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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第九章【王国】
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水剣と黒煙



「よく頑張ったな」


 俺は3人を誉めてあげた。



「うぐ、うぐ、えぐ……」

「うっ、うっ、うっ……」

「ふえ~ん……」


 3人はいつまでも涙を流していた。

 余程怖かったのだろう……

 それでも3人は諦めずに最後まで戦った。



 レイナの胸の中で泣くルナちゃんとファナちゃん。

 レイナはそれを優しく抱きしめる。

 俺はザナードくんの頭に手を添えて、優しくポンポンと叩く。


 そして当然気づく……

 カルラくんとクウマがいない事に……



「皆さん!!」


 少し遅れてミラもボスモンスターの間へと到着した。

 置いてけぼりにしたのは反省してる……けどお陰でザナードくん達を間一髪助けれた訳だし、許して欲しい……

 まぁ気にしてる様子はないけど……



「ミラ!?」

「ミラさん!?」

「ミラ!?」


 3人はかなり驚いたようだ。

 昔からの知り合いが来てくれた事は嬉しいのだろうが、3人は恥ずかしさからか急いで涙を拭っている。



「良かった……本当に良かったです……」

 ミラも安心したのか胸を撫で下ろす。


「ミラも、来てくれたのか……」

 ザナードくんは少しだけ嬉しそうに微笑んだ。




 少しだけ落ち着くと、唐突にルナちゃんが謝り出した。


「本当に、ごめんなさい!」


 ルナちゃんは頭を下げる。

 それを見たザナードくんとファナちゃんも謝り出した。


「す、すみませんでした!」

「申し訳ありませんでした!」



 きっと王院生なのに迷宮攻略に来たことを謝っているのだろう。

 勿論ルールは守らないといけないが、俺は怒る気にはなれなかった。

 だって……



「クウマのせいだろ?」

「ですが……」


「それよりも……」


 俺は気になっている事を尋ねようとした。

 その瞬間、地面のあちこちが光出すと、弾ける様に消え、1つの【神珠】が現れた。

 恐らく光ったのはスライムの残骸だろうな。



「これが神珠……?」

「綺麗……」

「ええ、とても美しいですわ」


 3人は見るのは初めてみたいだ。

 俺はその神珠を手に取ると、ザナードくんの前に差し出した。



「えっ!?」

 ザナードくんは、訳が分からず驚いている。


「これは君のだ」

「そ、そんな……ボスを倒したのはリュートさん達です……それに……Aランクの神珠なんて俺には……」


 ザナードくんは何故か申し訳なさそうにして俯く。

 俺はそれを見て首を横に振った。



「確かに規則を破って迷宮に来たことは反省しないとな。本当に死ぬところだったし。でも……そうだな……強くなりたかったんだろ?」

「そ、それは……」


「分かるよ、俺も強くなりたいし……焦ったんだろ?」

「リュートさんでも焦るんですか?」



「まぁ焦っている訳ではないけど……強くなりたいって気持ちは分かるよ」


 俺は喋りながらレイナを見つめる。

 レイナは目が合うとニコリと微笑んでくれた。

 婚約者が頼もし過ぎるからな、俺ももっと強くなりたい。

 うん、俺も焦ってるのかな?



