表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第九章【王国】
257/318

メッセージとハプニング


一日遅れのメリクリです……

今回のお話は、そういう時期だから書いたわけではありませんよ。

前々から書こうとは思っていたのですが、王国編から中々書けずにいたのを、纏めて書かさせて頂きました。




「……分かりました。あの人達が戻ってきたらお伝えしときます」



 機人族のヒュースは手紙を受けとると、それを懐へとしまった。


 ヒュース・アレルヤ……かつて機械国にて2人の機械王に仕えた男。

 今はアルカディア国にて軍の総隊長を務め、大臣であるローゲと共に国を支えていた。

 死装束の様な白い着物を纏い、人間達からは【氷剣のヒュース】として賞金首にされている。




「確かに届けましたよ」


 白いフードを被った女性はニコリと微笑んだ。



 そしてヒュースと暫く雑談すると、そのまま転移の神器にてその場から去っていった。







「また……戦なのですね……」

 女性がいなくなると、ヒュースの少し後ろに立っていた兎人族の女性ララが、ヒュースに声をかけた。

 自慢の耳は少しだけ悲しそうになっていた。


「アーク帝国とホウライ王国の戦ですから我々が関与する必要はないのですが……あの人達の頼みですからね」

 ヒュースは小さく微笑んだ。



「……どこで遊んでるのかと思えばまさかですよ……」

 すると聞こえていたのか、ララの妹ルルがどこからともなく現れた。


「……帝国の魔族解放は必須でしたからね、それが少し早まるだけの事です」

 ヒュースは事も無げに答えた。


「珍しいですね……ヒュース様が既に勝利を確信しておられるとは……」

 ララは表情には出さなかったが驚いていた。

 いつも作戦は慎重に行い、失敗した時の案を常に考えているヒュースが、魔族解放を口にした事に……

 それはララにとって……既に帝国に勝ったと口にしていると同義語であった。



「私も口に出したくはないのですが……それほどまでに今のアルカディア国は強いです……もはや……」

 相手はいない、ヒュースはそう言おうとして口に出すのを辞めた。


 天使……

 自分達魔族が真の平和を掴むためには避けて通れない相手だ……

 ヒュースはその存在を一瞬でも忘れてしまった自分を恥じた。

 だが、天使を除けば本当に今のアルカディア国は敵無しだった。



「アーシャ様も帰られましたし……私もまだ仕事が残っているので……」


 先程までいたフードを被った客人、アーシャは既にいない。

 そう言うと、接客をする相手がいなくなったルルは部屋から退室した。





 応接の間には、ヒュースとララの二人きりとなった……



「…………」

「…………」


 変な緊張感が応接の間に漂っていた……

 神国戦の最中、共に囚われの身となった二人……

 その際ララは、自分を庇ってくれたヒュースに惚れた。


 そして、ヒュースは……




「し、しかしあれですね……ルル殿もまだ仕事が残っているとは……た、大変ですね……」

 何故かヒュースは焦るように話題を変えた。


「い、いえ……城の中の雑事は終わっていますよ……」

 ララは言ってて一瞬、妹に気を使われたのではと感じた。


「では?」

「今は……【旗】を製作しております」


「旗、ですか……? アルカディア国の【国旗】は有ったように思うのですが……」

「はい、今は別の旗を作っているみたいです」


「別の……あ!」

「はい、七大悪魔王の……【七魔】の旗と、【竜】の旗です」



「なるほど、私としたことが迂闊でした……その様な大事な事を忘れているとは……」

「そんな! ヒュース様はお忙しい身……あれはあの娘(ルル)が勝手にやりだした事です……」


 旗は戦の際、重要な物であった。

 勿論、敵にその存在を知らす事にもなるが、何より……どう足掻いても勝てない相手がいると相手に知らしめるのに最も有効であるからだ。


 以前なら、【六花】【極聖】【四傑】の旗があるだけで魔族は震えあがった。

 魔族だけではない……自国の者が見れば奮起し、他国の者が見れば恐れおののき士気に関わる……

 戦時下に置いて旗は、それほど重要だった……



 そんな大事な事を忘れていたヒュースは頭を下げるが、それを見たララは焦った。



