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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第十一章【仮りそめの平和】
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リリーメルと青



「敗者に用はない、即刻出ていけ」



 親愛なる皇帝陛下からの冷たい眼差し。

 もしそれが私に向けられていたらと思うと……



「お、お待ち下さい陛下!」

「こ、皇帝陛下!」


 懇願する【竜胆】のオロス。

 そして少し涙目の【百合】のイルミナ。

 私とはほぼ同期の六花仙。

 士官学校時代は、切磋琢磨し合いながらお互いを高めあった。

 だが……



「下がりなさい。皇帝陛下はこれから大切な実験を行われます。敗者は敗戦処理でもしていなさい!」


 我々、六花仙の長……【桜花】セツナさん。

 私の目標であり憧れの御方。

 そんな彼女からの辛辣なお言葉……私なら耐えられない。



 どうやら二人は先日、突然何者かによって城を真っ二つにされ、部下も負傷し、戦線を維持出来なくなったそうだ。

 世界最強のSランクが不甲斐ない。

 一番下の雑兵からやり直すべきだ。

 こいつらが同期とか情けなくなってくる。

 まぁ……

 私も人の事は言えない、か……



 二人の戦線はスレイヤ神国側、対する私はホウライ王国側だ。

 そう、私は王国の【拳聖】と神国の【水王】を相手にしてる。

 相手にしているが……正確には相手にもされない。

 水王とはほぼ互角だが、肝心の王国にいる拳聖ミロクに全く歯が立たない。

 何故、同じSランクなのにこうも違う……


 情けない事に、その事を陛下やセツナさんに報告出来ないでいる。

 本当に情けない騎士だ……



 陛下が退出し、二人は【牡丹】のゼロマルに連行され、王の間には私とセツナさんだけが残る。



「リリーメル」

「はい、何でしょうか?」


「あの二人の除隊は確定しました。もし陛下が二人を殺せと仰られたら、貴女があの二人を秘密裏に殺しなさい」

「!? セ、セツナさん……それは……」


 驚いた。

 セツナさんはあの二人を見限ったのだ。

 完全にだ。

 一からやり直すとか、そんなレベルではない。

 六花仙剥奪に、軍からも除名。

 私は耳を疑った。


 だって……


 Sランクよ。

 この世界最強のSランク。

 それを陛下は簡単に切り捨てた。

 そして私は理解した。

 陛下にとって、我々は道具なのだと……



 まぁ後で知ることになるが、この時から陛下は六花仙を解散させる気でいたらしい。

 最も忠誠心があった六花仙だけは神器【破星】の巻き添いにしたくないという想いだったのだ。

 だが、当然この時の私に陛下の御心を知る術はなかった。



 そんな二人が敗戦処理を命じられると、今度はゼータ殿が何者かに敗れたと報告が入った。

 神器による長距離転移で部下を逃がし、本人も帝都に転移した時は驚愕した。

 あの【薔薇】をここまで無惨な姿に出来る奴がいるなんて、と。

 それほどゼータ殿の傷は深かった。

 そして、ゼータ殿も国外追放となった……



 六花仙が同時に半分になってしまった。

 皇帝陛下の実験が成功し、作戦が実行されれば確かに六花仙はおろか一般兵も必要ないかも知れない。

 それでも……

 それでもだ!

 六花仙は代々帝国の皇帝を彩る六枚の花だった。

 それなのに……っ!


 この頃から私には、やり場のない怒りが体を駆け巡っていた。

 誰が悪いのかと……


 自ら花を散らした皇帝陛下?

 仲間を見限ったセツナさん?

 敗戦した三人?

 弱い帝国?


 いや違う!


 アイツだ!

 アイツのせいだ!

 どこの誰とも知らない奴のせいで、帝国は変わってしまった。


 世界に君臨する皇帝陛下。

 大地からそれを支える桜花。

 凛と咲く薔薇。

 竜胆、牡丹、百合、そして桔梗。

 だったのに……

 アイツのせいでアーク帝国は変わってしまった。


 私は気づいた。

 帝国はあのままであるべきだったのだ。

 全てを蹂躙し、他者の血を養分に綺麗に咲き誇る国であるべきだったのだ、と。



 そして……


 私は出会った。

 黒服に身を包み、刀の神器を握る少年に。

 一瞬で気づいた。

 彼が報告されていたアイツだと。



 アイツさえいなくなれば……!!



 だから私は挑んだ。

 例え勝てないと分かっていようと、一矢報いてやるまでは諦めきれない!




