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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第十章【帝国】
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アーク帝国とホウライ王国⑥


すみませんオリンピックに夢中になってます。

更新また空くかも……です。




 遠目から見ても分かった。

 だから思わず、こう呟いても仕方無いと思う。


「げ、またアイツかよ……」


 ダルかった。

 どうやって迷宮から出てきたのかは知らないが、面倒臭い事この上無かった。



「ですが、あまり状況はよろしくないのでは?」


 隣を走る婚約者が呟く。

 まぁそうだろうな。

 なんか毒の塊吐き出そうとしてるし。



「なら、先に行くね」

「お任せします」


 そう言うと俺は婚約者より前に出た。


 そして力強く一歩を踏みしめて、思いきり跳躍した。

 同時に神器を発動させる。

 神器の能力で、たったの一歩で万里の長城みたいな壁の頂上へと片足で着地する。

 更にそのまま二歩目でウロボロスまで跳ぶ。

 ウロボロスが眼前に迫ると刀の神器【絶刀・天魔】と籠手の神器も発動させる。



「極みの位 天空・終!!」


 四属性+次元属性。

 刀を一振りした。


 瞬間、ウロボロスと毒の塊は一刀両断され、光の粒子が弾ける様にまとめて消えていった。

 俺は最初に発動させた神器を解除しそのまま戦場へと落下していった。


 全く……

 弱点の尾を曝け出してるし、バカなのかこいつ?

