宝雷と天空
更新空いて申し訳ありません……
言い訳は後書きに……
「おらぁっ!!」
俺はジオを殴り飛ばした。
我慢の限界だった。
もしかしたら……もしかしたら、と……
こうする理由があるのではと思った俺が馬鹿だった……
こいつは自分の下らない身勝手な理想で今まで沢山の人達を傷つけてきた。
いや、今もだ……
殴り飛ばされたジオは大の字のまま起き上がらない。
「お前の身勝手な行いでどれだけの人達が傷つけてきたと思ってんだ!!」
「身勝手? 当然だ、人間とは身勝手な生き物だ。唯一神アルカ様がそう人間をお造りになったのだからな」
「なっ!?」
ジオは上体だけをゆっくりと起こした。
「なら小僧、逆に問おう。何故、我にスキル【王気】があると思う? 何故3国の王にのみ許される?」
「それは……」
「答えは簡単だ。人間が愚かで傲慢で身勝手だからだ。自己中心的な生き物……そしてその最たる生き物が、余と、皇帝アーサーと、女王ディアネイラだったのだ」
ジオの表情が変わる。
どこか無表情だったジオの顔に熱が帯びている。
「王だから【王気】が目覚めたのではない。世界で最も身勝手だから我らは【王気】に目覚めたのだ」
何も言い返せなくなった……
だって、それならなんで俺に王気が……
いや、分かってる……
俺が身勝手な生き物じゃないなんて言えない……
魔族の為に、レイナの為に戦うと決めた……
その為に、俺にとって敵となった人間を殺してきた……
それは、俺の傲慢さだ……
だから俺に王気が目覚めた……のか……
「いいえ、それは言い訳です!! 貴方の下らない理由で、貴方の暴挙を正当化しないで下さい!!」
「レイナ……」
一瞬、意識が飛んでた……
レイナの声はよく通り、俺の意識をはっきりさせるのに充分な程だった。
「なら女……お前に問う。お前の夢はなんだ? こんなところにいるくらいだ、さぞかし高尚な夢があるのだろう?」
ジオは真っ直ぐにレイナを見つめる。
「私の夢は今も昔も変わりません。魔族の皆が安心して暮らせる世界を作る事です。シロちゃんの様な子が悲しまない世界を作る事です!」
「ふん、下らんな……なら邪魔な人間はどうする? 殺すのか? 小僧みたいに俺を殴り飛ばすか?」
「……確かに私は今まで多くの人を手にかけました。魔族を救うためと、自分に言い聞かせて多くの人の命を奪いました……」
「みろ、だから余の言う通り……」
「だからこそ、私は戦うのです! 今苦しんでる子達が、幼い命が、これから生まれてくる命が、もう2度と悲しむ事の無いように!!」
「レイナ……」
思わず見惚れてしまった。
凛とした姿が凄くかっこよかった。
「竜斗様と出会えたからそう思えるのです。私は、私達は決して許されません……でも、竜斗様と出会えたからこそ、世界は変われるのだと思える様になったのです」
レイナは俺の方に振り向くと優しく微笑んだ。
俺は、弱い……
ジオに対する自分の答えを持っていない……
いや、有ったとしてもそれこそ、傲慢で身勝手と思われるだろう……
正解なんてないのかもしれない……
レイナの言葉はそんな俺の為の言葉に思えた。
情けないな……
「魔族と人間か……両者は決して相容れぬ……どこかに歪みは生まれ必ず衝突する……」
「だとしても、手を取り合わない理由にはなりません。違う考え方を持つからこそ人は人に惹かれるのです」
ジオの問いにレイナは即答する。
「…………」
ジオは暫しの沈黙の後、ゆっくりと立ち上がった。
「本当に面倒だ……実に下らん時間だったな……こんな問答に意味などない……決して答えなど出ぬ…………だが、初めてかもな……人間に興味を持ったのは……」
一瞬、ジオが優しく微笑んだかの様に見えた。
「だからこそ、お前達は、余が直接、殺してやる!!」
ジオは神器を発動させた。
輝くクリスタルの様な宝剣。