◇◇◇



 天真戦争が終わり、長年争いあっていた2国とも同盟を結び、私達は穏やかな日を過ごした。


 その日も、魔族……いや、八咫族のサラ殿、ミランダ殿、プリンガ殿を連れ、帝都の中を案内していた。

 プリンガ殿が興奮して止まないパフェを食べ終わると、再び帝都内を散歩。

 公園に辿り着くと、尊敬する一人、ゼータ殿と出会した。

 そして……

 アイツとも偶然出会した。


 最強の剣士、天原竜斗に……っ!


 私は勝負を持ち掛けた。

 我ながら、逆恨みにも程があることは充分承知している。

 それでも……

 それでも私は、彼と戦わなければならない!


 六花仙・桔梗の名に懸けて!!





 結果は惨敗だった。

 もうね、手も足もでなかった。

 軽くあしらわれた。

 しかも木刀で。

 もっと怒りや悔しさが込み上げてくるかと思ったが、何故か思ったよりはスッキリとしていた。



 私は仰向けで空を見つめる。



「青いな……」



 帝国の空はいつだって青い。

 そして私も……

 まだまだだ。


 そうだ。

 帝国は元々、実力至上主義。

 弱い奴が悪い。

 ゼータ殿も、皇帝陛下も、私も彼に敗けた。

 だから強い彼は正しいのだ。


 でも……

 私を見下ろす彼の目はどこまでも澄んでいた。

 彼は強いだけではない……


 彼の目に曇や迷いはない。

 かつて、幼い頃見たセツナさんと同じ目だ。

 私は……弱い。

 弱いけど、正しくないかもだけど、私にだって何か出来る筈だ。

 弱いけど……

 弱いけど……

 何か……



 すると天原竜斗が私に手を差し伸べてきた。



「立てるか?」



 私は躊躇わずその手を握った。

 私は軽く持ち上げられ、立たされた。

 一見細身に見える彼は、かなりの力持ちだった。

 だが彼は一瞬私を見つめた後、自分の掌をじっと見つめると、少し驚いていたようだ。


 も、もしかして重かった……?

 いや!

 そんな筈はない!

 私は帝都の成人女性の平均体重を下回ってる。

 絶対に重くはない筈だ!



「竜斗ちゃんどうかした?」

「いや……」


 ゼータ殿も気になったのか声を掛ける。

 だが天原竜斗の反応は少し薄い。



「力が……増してる……?」

「「?」」


 天原竜斗が何か呟くと、周りの皆は聞こえなかったのか首を傾げていた。

 だが、私には聞こえた。

 力が増した、と。

 確か……報告では身体強化のスキルは無いとの事。

 なら単純に筋力がついたのでは?

 でも……確かに変だ。

 いくら細身で筋肉が有ろうとも、私が軽いとしてもだ……あそこまで軽々と立たせられるのはスキル以外あり得ない。


 ?


 ま、まぁ私にはよく解らないから、私も聞こえなかった事にしとこう。




 それにしても……

 あーあ、負けちゃったか……

 本当に強かった……

 若干、未だに半信半疑だったけど、あそこまで完膚なきまでに負けたら諦めもつくってもんだ。

 それに……


 戦ってみてよく分かった。

 彼は凄い。

 あの皇帝陛下が、ゼータ殿が、ゼロマルが、彼に惹かれてる理由がなんとなく分かった。

 弱さを認めて、強くあろうとする姿勢……


 ほんと……

 敵わないな……


 私はいつの間にか微笑んでいた。



「どうした?」

「いや……何でもない。それより、すまなかったな天原竜斗……突然、勝負しろだなんて」


「ん、まぁいいよ。なんか想うとこが有ったんだろ?」

「……まぁ、そんなとこだ」


 ふっ、バレバレか。

 本当に敵わないな。



「ゼータ殿」

「ん? どうかしたリリーメルちゃん?」


「私は皇帝陛下に報告したい事がありますので、これで失礼させて頂きます」

「…………そ」


 ゼータ殿は小さく頬笑むだけだった。

 きっと、私の想いはゼータ殿にもバレバレなんだろうな。



「あ、天城に行くなら私も行きます」

「そうですね、私も少し歩き疲れました」

「あ、私も少し陛下に用があるんだった」


 ミランダ殿も、サラ殿も、ゼータ殿も一緒についてくるみたいだ。

 少し考え事をしたかったけど……仕方ないか。


 取り敢えず……

 陛下には、私の今までの負けっぷりを報告しないとな。

 今の私はそこからだ。



 そこから、また歩き出そう。







やっと上位です!

にしても、やっぱ〇ィアブロは強かった。

砂壁から一撃で殺されました笑

救援を求めたら、めっちゃ強い人達が助けに来てくれました。

自分のクエストなのに、完全に寄生でした……

寄生バンザイ!とか言っておきながら、申し訳ない次第です……


追伸、自分のギルドカードのセンスに脱帽!笑


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