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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第十章【帝国】
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アーク帝国とホウライ王国①



 神世暦1000年、五ノ月、五ノ日……


 2国の国境にて、アーク帝国とホウライ王国による戦が開戦された。


 後にこれを天魔戦争に因んで、【天真大戦】と人々は呼んだ。




 アーク帝国は先ず、三角形の陣形で侵攻を開始した。

 先頭は魔物で構成された【凶軍】。

 その後方左右に【破軍】と【魔軍】。

 そして最後尾中央にて皇帝が軍を指揮していた。

 指揮といっても魔物を御せれる訳ではなく、一点を貫くようにただ真っ直ぐと侵攻するだけであった。


 ホウライ王国はそれを、V字の陣形で迎え撃った。

 正面で受け止めつつも左右から魔物を挟み込む形をとっていた。

 しかし魔物の侵攻は凄まじく、中央に兵を集めざるを得なかった。

 戦が進むにつれて次第に陣形は、自然とV字からY字に近い陣形へと変わっていった。



 帝国側の魔物の侵攻は本当に凄まじかった。

 魔物は強い……それは誰もが分かっていた。

 だが王国が本当に恐ろしいと感じたのは……魔物に恐怖心がないことだった。

 ただ愚直なまでに真っ直ぐと歩を進める……

 己が傷つこうが、仲間?が倒れようがお構いなしに……

 屍を踏み砕きながら……



 こうなると王国側は何としても手薄な後方へ回り込み皇帝の首を討ち取りたいのだが……

 歩みを止めぬ魔物を抑えるので精一杯だった……

 それと……皇帝より後方は、大規模な結界が張られており容易に壊すことは叶わなかった。



 戦場は死屍累々たる有り様だった。




【帝国側】



「本当に宜しかったのですか? 陣を横に拡げれば、それだけ数で劣る王国は手も足も出なかったでしょうに……」


 セツナは、騎乗している皇帝を見上げながら尋ねた。



「なんだ、作戦を忘れたのか? 言ったであろう……全て滅ぼすとな……」


 皇帝は前を見据えながら、セツナ以外には聞こえないよう小さく呟いた。



「…………愚問、でしたね」


 セツナはゆっくりと視線を戻すように目を閉じた。

 もはや皇帝はどんなことをしても止まらないのだと……




【王国側】



 そして戦は、必死の抵抗を見せた王国側が徐々に優勢になってきた。

 魔物が強いと言っても、侵攻しているのはEからAランクの魔物ばかり。

 数を活かしきれていない戦法に魔物の数は削られ、次第に三角の陣形は先頭にいる魔物が減り……台形へと変わっていった。

 両軍は相対するように横並びになりつつあった。



「……変だな」

「ええ、皇帝は何を考えているのでしょうか……」


 英雄エンマの疑問に、聖女ミランダも同意した。



「あれだけの数の魔物を一点突破にさせるとは……馬鹿なのか?」

「ふぉふぉふぉ、何か策があるのかのう……」


 当然、帝国の陣形に疑問を持つ拳聖ミロクと守護神トーマス老。



 もし……最初から軍を横に拡がるよう展開されていたら、数で圧倒的に劣る自分達は不利だった。

 それだけ戦力を分散させられるからだ。

 だがいくら魔物と言えど、しっかり連携出来ている自分達の敵ではなかった……何故なら戦力を集中できるからだ。


 結果的に王国は、当然戦死者は出ているものの、四傑を温存出来ていた。



 しかし、そう甘くはなかった……




【帝国側】



「ふ、押されている様だな……」

「ですね」


 皇帝は問題ないと頬笑む。

 セツナも押されている戦況を意にも介していなかった。


「予定通り、か……」

 皇帝は順調すぎる作戦に少し落胆し息を吐いた。