ジオはその剣を高く掲げた。
剣に光が集約される。
王都中、いや王国中から光が集まるようだった。
「ランクでは【高天原】が上かも知れぬが、この【宝雷】こそ真の王国最強神器! 宝雷の光をその身に受けることを、光栄に思え屑共!!」
とんでもない魔力だった。
そして、とても綺麗な神器だった。
王に相応しい輝く神器だと思ったのは黙っておこう……
それだけの光が集まり、夜になった王国を明るく照らす。
「竜斗様」
「レイナ」
俺とレイナは見つめあった。
「結局俺は戦うことしか出来ない。ジオに言い負かされ、それでも自分の答えが出てこない……情けないよな……」
俺のそんな言葉を聞いてレイナは首を横に振った。
「そんな事ありません。竜斗様は誰よりも優しいです。私達の為にその手を血で汚してる事が、私達にとってそれがどれだけ希望となっているか」
「でも、ジオに言わせたらそれは身勝手で傲慢……」
「確かにそうかも知れません。あの方の言うことは正しいのかも知れません。でも、シロちゃんは助けを求めてきました」
「!?」
俺はハッとなりシロに振り向いた。
シロは怯えている。
ボロボロの布を纏い、自分が誰かも分からない……
傷だらけで……お腹を空かせて……頼る人もいない……
それでもなんとか逃げて俺達に助けを求めてきた。
「シロちゃんが助けを求めてきた。今はそれだけで充分なのでは?」
レイナは満面の笑みでニコリと微笑んだ。
「……ありがとうレイナ。俺が人を手にかけた罪は消えない。それでも……俺は……俺が助けたいと思う人達を助けるよ」
「ふふ、身勝手ですね」
「そうだな」
「大丈夫です。竜斗様の罪は私も背負います。だって私達は……」
「「婚約者だから!」」
◆
俺は絶刀・天魔を力強く握りしめ構え直した。
刀の柄を右耳辺りに持っていき、刃を真っ直ぐ空に向ける……八双の構え。
いや、まだだ!
もっと高く!
俺のありったけの力を刀に込める!
【蜻蛉の構え】
森羅万象に魔力を込める!
水も、風も、地も、雷も!
それらをスキル【合魔】で混ぜ合わせる!
【天空属性】
「無駄だ、いくら足掻こうが【宝雷】には絶対に勝てん!」
俺の構えを見ても、魔力を感じても、ジオは怯まなかった。
それだけ自信があるのだろう。
「いいからこい! 全て断ち斬ってやる!!」
俺の後ろにはシロが……
失敗作と呼ばれるナンバーズが……
そして、レイナがいる……
皆、護ってみせる!!
「終わりだっ!」
光輝く宝剣の刃は巨大な光剣となり、ジオは真っ直ぐに俺達に向けて剣を振り下ろした。
「クラフト流剣術秘技・宝雷剣っ!!」
確かに凄い神器だ……でも!
「示現・天空の位 天空烈光!!」
光剣目掛けて、豪剣というべき一太刀を放った。
そして、刃と刃がぶつかった瞬間……
音はなかったが、弾けるようにして【宝雷】の光は消えていった。
「ば、馬鹿な……な、何が……何故……宝雷の光が……!?」
ジオは戸惑いを隠せない様子だった。
当然だ。
天空属性は、魔力を断ち切る属性。
どれだけの魔力を込めようと、全て空に返す。
「レイナ!!」
空かさず叫ぶ。
「はい!!」
レイナは一瞬にして交代するように、俺の前へと出る。
「っ!?」
俺が叫んだ時には、既にレイナはジオの眼前に立ち、拳を振りかざしていた。
「余はっ! 余はっ! ホウライ王国の真の王っ! 神を造るため……っ!!」
「魔神拳っ!!」
レイナのありったけの力を込めた拳が、ジオの顔面を捉えた。
悲鳴を上げることすら許さない程の強烈な一撃は、ジオを城の方まで殴り飛ばした。
夜勤がなかったもので……
てのが言い訳の半分で……もう半分は、何回も書き直していたからです。
今までで1番書き直しました。
何回全部消した事か……
本当はもっと言い合いを描きたかったのですが……今の作者ではこれが限界です……