今のところアーク帝国の兵士達には見つかっていない。

 食糧等は袋の神器に詰めれるだけ詰めてあるし、まだ問題はなかった。

 皆食事を摂ったり、談笑したり、休んでる者もいた。


 俺はサラとルキと、後は眠そうにしているルークの4人で輪になり火を囲って話をしていた。




「しかしこうしてサラ殿と再び会えるとは思いませんでした」

 いつの間にかルキとサラの会話が過去の話になっていた。


「あら、覚えていてくれていたのですね。てっきり忘れられてるのかと……」

 サラはフフッと小さく笑っていた。


「とんでもない。あれから色々あって……最初は分かりませんでしたが、サラ殿がドラグナー国を訪れた時のことは今でも覚えております」

 サラは手を振り焦るように否定した。


「嬉しい限りです」


「サラ殿が話してくれた異国の事や、多種多様な魔族の話はとても冒険心を(くすぐ)られました」

 ルキは手に持つ飲み物をじっと見つめていた。

 まるで飲み物に写る自分を見ているようだった。


「ルキさん……」



 俺は黙って2人の会話を聞いていた。


 この世界は……魔族にとって凄く生きにくい世界だ。

 翔兄が持ってた小説とかだと、人間、亜人、獣人は上手いことバランスよく生活してるように感じた。

 でもこの世界の魔族は、最低の生活すら許されないのだろうか?

 夢を見ることも許されないのだろうか?

 みんな生き抜くことに精一杯だ……

 アルカディア国は他の魔族の国と比べたらマシな方だと思う。


 俺は憤りを感じた。

 握られたコップに力が入った。



「そういえばさぁ……」

 俺は話題を変えた。


 サラとルキが俺の方に振り向いた。

 ルークは……なぜか俺の膝の上で寝ていた。

 いつの間に……


「これ、俺が斬り落としたゼータの指についてた神器……」

 俺はズボンのポケットに入れてた神器を2つ取り出した。


「回収したのか?」

 ルキが尋ねてきた。


「ああ、何かに使えると思って」


「なんの神器でした?」

 サラが尋ねてきた。


「いや【神眼】だと分かんないし、帰ってからララに視て貰おうかと……」

 微妙に神眼って役に立たないよな……


 すると、


「あの……一つ思ったのですが、竜斗さんがその神器を装着してから神眼で視ればいいのでは?」

 サラは恐る恐る尋ねてきた。



ルキ「…………」

サラ「…………」

俺「…………盲点!!」



 その手があった!

 確かに能力と属性までは分かんないけど、それだと名前と種類、ランクは分かる!

 ほんと俺って阿呆だな。


 取りあえず、2つを指に嵌めて視てみた。



【チェンジ】<腕輪/次元/?/B>


薔薇の盾(ローズシールド)】<盾/水/?/A>



「ハハッ……視れたよ」

 もはや苦笑いしか出てこなかった。


「あれ?」

 ふと俺は違和感を感じた。


「どうされました?」

「属性が視れる……」


 確か今まで視れたのは、所持神器の名前と種類とランクだけだった。

 ここにきて属性も視れるようになっていた。

 俺は口を手で押さえ考えた。


 そういえば俺、ゼータ戦の時もあいつの攻撃が風属性って分かってたな……

 てかあいつ何気に【風】と【水】扱えるのか……



 そしておもむろに神眼で自分のステータスを視てみた。




【天原竜斗】(18)


