アーク帝国とホウライ王国⑦
オリンピック終わりましたね。
感動しました。
四年後も楽しみです……おっと、その前に二年後の東京オリンピックがありました。
その頃には流石にこの小説も完結してると思います。
それにしても……
この小説も随分長くなりました……
【王国側】
「よ、まだ生きてるか?」
俺は周りにいる王国兵の皆に、片手を小さくあげて尋ねた。
「竜斗!!」
真っ先に返事をくれたのはザイルのおっさんだった。
「おお、おっさんも生きてたか」
「お前、遅いぞ!」
なんだよ、助けたのに文句かよ。
おっさんはズカズカと兵士達を掻き分けて俺に近づいてきた。
そして俺の両肩に勢いよく手を乗せた。
「すまん、本当に助かった……」
勢いが良かったのは最初だけで、よく見たらおっさんは満身創痍だった。
無理もない……これは戦争だ。
「さてと……じゃあ、おっさん達は休んでて後は俺がやる」
「え、竜斗お前……」
俺はおっさんの手をゆっくりと離した。
そして未だに困惑してる兵士達の間を闊歩した。
皆はなんとなく雰囲気で道を開けてくれた。
目指す場所は唯一つ……皇帝。
俺は取り囲まれてる王国側の1番先頭に出ると歩みを止めた。
どうやら向こう側もまだ相当困惑してるみたいだ。
「俺は誰も殺したくない!! でもお前らは沢山の人達を傷つけたし、傷つけられた!! だからこんな不毛な争いはこれで終わらす!! 死にたい奴だけ俺にかかってこい!! 俺がお前らの相手だ!!」
俺は叫んだ。
ウロボロスを倒した事で、一部を除いて皆の手は止まっていた。
だから俺の声はよく通った……と、思う。
そして困惑していた両陣営の戦士の目にまた決意の火が灯る。
逆効果だったと反省する。
でも、手加減はなしだ!!
「極みの位……」
小さく呟き体の力を抜く。
「まだ戦は終わっておらん!! 全兵士よ、進めっ!!」
「「うおおおおおおっっっ!!!!」」
そんな中、兵士の上官ぽい奴が号令を出して俺に向けて剣を翳した。
直後、帝国兵は一斉に神器を掲げて駆け出して来た。
人間の中に魔族の姿もあった。
魔族の首や腕には、【捕縛系】の神器が装着されていた。
俺は僅かに瞼を閉じると、一気に神眼を解放した。
そして思い切り刀を振るった。
「終っ!!」
一閃。
あんなに高らかに宣言しておきながら、俺は襲いくる帝国兵の間をすり抜ける様に剣撃を放った。
皇帝に向けて。
俺の一撃で大地は裂けた。
その威力に帝国兵は吹き飛ばされる。
吹き飛ばされなかった者達も腰を抜かすか、カタカタと震えて一瞬でその勢いを止めた。
「さてと……これでよく見えるな」
俺の一閃は皇帝の真横まで斬り裂いていった。
俺と皇帝の間に立つ者は誰もおらず、皇帝とその近くにいたサンダルフォンがよく見えた。
あれ……?
