表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第二章【羅刹と夜叉】
33/318

新属性と裏奥義



 遡ること数時間前……

 アルカディア国を後にし、数日という時が流れた。



 現在、俺とガオウとサラの3人はドラグナー国に向け、絶賛飛行中であった。

 かなり高い高度で……



「サラ大丈夫?」

「はい、私は何ともありません」


 サラはスキル【飛翔】により、その黒くて長い羽を羽ばたかせ、空を舞っている。

 俺はサラの左手を掴み、ぶら下がっている状態だ。


 そしてサラの右手を掴みぶら下がっているのが、ガオウだ。



 サラ、力持ち!



 と、思うかもしれないがそうではない。

 ガオウが新たに会得したスキル【重力操作】により、俺と自分を軽くしているのだ。



「……ガオウ大丈夫か?」

「…………」


「ガオウ?」

「五月蠅い! 我に話し掛けるな!」


「……悪い」



 どうやらかなり集中しているようだ。

 目を閉じ眉間にシワまで寄せてから……単純に【重力操作】と言っても俺とガオウの体重を軽くするわけではなく、俺とガオウの空間の重力を弄ってるみたいだ。


 ガオウにもよく分かってないらしい。

 ただ、サラが飛翔しているので逐一空間の重力を変更し続けているわけで、大変な集中力を要するようだ。


 まぁどう見てもガオウなんか、ゴリ押しのパワータイプな訳で、こんな複雑怪奇なスキルは宝の持ち腐れだ。

 以前、オークスという男がガオウ達に重力操作で負荷をかけ動きを封じていたが、ガオウもあれくらいなら出来るみたいだ。


 適当に範囲を決めて、後は重力を操作すればいいだけらしい。



 ただ、ゼノとの修練でゼノに言われたそうだ。


「このスキルはあんな大雑把な使い方よりもっと……局部的なものを狙った方が効果的だ。それに慣れれば重力操作の範囲を絞って魔力の消費も抑えられる筈だ」と。


 そうなのか?


 確かに器用そうなゼノなら軽々とスキルを使いこなしそうだが……

 しかし、現在進行形でガオウは辛そうだ。

 それならいっそのこと、全員纏めて軽くすればこんなめんどくさい事にならないのに。


 そうは問屋がおろさない。

 サラが「軽過ぎて気持ち悪い」と言い出した。

 慣れれば問題なくなるかも知れないが、今は軽い荷物を持つ位の感じの方がいいそうだ。



 まぁそういう訳で移動も兼ねてガオウは現在特訓中なのだ。

 使いこなせれば凄いスキルになりそうだが今はそっとしておいてあげよう。



 局部的か~相手の上半身を重くして、下半身を軽くしたらどうなるんだろ?

 ま、まさかぺしゃんこになったりはしないよな?


 少しだけグロい想像をしてしまい身震いした。

 まぁ俺には関係ないスキルだし、考えるのを止めて空の散歩を楽しむことにした。





 今までは平原をひたすら歩いてきた為、空の散歩は楽しかった。

 何より俺は何もしてないので本当に楽チンであった。



 ここに来るまで、いくつかの戦闘を行った。


 戦闘のさなかガオウとサラとはぐれた時はどうしようかと思った。


 見晴らしのいい平原なのに……


 いくつかの戦闘を行い、ある意味では大冒険であった。

 だって隠れるところないんだもん。

 逃げるのにめちゃ必死になった。


 ダイならぬ、竜斗の大冒険だった。


 アルカディア国に帰って落ち着いたら、あの大冒険の数々を皆に話したいと思う。



 そういえば逃げるのに必死であんまり覚えていないけど、人間の中に【百合】だの、【竜胆】だの花の名前を言う奴が2人いた気がする……

 俺は思い出すように心の中で呟いた。


 神眼を使っても良かったが、なるべくこちらの情報は渡したくないし、無駄に殺すこともないから適当に斬ってあしらったので大丈夫だろう。


 ついでに城もぶった斬ったから今頃大慌ての筈だ。


 追いかけてくる心配もないと思うけど、いちいち相手にもしていられないので、ガオウとサラと合流出来てからはこうして空の旅を満喫している訳だ。



 まぁ楽しむと言っても、下に広がるのは一面、緑が続く大平原であった為……絶景なのだがいい加減少し飽きてきた。

 人間に見つかるのを恐れ少し迂回するように遠回りで来ていたので、そろそろ限界だ。





「サラ、ドラグナー国は後どれくらい?」

「もう少しだったと思います」


「予定よりかは早かったな」

「ええ、まさかこうして飛翔で移動するとは思わなかったので」


「ガオウの重力操作のおかげだな」


「ですね。私への負荷は殆どないので、とても助かってます。ガオウさん、大丈夫ですか?」

 サラはガオウの心配をした。


「……む、問題ない」


「無理はしないで下さいね?」

「ああ」



 この野郎……俺の時と対応が全然違うぞ!

