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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第十一章【仮りそめの平和】
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クリスティーナと劣等感


クリス視点です。




「はぁぁ……マジかよ……俺が王とかアホ過ぎるだろ……」


 隣を歩く彼は深く溜め息を吐く。

 余程、先程の事が気になるのだろう。

 いや、本当に嫌なのだろう。



「そうですか? 大丈夫だと思いますけど……」


 我ながら適当な返事をしてしまった。

 案の定、鋭く睨まれた。

 神眼で……



「す、すみません……」

「いや、俺こそごめん……」


 何故か二人共謝ってしまった。



「…………」

「…………」


 無言。

 う、気不味い……

 えっと、こんな時何を話したら……



「つか、クリスさんは良かったの?」

「え?」


「アーシャの護衛じゃなかったの?」

「あ、はい、大丈夫です。ライガさんが残っていますし、皆さんがいるので大丈夫かと。それに……」


「それに?」

「元々、私は要りませんしね。アーシャ様の護衛は基本的にはギルド【微笑みの聖母(ディアネイラ)】のナーガさん達の担当なので……」


 そう、私とライガさんは元々女王の護衛だった

 それがあの戦争以降は、レインバルトさんとアーシャ様へと代わった。

 そして、天真戦争の時に天使によって聖都は壊滅的被害を受け、ネムリス様が拐われてからは、アーシャ様の護衛をなんとなくしているのだ。



「ふーん……」

「…………」


 またしても無言。

 う、私って本当に話下手だ。

 こんなだから未だに彼氏の一人もいないのだろうか?



「あ、あの!」

「ん?」


「私って、やっぱつまらない女ですか!」


 思いきって彼に聞いてみた。



「は?」

「う、上手く話せないし、会話が途切れる女はつまらないと、わ、若い女の子達が……!」


 以前、風王隊に所属してる子達がそんな話をキャピキャピ話してるのを聞いた事がある。

 ここは婚約者のいる男性に実際どうなのか是非聞いてみよう。



「…………いやどうだろう。つーか、俺も女の子と話すの苦手だし」

「いや、それは嘘ですよね?」


「いやいやマジで! こっちの世界に来た時なんかララって子と二人きりになって上手く話せなかったし、少し話せただけで会話スキル上がった!とか喜んでたくらいだからね!」

「…………」


 彼は必死に弁明する。



「…………ぷっ」

「え、おかしかった?」


 しまった。

 思わず笑ってしまった。

 だって、最強といわれる彼が、女の子と上手く話せなかったと必死に説明する姿は、どこか面白いんだもの。



「す、すみません……」

「ん、まぁ別に良いけどね……」


 彼は少し不貞腐れている。

 なんだ、彼も普通の男の子なんだ。



「そう言えば……」

「ん?」


「ギルド【刀剣愛好家(ブレイド・ラヴァーズ)】に所属してるんでしたね?」

「そうだよ。あっ、もしかしてサクヤさんの事知ってる?」


 彼の顔が一気に明るくなった。

 う、可愛い……

 こうしてみると年相応の青年に見える。



「勿論ですよ。サクヤさんの御姉様……先代・風王サクハ様は私の師匠ですから」

「ああ、そういやレイナか誰かがそんな事言ってたかも」


「黒髪を伸ばした綺麗な御方でした。雰囲気なら少しサラさんに似てたかもしれません」

「サクヤさんは黒髪を短くしてたな」


 黒髪は私の憧れだ。

 風王の踊るように戦う剣舞は、黒髪とよく合う。

 だが私の髪は緑色……黒色には程遠い下品な色だ。



「でもクリスさんの髪も綺麗だよね」

「お世辞は止して下さい……」


「そうか? 宝石みたいで綺麗だと思うけどな」

「私には貴方みたいな黒髪の方が余程綺麗に見えますが」


「はは、お互い無い物ねだりだ。隣の芝生は……ってやつだ」

「?」


 最後のは意味がよく分からなかった。

 でもそうか……皆それぞれに思うところがあるのか。




「そう言えばさ、サクヤさんの旦那さんってどんな人だった?」

「イカルガ様ですか? えっと……先代の雷王だったのはご存じですか?」


「ああ、それは聞いた」

「今の雷王であるライガさんの師匠で、ライガさんに雷王の座を譲るのと同時期ぐらいにサクヤさんと共にギルドを立ち上げられた御方です」


「それも聞いたかな」

「う~ん、私が神国の【本軍】に入って……それからサクハ様に見初められて……順々に地位を上げていって……サクハ様が亡くなられて……風王に抜擢されて……それからイカルガ様が迷宮で亡くなられたのが直ぐ後だったので、殆んど面識が無いですね」


 あれ?

 なんか私の話になってしまった……?