「だから、これは君が受け取れ。Aランクになった時に、大事な人達を護れるように……」



 神珠【剣/水/巨大化/A】


 レイナに視て貰った結果がこれだ。

 迷宮はザナードくんを選んだ……俺にはそう感じた。

 俺は手に持つ神珠を再度ザナードくんに差し出した。


 決心してくれたのかは分からない……

 だがザナードくんは恐る恐る両手を差し出して、俺から神珠を受け取った。



「重たい、です……」

 ザナードくんはうっすら涙を浮かべる。


 うん、その感覚は分かる。

 俺もマナさんから神珠を受け取った時にそう感じたからな。

 ザナードくんはこれからもっと強くなれる。

 俺はそう確信した。



 すると迷宮全体が光出し、俺達は迷宮の外へと転移した。



◆◆



 まるで何も無かったかの様に、既にそこには迷宮は跡形もなく消えていた。

 空は明るく、陽が暖かかった。



「なんとか攻略できたな……」

「そうですね……」


 だが肝心な問題が残ってる。



「そろそろ話してくれ、迷宮で何があった?」

「……はい」



 周りを見渡すがルシーダさんの気配がないので、俺達はその場でルシーダさんを待ちながら話を聞くことにした。




「最初は順調でした……Aランクになる一歩手前の階層まで、ほとんど危なげなく攻略していました……」

「そしたら……いきなりでした……やつらが来たのは……」


 ルナちゃん、ザナードくんの順に話してくれる。



「やつら?」


「はい、クウマ叔父さんが迷宮攻略を中断すると同時でした……見知らぬ女性が2人、私達の目の前に現れたのです……」


「そいつらは……本当にいきなりでした……1人の女性がスキルを唱えると突然カルラが苦しみ出して……」


 スキルか……



「それで……」

 ザナードくんが口ごもる。


「それで私とザナードさんは彼女に襲いかかりました……彼女を止めればカルラさんが助かると思って……」

 今度はファナちゃんが説明してくれる。



「それから?」


「…………その、お恥ずかしい話、その後の記憶がありません……気づいた時には、クウマとその2人と……あとカルラさんもいなくなっていました……」



 ふむ……

 話を整理するとこうか?

 クウマに誘われ迷宮攻略をしていたら、突然女性が2人現れた。

 んで、スキルを唱えたらカルラくんが苦しみ出して、気づいたらここにいる3人を残して消えていた……と。



「竜斗様……」

「分かってる……間違いなく天使だな」


 この時点で迷宮に七人いる。

 クウマが最初に迷宮に入ったのならSSランク以上は確定している事になる。

 邪眼の可能性も捨てきれないが、カルラくんだけ連れていったのなら……天使で間違いない。



「天使ってあの……神話に出てくる天使の事ですか?」

「ああ」



 俺は3人に簡単に説明してあげた。

 天使について、ランクZEROについて、迷宮について……

 あと、俺の名前も。




「し、信じられませんわ……」

 ファナちゃんには信じ難い事だった様だ。

「竜斗様だったなんて……」


 あ、そっちね……

 この子結構神経図太いな……

 天使より俺の方が気になるなんて……



「あ、そう言えば!」

 ルナちゃんは何かを思い出した様だ。


「クウマ叔父様が言ってました……自分は正真正銘クウマだけど中身が違うと……」


 はい、確定!



「そう言われれば…………確か、ラファ……とかウリ……とか、言ってたような……」

「なっ!?」



 まさか天使、ラファエルとウリエル……か?

 でもガブリエルの話だとラファエルは俺が倒した筈……どういう事だ?

 生きて……いたのか?

 でも龍は確かに倒した筈だ。


 それにザナードくん達の話だと、あともう1人いる……

 くそっ!

 訳が分からないぞ!




 すると俺達の目の前の空間が揺らいだ。

 誰かが転移してくる……

 ルシーダさんかな?



