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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第一章【はじまり】
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契約と婚約



 レイナと契約することになり、3人とも気持ちがある程度落ち着くと、レイナが口を開いた。



「それで竜斗様は、私に何を望まれますか?」



 何のことかと思ったが、どうやらお互いに利益があって、はじめて契約は成り立つらしい。

 契約とは血の1滴まで絞り尽くされるほどの一方的な無慈悲なものかと思っていた。


 正直、元いた世界に帰りたい気持ちがない訳ではないが、思っていたよりも契約は緩かったし、2人が俺を殺す気はなさげだ。

 なんか打算的に帰る手段を探そうとした決意がバカらしくなってきた。


 それに冒険物の漫画も読んでたこともあり、こっちの世界にも若干ワクワクしてきた。

 どうせなら楽しもうかと……



 沈黙の中、俺は考えた…………そしてレイナの方をチラ見した。

 レイナは「?」といった顔で首をかしげた。

 それに最悪のパターンは元いた世界に帰れる手段が存在しない場合だ。

 そうなったらこっちの世界で生きてくしかない。



「……欲しい」


「えっ? 何ですか?」


「レイナが……欲しい」



 言った!

 俺は言ったぞ!

 俺は恥ずかしくてレイナから視線を外して答えた。

 レイナはドキッとした顔をし頬を赤くしている。


 ハッキリ言ってレイナは可愛い!!

 どうみてもただのコスプレしてる可愛い女の子にしか見えない!

 もし元いた世界に帰れないのならば、どうせならレイナみたいな可愛い子とイチャイチャしたい。

 そんなことを考えていたら、咄嗟に口から出てしまった。



「そ、それは……ごめんなさい……そ、その内容だと契約は成立できそうに……ないです」


「あ、ですよね……」



 うわ~恥ずかしい俺!

 少しだけ……もしかしたら……OKもらえるんじゃないか期待してしまった。

 そりゃそうか……姫様っていうくらいだし婚約者の一人や二人いても可笑しくない……

 穴があったら入りたい……いや、もう死にたい……



「ガーハッハッハッハッ、面白い! 面白いぞ、竜斗よ!!」

 ガオウは大笑いしてる。



 うるせ~何も面白くね~よ、猫科人型動物……



 レイナは照れてうつむいている。


 死にたい……


 俺とレイナの間に気不味い空気が流れていたが、一頻(ひとしき)り笑ったガオウが気不味い空気を吹き飛ばしてくれた。



「いや~悪い悪い竜斗よ。こんなに笑ったのは何時ぶりだったか」



 そりゃようござんした……



「しかし、今のはお主が悪い。先程の内容では確かに契約は出来ぬかもな」

「はぁ……何かスミマセン……」


「ち、違うのです、竜斗様……え~と、何て言ったらいいか……」

 レイナは何かフォローしたいみたいだったが、今はその優しさが一番傷つく。



 すると、ガオウが答えた。


「竜斗よ、良いことを教えてやる。魔人族は古来より契約を重んずる種族なのだ。しかし何世代か前の時代から、その契約がいきすぎたものとなってきたのだ。いつからか夫婦となる者の間ですら契約が行われ、お互いの利益があってはじめて夫婦となれると言う程にな」


「つまり?」


「つまりだ。いきすぎた結果、今の時代において魔人族にとっての契約とは婚約と同義語になってしまったのだ。姫様とお主が契約する時点で、もうすでに2人は婚約したことになっているのだ。後はお互い利益を提示するだけだったのだが……」



 な、ん、だ、と……


 俺は咄嗟に右手で口を押さえた。

 レイナに視線を向けると、レイナの顔は真っ赤に染まっており、うつむいて視線を合わせてくれない。



「姫様の利益【魔族の国を安定させるのを手伝って欲しい】に対して、お主はそれを承諾した。にも関わらずお主からの利益は【姫様が欲しい】という。くくっ、まぁお互いがそれでいいなら問題はない。だがそれだと、姫様だけにしか利益がなく、お主は無条件で契約することになる。姫様はそれが心苦しくて、先程の契約を拒否されたのだ。くふっ」


 ガオウは必死に笑いをこらえながら説明してくれた。

 つまり俺はレイナからのプロポーズをOKしたにも関わらず、その条件としてプロポーズするという、意味の分からないことをしたのだ。



 マジで死にたい……恥ずかしすぎる……



 契約の際、ずっとレイナが照れていた意味がわかった。

 彼女からしてみれば、ずっと俺にプロポーズしてた形になる訳だ。

 俺なんかよりも恥ずかしい気持ちで一杯だったと思う。


 後から聞いた話だが、最初に契約して欲しいと言ったときに悪魔のような怖い表情になったのは、勢いに任せて契約しようとした結果、変な表情になったらしい。


 彼女の黒歴史の中でもトップ3には入る出来事になったみたいだ。


 ガオウはダムが決壊したが如く、再び大笑いしていたので流石にキレそうになったが、ガオウに対して放ったレイナの「殺しますよ」発言で、一気に空気が冷たくなるのを感じた。



「そ、それで……どうしますか竜斗様?」


「えっ!?」


「やはり無条件で……け、契約するのは心苦しいので何か条件を提示して頂けますか?」



 暫く考えたが何も思いつかない。

 俺にとって契約<婚約>=条件なので、ほぼ満たされている。

 正直イチャイチャすることしか考えれない。

 ハ〇ーン様がいたら「俗物が!」と罵られそうだ。


「ちょっと今は思いつかないんで、保留じゃダメですか?」

「保留……ですか」


 レイナはなぜか残念そうにしている。

 俺が条件を提示しないと契約出来てないことになるからだろうか?