「そんな! 頭を……」


 頭を上げてもらうようヒュースに近づこうとして、ララは床に足を引っ掻けてしまった……



「きゃっ!?」

「危ない!!」


 ヒュースは倒れそうになるララを抱き止めた。



「…………!!」

 ララは一瞬思考が停止してから現状に気がついた。


「あ、す、すみません!!」

 ヒュースは慌てて抱き止めていた手を離し、少しだけララから距離をとった。



「…………」

「…………」


 またしても沈黙が流れる。

 2人の顔は真っ赤だった。



 そしてララは意を決した様に唇を噛み締めた。



「あのっ!」

「私は……」


 ララが勇気を振り絞って何かを伝えようとしたが、ヒュースは神妙な面持ちで話し出した。


「あ、すみませ……」



 ララが謝ろうとするが、ヒュースはそのまま言葉を続けた。


「私にはかつてお慕いした人がいました……」

「…………」


 ララはヒュースの言葉に僅かに奥歯を噛み締めた。



「その人には将来を誓った相手がいました……」

「…………」


 ララは知っていた。

 その人はアリスと呼ばれた人で、更にその相手がアーク帝国の皇帝である事を。

 兎人族の耳はいい……

 盗み聞きするつもりはなかったが、以前その話を聞いた時……もしやと思っていた。



「私は……ある男と決着をつけなければなりません……」

「それは……」


 ララにはそれが【死神】の事なのか、【皇帝】の事なのかが分からなかった。

 或いはどちらともか……



「その男は強いです……私がどう足掻いた所で勝てる相手ではありません……」

「…………そんな、事は……」


 ヒュースは首を横に振った。



「分かっています……私には無理でも、きっとアトラス様や竜斗殿がなんとかしてくれます…………ですから私は……いえ、私がこの箱をあの人に渡さないといけないのです!」


 ヒュースは小箱を懐から出し、強く握り締めた。



「その箱は……?」

 知っている……

 だがララは知らない振りをした。


「慕っていた方の物です……もはや私に出来るのはこの箱をあの人に直接渡すことだけです」

「…………」


 ララは俯いた。

 ヒュースはゆっくりと大事そうに小箱を懐へしまい直した。



「ですから……」


「?」

 ララはパッと顔を上げた。


「もし……全てに決着がついたら……その時は……」

 ヒュースはララに近づきそっと両肩に手を添えた。


「!?」

 ララの鼓動が強く脈打った。



 気付いてる……

 ヒュースは自分の気持ちを知っている……

 ララはそう感じた……


 ヒュースの眼差しは真剣……

 だがほんのり顔を赤らめてもいた……


 ララの口角がほんの僅かに上がる……



「……はい」



 ララは満面の笑みでそう答えた。




◆◆



「ふんふんふ~ん」


 ルルは城の廊下を、小さくスキップしながら歩いていた。

 自慢の耳はピコピコと動いており、嬉しくなるような話を盗み聞きしていた。



「あ、ルル殿」


 するとルルの前方から……

 牙狼族の男、シューティングスター・ダダが声をかけてきた。



「なにやら嬉しそうですね」

「まぁね」


 敬語で話すルルが、タメ口で話す数少ない相手だった。



「そっちは?」

「えっと、その……申し上げにくいのですが……ララ殿を探しておりまして……」


 シューティングスターのその言葉に、ルルの表情は一気に嫌悪の眼差しへと変わった……



「応接の間だけど……今はダメよ……お姉ちゃん、ヒュース様とイチャイチャしてるから」


「え……」


「残念でした~」

 ルルはそう言い残して去っていった。


「そ、そんな……」

 シューティングスターはその場に力なく座り込んだ……



 シューティングスター……長年ララに想いを寄せていたが、遂に失恋という形で決着がついた。

 一時は僅かに脈ありであったが、それももはや完全に露と消えた……


 思えば嫌な予感はしていた……

 国がでかくなるにつれて、ララを慕うものは増えていった。

 そんな奴らを稽古と称して叩きのめし、見えないところで露払いをしていた。

 涙ぐましい努力だった……


 そして神国との一件からララは益々可愛くなっていった……

 それもその筈……