「遅かったですね、ルシー……ダ…………っ!?」

 ミラが声を掛けるが、現れた人物の姿を見ると、言葉を詰まらせ驚愕した。


「ルシーダ!?」

 ミラがルシーダさんの側に駆け寄る。


 転移してきたルシーダさんはボロボロの傷だらけだった。

 ルシーダさんはその場に倒れこんだ。



「う……も、申し訳……ありません……ミランダ……様……」

「一体どうしたのですルシーダ!?」


 ミラは治癒の神器を即座に発動させる。



「うっ……む、謀反です……ク、クウマ様が乱心……されました……」


「「なっ!?」」



 ルシーダさんによると、攻撃が開始されたのは昨日の夜からとの事だ。

 クウマと謎の人物達による王都襲撃……

 エンマさんとミロクさんが交戦しているが劣勢との事だ。

 ルシーダさんは隙を見てなんとか転移してきたそうだ。



「竜斗様あれを!」

 レイナが南方を指差す。


「っ!」

 遠くの方で微かに黒煙が上がっているのが分かる。

 王都が燃えてるんだ。



「っ戻ろう!」

「はいっ!」


「で、ではこれを……王都への転移神器……です……」

「分かりました」

 レイナが転移の神器をルシーダさんから受けとる。


 レイナは急いで神器に魔力を込め出す。



「俺とレイナは先に王都に戻る! 大変だろうけどミラはここで皆を護ってくれ!」

「わ、分かりました」


「待ってください! わ、私も……私も戻ります!」

 振り向くとルナちゃんが強い眼差しでこちらを見つめている。


 余程カルラくんが心配なのだろう……

 でも……


「……ダメだ」

「な、何故です!?」


「相手は間違いなく天使だ……どんなスキルを持ってるか分からないし、レイナや俺レベルの強さなんだぞ……正直ルナちゃんは足手纏いだ」

「っ…………」


 ルナちゃんはしょんぼりして(うつむ)く。



「ルナ……竜斗さん達に任せよう」

「ええ、そうですわ……私達がいて、万が一人質にでもされたら、それこそ本当にお二人の足を引っ張りかねませんわ」


「…………うん」


 ザナードくんとファナちゃんの説得で、ルナちゃんは納得してくれたようだ。




「竜斗様、いつでもいけます」

 レイナの魔力が貯まったようだ。


「よし、なら行ってくる!」



「竜斗様……お願いします」

「カルラを……頼みます……」

「カルラくん……」

「レイナ様もお気をつけて……」


 皆の声援を受けて、俺とレイナは頷いた。

 そして俺はレイナを見つめた。

 レイナはまた頷くと、神器を発動させた。



◆◆




 王都クラフトリア、中央【大広場】……



 俺とレイナは王都に転移した。


「おわっ!?」

「竜斗か!?」


 転移すると、いきなしエンマさんにぶつかりそうになった。

 エンマさんはボロボロだった。

 しかも、その後ろには同じ様にボロボロなミロクさんや、兵士達に、ギルドの人達もいた。



「レイナ……来てくれたか……」

 ミロクさんが嬉しそうに弱々しく呟く。

 本当に安堵した様な表情で、弱々しいミロクさんを見ていられなかった。


 いや、安堵したのはミロクさんだけではなかった。

 兵士達も俺とレイナが来たことが余程嬉しかったみたいだ。

 助かった……そんな表情をしている。



「酷い……」

 周りを見渡すレイナが悲観そうに呟いた。


 仕方ない……

 ボロボロなのは皆だけでなく、街全体がだったからだ。

 至るところで建物は燃え盛り、黒煙が舞い、遠くから悲鳴が聞こえる。


 

「ミラは……いないのか?」

 エンマさんが尋ねてくる。


「ああ、ルシーダさんを治癒している。それにザナードくん達もいるから連れてこなかった」

「そうか……彼らは助かったか……」


 エンマさんはミラがいない事を残念そうにしたが、ザナードくん達の無事を確認すると少し安堵した様だ。



「それよりも一体……っ!?」

 状況を聞こうとしたが直ぐに止めた。


 それが出来ない程、嫌な気配を感じた。

 レイナも感じ取ったのか、直ぐに俺達は身構えて警戒した。



「またきた……!」

「もういやだ……!」

「やめてくれ……!」


 兵士達の体が尋常じゃない程、震え出した。

 それぐらい怖い体験をしたのだろう。




「見つけたぞ…………天原竜斗おおおおおおおお!!」


 大気が震えるほどの怒号が響く。



 現在俺達は大広場中央で、円を組むような陣形だった。

 そして、そいつらは現れた。

 街の方からの正面と、左右からの三方向から。



「なっ……!?」

 信じられなかった……



 だって、なんで……?

 迷宮はランクAだった。

 ランクZEROの迷宮じゃないのにどうして……

 まさかもう……

 そもそも、こいつは俺が倒した筈だ……?

 どうやって?


 俺は正面から来る少年を見つめた。


 嘘だ……

 嘘だ……

 嘘だ……


 信じたくなかった……

 だが無情にも神眼は、彼のステータスを正確に俺に視せる……



「カルラくんっ!?」


 俺は叫んだ。


 目の前に立つ少年は普段と変わらない……

 幼さの残る顔に、褐色の肌……

 足には見たことのある、義足代わりの神器……


 でも中身はもう既に違っていた……




【ラファエル】

種族

【天使】

クラス

【七大天使】

ランク

【ZERO】

先天スキル

【属性<天風>】【天翼】【天拳】【天速】

後天スキル

【天体】【天鋼】

特殊スキル

【天眼】

神器

【風蓮脚】<具足/風/無/D>

【風乱拳】<籠手/風/無/C>




「会いたかったぞ天原竜斗」

 彼からは見たことのない不気味な微笑み……



「くそっ、たれ……」



 カルラくんはもう天使になっていた……


 どうしたらいいんだよ……




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