神書とアルキウス
二話連続投稿です
【神書 仲間編】
この書には
私の
10人の仲間について綴ろうと思う
私の綴る書もこれが最後になる筈だ
幾多の困難もあったが
魔物大全も少しずつだが人々へと広まっている
後は
後の世の人がSSランクの魔物に挑まない事を祈るばかりだ
◇
一人目は【バローナ・ユレイナ】
【合成】という不思議なスキルを持つ女性だ
様々な物を組み合わせる事の出来るスキルで
私はスキル【合成】を別名【神の腕】と呼ぶことにした
彼女がいてくれたお陰で迷宮攻略がどれ程楽だったか
◇
二人目は【ケイジ・ジークハルト】
スキル【神速】を持つ剣士
私の友人で
最高の剣技を繰り出す人物だ
剣比べで最後の一人まで立っていた
あの死合は記憶に新しい
◇
三人目は【セイラ・スレイヤル】
スキル【四光】を持つ女性で
四属性の神器を操る才を持っていた
南東の地に住まう人々の出だが
魔族を虐げる考えに賛同できない異端者だったそうだ
しかし私は彼女ほど魔族に優しい人を見たことがない
◇
四人目は【レッド・ベオウルフ】
【生命創造】のスキルで創造された怪物は
Aランクの魔物すら粉砕してみせた
彼は何故か隠れてよく泣いていたので
私は【生命創造】を別名【神の雫】と呼ぶことにした
彼は役目を終えると
ここより南西へと旅立った
今生で出会うことはもうないだろう
◇
五人目は【ロナ・サタン】
魔人族の男性で
元々はゼノブレイズ国に仕えていた戦士だ
友好の証の使者として私の元にきたが
正直友人と呼べたかは分からない
ゼノブレイズ家とはもっと友好的に付き合いたいが
天魔戦争の禍根は数百年経っても癒されていない
◇
六人目は【ガンマ・ハイメナス】
私と同じ【空間把握】のスキルを持っており
迷宮脱出に大きく貢献してくれた
レッドと共に旅立った事を寂しく思う
彼がいてくれたお陰で【魔物大全】の完成が早まったのは言うまでもない
◇
七人目は【ロキ・マモン】
遥か南の地より奴隷として流れ着いた竜人族の男性
槍の扱いに長けていたが
私には竜種の魔物と心を通わせる力の方が驚愕した
◇
八人目は【リリン・ベルフェゴール】
彼女もまた機人族の奴隷であった
無感情で人形の様に佇んでいたが
雷を纏って魔物を襲う姿は鬼種の如き強さだった
私は陰で【鬼王】と呼んでいた
◇
九人目は【
◆◆
「あれ、続きは!?」
何枚か頁を捲ったが、白紙だった。
「マジかよ……! てか……ビッグネームが多すぎてめっちゃビビったわ」
ザナードくんやファナちゃんのご先祖。
アーシャやネムの血族。
帝国の祖に、ゼータのご先祖、レイナやルキ、アトラスのご先祖らしき人達まで……
ここまできたら後二人が誰だかマジで気になる。
そしてスキルのレア度もかなり高めだ。
「ん?」
てか、喋ってるの俺だけ?
レイナと爺さんは?
「な、なんと……言葉がでんわい……」
「ロナ・サタン……」
爺さんは開いた口が塞がらない感じで、レイナは何故かうっすら涙を流していた。
「てか爺さん、知ってたんじゃないのか?」
「いや……儂らが分かったのは10人の仲間がいるということだけじゃ……まさか、ここまでの……」
ビッグネームとは思わなかった?
てか、本当に訳せなかったのかよ……
まぁ俺も神眼がなかったらこんなミミズみたいな文字、絶対読めないけどな!
寧ろアルキウスに10人の仲間がいた、ってのが分かっただけでも充分爺さんも凄いな。
こんなミミズみたいな文字よく読めたな……
ん……?
つまり……
最初の方の文章は訳せたけど、仲間達の情報は訳せなかったって訳か……
そこだけ暗号で書かれてるとか?
まぁ、今回も分からない事は取り敢えず置いておくとしよう。
考えてもどうせ分かんないし。
「でも結局八人の情報しかない。アルキウスはなんで書くのを途中で止めたんだろう……」
「ぬぬ!? そういや竜斗よ、最後の方にも文章があったと思うがそれは読んだのか?」
なぬ?
爺さん、それを早く言って欲しかったぜ。
俺は一気に頁を捲った。
◆◆
見つかった
奴らに見つかってしまった
もはや残された書はこれしかない
他の書は全て奴らに
私は全てを失った
愛する人も
大切な仲間も
護るべき国さえも奴らに
アルカ様の言っていた事は本当だった
もう時間がない
これを読むものよ
頼む
森に真実を綴った書を隠した
出来ることなら私の意思を次いで世界を救ってくれ
私はもう
駄目だろう
奴らは強すぎた
SSランクの魔物どころではなかった
ここまで逃げたがもはや駄目だろう
頼む
後は
任せた
アルキウ……
◆◆
「え……?」
意味が、分からない。
この1冊はこれで本当に終わりだ。
他には何も書かれていない。
沈黙が部屋を包む。
「…………」
「…………」
「…………」
暫くして漸くレイナと爺さんは口を開いた。
「こ、これは……」
「アルキウスに何かが起こった……そう言う事でしょうか?」
「な、何かとは?」
「例えば……天使に殺された? 魔族を仲間にしていたようですし……その可能性が高いのでは?」
「いや、それはないじゃろう……」
「何故です?」
「そこには天使等とは一言も書かれておらん」
「ですがアルキウスが神眼に覚醒していたかどうかは分かりません。神眼が覚醒していなければ人の身に転生した天使を見破れなくても不思議ではありません」
「いや……竜斗がこの文章を正しく読めているのなら、アルキウスは【奴ら】と呼んでおる。この書き方は正体に気づいてる、と儂は思う」
「……つまり、天使ではない何かが?」
「それも恐らく複数存在しておる」
「SSランクの魔物を超える複数の存在……そんなの……」
俺は立ち上がった。
「りゅ、竜斗……様……?」
「レイナ、爺さん、皆を集めよう。多分、俺達が思ってる以上にこの世界は今とんでもなくヤバい状況なんだ! いや! アルキウスのいた遥か昔からこの世界はヤバかったんだ!」
「わ、分かったわい……儂は天城に向かう」
「なら私は迷宮攻略組の所へ」
「修練にいったゼノ達の所は俺がいく。皆を集めたら天城に集合だ」
俺達は一斉に散った。
◆
俺は駆ける。
もう、天使とか悪魔とか言ってられない……
俺の外れてほしかった勘が当たった……
いる!
間違いなくいる!
天使以上の存在が!
ソイツらはずっとここにいた……
遥か昔からずっとこの世界に存在していたんだ……
何故かこの言葉が脳裏を過った……
ヒュースの言葉を借りるなら、アルキウスの綴った奴らとは、きっとこう呼ぶべきだ……
【神の尖兵】
と。