 恋する乙女の顔だったからだ……



「う……う……」


 本当に好きだった……

 シューティングスターは大粒の涙を溢した……

 そして……


 いつしか恋慕の情は、その対象者を替え、恨みと憎しみへと変わって……いかなかった。




「あ、シューティングスターさん」

「イヨ……殿?」


 シューティングスターに声をかけたのは、八咫族のイヨ・セイレンであった。

 かつてはサラの一団に属しており、アルカディア国に来てからは軍に身を置く数少ない女性。


 黒髪をセミロングにした女性で、背中には黒く長い羽が生えており、サラを尊敬しているからか同じ様に着物を纏っていた。


 同じ部隊長でありながら、シューティングスターにとってあまり話したことのない相手だった。



「どうかされました? 廊下に座り込んで……」

「あ、いえ、別に……」


 シューティングスターは恥ずかしさから、急いで乱暴に袖で涙を拭き取った。



「イ、イヨ殿こそ……こんな遅くまで何を?」

「私はガーベラやリリスさんと修練しておりました。まだまだ実力不足なもので……」


 イヨの部隊は補給や伝達、治癒をメインとする部隊で、今まであまり戦闘経験がなかった。

 同期のガーベラと比べると、ランクは同じでも戦闘に差が開き始めており、本人もそれを気にしていた。



「そんなことは……短期間で部隊長にまでなられたのです。それだけでも立派ですよ」

「いえいえ、竜斗様の眼に恥じない働きをしなければ……まだまだです」


 イヨは苦笑した。

 竜斗の神眼により、潜在ランクがAだと判明しているだけで部隊長候補に選ばれ、直ぐに部隊長へと昇格した。

 もっと強くなりたい……イヨはそう願い努力していた。


 そう思うと、シューティングスターは素直に頑張っているなと思った。



「ところで……」

「はい?」


「いい加減立たれては……」

「っ!?」


 シューティングスターは気づいた。

 未だ城の廊下に座り込んで話す情けない自分に……



「こ、これは失礼を……」

「いえいえ」


 イヨは微笑しながらそっと手を差し出した。

 シューティングスターは差し出された手を優しく握り、慌てて立とうとした。

 が……



「のあっ!?」

「きゃっ!?」


 慌てて立とうとしたからか、シューティングスターは盛大にバランスを崩した。

 手を掴まれていた為、イヨもそれに巻き込まれた。



「す、すみませ……」

「い、いえ……」


ーモニュー


「ん? なんだこの柔らかなものは……」

「……!?」


ーモニュモニュー


 シューティングスターはその手に残る感触を確かめる。

 柔らかく、そして中々大きい……



「あ…」

 見ると、イヨの胸部を掴んでいた。

 イヨは顔を真っ赤にさせていた。



「きゃあああっ!!」

「へぶしっ!?」


 それはもう見事なまでの神速の平手打ちが、シューティングスターの顔を叩いた。

 シューティングスターは叩き飛ばされ……イヨは瞬時に胸を守り、座りながらシューティングスターと距離をとった。



 沈黙が廊下に流れる……


 暫くすると二人とも立ちあがるが、視線は合わなかった。



「ほ、本当に申し訳ない!! このお詫びは必ず……」

 シューティングスターは何度も頭を下げた。


「…………」

 しかしイヨはそれに返答しなかった。



 居たたまれなくなりシューティングスターはその場を去ろうとした。


「で、では私はこれで……」

 シューティングスターは最後にそう言うと振り返った。



「せ、責任……」

「え?」


 イヨは立ち去ろうとするシューティングスターを小声で止めた。



「責任とって下さい……」

「え、それは……はい、後日改めてお詫びを……」


 シューティングスターはイヨの言葉の真意を理解していなかった。



「む、胸を揉まれたのです…………お、お嫁にいけません……で、ですから……責任……」


 イヨは小声で呟く。

 顔は赤面しており、視線はシューティングスターから逸れていた。



「な、え、そ、それって……」


 シューティングスターの頭は混乱していた。

 流石にそこまで言われたら馬鹿でも気づく。

 でも何故?

 今まで話したこともなかったし、しかも胸まで揉む失態……

 何故、お嫁の話になる……?