「でも風王に付き従ってたなら、多少は見知った顔なんじゃないの?」

「まぁ……そうですね。でも、イカルガ様は割りとサバサバされた方だったのに対して、サクハ様は規律を重んじる方だったので、あまり反りがあってない感じでした。そんな訳で一緒にいてもあまり会話はなかったかと……」


「それで?」

「サクハ様が仲良くない方と、私が話すのはなんか背信っぽくて……それに、当時は七極聖に話し掛けるなんて恐れ多くて……」


「あまり話したことはないと?」

「お恥ずかしながら……」


「そっか」

「……何故イカルガ様の事を?」


 彼は少し気まずそうにしている。



「えっとね……実はサクヤさん達を探してくれるようアーシャに頼んだんだ」

「そうだったのですね」


「まぁサクヤさんは潜在ランクがSあるから、戦力の一人として依頼しようかと」

「!? そ、そうだったのですね」


 流石はサクハ様の妹君。

 サクハ様は「才能の無い子」と仰られていたが、先々代の風王コノハ様の血を受け継いでるだけはある。




「……正直言ったらそれもおまけなんだけどね」

「え?」


 彼は少し悲しそうな顔をしていた。


 その訳を聞くと、私もどうしていいか分からなくなった。

 なんでも、イカルガ様が最後に挑んだ迷宮のボスモンスターこそが、今私達と行動を共にしている魔物……羅刹と夜叉だと言うのだ。

 彼らは魔物だ。

 迷宮に住まう化け物。

 人と魔族とは相容れない存在。

 だけど……ルキウス殿の竜種・ハクラや、皇帝の馬種・黒曜皇馬、ゼータ殿のレインボースライムを見ていたら、そんな事はないのでは?

 と、思ってしまう。

 だから……彼らとも……



「言うべきか、少し迷ってる……」

「…………」


 私なら……言わない、と思う。

 知らなければ、それで済む話だ。

 だが彼は、世界からそんな禍根を全て無くそうとしている……

 私にはそう思えた。

 でも、まだ躊躇ってる……そんな感じだ。



「私なら、言いません……敢えて争いの火種になりそうな事は……」


 うん、私の正直な感想を彼に告げた。



「まぁそれが既に火種ではあるんだけどね……」


 ごもっとも。



「でも、了解……まだもうちょっと考えてみるよ」

「竜斗さん……」


 が背負うことではない、と言いそうになって止めた。


 本当に彼はよく悩む。

 あの円卓の間でもそうだったが、彼は人の死に凄く敏感だ。

 いや、恐怖していると言ってもいい。

 勿論、私にだって死への恐怖はあるが……私の騎士道を貫けるなら死んでも悔いはないとも思っている。

 いや、教え込まれてきた。

 それは、四傑も六花仙も七極聖の皆もそうだ。

 魔族だって……


 でも彼は違う……

 彼は、誰かが死ぬことに対して死ぬほど抵抗がある。

 だから人を斬っておいて、今頃になって後悔しているのか……

 甘い、と言いたいが世界で一番強い彼に対してそんな事は言えない。

 それに、それに関しては王が彼を許してる。

 なら、私が彼に言える事は何もないな。



「あまり、悩みすぎないように……」

「ん」


 これくらいか。


 でも、隣を歩く横顔はさっきほど悲壮感はない。

 少し喋ってスッキリしたのかな?

 それならいいが……

 空元気だったら、人の機微に疎い私には察知出来ない。

 折角、整った顔立ちなのだから彼には笑っていて欲しい。


 !?


 い、いけない……

 彼にはレイナ殿が……

 気をしっかり持たなければ!

 私は風王クリスティーナだぞ!

 そんな不潔な事は絶対に出来ん!



 うう……

 欲求不満なのかな?





「おーい」

「…………え?」


 気づくと彼は私の遥か後方で立ち止まっていた。



「ゼータの屋敷、着いてるよ」

「…………!?」


 考え事をしてボンヤリしていた。

 は、恥ずかしすぎる……

 それにしても……


 私はその建物を見上げた。



「でか……」


 相当なお屋敷だった。

 周りを見ても塀しか見えない。

 さっきまでは色々な建物が有ったのに、いつの間にか周りには塀とゼータ殿のご実家の屋根しか視界になかった。


 ゼータ・バイセク・ハイメナス。


 あのハイメナス家の本家筋。

 神国で言うなら……プリンガさんのヒュバイン家みたいなものだろう。

 ヒュバイン家は、聖都を四方から守るという意味で対等な四つの一族に分かれているが……

 ハイメナス家は、一族の中で上下関係がハッキリしている家だと聞いている。

 おまけに家の規模で言ったらヒュバイン家を軽く凌駕するだろう……


 一般庶民出の私には、考えただけで目眩がしそうな話だ。



「マジ、何度見ても慣れねぇ……一般人の俺には漫画としか思えない家だよ……」

「!?」


 え?

 今なんて……?



