アーク帝国とホウライ王国②
更新空いてしまい申し訳ないです。
【王国側・エンマ視点】
俺は万里長壁から飛び降りると同時に四神器が1つ【高天原】を発動させた。
そして、結界に吹き飛ばされた虎の魔物目掛けて斬りかかる。
「クラフト流剣術・ブレイズスラッシュ!!」
白き虎を一刀両断する。
悲鳴を挙げさせる間もなく白き虎は消えてゆく。
「まず一体……」
地面に着地すると、辺りを見回す。
まだ何体もいる。
恐らくどいつもSランク……
驚異だが、デカ過ぎてどいつもいい的だ。
「俺は空を舞う青い竜と紅い鳥をやる! 地上の三体は任せるぞ!」
俺は叫びながら目標に向けて駆けた。
「了解した!」
ミロクも既に目標に向けて駆けていた。
どうやら……まず暴れまわる狼をヤるつもりだ。
亀とスライムは余り動いていないようだ……流石はミロク、いい判断だ。
だが……他にも気になるのがいる……
くそっ!
スキル【感知】があればいいのだが……
◆
【ミロク視点】
「神器【阿弥陀】!」
私は駆けながら、黒と茶色を基調した籠手を発動させた。
長年愛用した神器だ。
四神器【釈迦】や【千手】を手に入れてからはあまり戦闘では使わなくなった神器だ。
だが……やはり一番馴染む。
そして、掌に魔力を集めるとそれを握り潰すように【圧縮】させる。
この一撃は強烈だぞ!
「天羅零拳!!」
銀狼目掛けて跳躍すると、そのまま横っ腹に拳を叩き込む。
スキル【崩拳】は一撃死のスキル……能力【即死】の神器だと更に効果は上がるが……無くとも充分だ。
最も魔力を抑えられ、最も基本となる私の技……
銀狼は悶絶し、飛び散るように消えていった。
「次は……」
辺りをキョロキョロと見回す。
兵やギルドの奴らが歓喜の声を上げるが無視する。
急いで倒さねば、コイツらは危険だ。
「アイツだ!」
標的を亀にした。
尾が蛇になってる亀も厄介そうだ。
亀種の特性は【防御力】にある……生半可な一撃では倒せそうもない。
私は兵士達の間を掻い潜るように駆け出した。
◆
【ミラ視点】
「どうやら既に2体も倒したようですね」
少しだけ安堵した。
流石はSSランクのエンマさんとミロクさん……
Sランクの魔物を一撃なんて……まるで竜斗様みたいだ。
すると、
「!?」
誰かが私の結界に攻撃を!?
「強烈な結界だな……」
目の前に、着物を着た鬼種……
手には刀の神器……魔物が神器を?
「ならこれは?」
すると、その後ろから別の鬼種が現れた。
彼女の脚にも神器が……本当に魔物なの?
彼女は鋭い蹴りを結界に向けて放ってきた。
「くっ!」
これは……【衝撃】?
結界から衝撃が伝わってくる。
この2体……強い……
「ダメ……っ!」
横一面に拡がる結界の一部が壊された。
私の結界を壊すなんて……流石は鬼種……
2体は壊れた結界の一部から侵入し、万里長壁に脚を着けた。
私と師匠は、王を護るように並んだ。
「ふぉふぉふぉ、ミラの結界を破るとは……流石は鬼といったところか……」
師匠は苦笑している。
「羅刹だ」
「夜叉よ」
2体は名乗る。
「地下に幽閉されていたが……どうやら強者と巡り会えたようだ」
羅刹が嬉しそうに微笑む。
「私はまた、あの竜人族と八咫族の女と戦いたかったのですが……どうやら此度は人間相手みたいですね」
夜叉は残念そうに呟く。
2体は恐らくさっき転移してきたSランク級……巨大な魔物に紛れて接近に気づかなかった。
「「があ!!」」
「!?」
すると私と師匠の後ろで、陛下を護っていたナンバーズの2人が叫びながら鬼へと襲い掛かった。
きっと本能で危険だと感じたのだろう。
だけど……
「強いな」
「ですね」
羅刹と夜叉は、2人の攻撃を余裕そうに軽々躱す。
乱暴に殴りかかるだけの攻撃を、最小の動きで避けていく。
強い……まるでミロクさんの様に研ぎ澄まされた武を感じる。
Sランクにもこれほどの魔物がいるなんて……
「だが、それでは勝てんぞ!!」
「疾っ!!」
羅刹は刀で、夜叉は蹴りで、ナンバーズを吹き飛ばす。
「「がっ……」」
ナンバーズは万里長壁の上で倒れ込む。
なんとか体を起こそうとするが、震えるばかりで起き上がれずにいる。
特に夜叉に吹き飛ばされた娘はダメージも大きく、そのまま気絶した……多分、能力【衝撃】。
「ミラの結界を破るコイツらを一撃で……」
ジオ王の額から僅かに汗がつたっている。
それだけヤバい、という事だ。
「強いのは認める……だが戦闘経験は皆無みたいだな。そんなのは俺達の相手ではない」
「ふふっ、残念でしたね」
羅刹は目を閉じ面白くなさそうに呟き、夜叉は不敵に笑う。
「…………ふぅぅ」
私は小さく息を吐く。
久しぶりだ……
何年も【塔】に閉じ込められすっかり体も魔力も錆びついてしまった。
ルナさんやザナードさん達を助けに竜斗様達と迷宮に入ったが、攻略が速すぎて全くついていけなかった……
でもやっと、感覚が戻ってきた……
不謹慎だけれど……この血の匂いのする戦地こそ、私の感覚を研ぎ澄ましてくれる……
本当に……久しぶりだ!!
