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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第十二章【神書】
298/318

尖兵と情事


そういえば……

いつの間にやらブクマが600を超えていました。

本当にありがとうございます。

てか……

更新してない方がブクマが伸びるってどうなんでしょう?笑




「改めて皆さんの報告してくれた事を纏めますね。

1、神書の探索

2、奴等について

3、天使、及び霊峰アルカ

4、迷宮攻略

5、帝都の守護

6、全国民の移動

それと……

7、統一

では、この7つについて改めて話し合いましょう」



 そう言ってからヒュースが淡々と会議を進行させる。

 皆は時折発言したり頷いたりもするが、基本的には黙ってヒュースの話を聞いていた。


 やべぇ……

 全然頭に入ってこない……

 6まででいいだろ……

 7はいらないだろ!

 いや、智姉の意志を継ぐなら1番大事なのか……

 でもな……



「……様」

「…斗様」

「竜斗様」


「ん?」


 気づくと、隣にいるレイナが何度も俺の名を呼んでいた。



「大丈夫ですか? なにやら顔色が優れませんが?」

「え、いや……なんでもない……」


 ことはない。




「それでは最後に……」


 ヒュースがそう言いながら、チラリとこちらを見た気がした。

 てか、もう最後かよ。

 本当に全く何も聞いてなかった。


「幾人かの人達には話しましたが、私ヒュースは、この度結んだ四国同盟を止め、四国による統一を進言致します」


 はい、きた!

 帝国のギルド本部にいた奴等は黙って聞いているが、やはり何人かは驚き、声を荒げている。

 しかし、ギルド本部の時と同じようにヒュースは慌てることなく淡々と説明する。

 2回目の説明ともなるとヒュースも慣れたもんだ。

 1回目の時の威圧感はなくとも、皆を冷静に納得させていく。


 そして……



「それで……統一したとして、誰を王にするのだ? 正直に言って我も皇帝もネムリスもレイナも相応しいとは思えん」


 ジオがナイスなタイミングでヒュースに尋ねる。

 それを聞いたヒュースは一瞬ニヤリとする。

 もうやだ……

 俺、ヒュース、嫌い。



「私は統一した、天魔国アルカの初代王に竜斗殿を推薦いたします!!」


 ヒュースは溜めに溜めた感情を爆発させる様に高らかに宣言した。

 このまま黙って聞いていたらさっきの二の舞だ。

 いや……さっきも拒否したんだけどな……

 しかし!

 そうは問屋が……!

 俺はこの嫌な流れを切る為に、勢いよく立ち上がり挙手する。



「意義あり!! 1番愚かで浅はかな選択だと思います!! 国が一晩で崩壊すると思います!!」


 ちょっと幼い口調で俺は強くキッパリと拒否する。

 国の……いや世界の行く末を決める大事な会議を、まるでどこぞの学校のどこぞの学級会レベルの雰囲気にする。

 これで皆の雰囲気も変わる筈だ。

 冷静になるんだ皆!

 自分達がヒュースの言葉や雰囲気に呑まれて流されてる事に気づいてくれ。

 皆は俺と違って賢い筈だ!




「す……」

「す?」


 隣に座るレイナの体がワナワナと震えてるのが分かる。

 俺は嫌な予感を感じ冷や汗を掻きながら、ゆっくりとレイナを見下ろす。



「す、素敵です! 私は賛成です!!」



 俺の心は折れた……



 終わった……

 もうね、なんか疲れた……

 なんかどうでもよくなってきた……



「俺は反対だ」

「我は反対だ」


「!?」


 折れた心が持ち直る。

 まだ希望は残ってた!



「……何故でしょうか皇帝、それにジオ王……」


 ヒュースは一瞬だけ面白くない顔をするが、直ぐに表情を元に戻した。



「こやつは優しすぎる、王の器ではない」

「同意だ。本人も言っていたが、直ぐに国が崩壊する」


「そこは私達がカバーすれば大丈夫な筈です」


「それでは王の意味がない、竜斗を傀儡する気か?」

「それに本気で竜斗が命令すれば誰も逆らえん筈だ。俺の時は力で帝国の貴族共を粛清させたが、竜斗はそんな事は出来ん筈だ。そうなれば民の鬱憤は少しずつ溜まっていくぞ」


 わーお、皇帝はその鬱憤を根本から絶っていったのか。

 そりゃ独裁政治になるわな。

 反対したら消されるんだから。



「そ、そうだそうだー」


 俺は弱々しくジオ王と皇帝の意見に乗っかる。



「本人に支配する気がなければ意味はない」

「だな。まぁそれを放棄した我が言えた事ではないがな」


 皇帝はキッパリと言い放った。

 ジオ王は少しだけ苦笑いする。



「…………それは、そうですね」


 そんな二人を見て、ヒュースはそれ以上言わなかった。



 か、勝った……?

