指輪と大将
俺はポケットから神珠を取り出し、それをララに見せた。
「これ、視てもらえる?」
「これは……竜斗様がどうしてこれを?」
「マナさんから譲り受けた」
「!?」
レイナ、ガオウ、ゼノが驚いた。
「そ、それは彼の形見の神珠なのか?」
ガオウの質問に俺は頷いた。
「ああ、みんなを守るのに使ってほしいって」
「そうか……あの人もやっと1つ悲しみを超えたんだな」
珍しくゼノが真面目な事を言った。
「頼めるかララ?」
俺はララに向き直った。
「分かりました」
ララは神珠を受け取り、その瞳で神珠を見つめた。
種類【盾】、属性【風】、能力【守護】、ランク【S】
「盾か……」
一応剣道家である俺にとっては、盾は使ったことのない未知の物だ。
そんな俺は、思わずガッカリしたような声で呟いてしまった。
でもマナさんの想いが詰まった大切な神珠だ
俺は目をつむり深呼吸した。
「スーーーーハーーーー」
先の迷宮での戦いなどで自分に必要な神器、欲しい神器を想像した。
上手くいくか?
俺はララからナイフを受け取り掌に一線、切り傷をつける。
そのまま神珠も受け取り創造する。
盾の神器【魔名宝空】、属性【風】、能力【守護】、ランク【S】
俺は指輪を握り締めた。
そして願った。
お前はマナさんの宝、【ソラ】ちゃんを守る盾だ!
「………………」
俺は自己満足だけど、神器が頷いたように感じた。
「出来ましたか?」
レイナが尋ねてきた。
「ああ」
俺は優しくレイナに頷いた。
◆
「では次は私達ですね」
「?」
レイナが意味不明な事を言っていたので、思わず何の事かわからなかった。
「もしかして竜斗様忘れてませんか、迷宮攻略の神珠を?」
「あっ!」
ホントに忘れてた。
正直マナさんから貰った神器が大事すぎて、迷宮の神珠が霞んでいた。
神珠は3つ。
1つは大きくて……残りの2つは同じ大きさで、1つ目より少しだけ小さかった。
するとレイナが一番大きな神珠を俺に渡してきた。
「えっ?」
「恐らくこれはSSランクの神珠です。ですからこれはウロボロスを倒した竜斗様の物です」
そういえば神珠は倒したボスモンスターのランクと同じものが出てくるんだった。
俺は少し考えて受け取りを拒否した。
「これはレイナが受け取ってくれ」
「えっ!? しかし……」
「いいんだ。俺は剣士で【絶刀・天魔】があるし、この【魔名宝空】も試さないといけないし」
「ですが……」
「それに、俺だけ強くなっても仕方ないだろ。これはレイナがSSランクになった時に使えるように持っててくれ」
「……いいんですか?」
「ああ、受け取ってくれ」
「分かりました」
レイナは大事そうに受け取った。
「……前も思ったけど、そんな大事そうに受け取られたら照れるね」
「?」
「いや短刀の神珠を渡した時も大事そうにしてたから……」
「それは竜斗様から貰ったものだからですよ」
「神器って指輪の形してるし、なんか婚約指輪あげたみたいで照れるなぁて……」
「!?」
レイナは顔を真っ赤にして俯いた。
その胸には大事そうに神珠を抱えていた……きもち神珠を握る手が強く握られたように感じた。
「はいはい、全くみんなの前でイチャイチャしてから」
ゼノが茶化してきた。
「全くまだ契約(仮)ですよ」×2
ララとルルの声がハモった。
「ふふっ、見てて微笑ましいですね」
サラまで笑っている。
「羨ましいっす兄貴」×2
ラスとカルまで。
「竜斗よ、それは男として……」
「それは関係ないだろ!!」
ガオウの言葉にはさすがに突っ込んだ。
俺とレイナの顔は耳まで真っ赤になった。
◆
シューティングスターは思った。
自分だけこの場のノリについていけなかったと……しかし仮に言えたとしても皆みたいには言えなかったであろうとも……そしてララを誰にも気づかれないようにチラッと見た。
(指輪か……)
シューティングスターの視線の動きは鮮やかであった。
その秘めた気持ちをゼノに気づかれることなく今まで何度も想い人を見つめてきた。
だが、【神眼】所有者の竜斗は鋭くシューティングスターの視線の先を捉えていた。
(やっぱりな……)
すると竜斗はシューティングスターを鋭く睨むルルに気づいた。
(……なんか俺に対する以上の嫌悪の視線だな。憐れダダくん。いやダダさん……)
そう、この中で竜斗は一番年下だったのだ。
ギリギリ、ルルと同い年。
しかし何故か竜斗はシューティングスターが自分より年下に感じた。
(なんか俺以上に純情そうだな……ルルには悪いけど男として、こっそり応援するかな)
◆
「ではララよ、これらの神珠の鑑定を頼む」
ガオウが神珠をララの前に出した。
「わかりました」
ララは頷いた。
種類【斧】、属性【地】、能力【重力】、ランク【S】
種類【剣】、属性【炎】、能力【伸縮】、ランク【S】
種類【籠手】、属性【次元】、能力【衝撃】、ランク【SS】
うわ~なんて都合のいい組み合わせなんだ……
正直ここまでくると運が良いってレベルではない。
「何を言っているのだ竜斗?」
ガオウが俺の独り言を聞いていた。
「えっ? 俺今喋ってた?」
「ああ、ダダ漏れだったぞ」
うわ、恥ずかしい!