「りゅ、竜斗さんも庶民なんですか……?」

「そだよ。まぁ親が共働きで一軒家だったし、小遣いも割と貰えてたから、少しだけお坊っちゃまかもしんないけど、ただの一般人だよ」


 彼はニシシと言わんばかりに歯を見せて笑った。


 そんな……

 あれだけ強い彼が私と同じ一般人……



「ですが、天原は家名なのでは?」

「ああ……俺のいた世界の俺のいた国では基本的にみんな名字はあるよ。だから名字があるからって皆がえらいって訳じゃないよ」


 そ、そうだったのか……


 何故か私は嬉しくなった。

 何故か強い人には皆、家名がある。

 唯一無いのは私くらいだ。

 だから私は自己証明の為にも、風王の剣舞を死に物狂いで体得した。

 クリスティーナと言えば剣舞、剣舞と言えばクリスティーナ、と言われる様に……


 だが目の前に立つ世界最強の男は、私と同じ一般人。

 私は自分だけが彼と同じ、という優越感を感じてしまった。



「貴方は……一般人だと言うことに劣等感は……」

「はぁ? 馬鹿言うなよ、貴族や金持ちなんて俺の近くにはいなかったし、仮にいてもそんな事比べる事じゃないだろ? まぁ多少は羨ましくも感じるだろうけど、悔しいんだったらそいつより金持ちになればいいだけだろ」


 彼は少し説教気味に喋った。

 でも私にはその言葉に救われた気がした。

 なんか、生れた時からあったナニカが消えていく感覚。

 

 そして、そのナニカが何なのかは直ぐに理解できた。




「ルキに用事があったんだろ、行こう(おじゃましよう)ぜ」


「あ、待ってください……!」



 ゼータ殿のお屋敷の敷地に入る私の足取りは軽かった。






プリンガ「緊急クエスト発生!」

ヒレン「のあっ!? 急にどうした!? てかお前の大声とか珍しいな!?」


「今から【一文字ゲーム】をします」

「は? 一文字? それって糞爺(ガイノス)の【四字連撃】みたいな……?」


「全然違う……ヒレン馬鹿……頭悪い……プリンガ一言もそんな事言ってない……」

「うぉい! 貶しすぎだろ!!」


「ゲームは簡単……人を一文字で表してみるってゲーム……お互いに交互に言い合って、相手を納得させれなかった方がパフェを奢るゲーム……です……」

「結局パフェを奢るゲームかよ!?」


「例は……竜斗なら【刀】……みたいな?」

「何故不安そうに例をあげる……既にこのゲームに不安しかねぇ……」


「それじゃあヒレンからどうぞ」

「俺からかよ!?」





竜斗【刀】


レイナ【魔】

ガオウ【獅】

ゼノ【堕】

ルキ【竜】

サラ【烏】

バアル【蝿】

アトラス【機】

ララ・ルル【兎】

ラス・カル【建】

ソラちゃん【空】

マナさん【想】

ボブおじさん【筋】

ジュンちゃん【両】

ローゲ【蛙】

ルークくん【星】

(何故かは有名な映画の主人公と同じ名前だから……スミマセン)

ヒュース【氷】

シューティングスター【流】

アザゼル【閃】

ガーベラ【燃】

イヨ【清】

ナスカ【闇】

リリス【蝶】

五人衆【伍】


ディアネイラ【聖】

アーシャ【光】

ネムリス【儚】

ヒレン【熱】

ライガ【暗】

プリンガ【黙】

クリス【舞】

レインバルト【追】

ガイノス【字】

ハクア【怒】

ダコバス【隷】


ジオ【狂】

エンマ【剣】

ミロク【拳】

クウマ【死】

ミラ【護】

トーマス老【守】

シロちゃん【合】

ラガン【豪】

ザイル【鉄】

ガイス【美】

フィリス【弓】

ガルデア【堅】

エルガー【速】

メイちゃん【粘】

モブリン【茶】

アイナ【嬢】

カルラくん【希】

ザナードくん【望】

ルナちゃん【支】

ファナちゃん【援】


サクヤ【闘】

キョウ【頑】

ユイ【虹】


アーサー【皇】

セツナ【秘】

ゼータ【移】

ゼロマル【忍】

リリーメル【青】

オロス【酒】

イルミナ【副】

ターニャ【恋】


オークス【頭】

ジェガン【敵】


ショーマ【祖】

ホウカ【華】

トウマ【英】

リーシャ【愛】

アリス【凶】

アルキウス【眼】


ミカエル【天】

ガブリエル【理】

ウリエル【冷】

ラファエル【癒】

メタトロン【智】

サンダルフォン【裏】

ラジエル【酷】


アルカ【神】


※思い付くまま適当に書いてみただけです。

深い意味は有ったり無かったりなので、気になさらずに。





ヒレン「はぁ、はぁ、はぁ、くそっ……もう、出ねぇ……」

プリンガ「やった……プリンガの、勝ち……」


竜斗「バカだろ」


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