 弱いんだからしゃしゃり出てくんなよな。




◆◆



【王国側】



 兵士①。


「あれはまさに神話に出てくる天使の様だった……」

「彼は戦場を包み込む程の、真っ白な綺麗な羽を拡げて空を舞った」



 兵士②。


「彼が強いのは知っていた……」

「闘王祭でこの国の英雄を倒し、乱心していた王を正気に戻し、死神の反乱を最低限に食い止めた」

「だが……」



 兵士③。


「強すぎる……」

「あの英雄が……あの拳聖が……我々が一丸となって繰り出した攻撃をものともしなかった神話の化け物を……」

「たったの一撃とは……」



◆◆



【帝国側】



「バ、バカな……あのウロボロスを……一撃だと……」


 皇帝は呆気にとられた。

 自分で見たものが信じられなかった。

 羽を拡げ空を舞う1人の人間が刀を一振りすると、ウロボロスが呆気なく斬られた……信じられなかった。



「…………やはりっ」


 セツナは予想していた人物が現れ歯軋りする。

 違って欲しかった……だが、予想通り来てしまった。

 もはやこの戦はどうなるか分からない……そんな険しい表情をしていた。



「セツナ、何か知っているな……」


 皇帝はセツナを問い詰める。

 直前の反応で、彼の者が何者か知っていると判断したからだ。



「そ、それは……」


 セツナは口ごもる。

 同時に皇帝の乗る【黒曜皇馬】が後ずさる。



「こいつが怯むなど……かつてなかった事だ……奴は何者だ?」


 皇帝は手綱を握りしめ落馬しないようにバランスを取ると、真っ直ぐに戦場を見つめた。

 そして皇帝は答えに辿り着く。



「黒い剣士……まさかゼータとオロス、イルミナを破った正体不明の人間か?」


 かつてゼータを敗北へと追いやった人間……

 あの時はゼータ達を軍から脱却出来るのに利用しただけで、それ以上は追従しなかった。

 だがそれが今になって帝国を不利にしていく。



「お、仰る通りです……」


 セツナは戸惑いながらも肯定した。



「まさか……王国の人間だったとはな……」

「…………」


 正確には違うのだが、セツナは黙することで敢えて正解を皇帝に告げなかった。



「………………似ていた」

「!?」


 落下中の男を僅かだが見つめた皇帝。

 直ぐに地面へと降り立った為、ハッキリとは見えなかったが、確かに見た。

 そして思わずそう呟いた。

 皇帝自身自覚がなかった。



「陛下……」


 セツナは恐る恐る声をかけた。



「!? すまない……少し呆けていたようだ」

「さ、左様で……」


 皇帝は我に返る。



「セツナ、作戦を第四段階に移行しろ。多少の予定は狂ったが誤差の範囲内だ」

「は、はっ!!」


 皇帝はセツナに指示を出すと戦場を見つめ直した。

 セツナは直ぐ様、通信の神器を発動した。



「まさかな……」


 皇帝は僅かに苦笑した。



◆◆



【王国側・万里長壁】



「やっと来たか……いや、来てくれたか……」


 真王ジオは胸を撫で下ろす。

 その表情は僅かであったが確かに笑っていた。



「フォフォフォ、こりゃ美味しいところを持っていかれたわい……!?」


 トーマス老は笑う。

 だが次の瞬間何とも言えない殺気を感じ身構えた。



「運命か……再び彼の者と会えるとは……!!」


 トーマス老の目の前に立つ羅刹王が不気味に微笑み、握り拳を作る。

 今すぐ飛び出しそうな雰囲気だった。

 だが……



「竜斗様とお知り合いで?」

「「!?」」


 不意に声が聞こえ羅刹王と夜叉姫は驚く。

 突然声がしたから驚いたのではなく、その声の主が放つ異様な魔力に驚いていた。



「おぉ、レイナ嬢!」

「お久しぶりですトーマス様」


 トーマス老が一瞬空を見上げるが、同時にレイナは空からストンとゆっくり着地した。

 その頭には角が、腰には羽が、臀部からは尾がハッキリと現れていた。

 王国民はまだ誰も見た事ないレイナの本当の姿であった。



「美しいな……流石は魔族」


 そんなレイナを見てジオ王は呟く。



「魔人族です」


 レイナは少し素っ気ない態度で答えた。



「それはすまない……だが本当に助かった、これで流れはこちらにくる」


 ジオ王は簡単に非礼を詫びると、キッと戦場を見下ろした。



「まだです……帝国はまだ何かするつもりです」


 レイナはそう言いながら、相対する羅刹王と夜叉姫を見つめた。



「天原竜斗と縁のある者か?」

「はい、婚約者です」


「人と魔人族が!?」

「そうですよ」


 羅刹王と夜叉姫の問いに面白くなさそうに答えるレイナ。

 だがそれを聞いた羅刹王は更に頬笑む。



「面白い、流石は我に勝った男だ! 是非ともまた再戦したくなった!」


 羅刹王は万里長壁から身を乗り出した。

 だが飛び降りる事はなかった……正確にはさせて貰えなかった。



「申し訳ありませんが、竜斗様の邪魔をするなら貴女方はここで滅します……」

「「…………っ!」」


 レイナは自身が放つ魔力だけで2体を抑え込んでいた。



「……ですが、この戦争が終わるまでここでジオ王を護ってくれるなら、後で私が竜斗様へ進言します」

「「なっ!?」」


 2体やジオ王、トーマス老が驚くなかレイナは言葉を続けた。



「どうやら竜斗様とは顔見知りの様ですし、それに……何故か貴女方はこちら側(みかた)の気がします」


 最後のは完全に勘だった。

 だが結果的に取引は上手くいった。



「……ここでこの人間を守れば、後で天原竜斗と戦わせてくれるのだな」

「あなた様!?」


「はい。魔人族は契約重視、一度交わした取引を反故にはしません」

「…………いいだろう」


 羅刹王は承諾した。

 レイナは表情には表さなかったが、胸を撫で下ろした。



「では私は竜斗様の援護に向かいます」


 レイナはそう言い残しあっさり下に降りていった。




「宜しかったのですかあなた様……?」

「夜叉……お前も気づいていただろう?」


「それは……」

「あの女は強い……天原竜斗程ではないと思うが、あの魔力は異様だ」


「はい……かつて私が戦ったサラとルキウスなる者もそうでしたが、彼女のあの魔力はそれ以上です……」

「…………悪魔王、か……」



 羅刹王と夜叉姫は黙したまま戦場を見下ろす。

 同時にジオ王達は困惑した。

 え、味方……?

 と。



◆◆



【帝国側】



「ま、まだだ……」


 息を切らし、六花仙が1人ゼロマルはそのまま地面に膝をつけた。



「あ、諦めて……通して下さい……」


 対峙する四傑ミラも肩で息をしていた。

 戦闘が始まって直ぐにミラは六花仙の2人を圧倒した。

 だが腐っても同じSランク、疲労しない訳ではなかった。



「例えウロボロスが敗れたとしても、こちらにはまだ……」


 ゼロマルは短刀の神器を再度発動し、地面に刺して杖代わりにしてなんとか立ち上がる。



「無駄です。あの方が来てくれたのなら、戦況は確実にこちらのものです。この戦は……直に終わります」


 ミラは断言した。

 普段のミラならここまでは言わない……だが、そうでも言わないと目の前の敵の心は折れないと感じていた。

 しかし、それでもゼロマルの心は折れなかった。



「ゼロマル……」


 その横で既にミラに敗れたリリーメルは地に伏していた。



「我々は皇帝陛下の六枚の花……例えこの身が散ろうとも、必ずや陛下の戦を彩ってみせる!」


 ゼロマルは完全に立ち上がった。

 自分の言葉で奮起した。

 普段のゼロマルからは信じられない程、饒舌であった。



「そ、そうだ……我々は六花仙……例え散ると分かっている儚い花になろうとも……お前だけは、これ以上行かせん……!!」


 リリーメルも震える体に力を込め、必死に立ち上がった。



「はぁ……はぁ……はぁ…………分かりました……なら全力であなた方を葬って……」


 ミラは優しい。

 敵であってもまだ命を救おうとしていた。

 だがそれではいつまで経っても戦場のど真ん中には辿り着けないし、何より目の前の戦士の決意を汚すような事はしたくなかった。

 だからミラは覚悟を決めた。

 命を奪う覚悟を……



「!?」


 ミラは勢いよく後ろへ振り向いた。

 対峙する2人に対して明らかな隙を作る行為だが、無意識に反応してしまった。

 そんな3人の元にレイナがゆっくりと近づいてきた。



「レイナ様!?」

「ミラちゃん、お久しぶりです」


 レイナは軽く挨拶しながらそのままミラの横を通りすぎ、意にも介さずゼロマルとリリーメルに近づいていった。



「き、貴様、何者だ!?」

「我々の……っ!!」


 レイナを警戒して身構える2人だったが、レイナと目が合った瞬間に畏怖する。



「邪魔です」

「「………………っ!?」」


 ただ歩いて近づいた。

 それなのに2人は、レイナの手が自分達の肩に乗せられ、呟かれるまでレイナが真横に立っている事に気づかなかった。



「バカなっ……!?」

「速す……!?」


 そして一瞬で肩から地面に押し潰された。



「がはっ!!」

「がっ……!!」


 2人はそのまま気を失った。



「レイナ様……」

「どうしましたミラちゃん? 竜斗様の元に急ぎましょう」


 レイナは優しく微笑むと、そのまままた歩き出した。



「つ、強すぎます……」


 ミラはボソッと呟いた。

 有り得なかった……

 確かに強い人はこの目で何人も見てきた。

 それに闘王祭でレイナの強さも目の当たりにした。

 数日だが共に迷宮探索も行った。

 それでもそう呟かざる他なかった……

 それほどまでに今の一連の動きはミラの知るレイナとはかけ離れていた。



「だって……神器も使わずに……」


 ミラは戦慄した。




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