 なにが「……む」だ!

 くそっ、帰ったらゼノに報告だな!


 俺はそう心に誓った。



「そう言えばサラはドラグナー国に行ったことがあるんだっけ?」

「はい、確か私が20才くらいの頃なので……7年くらい前になりますかね」


「へ~どんな国?」

「そうですね……竜種と共に、空を駆る竜騎士と呼ばれる竜人族が多くいる国でした。みなどこか気品があり、訪れた私も少し身が引き締まるのを感じた覚えがあります」



「へ~……って、ドラゴン!? ドラゴンがいるの!?」

 俺は驚き、掴んでた手を一瞬離しそうになった。


「はい。理由はわかりませんが彼らは昔からドラゴンと共に暮らしてきたそうです。下手をしたらドラゴンを崇拝してる気もありましたね。なによりドラゴンを傷つけられた時の激昂の様は凄まじいと聞きました」



「へぇ……そうなんだぁ……激昂かぁ……」

 そう言えば俺ってドラゴン斬ったけど、大丈夫だよな?

 黙ってれば問題ないよな……?



 そんな事を考えていたらサラが何かを見つけた。

「あっ、あそこです! あれがドラグナー国です!」



 俺達はドラグナー国を一望できる高さで浮遊していた。


 遠目でも分かる……

 酷い……

 街の建物は崩れかけた物が多く、人が住んでるとは到底思えなかった。



「戦闘があったのでしょうか? 優雅だった国が見る影もありません……」

 サラは嘆いた。

 だがこの荒廃ぶりは1日やそこらで出来たとは思えなかった。


「マモン……ルキウスは生きてるのか?」

「分かりません……」



 サラの話を思い出すと当時ルキウスは13才。

 現在は20才くらい。


 レイナと同い年か……

 どんな気持ちなんだろう……



 するとガオウが口を開いた。

「あそこを見ろ! 人影が見えるぞ!」

 ガオウが国の外を指差し、南下している一団を見つけた。



「行こう!」

 俺は即決で一団に向かうようサラに指示した。







 蛙人族の老人……名をローゲ・ロゲーロ。

 黒い衣を纏うその老人は、長年ドラグナー国に仕えてきた大臣であった。

 その手に引かれる少年は竜人族の男の子。


 彼は誓った!


 彼が最も敬愛していた女王に……

 手を引くこの少年を守り抜くことが、自分の最後の使命であると。

 まだ幼いこの少年が、いつの日か立派な未来の王になるまで命を賭して守り抜くと。


 だが同時に不安もあった……

 彼は幼く、竜人族にしては体が弱かった。

 そして敬愛する女王の命で国を捨て、民達を連れて南下しているが宛てもない。


 機械国を目指すのもありだったが、あそこは危険であった。

 あの国も人間と争ってる上、尚且つあそこの王は機人族以外の魔族にすら排他的であった。


 なにより人間に見つかった時に戦う兵士は極僅かであった。

 その兵士も先の戦で傷も癒えていない、怪我人ばかりであった。



(だがそれでも、この子……このお方だけは何としても守り抜かなければ……)

