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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第九章【王国】
233/318

別れと出会い


新章です。




「おはよ……」


 昨日は中々寝付けず、あまり寝られなかった。

 吐き気は中々収まらず、王都は夜中なのになんだか騒がしかった。

 朝の日課もサボってしまった。



 俺は自分の部屋から出て、リビング的な場所に置かれているソファに腰かける。



「なんだ眠れなかったのか?」

 サクヤさんはいつも通りな感じで、朝の紅茶を口にしていた。


「なんか食べ過ぎたみたいで、気分が悪くなって……」

 そう言うと、なんだかまだ少し気持ち悪い。


「ふふっ、体は大事にしろよ」

 サクヤさんは微笑む。



「おはよ」

「おいっす」

「おはようございます」


 ユイ、キョウ、レイナの順にほぼ同時に自分達の部屋から出てくる。

 俺とサクヤさんが朝の挨拶をすると、皆もソファへと腰掛けた。



 穏やかな朝の始まりだった。

 いや、なるはずだった……



「皆起きたな……」

 するとサクヤさんは神妙な面持ちで、紅茶の入ったカップをテーブルに置いた。


「皆に話しておきたいことがある……」


 サクヤさんが話すのを俺達は黙って聞いていた。

 いつになく真面目な感じが、俺達をそうさせた。



「私は一度神国に帰ろうと思う……」


「「っ!?」」

 俺達は当然驚いた。



「リュート……いや、竜斗のお陰でイカルガの神器【神鳴】を見つける事が出来たし、私は一度イカルガの墓前に花を添えたいと思う……まぁ報告も兼ねてだな……」


「そりゃ、また急ですね……」

「……まぁな。私もまさかあんな感じで神鳴が見つかるとは思わなかったからな……何て言うか……その、アレだ……原点に立ち返ろうかと思ってな……」



 聞けば、サクヤさんにとって神鳴を見つけるのは最終目標だったらしく今は何もする気になれないとの事だ。

 故郷である神国に帰り、イカルガさんに報告しないと前に進めないとの事らしい……



「それで、お前達はどうする? 神鳴の衝撃が強すぎてあまり覚えてはいないが、竜斗とレイナは何かしたくて王国に来たのだろう? 残ってもらって構わんぞ」


「俺は……そうですね。王国に残ろうと思います」


 俺の答えにサクヤさんが頷く。


「私も残ります。竜斗様がいる所が私の居場所なので」

 レイナも残る。



「分かった。それで、キョウとユイはどうする?」


「そうっすね……俺は……一度帰ろうかな……?」

「あ、私も……やっぱ少し戻りたいかなって……」


「そうか……分かった」



 なんか朝からとんでもない事になった。

 まさかこんな形で3人と別々になるなんて……



「それで……いつ神国に?」

「そうだな……準備をしたら今日中には王都を離れようと思う」


「そう、ですか……」

 なんか寂しくなってきた。

 折角3人と出会って、闘王祭で優勝して、これからもっと皆で楽しい事をしたかったのに……



「そんな顔をするな竜斗、直ぐに王都に戻ってくる」


 どうやら顔に出ていた様だ。

 恥ずかしい……



「この宿も買い取ってあるし、好きに使ってくれて構わん」

「ありがとうございます」


「そうだぜ竜斗! どうせなら俺らが帰ってる間にメンバーを増やしといてくれや!」

「そうだよ、この階層だってまだまだ空き部屋だらけなんだから!」

「そうだったな……戻ってきたらメンバー集めといくか……それに来年の闘王祭にも出ないといけないしな」



 なんか3人に励まされた。

 別れだが一時的なものだ……

 そうだよ、今生の別れという訳じゃないんだから。

 明るく3人を見送ろう。



「了解。3人が戻ってくる頃にはこの宿をメンバーで一杯にしときます」

「そうですね。3人の居場所がないくらいはメンバーを集めておきます」


 俺とレイナもイタズラっぽく返した。



「う、それは……」

「え~……私この宿気に入ってるのに……」

「か、刀好きだぞ! 刀を扱わない者は絶対に入れるなよ!!」


「分かってますって」

「ふふ」



 俺達は笑いあった。

 何も変わらない。

 皆に出会えて本当に良かった。

 それに来年の闘王祭は迎え撃つ側だ。

 あのミロクさん達が俺達を目標に挑んでくる。

 悲しがってる暇はない。


 王国が少しでも良くなるようにしなくちゃ……また無事に闘王祭が開けるように……魔族ももっと闘王祭に出られるようにしないとな!

