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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第十章【帝国】
281/318

罪と許


かなりの会話回です。

頑張って読んでやって下さい。




 俺が聖神アルカを倒すと宣言すると皆は当然困惑してた。


 まぁ正確にはアルカを倒そうって訳ではない。

 それはレイナの願う、()と仲良くって事にはならない。

 俺は皆に、俺の想いを伝える事にした。

 基本的に皆は黙って俺の話を聞いてくれた。





「天使は倒す、でもそれは殺す訳じゃない。多分、天使(むこう)はこっちと仲良くするつもりはないだろうけど……てか出来ないと思ってる」


レイナ「どういう事です?」


「俺が思うに【神託】は、ガブリエルのスキル【天啓】の上位スキル的なものだと思ってる。つまり神託自体を止めさせないと天使達は魔族を根絶やしにするまで止めない」


アーシャ「だから殺すのではなく、倒すのですね?」


「ああ。まぁ説得して納得してもらえたらそれが1番だけど、そんな簡単じゃないと思ってる。取り敢えずは戦闘不能状態に出来ればいいかなと」


サラ「神を倒す間は、という事ですか……」




「んで、アトラスと皇帝にまだ言ってなかったんだけど……」


皇帝・アトラス「「なんだ?」」


「サンダルフォンが言うには智姉はまだ生きてるそうだ」


皇帝・アトラス「「なっ!?」」


皇帝「あ、有り得ん! アリスは確かに我々が看取った! 遺体は火葬したし、事切れる瞬間を確かに……」


「我々?」


皇帝「そうだ。我とセツナが確かに…………!?」


「セツナ、じゃなくて……この場合はサンダルフォンか……サンダルフォンにはスキル【天檻】がある。詳細までは分かんないけど、多分【魂か何か】を閉じ込めておくスキルだと俺は思ってる」


アトラス「つまり……アリスの亡くなる直前、サンダルフォンはアリスの魂をそのスキルで……という訳か?」


「多分ね。サンダルフォンの言うまだ生きてるってのはそういう意味だと思う」


皇帝「なら肉体さえあればアリスは……」


「まぁその辺りをメタトロンか誰かに聞こうと思ってたけど、あの時は怒りで我を忘れちゃってたから……面目ない」




エンマ「それで……もし仮に天使を説得或いは戦闘不能に出来たとして……その後は?」


「アルカに会いに行く」


クリス「それは……」


「んと、正確にはアルカを倒す訳じゃない」


ミラ「どういう事です?」


「俺は……①アルカが誰かに操られてる、②二重人格、③天使がアルカとは別の神の神託と間違ってる……この3つの可能性が濃厚だと思ってる」


ライガ「それは……我々では判断しかねるな」


「だろうね。アルカが唯一神って呼ばれるくらいだから他の神様の可能性は2つに比べて少し低いかな」


 でも異世界があるくらいだから、可能性はなくもない。

 神様くらいになると簡単に異世界を渡れそうだし。


ルキ「二重人格というのは?」


「えっと……俺のいた世界の神様の中には、〇〇と〇〇を司る神、って感じで2つの事象や概念だとかを司ってたりする訳。1番有名なのだと天空と雷を司る神様かな(多分)。つまり……」


ガイノス「つまり、アルカ様にも2つの事柄を司っている可能性が?」


「そう。だから人間にとって良い面もあれば悪い面もあるんじゃないかな。まぁこれも、濃厚って言ったけど1つ目に比べては低いかな」



 これも、あくまで捨てきれない可能性。

 でも1番はやっぱ……




バアル「何者かに操られてる、か……」


「うん、何となくなんだけどね……2つみたいに理由はない。ただ何となく……」


 本当に理由はない。

 夢でのアルカの発言も最後は殆ど聞き取れなかった。

 でも……

 何故か俺はこれが1番濃厚だと思ってる。


ゼノ「……つまり、天使もアルカ様もその【何か】から助けると?」


「まぁそうなるかな」



 沈黙。

 皆は黙って何かを考えてる様だ。

 でも、さっきまでの殺気だった感じは少し和らいだように見える。

 困惑してるって感じが正しい。


 そして俺は、ポツリポツリと呟く様にまた喋りだした。




「……俺は人を斬った。サラ達と出会った時。ルキと出会う前。それと、アルカディア国が襲われた時と……俺は人を殺した。魔族を助ける為に俺は人を殺した。そして、人間達も魔族を痛めつけて殺してきた。魔族達も抵抗するために人間と争ってきた。大昔、天使と悪魔も争いあった」