 ローゲは心に誓う。


 すると後方がなにやら騒がしくなってきた。



「どうしたのだ?」

 ローゲは近くにいた、包帯を多量に巻き、足を引きずりながら歩く兵士に尋ねた。


「わ、分かりませぬ……」


 ローゲが分からないのに、近くにいた兵士にも分かるわけがなかった。


「……このお方を頼む、私が様子を見てくる」

 ローゲは王子を兵士に託し、人混みを掻き分けながら後方へと向かった。


「ローゲ様っ!?」

 兵士は咄嗟に老人の名を叫んだ。


 そしてローゲは気づかなかった……

 兵士の手を振りほどき、自分を追いかける小さな存在に。




 ローゲは人混みを掻き分け最後尾に出ると愕然とした。


 剣や斧、槍の神器を手に持つ、複数の鎧を身に纏った人間達がいたのだ。

 数は20人程……対するこちらは50人くらいはいるが、全て怪我人、老人に、女、子供であった。


 絶望的だった……




「ヒャッハーーー、流石ゼータ様! 読み通り逃げ出した魔族共が南下してやがったか!」

 この中のリーダー格らしき男が嬉々として喋る。


「でも隊長……怪我人にジジイ、メスに、ガキしかいませんぜ?」

「ヒヒッ」

「ぶへへへ」

「ほんとだぜ」


 周りからも薄気味悪い声がちらほら聞こえた。



「ゼータ様は、使えそうな兵士だけで良いって言ってたからな……どうするお前ら?」

「あ~……メスなら俺らの下の世話ぐらいなら出来るんじゃないっすか?」

「それもそうだな……ならお前ら、メスの魔族だけ残して後は皆殺しだ!!」


「「ヒャッハーーー、さすが隊長!!」」



 人間達は一斉に魔族に向かって飛び掛かった。

 中には最初から女の魔族目掛けて飛び出す輩もいた。


 魔族はみな悲鳴をあげ逃げ惑った。



 ローゲは覚悟した。

 なんとか後方にいる王子が逃げれる時間だけでも稼がなければと。

 だがローゲは驚愕した。

 王子がいるであろう後方に目をやった時、なんと目の前に、いるはずのない王子がいたのだから。




(じぃ)……」

 王子は泣きそうな声で爺に歩み寄ろうとしてしてきたのだ。


「なっ、何故ここに!? 早くっ…」

 逃げるように促そうとするが、ローゲは自分のすぐ後ろに気配があるのを感じた。


 ローゲの後ろに立つ、一人の人間が神器を振りかざしていた。


「ガキやジジイはいらねぇんだよ」

 男は言い放った。


 ローゲは必死に王子を抱き寄せた。

(姫様っ! 姫様っ! 姫様っ! なにとぞっ! なにとぞこの子だけでもっ!!)



 ローゲは心の中で必死に懇願した。

 自分の命は惜しくない。

 ただ抱き寄せているこの子さえ無事ならと……



 だが人間からの攻撃はなかった。



 ローゲは後ろを振り返り戦慄した。

 さっきまで自分に斬りかかろうとしていた人間は既に事切れていた。

 気づけば悲鳴を上げているのは自分達ではなく、人間達の方だった。



 巨大な斧の神器を振り回し人間を薙ぎ払う、鎧を身に纏う獅子族。

 流麗な動きで、まるで踊ってるかのように鎌の神器を振るう着物を着た八咫族。


 そして何より目を引くのが人間を斬る人間の男の子だった。

 敬愛する女王よりも年が下のような人間の男の子が、屈強そうな兵士達を苦もなく一刀両断していく様は、見ていて惚れ惚れした。



 ものの数分で人間の兵士達は倒れ、二度と目覚めることがなかった。

 3人は神器を解除しながら、ゆっくりとローゲ達に近づいた。



「あ、あなた達は……?」

 ローゲは恐る恐る3人に尋ねた。


 男の子がローゲを見つめる。

 右眼は金色に輝いていた。



(な、なんだこの人間は……本当に人間なのか……?)

