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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第十二章【神書】
312/318

色欲とアスモデウス



 気づくと空に立っていた。

 地面はなく、見渡す限りの青く澄んだ空。

 その中に私は今立っていた。

 翔んでいるのではなく立っている。

 地面もないのに、不思議な感覚だった。


 暫く辺りを見回していると、前方?より1人の男の子がゆっくりと近づいてきた。

 あの人の様な気高く雄々しき鬣を彷彿とさせる金の髪。

 背には見慣れた漆黒の翼。

 アトラスさんが着てる様な、胴着と袴の服。

 優しく光る翠の瞳。


 初めて見るのに誰だか分かる。



「レオン……なの?」

「うん」


 幼い声。

 ソラちゃんやルークくんよりも少し上程度の子供。

 なのに、竜斗さんみたいな力強さも感じる。



「よく……分かったね……」

「ふふ、それくらいは分かりますよ」


「まだ生まれてもないのに?」

「まだ生まれてなくてもです」


 お腹を擦る。

 分かってる……今の私のお腹は膨らんでいない。

 この子を宿す前の状態……いや、違う。

 この子を生んだ後の状態なんだ。

 あれ?

 生まれてないのに、生んだ後?

 混乱してきた……



「えっと……どうして私はこんなところにいるのかしら?」


 今まさに帝都にてあの人と対峙していた筈……



「ごめんねママ、本当ならここでママに会うのはアスモデウスの筈なんだけど……」


 レイナやゼノさん達が言っていた通り。

 覚醒者は自分の前世、悪魔達と出会う。

 そしてスキルに目覚める。

 けど、どうやら私は違うみたいだ。



「アスモデウスは僕が引き継いだから……もうママにアスモデウスの力はないんだ」

「そう……」


 少し安心した様な、少し残念な様な……

 なんとも言えない感覚だ。



「なら、なんで私はここにいるのかしら?」


 そう、私にもうアスモデウスの力がないなら何故私はここに?



「今この世界は凄く不安定なんだ。アトラスのおじちゃんのせ……ううん、なんでもない」

「?」


 レオンは口ごもる。

 言えない事なのだろうか?



「これは……本当は言っちゃいけない事なんだろうけど……」


 レオンは必死に何かに耐えてる様子だ。

 何が彼をそこまで苦しめるのだろう……

 それでも話そうとしてくれる我が子を健気に思う。



「本当なら僕は生まれる筈のない存在……」

「!?」


「パパは命潰えるまで暴走して……ママも……」

「…………なら、なんでレオンはここにいるの?」


「世界が、今凄く不安定だからとしか……直にアトラスのおじちゃんもスキルを発動させる……」

「さっき言いかけたのはそれ?」


「ううん、おじちゃんだけじゃない……ゼノさんもルキさんも、バアルさんも…………もう誰にも止められない」

「…………でも竜斗さんがいるわ」


 レオンは悲しそうに、そして少し嬉しそうに頬笑む。



「そうだね、()()()()にはまだ竜斗おにいちゃんがいる」

「ええ」


 この世界?

 レオンは「この世界」の部分を強調している様に思えた。



「だから、今僕はここにいる。きっとパパを止められたら世界は変われる筈なんだ」

「どういう事?」


「確かにママにアスモデウスの力はない。けど今ならまだ使える、僕が生まれる前のママなら」


 つまり正確にはまだアスモデウスの力は私のもの。

 けどレオンを生んだらその力はレオンに引き継がれる。

 そういう事なのだろう。

 なら何故今の私のお腹の中にレオンはいないのだろう?

 きっと、レオンのいう世界が不安定なのはこの事なのだろう。

 だってまだ生まれてないレオンが成長して目の前にいる、それが何よりの証拠。



「つまり……パパを救えばいいのね?」

「まぁ、端的に言えば……」


 難しい言葉を知ってる。



「ふふ」

「?」


 思わず笑みが溢れる。

 まさかこんな形で成長した我が子に会えるなんて。



「ごめんなさい、少し嬉しくて……それで、ママはどうしたらいいのかしら?」

「少しだけなら力を貸してあげられる」


「アスモデウスの?」

「ママも信じてるんでしょ? 竜斗お兄ちゃんはきっと来てくれるって」


「ええ、そうね」

「でも……今のままだと竜斗おにいちゃんが来る前に帝都はパパのせいで滅んじゃう。それに感化されて皆も覚醒して……」


 世界が滅ぶと?