「勿論、そんなのは言い訳だし、人を殺すのも殺される理由にもならない。でも……間違ってる。誰かを傷つけて、それで幸せな世界なんて絶対に間違ってるんだ」


「俺はずっと考えてた……どうしたら人を殺した罪を償えるかを。殺した相手も誰かを殺したとか、誰かを護る為だとか、言い訳も沢山考えた……」


「でも、以前ジオは言った……人は身勝手で傲慢だと……確かにそう思う。人を殺した俺がどんな理由や言い訳を言った所で、そんなのは自分を正当化しようとしてるだけの身勝手な考えなんだ」


「だから、背負い続けないといけない……人を殺した罪を、人を殺した業を……一生背負わないといけない罪で、きっと償い続けても一生無かった事に出来ない事なんだ……」


「だから……ジオに言わせたら、これも結局は俺の身勝手で傲慢な考えだけど……俺はもう誰も殺さない……人も、魔族も、天使も、神さえも、全部護ると決めた。ありふれた、今更当たり前の、これが俺の出した答えだ」


 だから、アルカを操る奴がいるのだとしたら、俺はそいつも殺さない。

 説得が通じなかったら戦うことにはなる。

 でも、絶対にもう誰も殺さない。

 


「アーサーじゃないけど、今度は俺が皆に問う。俺は皆を助けて皆を護る、誰も殺さない。俺はそう決めた。それでも、誰かを殺したいのならそうすればいい。俺は全力でそれを阻止する。だから皆は俺が護る、皆は……俺に力を貸してくれ!」


 俺はテーブルに両手を着け、頭を下げた。

 再び部屋は沈黙している。

 俺の出した精一杯の答えを受け入れてくれ、と切に願った。

 そして……




「やれやれ……そんな事を言われて、そう出来る奴がおるか」

 ガオウは呆れた様に笑っていた。


「いいんじゃねぇの、俺はお前のそういう所好きだぜ」

 ゼノは両手を頭の後ろで組んで、いつも通りの態度。


「ですね。それにソラちゃんやルークくん達の様なこれからの子達には誰も傷つけないで済む世界を生きて欲しいです」

 サラは微笑みながら自分のお腹を擦る。


「私は騎士だ。誰かを護るお前の決意に横槍をいれるつもりはない」

 ルキは微妙に上手いことを言ってる。


「ほんと全く……全員護るなんて傲慢だよ」

 バアルも呆れていたが、納得してる様だった。


「それが、アリスの選んだ道と重なるのなら……俺はもう何も言わん、お前と共に歩むだけだ」

 アトラスの目にも、もう迷いはないみたいだ。



「がーはっはっはっ、我々がお前達に勝てんかった理由が分かった気がするわい」

 ガイノスの爺さんは顎髭を擦りながら大きく笑っていた。


「へっ、いいじゃねぇか! 全員護る、その言葉気に入ったぜ!」

 ヒレンの目の輝きは誰よりも熱く燃えていた。

 てか暑苦しいし、うるさい。


「悪くない」

 ライガって人は小さく呟いた。

 今更だけど根暗って言葉が似合いそうな人だ。


「私は……ネムリス様をお救いできるのなら」

 クリスティーナって綺麗な人はネムを助けられるのならって感じ。

 そういえば……ギルドの皆はどうしてるかな?