心の声のつもりが無意識に喋ってたのか……
「さっきの独り言の回答だがな……当然なんだ。これこそ天使の試練を攻略した者のみが与えられる神の恩恵というやつだ」
「……そういえば前にゼノが迷宮は天使の転生したものだって言ってたな」
「ああ、その通りだ。お主がランクZEROの刀の神珠を手に入れたのも偶然ではないのだ。お主の欲しい神器、或いは必要な神器が高確率で手に入るのだ」
「ふ~ん」
「まぁあくまであの話は神話だからな。真実かは誰にも分かってない。人間の中には神話を研究してる奴らもいるみたいだ」
ゼノが補足してきた。
「まぁ極端な話をするなら……俺には【迦楼羅】は必要なかったが、あれはお前に使用してもらう為だったとかな」
「それは……流石に言い過ぎじゃないか?」
「まぁな、こじつけみたいなもんだ。でもそれぐらい、そいつにあった神珠が手に入るんだ」
ガオウとゼノの説明を聞いて少しだけ納得した。
でなければ、ここまで自分達に都合のいい神珠は手に入らないだろう。
そしてララが視てくれた順にガオウ、ゼノ、レイナが神珠を手に取った。
◆
【天原竜斗】
種族
【人間】
クラス
【ZERO MASTER】
ランク
【ZERO】
先天スキル
【剣才】
後天スキル
【王気<解放>】【魔曲】【五光】【神速】
【??】【??】
特殊スキル
【神眼】
神器
【絶刀・天魔】<刀/?/?/ZERO>
【森羅万象】<籠手/?/?/S>
【1783】<袋/?/?/S>
【魔名宝空】<盾/?/?/S>
【??】【??】【??】【??】
【レイナ・サタン・アルカディア】
種族
【魔人族】
ランク
【S】 潜在【SS】
先天スキル
【魔皇】【枯渇】【身体強化】【飛翔】
後天スキル
【崩拳】【ーー】
特殊スキル
【魔眼<王>】
神器
【大和】<籠手/?/?/A>
【巴】<薙刀/?/?/A>
【天竜】<短刀/?/?/E>
【(壊)変わる世界】<扉/?/?/SS>
【※<籠手>SS】
【??】
【ーー】
【ガオウ・レヴィアタン】
種族
【獅子族】
ランク
【S】 潜在【SS】
先天スキル
【属性<大地>】【剛力】【鋼体】【咆哮】
後天スキル
【重力操作】【ーー】
特殊スキル
【魔眼<地>】
神器
【※<斧>S】
【グランドハンマー】<鉄球/?/?/A>
【1980】<袋/?/?/D>
【黒鎧武】<鎧/?/?/A>
【フォールストーン】<腕輪/?/?/C>
【??】
【ーー】
【ルシファー・ゼノブレイズ】
種族
【堕天族】
ランク
【S】 潜在【SS】
先天スキル
【属性<光闇>】【業火】【剣才】【飛翔】
後天スキル
【??】【ーー】
特殊スキル
【魔眼<天>】
神器
【※<剣>S】
【光闇双剣】<双剣/?/?/A>
【幻影魔】<首輪/?/?/A>
【聖なる領域】<腕輪/?/?/A>
【バーストレイ】<籠手/?/?/C>
【ダークロンド】<籠手/?/?/C>
【ーー】
【サラ・アスモデウス】
種族
【八咫族】
ランク
【S】 潜在【SS】
先天スキル
【属性<風華>】【飛翔】【舞踊】【感知】
後天スキル
【ーー】【ーー】
特殊スキル
【占術眼】
神器
【百花繚乱】<鎌/?/?/A>
【鎌鼬】<腕輪/?/?/C>
【花樹園】<胸当/?/?/B>
【(借)アクエリアス】<籠手/?/?/B>
【(借)ゲート】<門/?/?/B>
【ーー】【ーー】
◆
皆、所持神器を変更したりしたみたいだ。
そして……
「スキルが変わってる……」
俺が呟くと、
「みたいだな」
ゼノは知ってたみたいだ。
【魔眼<天>】の力で既に視てたようだ。
「レイナの後天スキルに【崩拳】、ガオウの後天スキルに【重力操作】が追加されてる」
「なんと……」
ガオウは驚いていた。
「これ以上のスキルは取得出来ないと思っていたが……」