 勝ったのか?

 俺はヒュースに勝ったのか?

 うん。

 これは、勝ったに違いない!


 うひゃっほーい!



「だが竜斗よ」


 うひゃ!?



「覚えておけ。俺も四国統一自体は賛成だ。アリスの意志でもあるしな。ただ現状では適任者がいないというだけだ」

「う……でも、俺はレイナや皇帝、ジオやネムリスでも良いと思ってるけど……」


「それでは統一の意味がない。我々が王になればそれは王国が、帝国が、神国が、魔国のどこかが支配してるのと変わらん」

「ヒュースは言った。天魔国だと。それは、新たに1つの国を創るのと同義だ」


「忘れるなよ竜斗。我々は変わった。いや、変わりつつある。なら、新たに統一される国は今までの四国とは違う国でなければ意味がない」

「我々が王になったのでは元の木阿弥だ、そこは忘れるなよ」


「う、うん……」


「そして、俺もジオ王も……それはお前なら可能だと思っている」

「今はやる気がないようだし、お前の意見を尊重しているが……恐らくお前が王で反対する奴はこの世界にいないと思え……そこだけは忘れるな」




 マジかよ……

 え、何?

 それってつまり……

 今はしなくていいけど、いつかは王になれよ……そう言ってるのか?


 俺はチラリとヒュースの方を見た。

 ヒュースはニヤリと笑っている。

 マジかよ……

 顔がこれからジワジワと追い詰めます、そう言ってる。

 ほんと、やだ……

 俺、ヒュース、嫌い。


 だったら……

 この問題を先延ばしにするくらいなら……



「だったら……だったら今ここにいる全員俺と戦え! 俺に勝てたら王でも何でもやってやる!」

「却下です」


 ヒュースに一蹴された。


「え……?」

「何馬鹿な事を仰られるのですか? 皆を護ると決意なされたのでしょう? なら貴方が皆を傷付けてどうされるのですか」


「え、でも……俺に勝てたら王になっても……」

「皆さんが弱いとは言いませんが……ですが、世界にいる全ての人々が結束しても、正直私は貴方に勝てる気がしません」


 そんな馬鹿な……


「それに……竜斗殿は本気で我々全員を相手に勝てると思ってるからそんな提案をしたのでしょう? 私は勝てない戦はしません。ですので、貴方の意見は却下です」


 がーん!