◆◆
【帝国側】
「…………恐ろしいな、まさかこの世界にあのような者がいるとは……世界は真に広いな……」
皇帝は竜斗の一撃を見て苦笑した。
一歩も動けなかった。
気付いた時には兵士達は斬り飛ばされ、自分と少年の間には何も無くなっていた。
「陛下、ご無事で!?」
「慌てるな、俺は何ともない」
焦るセツナを皇帝は諌める。
「あれらは?」
「は、はい……直にこちらに転移します」
セツナの返答に皇帝は笑みを浮かべる。
「対ウロボロス用でもあったのだが……まさかあの少年に使うことになるとはな」
「恐れながら……まだ兵達の避難が……」
皇帝は冷たい眼差しでセツナを見下ろした。
「言ったはずだ……全て滅ぼすとな。この戦に勝者はいない!」
「…………御心のままに」
セツナは皇帝の放つ気に圧され、一礼しながら一歩後退した。
◆◆
【王国側】
「竜斗様」
「お、レイナ。やっと追い付いた?」
一撃を放つと、直ぐに後ろからレイナが近づいてきた。
更にその後ろをミラも付いてきていた……良かった、ミラも無事みたいだ。
「竜斗様、お久しぶりです」
「ミラも良かった、無事で」
軽く挨拶する。
「「竜斗!!」」
「ミロクさん、エンマさん」
同時だった。
更にその後ろからボロボロのエンマさんとミロクさんも足を引き摺るように近づいてきた。
取り敢えず、顔見知りは皆無事みたいだ。
「さて……」
俺は皇帝の方に向き直る。
直ぐに兵士達が隊列を組み直して、また皇帝の姿が隠される。
あの馬に乗ってたのが皇帝か……前に夢で見た人そっくりだ。
大分年は取ってるけど、多分間違いない。
アリス・ベルフェゴールを知る人物。
「状況は?」
「……見ての通り、囲まれている」
エンマさんが答えてくれる。
うん、それは空からも見たし分かってる。
俺が知りたいのはこれまでの経緯だ。
帝国側も今は攻めてこない……俺達を取り囲んだまま動こうとはしてこない。
なら今しか聞くチャンスがない。
「開戦と同時に奴らは魔物を特攻させてきた。暫くは上手く応戦していたのだが、奴らSランクの魔物を数体戦場の各所に転移させてきた。それに対処するため私とエンマがそれらを撃破したのだが、見た通り奴らその隙を狙って魔族と人間の部隊を使って取り囲んだのだ……」
「…………で気付いた時にはウロボロスが上空に転移されてきた、訳か……」
「そ、その通りです」
ふむ。
て事は、転移させたのはウリエルで間違いないな。
皇帝の近くにサンダルフォンがいるのは確認したけど、ラファエルは未だか。
それに……これだけの魔物どうやって集めたんだ?
まだ他にも天使がいるのか?
「ところで、ミラは何故戦場に? ジオ王の護衛は?」
「あっ! す、すみません……ウロボロスの毒を見て危険だと思ったら体が動いていました……」
どうやらミラはジオ王を護ってたみたいだけど、危ないと判断して降りてきたみたいだ。
それも作戦だからか、エンマさんとミロクさんがミラに注意してる。
今はそれどころではない気が……
「じゃあ今はトーマスの爺さんだけでジオの護衛を?」
「す、すみません……急いで戻ります」
ミラは慌てて後退しようとしたが、それを止めたのはレイナだった。
「その心配はないかと。魔物の中に竜斗様を知る者達がいました。後で竜斗様と戦うことを条件にジオ王の護衛をしてくれてます」
は?
レイナさん、何を仰っているのです?
「魔物が? 大丈夫なのか?」
「はい。羅刹王と夜叉姫のSランクの鬼種です。竜斗様、心当たりがあるのでは?」
ぶっ!
いかん、いかん……思わず吹き出してしまった。
「ああ、知ってる……サラとルキがSランクになった時に倒した奴ら……そうか、迷宮から出てたのか……」
なんだか懐かしい……。
一年くらい前の出来事なのに、もう随分昔に感じる。
でもそうか……うん、あいつらなら信用できる。
「了解、ならジオ王は羅刹達に任せよう」
「大丈夫なのか!?」
「多分ね」
「多分ってお前……」
まぁエンマさんの心配も分かる……
でもこっちだって少しは戦力がいる……
見ると帝国側は陣形を整えつつあった。
「まぁ話はこれくらいで……」
俺は皆から帝国側へと向き直る。
前方は魔物だけで構成されていた……さっきまでは多少入り交じってたけど今度は完全に魔物だけ。
そして左右は魔族と人間の部隊に別れている。
「前方は俺が引き受ける。エンマさんとミロクさんは人間の部隊を。魔族の部隊はレイナとミラに頼むよ」
俺は直ぐ様指示を出す。
「了解です。魔族は全て解放して見せます」
「お、お手伝いします!」