「多分、所持出来る神器の数と一緒で、スキルもランクに応じて取得出来るんだろうな」
「な、なるほど……だからSランクの人間は強かったのか」
「まぁ所持出来る神器も多いし、スキルもそれだけあれば強くなるってもんだ」
ゼノは軽く言う。
「まぁこっちも既に3人いるし、サラさんも潜在ランクがSSあるからな。この国はまだまだ強くなるよ」
「サラで構いませんよ、竜斗さん」
「えっ、でも……」
「あら? 竜斗さんは年上の方でもタメ口なのかと……私の事も呼び捨てで構いませんよ」
正直に言うと俺は若干、さん付けが苦手だった。
小さい頃から剣道をしていて礼儀作法や敬語には慣れているつもりだったが……こればかりはその人の人格なので仕方ない。
「じゃあサラでいい?」
俺は恐る恐る尋ねた、タメ口で。
「ええ大丈夫です」
サラからの了解は得た。
「………………」
レイナは黙っている。
ま、まさか怒ってるのか……?
まさか、これくらいで浮気とか言わないよな?
俺は若干不安になった。
「竜斗様……」
レイナが呟く。
「は、はい!」
俺はビクッとなった。
「ずっと考えていたのですが……」
「な、なんでしょうか?」
俺はいつの間にか敬語になってた。
「私達のリーダーになりませんか?」
「……は!?」
「!?」
俺もそうだが、レイナの発言に皆もビックリしている。
「ひ、姫様! それは王位を譲ると言うことですか!?」
ガオウは大分焦ってるようだった。
「いえ、そうではないのです。いずれ結婚すればそれも有りですが……そうではなくて今後の作戦上、皆を引っ張っていくのに必要なのがリーダーです」
「まぁ確かにそれはいるな」
「今後は人間との戦い……下手したら女王ルキウスや機械王ベルフェゴールとも意見の衝突で争うことになるかもしれません。そうなれば不本意ですが圧倒的な武力を誇示することも必要かと」
「う、む……」
「今回の作戦もそうですが、きっと竜斗様の考えてる事は私達の為になると思うのです。ですから竜斗様が思うように動くためには役職的にも私達より上に在るべきだと思うのです」
「でもそれだと人間が上に立つってことだろ? 俺はあんまいい案だと思わないけどな」
俺はレイナの案を否定した。
「ですから国主は私のままで、戦闘面などでは竜斗様がリーダーということで」
「余計に指揮系統が混乱しないか?」
「いえ、基本的に私は竜斗様の考えに賛同します」
俺は少し考えた。
「分かった。なら国主はレイナのままでリーダーは俺だな。矛盾するかもだけどレイナ達は俺の部下?みたいな事でいいのか?」
「ええ、それで構いません」
「みんなは?」
俺は皆に尋ねた。
「俺は別にいいぜ、竜斗が俺達の大将で問題ない」
ゼノは軽く了承してくれた。
「うむ、姫様の判断なら我も従おう。竜斗の力は絶大だからな」
ガオウも了承。
「私も竜斗さんの想いに従いましょう」
サラも快く納得してくれた。
「わ、私も竜斗様がリーダーで問題ないです!」
なんとルルもオッケーしてくれた。
意外だった。
「……ふふっ、ルルが人間に……いえ竜斗様になつくなんて思いませんでした」
ララは小さく笑った。
「お、お姉ちゃん!?」
ルルの顔が赤くなってる。
「分かりました、私も竜斗様を信じます」
ララも認めてくれた。
ついでにラスとカル、シューティングスターも認めてくれた。
今後、俺がこの国での指針を決めることになった。
「で、でも俺政治とか全然分かんないぞ……」
「それは私がこれからも行います、ですから竜斗様は自分の思うように行動してください」
なんて頼りになる嫁さん(仮)なんだ。
俺は頼もしく思った。
「ありがとう」
ちなみにですが、準レギュラーのシューティングスター・ダダは牙狼族の獣人という設定のつもりです。
狼の顔した獣人と思って下さい。