「パパを助けられるのは竜斗おにいちゃんだけかもしれない……でも、パパを救うのは僕達家族の役目だ」

「そうね、その通りだわ」



「アスモデウスの力ならパパを少しだけだけど止められる」

「けど七大罪スキルは……」


「大丈夫。アスモデウスの制御は僕がするから、ママは力を解放することだけに専念して」

「大丈夫なの?」


「魔族だと完璧には七大罪スキルをコントロールすることは出来ない。けどママと僕の2人ならきっと出来る」

「レオン……」


「ううん、パパと3人ならきっと出来るよ!」

「ふふっ、そうね」


 力強い我が子を誇らしく思う。

 大丈夫。

 あの人と、この子と、私の3人なら……きっと。



「ちなみにだけど……アスモデウスはどんな能力なの?」

「究極の魅了、それがアスモデウスの力だよ」


 魅了……

 魅了か……

 私に魅力なんかあるのだろうか?

 それに悪魔以外が使う七大罪スキルは必ず暴走する、嫌な予感しかしない。



「行き過ぎた愛は自分も相手も滅ぼすし、誰も幸せにはなれない……愛のない魅了、或いは隷属化……アスモデウスは前にそう言ってた」

「そう……」


 レオンは私の心を読み取ったかの様に説明してくれた。



「けど、アスモデウス本来の力はそうじゃないんだ! 隷属は本来、天使ラジエルの力! アスモデウスの力はそうじゃないんだ……っ!」


 レオンは歯軋りする。

 アスモデウスの力は相手を隷属化させるものではない。

 けど悪魔じゃない私達にはアスモデウス本来の力は使えない。

 それが結果として隷属化みたいな力しか発揮できないのだろう。

 レオンはそれが悔しいのだ。



「あの人を魅了すればいいのね?」

「……うん。獣に堕ちて暴走してるパパを魅了できるかは五分五分だけど……」


 レオンの表情が少しだけ和らいだ。

 自分の子にこんな思いをさせるなんて、なんて不甲斐ないのだろう。

 私はそっとレオンに近づいて優しく抱き締めた。



「ママ……?」

「大丈夫よ、きっと大丈夫。ママが必ずパパを魅了してみせるわ」


「アスモデウスの愛は重すぎる……けど、きっとパパなら受け止めてくれるよ、僕らの愛を」

「そうね」


 2人で頬笑むと、私はゆっくりとレオンから離れた。

 自分でも分かる。

 もうすぐ私はここから消えると。

 現実へ帰るのだと。



「ママ……」

「レオン……」


 するとレオンの後ろに1人の女性の姿が見えた。

 艶やかで少し化粧が濃い様な……

 黒い羽の生えた、漆黒が似合う悪魔の女性。

 分かる。

 (アスモデウス)、だと。



「その子を護って……」

「?」


 レオンは見えていないのか少し戸惑っている。

 女性(アスモデウス)は優しく頬笑むと頷いてくれた。



 同時に私の姿もこの世界からゆっくりと消えていった。



 きっと……

 きっと掴みとってみせる……

 あの人がいて、レオンがいて、皆がいる……

 そんな未来を……




◇◇




 自分1人だけが残った世界。

 一面に広がる空の中、少年は涙を拭う。



「ママ、僕にも見えるよ……ママとパパがいて……皆がいて……ソラ姉やルーク兄、メイ姉もいる……そんな幸せな未来が……」


()()()()()ママとパパは僕が助ける! 僕自身の……ううん、皆の未来のために!!」



「神アルカよ、僕にほんの少しだけ力を貸して下さい! 例えそれが世界を歪める罪だとしても……僕は皆を守りたい! スキルよ、発動しろ!! 色欲(アスモデウス)っっ!!!!」




【レオン・アスモデウス・レヴィアタン】(10)

種族

【有翼人】

クラス

【天魔】

ランク

【ZERO】

先天スキル

【色欲】【嫉妬】

後天スキル

【属性<風ノ大地>】

【獣神ノ加護】【翼神ノ加護】

特殊スキル

【魔眼<地>】【占術眼】


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