レイナとミラは承諾。
「任せておけ。だが六花仙がどこかにいるかもしれん。皆注意を……」
「あ、それなら私が倒してきました。恐らくこの戦中に目覚めることはないかと」
エンマさんが六花仙の存在を危惧していたが、既にレイナが倒してきたみたいだ。
流石俺の婚約者……やることが早いぜ。
「りょ、了解だ……破軍は我らが引き受けた」
「ボロボロだが、六花仙がいないのであればなんとかなるだろう」
エンマさんとミロクさんも承諾。
「じゃあ……後は任せるよ」
「「「おうっ!!」」」
皆は一斉に散開していった。
「さてと……」
なんとか誤魔化せたな。
だって人間も魔族も殺したくない。
だから上手いこと俺が魔物を相手に出来る様にした。
ま、まぁ実際魔物は強いし……俺が相手するのが1番だよな。
くそぉ……一ヶ月の特訓でもまだ心は強くなれてないみたいだ。
でも……
「まぁ問題ないな」
その代わり俺の技はやべぇぞ。
見せてやる、俺の強くなった技を。
俺は刀を軽く振った。
うん、いけるな。
「グルルルルルッッ!!」
「ガアアアッッ!!」
「ゴギャアアアアッッ!!」
前方でひしめき合ってる魔物達がこっちを威嚇してくる。
「りゅ、竜斗殿……」
俺の後ろにいる兵達はビビっている様だ。
無理もない……ウロボロス程ではないが、俺らの数倍もデカイ魔物が何体もいるのだ。
ランクもAやB、生半可な魔物はいない。
「大丈夫、俺に任せろ」
俺は数歩前に出た。
戦場を強風が襲う中、俺達は対峙する。
そして静寂の中、一瞬風が止んだ。
「グルァアアアア!!」
熊みたいな魔物が雄叫びをあげて突っ込んできた。
それに吊られて他の魔物達も一斉にこちらに突撃してくる。
その勇気は買ってやる。
「極みの位 爆・天終!!」
魔名宝空に代わる新たな籠手の神器を発動させて、【絶刀・天魔】に二属性の【爆属性】を付加させる。
そして魔物の群れ目掛けて刀を巨大化させながら横薙ぎに一閃する。
凄まじいまでの爆発音。
もはや剣撃ではなく、爆弾だった。
無数の爆刃が、連鎖するように魔物達を一蹴する。
轟音に暴風、地面は黒煙と土砂を撒き散らしながら吹き飛んでいく。
そして魔物達も……
風が煙を晴らすと、突撃してきた魔物に立っているものはいなかった。
大体だが半分以上は倒せたと思う。
倒された魔物達は、粒子となって風に流される様に消えていった。
最初は戸惑っていた王国兵も、暫くすると状況を飲み込めたのか、割れんばかりの歓声をあげる。
「後、半分か」
俺は刀の峰を肩に乗せ、不敵に笑って見せた。
◆◆
【??側】
「天原竜斗が戦場に現れたか……」
褐色肌に、膝まで伸びた長い黒髪を靡かせながら男は呟いた。
「では予定通り?」
黒く妖しいフードを被る男性が隣に立ち、フードに覆われ顔は見えないが不気味に微笑む。
「ああ。予定通り、俺を戦場に転移してくれ」
「了解です、全ては順調の様ですね」
褐色肌の男は頷く。
「そっちは任せるぞ、友よ。俺は……俺の戦場に行く」
「ふふ、頼みましたよ。彼らの苦しむ顔が眼に浮かびます」
そう言い、フードの男は転移の神器を発動させて褐色の男を何処かへ飛ばした。
「ふふふ、どんなに強いと言ってもやはり人間……我ら天使に勝つことなど不可能なのです、ふふふふふっ…………おっと、そろそろ帝国の作戦も次の段階にいく頃ですね」
フードの男は微笑むと、自身もどこかへ転移していった。
プリンガ「えいっ!」
ヒレン「ぶへっ!?」
「ヒレン……弱い……このゲーム私の勝ち……」
「てめぇプリンガ……いよいよ俺を本気にさせたな……っ!!」
「約束通り私が勝ったらチョコパフェ(ランクS)奢る」
「上等だ、やってやるぜ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、嘘……私が……負けた……」
「ど、どうだ……炎王の名は伊達じゃないぜ……」
「チョコパフェ…………ぐすっ」
「…………ま、まぁ、良い勝負だったし半分ならパフェ代出しても……」
「む、そんなお情けいらない! 勝負は勝負!」
「お、おう……そうか……」
「ん……」
「なんだコレ?」
「勝負に負けたから……」
「俺にか?」
「他にいない……」
「あ、開けていいか?」
「…………ん」
「こ、これは……っ!?」
「初めて作った……味の保証はしない……」
「お、おう……」
「次は負けない!」
「お、おう……」
かなり遅れましたが【二ノ月・十四ノ日】の出来事です。
なんのゲームかは想像にお任せします。
会話だけで情景が思い浮かんで頂ければ良いのですが……