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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第九章【王国】
253/318

天雷と雨音


「天使……サンダルフォン……」




【サンダルフォン】

種族

【天使】

クラス

【七大天使】

ランク

【ZERO】

先天スキル

【属性<天雷>】【天翼】【天剣】【天速】

後天スキル

【天檻】【天癒】

特殊スキル

【天眼】

神器

【天双剣・鳴神】<双剣/雷/放電/ZERO>

【天豪剣・神槌】<大剣/雷/無/ZERO>

【天舞扇・神楽】<扇/雷/守護/S>

【天雷槍・神祀】<槍/雷/巨大化・放電/SS>

【天鋼盾・神木】<盾/雷/守護/S>

【桜花】<籠手/無/治癒/S>

【帝都01】<扉/次元/転移/A>




「お初にお目にかかります、天原竜斗」

「…………」


 サンダルフォンは小さく微笑む。


 ヤバイ……

 傷ついてるとはいえ、あっちはランクZEROが4人も……

 しかもサンダルフォンはエンマさんの一撃を軽々と受け止めやがった……

 しかもセツナって……帝国・六花仙の?



「おや? 無視はよくありませんね?」

「!?」


 気づいたらサンダルフォンは俺の目の前にいた。

 攻撃していたエンマさんは、受け止める者がいなくなって、バランスを崩した。



「ふふ、美少年ですね?」

 サンダルフォンは指を俺の顎に当て、クイッと軽くあげる。


「なっ!? 竜斗様から離れなさい!!」

 近くにいたレイナがサンダルフォン目掛けて拳を突き出した。


「とっ……」

 サンダルフォンは飛び退いた。


 サンダルフォンが飛び退いた近くにエンマさんがいて、エンマさんは入れ替わる様にこっちに跳躍した。



「大丈夫か竜斗?」

 エンマさんは、サンダルフォンに警戒しながらも俺の心配をしてくれた。


 これで綺麗に、天使と俺達に別れて対峙する形となった。



「大丈夫ですか竜斗様?」

「…………」


 レイナも心配してくれるが、俺は返事をせず唾を飲み込んだ。

 俺の額に汗がつたう。


 見えなかった……いや、正確には動けなかった。

 さっきのもそうだが、サンダルフォンの動きは見えていたのに、全く反応出来なかった。




「なるほど……ガブリエルさんを倒し、今もウリエルさんを斬った貴方ですが…………そうですか、ふふ」

 サンダルフォンは意味深に微笑む。


 俺の背筋がゾクリと震えた。

 まるで、知られてはいけない秘密を知られた様な……そんな感覚だった。



「サンダルフォン……」

「分かっていますメタトロン御姉様」


 サンダルフォンは1歩だけ前に出てきた。


「「っ!?」」

 当然、全員が警戒し身構える。



「取引しましょう。私達はこれで退きます、ですから見逃して頂けますでしょうか?」

 サンダルフォンは当たり前の様な感じで聞いてきた。


「なっ!? そんなこと……!!」

「その代わり! あなた方にとって有益な情報をいくつか差し上げましょう」


 レイナの怒声を、サンダルフォンは更に大きな声で遮った。



「有益な情報、だと……?」

「はい。そうですね……」


 サンダルフォンはどこか楽しそうに喋る。


「先ず、ガブリエルさんは生きています」

「「!?」」


 俺とレイナだけが驚く。

 嘘だ……だってあいつは確かに俺が……

 いや、まてよ……ってことは……



「天原竜斗は気付いたようですね。ただし、今ここで私達を倒せばガブリエルさんは復活出来ません……この意味が分かりますか?」

 サンダルフォンは、してやったり顔で微笑む。



「他には?」

 俺は冷静に尋ねた。


「竜斗!!」

「竜斗様!?」


 皆が驚く。

 俺が取引に応じようとしていると分かったからだ。



「二つ目は……そうですね、近々アーク帝国は大規模な戦を仕掛けます」


「「なっ!?」」

 エンマさんとミロクさんが驚く。


「いつ、とまでは言えませんが……最初の標的はここ、ホウライ王国・王都クラフトリアです」

 サンダルフォンははっきりと宣戦してきた。



 馬鹿なのか?

