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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第九章【王国】
240/318

研究と日記


短めです。

◆◆より、日記視点です。




「おぉ……ここが【研究所】か……」


 俺は研究所と呼ばれる建物に入ると、素直に驚いた。





 ジオが失墜してから1週間……

 王国は大騒ぎだった。


 王の蛮行を突然知らされた民にとっては、信じ難いニュースだったようだ。

 そして本人の思惑とは裏腹に、エンマさんが臨時的な王代行となった。

 納得していないのは本人だけで、誰もが認めてると思う。


 そして……ミロクさんとミラによる、強行にも似た、関与したと思われる貴族の粛清。

 オークションで魔族を扱わないと決めた禁止条例。


 そして1番がスレイヤ神国との和平条約だ。


 闇王プリンガがミロクさんに渡した手紙の内容が正にそれだったのだが……案の定、ジオは読んですらいなかった。

 エンマさん達、四傑の意志で可決となった。

 準備等、直ぐには無理だが、近い内に使者が来るそうだ。



 それらを1週間足らずでやってのけたホウライ王国の手腕。

 政治とかさっぱりなので、それがどれ程凄いのかは知らないが、何となく凄いとは感じていた。



 そしてギルドも依頼で大忙しだった。

 シロは宿から出ずに部屋で留守番をし、俺とレイナは交代する感じで依頼をこなした。

 闘王祭が終わった直後と言うこともあり、名指しで依頼してくる奴等も多く、内容もSランク級ばかりだ。


 まぁ魔物を倒す依頼ばかりだから、大した事はなかったけど。

 にしても、魔物の出現がここのところ更に多くなってきている。

 嫌な感じはする……



 そして、ジオとナンバーズだが……

 今のところは保留だそうだ。

 ジオや一部の貴族達は拘束され、ナンバーズがどうなったかはまだ分からない。

 今度、エンマさんに聞かなければ……シロも心配しているし。



 そしてあっという間に1週間が経ち、気候も穏やかになってきた昼下がり……

 俺とレイナは、ある人物達と待ち合わせをした。



 ギルド【風林火山陰雷】の3人。

 ギルマスのトーマス爺、ドワーフのガルデア、エルフのフィラだ。

 闘王祭中に約束した通り、色々と話をすることになった。

 残念ながらエンマさんは多忙過ぎてこれなくなったみたいだ。



 そして案内されたのが、英祖ショーマ設立の研究所だった。



「す、凄いですね……」

「ああ……」


 俺とレイナの開いた口が塞がらなかった。



 見渡す限りの蔵書の山。

 外観は何て事の無い建物だったが、中は本で埋め尽くされていた。

 多角形の部屋の壁には、天井まである巨大な棚が綺麗に置かれ、本が綺麗に陳列されていた。

 そしてその中央は螺旋階段となっており、下へと続いていた。


 5人で階段を降りる際も、常に壁際には本、本、本、本、本、本……

 本だらけであった。

 どうやって本を取るんだ……と思ったが、どうせ読まないから気にしない事にした。



 ある程度降りると、やっと1番下まで辿り着いた。

 1番上の部屋と同じ感じだったが、違う所が1つ。

 1階だと入り口に当たる所に、地下だとそこには1つのボロボロの机と1冊の本が置かれていた。



「これは?」

 俺は本には触らずに尋ねた。

 触った瞬間に朽ちて崩れそうな程、ボロボロの本だったからだ。



「英祖ショーマの日記じゃ……」

 爺さんが答えてくれた。


「日記、ですか……」

 レイナも興味津々に尋ねた。


「所々、破れておるし、読めん箇所もあるが……ショーマの生い立ちが綴られておる。まぁ途中までじゃが……」


 爺さんの顔は少し残念そうだった。

 余程続きが気になるのだろうか……



「見せたいものってこれ?」


 俺が尋ねると、3人は頷いた。



「これには幾つか不可解な事が記載されておる……いや、寧ろ最初に書かれておる事が1番不可解なのじゃ……」

「……俺が読めばその謎が解けるの?」


「ふむ……まぁ、概ねそうじゃ。それを読んでお主の感想を聞きたいってところが正解かのぉ~」

「ふ~ん……」



 俺は本をゆっくりと手に取った。

 レイナは俺の横で覗き込むようにしている。


 3人は少し後ろで、ドキドキしているような何とも言えない表情で、ただ立っていた。


 俺はゆっくりと本を開いていった。



 そこには……知りたかったような、知りたくなかった様な……衝撃の事実が書かれていた……




◆◆




『神世歴806年、〇ノ月……』



『今でもあの日の事が鮮明に思い出される……』


『俺にはこれからしなければならない事がある……ただ、生きて帰ってこれる保証はない……だから……筆を執ることにした……』

『所々曖昧だが、思い出せる範囲で書き綴ろうと思う』

『願わくばこれを、最愛の妹と弟に読んで欲しい……』

『兄はここで精一杯生きたのだと……』



『あの日は、暑い夏の日だった』

『世間では夏休みと呼ばれる時期に入っていた……王院にも取り入れた制度だから、誰が読んでも分かる単語だろう』


『俺は毎日部屋に引き篭もっていた……俺には夢があり、どうしてもそれを諦めきれずにいた』

『その日もクーラーを効かせた部屋で、漫画家という夢を諦めきれず、投稿する漫画をただひたすら描いていた』

『弟はこんな兄を小さい頃から変わらず慕ってくれていた。だが、妹はこんな俺に呆れていた……』


『普段から豚だの何だのと罵られていたが……あの頃の俺には、声優という夢を諦めた妹の方が情けなく思えた』


『その日も部屋の前で妹と鉢合わせた……』

『鉢合わせるといつも口論になっていたが、気候のせいもあってか、その日はお互いにいつもより熱くなっていた……』



『今でも悔やまれる……』

『妹と初めて取っ組み合いになってしまった……』

『いつもなら弟が止めに入ってくれるのだが、部屋で勉強だったか?をしていて、まだ止めに来てはくれなかった……』


『俺の家は2階建てで、2階は3人の部屋が横一列に並んでいる』

『俺と妹は階段近くで口論していた』

『そして……俺と妹はバランスを崩し階段から滑り落ちた……』


『走馬灯とは違うが……落ちる際、弟の部屋が開かれるのを見た』


『俺と妹は打ち所が悪かったのか……立ち上がれなかった』

『妹の頭からは血が流れていた……救急車を呼びたいが、俺の意識も朦朧として、動けなかった……』

『情けないが、弟に任せることにした……扉を開けようとしていたから、直ぐに気づいてくれる筈だ』



『そして、意識がなくなる間際……』

『今でもあの言葉が頭の中をよぎる……』



「ごめ、んね……しょ……兄…………」



『これが、妹と交わした最後の会話だった……』





次話より過去編突入……ではないです。

過去編ですが、なるべく簡潔に纏めて、数話程にするつもりです。


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