「発動!!」
私は神器を発動させた。
四神器の1つ、【ナイチンゲール】を。
倒れ込むナンバーズに手を翳し、瞬時に傷を癒す。
そして、もう1つ……【アマテラス】を。
「「なっ!?」」
2体の鬼は戸惑っている。
無理もない……無数の六角形の盾が一瞬で引っ付き合い、羅刹の刀を持つ腕を神器ごと、そして夜叉の両脚を結界で包み込んでいるのだから。
2体は身動きが取れなくなる。
「私には治癒と結界と牢獄のスキルがあります……最早逃げられません」
【治癒】は治癒の力を高め、【結界】は結界の力を高める、そして【牢獄】は捕らえた者の動きを封じる。
自慢に聞こえるかもしれませんが、私に結界の技で勝てる者はいません!
「流石は元・守護神ミラじゃ、後は任せよ!」
同時に師匠が剣の神器を発動させる。
見た目は杖の、仕込み杖。
師匠が夜叉目掛けて杖を突き出すと、先端が刃へと変わる。
「っさせるか!!」
羅刹が隣にいる夜叉を庇うように空いている手を伸ばす。
「ぐっ!」
師匠の刃が羅刹の手を貫く……だが、剣先が夜叉に刺さる前に羅刹は刺されたまま刃を握りしめ、それを止める。
本当に魔物なのか疑う……
だってそれは……
人と同じ……
他者を慈しむ、愛ゆえの行動……
「あなた様っ!!」
「も、問題ない……」
夜叉の方も羅刹を心配する……
あなた様?
て事は……2体は夫婦?
「ふぉふぉ……こりゃなんとも……」
師匠は羅刹から剣を抜き、こちらまで後退するように飛び退く。
師匠も戸惑ってるみたいだ……
「や、やりづらい……」
戦場にいながら思わず呟いてしまった……
◆◆
【帝国側】
「ふむ、流石は四傑だ。Sランクの魔物も苦ではないとは。ああも簡単に倒すとは誤算だったな」
皇帝は少しだけ楽しそうに戦場を見つめる。
「この様子では、残りの十凶も時間の問題かと……」
「その様だな、もう少し王国兵を削れると思ったが……」
「では?」
「ああ。破軍と魔軍が陣形を整えたら、少し早いがアレも転移させろ」
「了解しました」
セツナは頷くと、再度通信の神器を発動させた。
勿論相手は、ラジエルとウリエル。
残りの十凶の1体……それをこの場に転移させるよう命ずる。
「さて……アレを倒せるかな?」
皇帝は不敵に微笑む……
私事ですが国家試験を受けて参りました。
もうね……受かる気がしません。
問題を見た瞬間に心の中で苦笑いしか出ませんでした。
悩むことすらなく、ほぼ勘で解答しました。
来年はきちんと勉強したいと思います。
◆◆
プリンガ「私は極聖隊に1発合格v」
ヒレン「あぁん? んなもん七極聖なら当たり前だろ?」
「これだからヒレンは……パフェの様に甘い……」
「んだと!」
「普通の人にとって極聖隊はエリートだけの未知の領域。軍に入れても先ずは下っ端の、数万からならなる【本軍】。それから頑張って千人で構成される各極聖隊に配属されて……最後に副隊長、隊長【七極聖】になれる」
「お、おう……(今日はよく喋るな……)」
「今の七極聖で、順々に上り詰めたのは【風王】クリスだけ。基本、七極聖になれる人は最初から才覚を現してる」
「ふ~ん、てっきりクリスもかと思ったぜ。クリスの師匠はサクヤさんのお姉さんだろ?」
「そう、埋もれてた才能を見いだされた。でも……」
「でも?」
「普通の人は、知らない……だから、(クリスは)皆の憧れ……努力の人、思われてる」
「へ~(段々口数が少なくなってきたな……)」
「つまり……」
「つまり?」
「私は天才……だから、ヒレン、私に、パフェ、奢る」
「…………」