 ローゲは恐怖した。


 先程までの兵士達の方が余程マシだったと……

 この人間に逆らってはダメだと……

 うっすらと体から金色の光が出ているようにも感じた。



「マモン……いや、ルキウス……女王ルキウスはここにはいないのか?」

「っ!?」


 まさかローゲが敬愛するお方の名前を、人間の口から聞けるとは思えず、ローゲは咄嗟に声が出なかった。


 男の子は更にローゲに歩み寄った。



「あんた、ルキウスがどこにいるか知ってるか?」

 男の子はローゲに尋ねるが、ローゲは返事が出来なかった。


 すると……


「……姉上は戦に行ってるよ」

 ローゲに抱き抱えられたままの、竜人族の小さな男の子が返事をした。


「お、王子っ!?」

 ローゲは焦燥した。

 女王の情報をこの人間に教えてよかったのかと。


 人間の男の子は神眼で王子を見つめ、しゃがみこみ王子と同じ目線の高さで尋ねた。

「……ルーク、君のお姉さんがどこにいるか分かるか?」


 ルークという名の王子は首を横に振った。



「サラ!」


「あちらの方角が何やらあまりよろしくない感じがします。もしかしたら……」

 サラは北の方を指差した。

「申し訳ありません竜斗さん、【千里眼】所持者がいれば正確な位置が分かるのですが……」


「いや、充分だ」

 竜斗は立ちあがり、神器を発動させた。


 刀の神器【絶刀・天魔】

 籠手の神器【森羅万象】

 盾の神器【魔名宝空】


 その姿は見る者を魅了した。

 なにより盾の神器を見て驚かない者はいなかった。

 誰かが小声で呟いた。


「翼……?」



 【魔名宝空】の形状はどうみても盾ではなく翼であった。

 竜斗の背中に位置するそれは、今まで見てきた魔族の生き物の翼ではなく、無機物の機械的な翼であったからだ。


 そして竜斗は【森羅万象】で【雷属性】を【魔名宝空】に付加させた。

 【魔名宝空】には元々【風属性】があるため、いうなら属性【風・雷】になるわけだが……竜斗の力はそこで終わらなかった。

 修練で身につけた【森羅万象】の【裏奥義】……風と雷を混ぜ合わせ完成したのが、



 盾の神器【魔名宝空】、属性【嵐】、能力【守護】、ランク【SS】



 新たな属性を生み出しランクも一段階上がり、魔名宝空の羽からは強烈な風が吹き荒れた。

 みな近場で発生した小規模の嵐により目を開けられないでいた。



「竜斗、お主……」

 ガオウやサラも必死で風を遮るようにしてなんとか目を開こうとしていた。


「悪いなガオウ、帰ってきたら説明する。とりあえず俺はルキウスの元に行ってくるよ。なんとなくだけど、嫌な予感がする……ガオウとサラはここにいる皆を守ってくれ」


「……了解だ」

 ガオウは頷いた。

「落ち着いたら援護に向かうぞ」


「分かった」

 竜斗も頷いた。

 そして脚を開き、力を入れた。



「あ、あの…!」

 蛙人族の老人は竜斗を呼び止めた。


「ん?」

「ど、どなたか、存じませぬが……姫様を……ルキウス様を助けていただけるのですか?」


(やっぱ状況はあんま良くなさそうだな……)

「ああ、そのつもり」


「に、人間であるあなたが……」

「あ~~悪いけどそのへんの話も、まとめて全部後でね」

 竜斗は老人の言葉を遮った。



 竜斗は脚に力を入れ直して、スキル【神速】を発動させ、一気に地面を蹴り飛翔した。


 正確には飛翔ではなく、疑似飛翔とでもいうべき、超々低空飛行。

 上昇も下降もまだ出来ないし、細かい旋回もできない未完成の技。

 現段階でいうなら驚異の超ダッシュ。



 粉塵だけ撒き散らし竜斗の姿は瞬く間にその場から消え失せた。







 加速中の竜斗は思う、

(この大平原なら格好の練習場になるな)


 アルカディア国の地下一階【修練の間】は、広いといっても制御の効かない現段階の竜斗にとっては、窮屈以外のなにものでもなかった。

 何度壁にぶち当たった事か……

 怪我がなく済んだのは【魔名宝空】の能力、【守護】のお陰であったからだ。


 だが今いる場所はアルカ大平原。

 竜斗を遮る壁はなく、思う存分に力を発揮できた。

 結果、驚異のスピードで、竜斗は疑似飛翔をものにしていった。


 ただデメリットもあった。


 守護されているとはいえ驚異のスピードに左眼はついてこれず、常時神眼を発動させ、右眼しか開いていない状態なのだ。

 更に、【魔名宝空】と【森羅万象】も発動させ、いざという時のために【絶刀・天魔】も発動させていた。



 最強状態ではあるが、一気に魔力がガス欠になる諸刃の状態でもあった。



 だが今回はそれほど心配することもなく、瞬く間に眼前に巨大な城が見え、竜斗は遠目だが人影らしきものも捉えた。



 神眼が完全に人影を捉えた。


(倒れてるのがルキウスと竜種か……? 神器を振り上げてるのが、ゼータ……クラス【六花仙・薔薇】? あいつ()花か……なら!)



 竜斗は一瞬だけ地面に足を着け、そのまま前方に跳躍し神器【魔名宝空】を解除した。

 そして【絶刀・天魔】を高く振り(かざ)した。



【上段の構え】+【水属性】


「上段・水の位 水蓮華(すいれんか)!!」



 着地と同時に、ゼータの腕目掛けて竜斗は刀を降り下ろした。



 ゼータの腕は、少しだけ空に舞った。

 綺麗に切断された腕は無惨に地面に落ちると、虚しく転がった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