 てか、残念そうなレイナの顔も可愛い。



「しょ、正直今はレイナと一緒にいれたら、それが一番だから、条件は思いついた時じゃダメ?」


「!? わ、分かりました……でもなるべく早くお願いしますね」

「わかった……」


 レイナは照れながら保留を了解してくれた。

 心なしか少し嬉しそうに感じた。




「で、とりあえずは契約(仮)も済んだわけだけど、俺はこれからどうすればいい?」


「そうですね。いくつか話しておきたいことや、して欲しいことがあるので、まずはそちらからですね」


 レイナはガオウの方に顔を向けるとガオウはコクりと頷いた。


「まずは神器やスキルについてからだな」



 正直ずっと気にはなっていた。

 神器なんて響きがカッコいいし、なにより自分を召喚したのもこの神器らしい。

 スキルなんてゲームでよく使われる単語も出てきて、楽しみが隠せず笑顔になりワクワクしてきた。



 しかしそんなワクワク感を台無しにするかの如く、外から慌てて走ってくる足音が聞こえてきた。



「姫様! ガオウ様! 失礼いたします、急ぎお伝えしたいことが!」


 扉を勢いよく開け、息をきらしながら1人の獣人の兵士が入ってきた。



「何事ですか?」


「はっ! 外に……」

 兵士が俺を視界にいれると、突如態度が変わった。


「ひっ!? に、人間っ!? 人間がなぜここに?」

 兵士は持っていた槍を構え、今にも突いてきそうな勢いで警戒体制に入った。


「よい、この者は姫様が神器を用い召喚した者だ」

 ガオウは兵士に武器を納めるよう促した。


「では、こいつ(・・・)が例の……」

 兵士が言いかけるとレイナは鋭く兵士を睨んだ。


「……無礼な」

 怒気をはらんだ声でレイナは兵士に向かって放った。

 それを聞いた兵士は勢いよく土下座し、何度も謝罪してきた。


「あ~そんな別に謝らなくても俺は大丈夫ですよ」


 正直ちょっと引いた。

 実際あんなに土下座されると、どうすればいいか困るし、兵士が可哀想になってきた。

 レイナ怖ぇ……



「意外でした……」

「えっ!?」


 レイナの突然の発言に俺はまたしても間抜けな返事をしてしまった。


「もっと私たち魔族に対して冷たく接してくると思ってました……彼の無礼な発言にも腹をたてることなく、許されるなんて」


 獣人の兵士も土下座したまま、ビクビクしながらこちらをチラ見している。



「あ~俺のいた世界には人間しかいないし、魔族の人をみて驚きはするけどそこまでかな。多分こっちの世界の人間よりかは魔族に対して偏見みたいなのはないと思うよ」

「あっ、ごめん……違うんだ。今の言い方はなんか上から発言だったかも……それになんか少しは偏見があるみたいな言い方だったし」


 俺は焦るように取り繕った。



 レイナはなぜか焦ってる俺を見てクスクスと笑い、兵士の彼は驚いたようにキョトンとこちらをみている。



「ですからそんなに謝らないで下さい、俺は別に怒ってないですから」

 俺は彼に近づきながら喋り、近くまでくると、耳元辺りに口を近づけた。


「正直さっきのレイナめちゃ怖かったですね。怒らせないようにしましょう」

 レイナに聞こえない様に囁いた。


 彼と視線を合わせると俺はニカッと笑い、彼も小さくプッと吹き出し少しだけ笑顔になった。

 暫く空気が和んだのを感じた。



「それで外がどうしたのだ?」


「は、はい、迷宮(ダンジョン)です。この近くに迷宮が出現いたしました!」


「「!?」」



 レイナとガオウは少しだけ驚いた顔をしていた。



「して、迷宮の種類は?」


「【塔】です。外観から判断するに、迷宮の種類は【塔】でフロア数は【1】と思われます」


「ふむ、【塔】か……ならフロア数にも間違いはないか」



 俺は訳も判らず、ただただガオウと兵士の会話を聞いていた。

 するとレイナがポンッと手を叩いてニコリと笑った。



「丁度いいですね竜斗様」

「へっ!?」


「百聞は一見にしかずです、今から私とガオウ将軍と竜斗様の3人で迷宮に行きましょう」


「なっ!? 姫様っ! それはいくらなんでも……竜斗はこちらの世界にきたばかり、迷宮攻略は早すぎるのでは?」



 ガオウはレイナの提案を拒否しようとしていた。



「あら、【フロア数1】の迷宮なら、魔物も【ランクE】の最低ランク。問題はないはず。竜斗様の実力を知るには申し分ありません。仮に竜斗様がランクEの魔物に勝てなくても、私たちが2人いればお釣りがきます」


「しかし、姫様は先程の神器使用の際、大量の魔力を消費されております。万が一があっては……」


「ええ。ですから私は竜斗様の勇姿を拝見することに集中いたします。ガオウ将軍には、私の護衛と竜斗様のフォローの両方をお願いします」



 レイナは屈託のない笑顔で答えるとガオウは絶句した。

 ガオウは項垂(うなだ)れてレイナの説得を諦めたようだ。



「では竜斗様……1時間後、準備が出来しだい3人で迷宮攻略に出発いたします。頑張って下さいね」



 正直、知らない事ばかりで頭の中は混乱しているが、これから初戦闘なのは分かった。

 出発は1時間後……チビる前にトイレには行ってこようと思う。




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