 あ、来年はガオウ達を呼ぼうかな……

 うん、それはダメだな……

 多分、圧勝してしまう……



 でも、もっと大きなイベントにしたいな……

 折角なら神国も帝国もアルカディアも交えた、本当の最強のギルドを決める大会にしたい……



 でもな……他の奴らだとSランクには勝てないだろうし……

 て、そういやミロクさんはSSランクになってたな……

 レイナかアーシャじゃないと勝てないぞ……


 う~ん……

 まぁその辺りも3人が帰ってきてから話し合うか。

 その為にも、俺ももっともっと強くなって頑張らなくちゃ!!




 そして、その日の午後……3人は王都を後にした。

 王都の入り口まで見送りに行った。

 転移の神器は使わず、歩いて戻るとの事だ。

 なんだかんだで、やはり時間がかかりそうだ……

 サクヤさんの気持ちの整理がつくまでは王国には戻ってきそうにないな……


 俺は必死で涙を堪えた。

 悟られないよう、精一杯の笑顔で、大きく手を振り、見送った。







 3人を見送った後、俺とレイナは取り敢えずギルド本部を目指した。



「なんだか急に寂しくなりましたね」

「だな。本当に急だったよ……」



 大広場を通る際は、皆にもみくちゃにされた。

 まさか【天王】【武王】【闘王】の称号がここまで凄まじいとは思わなかった。

 王都は人で一気にお祭り騒ぎになった。

 まぁまだ闘王祭も終わったばかりだしそれは仕方無い。


 だが騒がしかった分、大広場を抜けると余計に寂しさを感じさせた。

 サクヤさん達、いつ帰ってくるかな……

 もう既に逆ホームシックだ。


 いかん、いかん!



「ギルド本部に行ったらメンバー募集の紙でも貼る?」

「あ、それはいい考えですね。【王院】の【高等部】を卒業した子達なんか入ってくれるのでは?」


 なんか新卒者を採用する会社の気分だな……

 そうなると教育するのは当然、俺とレイナの二人だけか……

 なんか苦手だな……

 て、俺と同い年じゃん!?

 絶対無理だよ!!



「やっぱ今のは無しで……経験者にしようぜ……」

「何故です? 良いと思いますけど……?」



 そうこうして歩いてる間に、ギルド本部が目に入ってきた。

 すると、いきなし俺は服を引っ張られた。



「のあっ!?」

 バランスを崩すも、なんとか転けずに持ちこたえた。


「竜斗様!?」

 レイナが心配してくれる。



 路地裏だからか、辺りは薄暗い。

 そんな路地裏の更に細い脇道から1本の腕が伸びて、震えながら俺の服を引っ張る。



「お、お願いします……た、助けて下さい……」



 ん?

 この綺麗な声ってもしかして……



「貴女は、昨日の……?」

「やっぱり……昨日ぶつかった、方達ですよね……?」


 女性は何かに怯えるように辺りをキョロキョロと見回す。



「助けてってどういう事……目の前にギルドがあるし、困ってるなら依頼を……」

「だ、駄目です! だ、誰にも知られたくないんです!!」


 女性は大声を出すが、直ぐにハッとし口ごもる。

 どうやら訳ありらしい……



「分かりました……取り敢えず私達が泊まる宿に行きましょう」

「で、でも……」


 助けを求めはしたが、宿に行くのは遠慮するみたいだ。



「大丈夫。俺達の宿はギルマスが買い取ってるし、今は俺達2人しかいないから」

「で、ですが……」



ーグギュルルル……ー



 テンプレらしく、女性の腹がなる。

 女性は照れたように俯き、お腹を抑える。



「ふふ、大丈夫ですよ。食べるものもあるし、そこでゆっくり話を聞かせて下さい」

 レイナは優しく微笑む。


「誰にも見られる訳にいかないなら、俺の神器【帰巣本能(マクロ・ス)】で宿に戻るか」

「それがいいですね」



「あ、ありがとうございます……」



「でもその前に……」

「?」

「貴女の名前を教えて下さい」

「…………」



 そうだな。

 取り敢えず名前は聞いとかないとな。



「私は……」

「魔人族のレイナ……さんですね? それとこちらの方が天原竜斗さんですね?」


「「!?」」


 あれ?

 俺、【変化】したよな……

 レイナもまだ【邪眼】を使ってる……

 なのに……なんでバレた……


 ま、まさか……



「申し訳ありません。私に名前は、ありません……私を呼ぶ者は私をナンバーで呼びます。ナンバー46……それが私の名前です」



 彼女はフードに手をかけ、名乗ると同時にフードをはぐり顔を露にさせた。


 綺麗な(たてがみ)のような金の髪、長く先端が尖った耳……

 そして何より目を引くのがその瞳だった……



 この世界に来て初めて出会う同じスキルを持つ者……

 彼女の瞳は金色に輝いてた。



 自分をナンバーで名乗る彼女は……



 俺と同じ【神眼】保有者だった……




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