 そんな……

 今までこんな感じで乗り切れてこれたのに……



「ふっふっふ。私は蟲人族ではありませんが、蜘蛛の様に貴方を絡めていきますよ」



 ヒュースは不気味に笑う。

 もうやだ……

 俺、ヒュース、嫌い……




◇◇




 あれから会議が一段落?して、俺達はそれぞれ宛がわれてる部屋で休む事にした。

 てか、既に夜になっていた。

 今日は色々と疲れた……

 朝から色々とあったが、昼間にした会議が1番疲れた。

 精神的に……



 俺はベッドの端に腰かけたまま上の服を着る。


「それで、結局会議は何を話したんだっけ?」



 レイナは布団の中でモゾモゾとしながら、服を着直す。


「本当に何も聞いておられなかったのですね……」


 レイナは布団から頭だけ出して呆れていた。



「ごめんごめん、だってヒュースが……」


 俺は立ち上がるとテーブルへと近づいた。

 テーブルにはカップとポットが置かれており、俺は2つあるカップに紅茶を注いだ。



「……竜斗様が言い訳する姿はあまり好きではありません。あ、砂糖は2つでお願いします」


 レイナは布団の中でまだモゾモゾしている。

 別に見られても……と、なんか前もそれ言って怒られた気がするな。

 危ない、危ない。



「了解。ごめん、それで?」

「えっと……

先ずは帝都を増築します。これはアルカディア国からラスとカルの兄弟を先行させ、明日から早速取り掛からせます。

そして統一についてですが、四国同盟は止めずに取り敢えずは現状のままで、各国の生き残ってる民達を順々に全員帝都へと集めます。

それから帝都を守護する結界もミラちゃんとトーマス老の指揮の元大幅に強化します。今のままでは天使や【尖兵】の攻撃に全く耐えられませんから」



 俺は片方の紅茶をズズズと飲みながら、着替え終わったレイナにもう片方の砂糖入りの紅茶をレイナへ手渡した。



「ありがとうございます。ズズ……美味しい」


 体が温まったのかレイナの頬が僅かに赤らむ。



「えっと、どこまで話しましたっけ?」

「ズズ、【尖兵】の所まで」


 尖兵……ヒュースと俺が命名した未だ見ぬ敵。

 恐らく神書を狙っているであろう敵。

 神書を探すとなると間違いなく尖兵も動いてくる筈だ。



「そうでした。

神書探索には、私と竜斗様、ヒレンとゼータとアーシャ……それとルルに決まりました。

後の者達はそれぞれ迷宮攻略による修練と、帝都の守護です。

それと天使についてですが、ギルド【微笑みの聖母】・ギルド【大輪の華】・ギルド【拳武】の下部ギルドの面々が霊峰アルカを調べます」


「……霊峰アルカ探索組には絶対に無理するなって言っといて。こっちは戦う気がなくても、あっちは容赦ないだろうし。まぁまだいるかどうかは分かんないけど……」


「分かりました。必ず複数人で行動し、見つけたら即時撤退を……」

「いや、ほんの少しでも嫌な感じがしたら直ぐ逃げる様に言っといて。見つけた段階だと多分もう逃げるのは無理だろうから……」


 あっちには空間を支配する天使ウリエルがいる。

 こっちが見つけたのなら既にあっちからは見つかってるだろうな……

 嫌な感じがするって分かるだけで僥倖だ。



「後、迷宮攻略組にはなるべく霊峰アルカ近くにする様言っといて。まぁこっちも【森】を探すから近くではあるけど……」

「……アルカ大森林ですね。でしたらアルカディアから急いで皆を呼び寄せなくて大丈夫でしょうか?」


「まぁ今まで何もなかった訳だし、寧ろ慌てずゆっくり慎重にしようよ。急いだ方がなんか嫌な感じがするし。神書探索も急いでるけど、皆のアルカディアからの転移がちゃんと済んでからにしよう」



 そう俺達はアルキウスが遺した神書に綴られてた、別の神書を隠した森を【アルカ大森林】だと解釈した。

 増築、結界強化、転移、それがある程度済んでから神書探索へと乗り出す。

 まだほんの少しだけ仮初めの平和な時間はある。

 でも……

 何故だろう……

 神書探索は、何かが変わる気がする……

 それが正しいのか、間違いなのかは分からない……

 でも、しないと世界は変わらない気がする……



「仮初めの平和を維持するのか……世界の変革のどちらかか……」



 ズズズ、ああ紅茶うめぇ……

 中二っぽい事を言って紅茶を啜る……

 やべぇ……俺今めっちゃ痛いな……


 するとレイナは大きく目を見開いてこちらをジッと見つめていた。



「……何?」

「いえ、やはり王になっても大丈夫な気が……」


「絶対やだ」

「大丈夫だと思いますけど……」


「ジオ達も言ってたろ、俺は王の器じゃないって」

「それはそうですよ。だって竜斗様には王の器では小さすぎます」


 ぶーー!!


「は? 何言ってんの?」

「え? そういう意味だったのでは?」


 あかん……

 こりゃほんまにあかん……



「ごめんよレイナ、俺は本当に王になる気は全然ないんだ」

「……ですが、皆の事を思って行動される竜斗様には資格はあります。それに今だって……!」


 俺は首を横に振った。


「レイナ覚えてる?」

「何を、でしょうか?」


「神国との戦いの後、サクヤさん達と出会う前、アルカディア国を出て、小屋で一晩明かしただろ?」

「……はい」


「俺はさ……この戦いが終わったらさ……レイナと二人であんな風にのんびり暮らしたい……たまに皆とバトッたり、たまに迷宮攻略したり、そんな風に生きていきたい……それが今の俺にあるたった1つの願いかな」

「竜斗様……」


「いや、レイナにはアルカディアがあるから直ぐには無理だろうけどさ……でも、いつかはそうしたいなって」


 俺は頭をポリポリと掻きながら、少しでも気恥ずかしさを誤魔化す。

 そして、その後の言葉は言わない。

 今は絶対に言わない。



 そして、またレイナと唇を重ね……



 ようとしたら、天城のメイドさんが扉をノックして入ってきた。



「し、失礼します……」


 メイドさんは俯き気味に部屋に入ってくると、ササッとポットやカップを片付けて下げていった。



「ありがとー」

「あ、いえ……その……はい……」


 ?

 お礼を言っただけなのに、メイドさんは顔を赤らめていた。



「…………そのぉ」

「ん?」


 メイドさんは恐る恐るこちらを伺う。



「こ、声が廊下まで聞こえていたので……あの……さ、先程の続きをなされるのなら、も、もう少しだけ、小さい声の方が……よろしいかな、と……」


「「!?」」


 メイドさんは体をめっちゃモジモジさせていた。

 やべぇ……

 さっきの情事が全部筒抜けだったのか……


 レイナは恥ずかしさからか布団の中へ顔を埋めた。



「あ、ありがと……気を付けるね」

「は、はい……それでは……」


 メイドさんはバッと一礼すると足早に去っていった。




「………………聞こえてたみたいだね」

「言わないで下さい!!」


 布団に顔を埋めているからか、レイナの怒鳴り声はかなりこもっていた。




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