「では、そろそろ奴らを?」

「だな」


 セツナの問いに簡単に答える皇帝。

 その言葉を聞き、セツナは通信の神器を発動させ、誰かとコンタクトをとる。




◆◆


「……了解っす」


 帝都にある、薄暗い一室……

 そこで誰かとコンタクトをとり、嬉しそうに一人返事をする天使ラジエル。

 そして最後に了承すると、通信の神器を解除した。



「ヒヒヒ、やっとこいつらの出番か……さてと、もっと戦場を掻き回してくれよ」


 ラジエルは不気味に微笑むと、両手を翳して魔力を込める……



「了解しました、奴らを転移させればよいのですね」


 そして離れた別の場所で戦場を見つめる、天使ウリエル。

 ラジエルと同じ様に通信の神器を解除すると、別の神器を発動させた。



「ふふ。さてと、王国はどう出るでしょうか……奴ら、【十凶】は中々ですよ」


 分かっていながら嬉しそうに呟く。

 そして瞬時に何かを戦場に転移させた……


◆◆



【帝国側】



「…………来たか」

「その様です」


 皇帝とセツナは戦場を見つめる。

 呼び出したのは、【凶軍】の中でも別格の強さを誇る【十凶】。



【【 十凶 】】


【死聖・朱雀】……鳥種、炎属性、Sランクの巨大な不死鳥。

【死聖・青龍】……竜種、水属性、Sランクの巨大な水竜。

【死聖・白虎】……虎種、風属性、Sランクの巨大な猛虎。

【死聖・玄武】……蛇亀種、地属性、Sランクの巨大な霊亀。

【金剛スライム】……スライム種、鋼属性、金属の様に輝くSランクの巨大なスライム。

【フェンリル】……狼種、氷属性、銀色の体毛を風に靡かせるSランクの巨大な魔狼。


【羅刹】……鬼種、雷属性、着物を着た武人のようなSランクの鬼。


 他にも、十凶ではないが……


【夜叉】……鬼種、羅刹の(つが)いとなるSランクの女性型の鬼。



 後は……皇帝の乗る光属性の【黒曜皇魔】と、既にミロクに倒され本領を発揮することなく散った闇属性の【茨木童子】がそれにあたる。


 それと……

 戦場に転移されなかった魔物が後一体帝都にいた……



 いま戦場に、八体の新たな魔物が、散らばるように王国軍の中へと転移された。

 同時に、侵攻していた【凶軍】は初めてその歩みを止め、王都へではなく王国軍にその牙を向け始めた。




【王国側】



「奴らめ! なんて魔物まで!!」


 瞬時に異様な魔力を感じ取ったエンマは激昂した。

 いや……別格の巨大さを見れば誰もが気づくことだった。

 戦況は一変した……と。



「我々もっ……!?」


 ミロクが万里長壁から飛び降りようとした時だった。

 同じ四傑であるトーマス老が張っていた結界に引っ掛かるモノがいた。

 というより突撃だった。



「ガアアアアアッッッッ!!」


 雄叫びをあげながら結界に突っ込む【死聖・白虎】。

 戦場から一気に跳躍し、四傑目掛けて突っ込んできたのであった。



「くうっ、こりゃ老体にはキツいわい!」


 結界に魔力を込めるトーマス。

 すると、


「私が援護します!」


 ミラも同じ様に結界を張り、トーマスを援護した。

 ややこしいが……前・現2人の守護神による結界は驚異だった。

 流石の白虎も結界により弾かれ、下の戦場へと堕ちていく。



「今だ! 俺とミロクは奴らを叩くぞ!」

「分かっている!」


 その隙に、エンマとミロクは戦場へと飛び降りた。



 Sランクの魔物数体……迷宮でも味わったことのない試練だった。

 いま下で戦っている兵達に、十凶に勝てる者はいなかった。

 戦況を変えるために、遂に四傑も参入した。




 だがこれも……皇帝の作戦だった。


 王国側は気づかない……


 帝国の【破軍】と【魔軍】が、少しずつ……少しずつ……歩み始めたのを……




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