 サクヤさんとユイにまた会いたい。


「ハクアも、ね」

 プリンガって子は、表情を変えずに人形みたいな喋り方をする子だった。


「流石、私に勝ったお方だ」

 レインバルトは……まあこんな感じ。



「私もセツナ殿を……いや、帝国民のためなら命を捧げられる!」

 リリーメルは、ヒレンとルキを足したみたいな暑苦しく真面目そうなキャラ。


「某は、陛下に従うのみ。某の感情は不要……」

 ゼロマルは本当に徹底してる。キャラ作りが大変そうだ。


「さっすがは私の見込んだ竜斗ちゃん、改めて惚れそうになるわ」

 ゼータは……いいや。



「フォフォフォ、いいじゃろう。そもそも儂の陛下に与えられた称号は【守護神】じゃ。皆、護ってやるわい」

 トーマスの爺さんは小気味よく笑う。


「そうだな、カルラもクウマ殿も助けよう」

 ミロクさんも普段通りの笑顔に戻った。


「はい、皆さんを救う……素晴らしいです」

 ミラは目を輝かせてる。


「魔族を捕らえてきた汚れた手だが、これからは誰かを護れるのなら……俺にも協力させてくれ」

 エンマさんは自分の手を見つめると、力強く握り拳を作った。



 一呼吸空くと、今度は四人が答えてくれた。

 皆はそれを黙って聞いた。



「貴方は本当に凄い……私は……己の不甲斐なさを嘆くしか出来ない……ディアネイラ御姉様を、そして今度はネムリスまで天使の手によって…………私は沢山の魔族を傷つけました、恐らくこの中の誰よりも……そんな私が皆さんに救いの手を求めるなど烏滸がましいのですが……どうかお願いします! 罪は償います! だから、どうか、ネムを助ける為に皆さんの力を貸してください!」


 アーシャは立ち上がって、深く頭を下げた。

 その方向はガオウ達の方を向いていた。

 水に流して、有耶無耶にしてきた事を、アーシャは償うと誓った。

 それに釣られて七極聖全員が立ち上がって謝罪した。



ガオウ「良いのだ、アーシャ殿。ネムリス殿は短いとはいえ、我らのアルカディア国で共に過ごした仲間だ。助けるのは当然だ」

ルキ「それに……竜斗の言葉を借りるなら、皆傷ついて傷つけあった……」

サラ「そうですよ。きっとこの答えは傲慢なのでしょうが、これからは誰かを護る事が償いの道だと私は思います」

バアル「そうかもね」

アトラス「皆が皆を護ればいい」

ゼノ「それが俺達の償いの答え、か」



 皆……


 アーシャは泣いているが、俺も泣きたくなった。

 そうか……

 皆が皆を護れば、誰も傷つかない……

 凄くいい言葉だ。




「悪くない答えだ。だが、裁かねばならん人間はいる。例えば我とかな……」

「ジオ王……」


「理想的で誰もが目指すべき道ではある。だが無かった事には出来ん。お前達の出した答えは悪くはないが甘い。それは悪さをした子供を叱らない親と一緒だ」

「だから、これからは……!」


「無かった事にしろと? 殺した罪を水に流せと? 皆傷ついたからと許しあえと?」

「…………っ!」


「以前にも言ったであろう……この問いに対する正しい答えはない。罪には然るべき正当な罰を与えるべきだ」

「…………」


 やっぱり俺はこいつに勝てないのか……

 どんな答えを携えても、言い負かされる……

 でもそうなら……



「お前の気持ちはこうだ天原竜斗。お前は、誰かに許されたいのだ」

「!?」



 ああ……

 そうだ……

 結局そうなんだ……

 俺は、裁かれずに許されたいんだ……

 罪を償うとか言ってるのに、裁かれたくないんだ。

 どこかで、俺は悪くないとか思ってんだ。

 俺は……卑怯者だ!



「だが、悪くない答えだったぞ」

「!? ジオ王……」


「お前は悪くない。きっとお前の言う様に、この世界は根幹が間違っているのだ。お前の罪は世界の罪だ。世界の罪は王たる我が背負ってやる。だから……」

「だから?」


「全てに決着がついたその時は、お前が我を裁け! それが、お前がお前に対する裁きとなる」

「俺が……俺を……」


 ジオ王はニヤリと笑っていた。



 王様が俺を許してくれた。

 王様が俺の罪を背負うと言ってくれた。

 王様が……

 王様が……


 俺は涙した。


「ジオ王……ありがとう……」



「ふっ、我も甘くなったものだ」

「いや……このような幼さの残る青年が罪に囚われたままなのは同じ王として俺も心苦しいところだ、ジオ王」


「アーサー王……?」


「異世界ではどうか知らんがな智歌の弟よ、この世界では王がルールで法であり、王の言葉とは絶対なのだ。つまり……」

「?」


「アーサー・アーク・ベオウルフの」

「ジオ・H・クラフトの名の下に」



「「お前の罪を許そう、天原竜斗!」」



「!?」


 えっ?