「せ、責任とって下さい!!」

「は、はい!!」



 イヨの声が響く。

 シューティングスターはその声に圧倒され、うっかりオッケーしてしまった……


 そしてシューティングスターは知らない……

 八咫族は雑食で意外と強気なのを……



 かくして二人は結ばれた……



◆◆




「うわ……死ねばいいのに……」


 廊下を歩くルルの耳はピンと尖っていた。

 独り身からの嫉妬なのか……はたまた、散々姉の事が好きだったくせに、失恋した途端彼女が出来たからなのか……

 ルルの顔はかつてないほど険悪だった。



「あれ、ルルさん?」

「!? バアルさん?」


 旗を作る部屋へ向かうルルの前に、2度目の迷宮攻略へと向かっていた七大悪魔王の1人、バアルが歩いて近づいてきた。

 服はボロボロで、至るところが傷だらけであった。



「どうして……」

「どうしてって言われても……迷宮攻略したから帰ってきたんだけど……」


 当たり前の事にルルは恥ずかしくなった。



「あ、いえ……今回は随分早かったですね……」

「まぁね。まぁ僕らもそこそこ強くなったのかもね」


 バアルは笑顔で答えた。



「他の皆様は?」

「ああ、ガオウとサラは家に帰ったよ。ルキウスとゼノはまだ城の前で話してる。アトラスは城の入り口でアーシャと会って話した後、どっか行っちゃった」


「それで……バアルさんは?」

「ああ、一応ヒュースに報告しとこうと思ってね。ルルさんは? まだ仕事?」


「え、あ、はい……皆様と竜斗様の【旗】を作ろうと思いまして……」

「ふ~ん……なら、ヒュースに報告したら僕も手伝うよ」


「あ、帰ってきたばかりですし……皆様はしっかり休んで下さい」

「…………ん、ならそうするよ」



 バアルはヒラヒラと手を振りながら、その場から去ろうとした。



 何故そう言ったのか分からない……

 普段なら絶対に言わないであろう言葉をルルは声に出した。

 先程までの四人の会話を聞いて、羨ましいと思っていたのだが……

 ルル本人はまだ気づいていなかった……


「あ、」

「ん?」


 ルルの声にバアルは立ち止まった。



「で、でも……も、もし……まだ大丈夫なのでしたら……その……お、お茶でも淹れますよ……」

「…………」


 ルルの精一杯の言葉……

 だが、バアルはそのまま無言で歩き出した。



「…………」

 ルルの耳がしょんぼりする。



「さっきアーシャから神国茶葉もらったから、ヒュースに報告したら淹れてもらいにいくね」


「!?」



 ルルがパッと顔を上げると、バアルは神国茶葉スレヌティーヌが入った袋をヒラヒラさせながら、ヒュースのいる部屋へと向かっていった。


 ルルの耳がピコピコと嬉しそうに動く。



「はい」


 ルルはバアルを見送ると、お茶淹れの準備をしようと旗作りの部屋とは別の部屋へと向かっていった。





 これは……主人公・天原竜斗が異世界アルカに来る半年以上前のある冬の日……


 アーク帝国とスレイヤ神国の国境に拡がる、アルカ大平原……

 そこには【六花仙】の3人、ゼータ・オロス・イルミナと……【七極聖】の3人、ガイノス・ヒレン・プリンガの3人が軍を展開して長年争っていた……


 そんな戦時下でありながら、たまたま一時的に戦が中断されたそんなある日……



プリンガ「メリクリ……」

ヒレン「はぁ!? ふざけてんのかプリンガ!」


 広大なアルカ大平原にて、それぞれが軍を率いる身……にも関わらず、プリンガはヒレンの拠点に遊びに来ていた……



プリンガ「ヒレン……ケーキは?」

ヒレン「ぶっ!? 馬鹿か!! んなもん有るわけねぇーだろが!!」

ガイノス「信じられん愚行じゃのぉ……この聖なる日にケイキを用意しとらんとわ……」


 ヒレンの祖父・ガイノスも遊びに来ていた。



ヒレン「じじいまで!? いよいよ耄碌したか糞爺……」

ガイノス「爺ちゃんに言う言葉ではないのぉ」

プリンガ「ケーキ……」

ヒレン「だから無ぇーて!」

ガイノス「そうじゃ! 今から買いに行くのは?」

ヒレン「無理に決まってんだろ!」

プリンガ「ケーキ……」


 しっちゃかめっちゃかになった……



ヒレン「だあ、もう! この戦が終わったらいくらでも食わせてやるよ!!」

プリンガ「ほんと?」

ガイノス「がーはっはっはっ、プリンガは甘いもんに目がないのぉ」


プリンガ「ヒレン……サンタ……」

ヒレン「!? おいおい、そんな褒めんなよ……俺が聖夜神サンタクロースだって言いてぇのかよ……」

ガイノス「そうじゃぞプリンガ、ヒレンがサンタなぞ恐れ多すぎてプレゼントが煙突で炭まみれになってしまうわい」


ヒレン「うぉい、爺てめぇ!!」

プリンガ「それは困る……プリンガ、ケーキ、食う……」


ヒレン「何故カタコト……」



【一日遅れの聖なる夜でした……】



◆◆


色的には、

ヒレン【赤】→サンタ。

ガイノス【茶】→トナカイ。

クリス【緑】→ツリー。

プリンガ【紫】→夜。

ライガ【黄】→星。

アーシャ【白】→灯り?。

ですかね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