種族

【人間】

クラス

【ZERO MASTER】

ランク

【ZERO】

先天スキル

【剣才】

後天スキル

【王気<解放>】【魔曲】【五光】

【神速】【合魔】【??】

特殊スキル

【神眼<解放>】

神器

【絶刀・天魔】<刀/次元/?/ZERO>

【森羅万象】<籠手/炎水雷風地/?/S>

【魔名宝空】<盾/風/?/S>

【1783】<袋/次元/?/D>

【チェンジ】<腕輪/次元/?/B>

【薔薇の盾】<盾/水/?/A>

【??】

【??】




「あ~……神眼スキルが<解放>になってる」


「まぁ、それは凄いですね」

 サラは本当に驚いてるのか疑わしい声で驚いていた。


「<解放>って分かる? なんかゼータも驚いてた気がするけど……」

「悪いな、私には分からぬ」


「ごめんなさい、私も分かりません」

「そっか~まぁ色々試してみるか」


 だが他には何も視えなかった。

 相変わらず指から神器を外したら視えないし、占術眼や千里眼?、他の魔眼みたいな効果も得られなかった。

 本当に【属性】だけしか追加されていなかった。


 微妙だな……

 誰か分かるやつがいればいいんだけど……

 帰ったらゼノに聞いてみるか。

 ついでにスキル【合魔】も……



「まぁ取りあえずこの、【薔薇の盾】はルキが持ってなよ」

 俺は指輪をルキに差し出した。


「いいのか?」

「ああ。今神器一つだけだろ? 【水属性】だから扱えるみたいだし……あっ、やっぱゼータが使ってたのは嫌か?」


「……確かにあいつは憎い男だったが、今となっては何故か其処まで憎んでもいないんだ……竜斗が倒してくれたからかな?」


「取り逃がしたけどな」

 俺は笑って答えた。


「ふふっ、だったな……お前がいいなら有り難く受け取ろう」


「おう」

 俺は神器【薔薇の盾(ローズシールド)】をルキに渡した。




 暫くしてガオウがこちらに近づき話に加わってきた。


「お疲れさん」

「悪いな、少し休ませてもらった」


 ガオウは昼間の間、【魔眼<地>】を使って迷宮を探してくれていたので、さっきまで横になっていたようだ。

 俺達の所にきて、ドサッと勢いよく座ると手に持っていた飲み物を一気に飲み干した。


「で、どうする?」

 俺は今後の方針をどうするかガオウに尋ねた。


「うむ、そうだな……この辺りでもう一度魔眼を使って、それでも迷宮が見当たらなければ、一度全員でアルカディア国に帰還しよう」

「そうだな、俺もそれがいいと思…………何か騒がしいな……?」



 ガオウ、サラ、ルキ、それに俺も、周りが騒がしくなったのを感じた。

 方角的には北の辺り(アルカ大森林の方角)が騒がしい。



「アーク帝国でしょうか?」

 サラが装着している神器を(かざ)そうとした。

 いつでも神器を発動出来そうな勢いだ。


「ルーク、起きてくれ」

 俺は小声でルークを揺り起こした。


「んあっ……お兄ちゃん……?」

 ルークは眠たい目を擦りながら起き上がった。


「悪いな起こして」


 ルークは首を横に振った。

 俺はルークをルキに預け、立ち上がった。


「俺とガオウで見てくる。2人は皆を頼む。挟撃も有り得るからな」


「了解した」

 ルキとサラが頷いた。



 俺とガオウは皆の間を掻い潜るようにして、一番騒がしい辺りに出た。


「どうした?」

 俺は近くにいた魔族に尋ねた。


「竜斗さんっ!? ま、魔物です!」

 魔族の人は魔物の方を指差した。

 俺は指差した方に振り向いた。


「何だあれ?」


「……【小鬼】(ゴブリン)だ」

 ガオウが答えてくれた。


 背は低く、肌の色は緑色をしていた。

 手には刺々しい棍棒を持っていた。



【小鬼】(ゴブリン)、ランク【E】、所持【棍棒】




「雑魚だな……弱点はないけどランク【E】だし、問題ないな」


 俺は神器【絶刀・天魔】だけ発動させ、スキル【神速】で一気に間合いを詰めた。

 ゴブリンは神速の速さについてこれず、正面を向いたままであった。


 俺はゴブリンの真横に立つと、そのまま刀を水平にし、胴斬りでゴブリンを一刀両断した。



「ガオウ、もしかしたら近くに迷宮があるかもしれないし、魔眼使ってみてくれ」

 俺がそう声をかけたがガオウから反応がない。


「ガオウ?」


「……竜斗よ、仮に迷宮が在ったとしても今回は見送ろう」

 ガオウから重たい空気が流れた。


「なんでだ?」

「低ランクなら兎も角、我々が挑むのはSランクだろう?」


「ああ、当然だな……」

「なら今回は止めておこう」


「だからなんで?」

 若干イラッとし、強めに尋ねた。



「……【鬼種】だからだ」



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