 これから攻めますって……


 一瞬、サンダルフォンと目が合う。


 いや、何かある……

 知ってても防げないか、何かの作戦か……


 サンダルフォンの顔は自信満々だった。



「3つ目は……」

「質問だ」


 サンダルフォンが言う前に俺は質問した。


「何でしょうか?」

「七大天使について教えろ」


「……教えろ、とは?」

「天使ならミカエルってのがいる筈だ、それと後1人は?」


「ふふ、ラジエルさんですね」


 ラジエル……


「知らね」

 つい声に出た。



「バカな!? 天魔戦争を調べれば分かるが、ラジエルの名は有名だぞ! 最も悪魔を苦しめたのがラジエルだ! なのに何故、俺達が苦労して探り当てたミカエルの名は知っている!?」

 何故かエンマさんが突っかかってきた。


「いや、俺の世界ではミカエルのが有名……」

「!? 異世界にも天使が存在しているのか!?」


「いや、神話とかに出てくるだけで……本当には……」

 エンマさんが恐い……

 めっちゃ迫ってくる。


「と、に、か、く……」

 俺は迫るエンマさんを押し退ける。


 つまりだ……

 ラファエルは……カルラくん。

 ウリエルは……【死神】クウマ。

 サンダルフォンは……【桜花】セツナ。

 メタトロンは……【元・光王】ハクア。

 ガブリエルは……取り敢えず死んではいない。

 で、ミカエルとラジエルは不明か……



「もしかして、ホウカって人がミカエルかラジエルなのか?」

「ホウカ? 知りませんね」


 サンダルフォンは首を傾げた。

 知らないのか……


「…………」

 この時の俺には、メタトロンが何か知っている事に気がつかなかった。



「では、取引成立で宜しいでしょうか?」

 サンダルフォンは微笑む。

 最初からこちらが条件を飲むと分かってて取引を持ちかけたみたいだ。


「……ああ。ただし、ガブリエルが復活したら伝えろ。もう一度、【天啓(ゲーム)】をしろとな」


「ふふ、分かりました。お伝えしときましょう」



 サンダルフォンは転移の神器を発動させる。

 皆は悔しそうにグッと堪えている。

 本当は今すぐにでも倒したいが、サンダルフォンの言うことを信じるなら、ガブリエルが復活する方が確実にカルラくんを助けられる。


 問題があるとすれば、カルラくんの体がもつかどうか……

 ディアネイラみたいに衰弱しない事を祈るしかない。



「う、ぐ、くそったれ……」

 ラファエルの治癒が効いたのか、ウリエルは辛うじて喋れるくらいには回復した。


「クウマ……」

 エンマさんが少しだけ悲しそうな眼差しでウリエルを見つめる。



「覚えておけよ、お前らは必ず私がこの世から消し去ってくれる」

 メタトロンはナンバーズ2人とジオ王を鋭く睨む。


「ふん、帝国を撃退したら相手してやる」

 ジオ王は未だメタトロンを挑発する。



「天原竜斗……この決着はいずれ……」

 ラファエルはウリエルを治癒しながら俺を見つめる。


「カルラ……っ!」

「カルラくん……」


 ミロクさんが悔しそうに歯軋りする。

 そんなミロクさんの両肩に後ろから手を添えるレイナ。



「では、いずれ……」

 サンダルフォンが呟くと、順々に天使達はどこかへ転移していった。




 空を覆う雨雲から降っていた小雨は、徐々に強さを増していった。

 どこか遠くの方で雷が鳴る。



「忘れてました」

「!?」


 完全に不意をつかれた。

 サンダルフォンがいきなし俺の目の前に現れた。

 サンダルフォンはすっと音もなく俺に近づくと小さな声で耳打ちした。



「…………は、…………すよ」

「!?」


「では」

 サンダルフォンはクスリと笑うと今度こそ本当に転移していった。



「何だったんだ……」

 エンマさんが小さく呟く。


「竜斗様……?」


「…………ああ」

 ほんの少しの間、茫然とすると、俺はゆっくり立ち上がった。



 雨が本格的に降りだす。

 雨は街に残る火を消すが、悲しみだけは消してくれない。

 俺達は……勝てたのか?

 いや、勝ててない……

 天使達にいいようにやられた……

 カルラくんを、皆を……護れなかった……



 取り敢えず俺達は城の方へと向かって歩き出した。

 サンダルフォンは言った……

 帝国が攻めてくると……

 対策を考えなければいけない……


 でも今は、今だけは、ほんの少しでいいから心も体も休ませたかった……


 降り注ぐ雨音と、水溜まりを踏む音だけが聞こえる……


 でも……

 俺の耳には今もサンダルフォンの言葉が繰り返し耳に残っていた……



「天原智歌は、生きていますよ」



 俺は立ち止まり空を仰いだ。



「智(ねぇ)……」



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