 それって……

 でも……

 でも……

 俺は人を殺して……

 許されるべきじゃ……




「竜斗様……」

「レイナ?」


 レイナは俺の手を握ってきた。



「私は……後悔してます。私との契約が竜斗様の心をこれ程までに苦しめていたなんて思ってもいませんでした」

「そんな! 俺は……っ!!」


 違うと否定する前にレイナは首を横に振った。


「竜斗様は誰よりも強いです……魔族よりも、人間よりも、天使よりも……私達はその強さに(すが)り、泣きつき、助けを求めました……でも本当は違った……竜斗様も普通の男の子だったのに、私達が竜斗様を苦しめていました……」

「違う、違うよレイナ……俺が、俺の意志で人を殺したんだ……」


 レイナはまた首を横に振った。


「だから、もう苦しまなくても大丈夫です……この世界の罪は私達の罪です、竜斗様の罪ではありません……」

「そんな……っ!」


「でも……それでも……竜斗様の心が晴れないのなら…………私も背負います。前にも言いましたけど……私にも背負わさせて下さい、竜斗様の罪を……」

「レイナ……」


 俺は……

 俺は……

 俺は……っ!


 俺はギュッとレイナの手を握り返した。

 そして少し止まっていた涙がまた零れた。

 そんな俺をレイナは優しく抱き寄せてくれた。




 俺のしてきた事は正しくない。

 正しくあろうとしたけど間違えてきた。

 俺の正義感で俺は人を殺した。

 そんな間違った俺を、王達が許してくれた。

 俺は……もう間違えたくない。

 こんな弱い俺だけど、皆は許してくれた。

 だから応えたい。

 今、苦しんでる皆を助けたい。

 皆と共に歩みたい。

 今度こそ誰も悲しまないで済む道を皆と一緒に。


 だから目指すんだ、本当の強者に。

 誰よりも強くなるんだ、この世界で最強に。

 もう、間違えない為に!





今回のお話(会話)はある意味、総決算でした。

いつまでも答えの出ない、迷い続ける主人公は取り敢えずこれで終わりです。

納得出来ない方もおられるとは思いますが、納得して下さい。

理由?

作者が疲れたからです。


もう無理です。

マイナス思考気味の主人公……書いてて楽しくないです。

まぁ今回の吹っ切れるキッカケとなる話はどこかで書く予定ではあったので、それが少し早まっただけの事。


では何故最初に簡単に人を殺させたんだ?ってなるとは思います。

最初から人を殺さなければ、ずっと堂々とした主人公だったでしょう(作者の負担も楽だった)。

数多くの漫画やラノベでも、あっさりと人を殺す主人公や、仕方なく人を殺した主人公等がいます。

覚悟を決めてる主人公ならこんな話は書かなくて済むのですが……この作品の主人公は、きっと異世界が最初どこかゲーム感覚だった筈。

その結果、悩むこととなりました。


理由があれば人殺しは許されるのか?

誰かを護る為なら人殺しは許されるのか?

恐らく私達の世界の法では、正当防衛以外では許されない事ではないでしょうか?

主人公にとって唯一の救いは、ここが異世界で、私達のいる様な世界ではないと言う事。

周りの人達の生き死に対する感覚が少しだけ違う事ですかね(諦めにも似た弱肉強食の世界)?

※あと王様がそれを許してくれた事ですかね?


だから誰かを護る為に、正しくあろうとした結果、誰かを手にかけた主人公が、苦しみ悩み、最後?に救われた……こんなご都合主義な話があってもいいかな、と。

あれ?

何を言いたいのか分からなくなってきました。



【結論】

この話を書く為だけに、作者が主人公を人殺しにしたのですが……相当疲れました。


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