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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
225/318

闘王祭と闘王⑤


更新空いてしまい、申し訳ないです……




「っ、すんませんギルマス……」

 ザイルは斬られた腕をダラリと降ろしたまま、舞台端にある数段の階段を降りた。


「なに、気にするな。相手もそうだが相性も悪かったな」

 ミロクは意にも介さず、平然と答えた。



「やれやれ、属性に頼った攻撃をするからこうなるんです」

 ザイルと入れ替わる様に舞台へと上がったのは、【拳武】の中堅……ガイス・ナイ。


「うるせ…………後は頼む」

 ザイルは弱々しく呟くと、地面に座り込んだ。


「…………任せてください」

 いつもはふざけ合う2人だが、やはり同じギルドの仲間なのか、互いに信頼もしていた。



 舞台へと上がったガイスは鋭くレイナを見つめると、ふっと微笑み、レイナと相対した。




『それでは、第五試合……レーナ選手対ガイス選手……試合……始め!!』




 試合開始の合図は為されたが、両者とも動こうとしなかった。しかも神器も発動させていなかった。



「おや? 何故神器を?」

「貴方こそ」


「私は紳士ですから、女性に先攻を譲りますよ」

「……いいのですか?」


「どうぞ」

 ガイスは余裕そうに、ふふんと鼻を鳴らした。


「では、お言葉に甘えて……」

 レイナは一呼吸すると神器を発動させた。



 レイナが発動させた神器は、具足の神器【銀鶴】のみ。

 Sランクの神器であるが、当然【邪眼】によりランクを偽る。


 基本的に相手のステータスを覗く【魔眼系】は、覗かれたと相手に気付かれるため、戦時でもなければそう簡単に使うことはない(人間関係を維持するために)。

 なのでSランクとバレている今、いつまでも邪眼を使う必要はないのだが……念には念を入れる、であった。



「武王の部・決勝で発動させた神器ですね……ふふ、強力そうですね」

 レイナの神器を見てもガイスは余裕そうにしていた。


「次は貴方の番です」

 レイナは片足の爪先でトントンと舞台を叩きながら促した。


「ええ、勿論です。いきますよ……私の全力!」

 ガイスは一気に魔力を込めた。

 体内の魔力は身体中を駆け巡り体全体へと満遍なく浸透され、体から漏れる魔力は風に乗って吹き荒れた。




「うげ……いきなしアレかよ……」

 そんなガイスを見て、ザイルは嫌そうな顔で呟いた。


「ガイスの奥の手だな。それほどまでにレイナが強いと分かっているからだろう」

 ミロクは冷静に呟いた。



『こ、これは、まさか!? ガイス選手、アレをする気だーー!!』

 クナの実況が闘技場に響くと、観客達はハッとし、気がついた。

 アレをする気なんだと……




 そして風となった魔力が落ち着くと、そこには光輝くガイスが立っていた。

 兜、鎧、籠手、具足、外套……5つの神器による同時発動。

 風に靡く外套(マント)だけが赤色で、残りの神器は全て金色に統一されていた。

 ガイスの肉体が見えるのは極僅かで、体の殆どが神器によって纏われていた。




「…………」

 レイナはそれを見て、ただただ唖然とした。


「どうです、この美しい神器は?」

「…………」

 ガイスはレイナに尋ねるが、レイナは言葉にならなかった。



 そう、この世界でここまで体を神器で覆う種族はいない。

 敵からの攻撃を防ぐのならガイスみたいに体全体を護った方が良いに決まっている。

 だが、現在……この世界アルカでは、長い年月により、ここまでするのは何かダサい的な風習になっていたのだ。勿論、理由はそれだけではないのだが……今現在ではマジでガイス以外は誰もしていない。

 英雄と呼ばれるエンマも兜まではしていなかった。



((うわ…………))

 観客全員が心の中で呆れ返っていた。


 だが!



「マジかっけぇ……!」

 一人だけ口に手を当て、そう呟いた者がいた。


 静まり返っていた闘技場に、その声はよく響いた。

 誰もが、声の主に振り向いた。

 そう……


 竜斗であった。


「やべぇ……マジかっけぇ……何あれ……俺もしたい!」

 竜斗はキラキラした目でガイスの神器を見つめた。



「嘘だろ?」

「嘘でしょ?」

「嘘ですよね?」


 そんな声がチラホラ上がった。

 サクヤやユイ、レイナでさえも竜斗の言葉に耳を疑った。



「ふふ、どうやら私の美しさを理解できる人がいるようですね」

 などとガイスはほざくが、内心はかなり嬉しかった。

 誰からも理解されない完全神器装備……それを理解したのが、今大会で色々と活躍した竜斗であったからだ。

 ガイスは口元が緩くなりそうなのを必死に堪えた。



「いや、どう見てもかっけーよ。黄金〇闘士みたいだし、やべぇ……俺も欲しい! あぁ、でも俺は剣士だしなぁ……そうだ! レイナもあれ…」

「絶対にしませんっ!!!!」


 竜斗が言い終わるより速く、レイナは拒絶した。


「えっ……」

 竜斗はそれ以上言葉が出てこなかった。

 皆の方を見回すが、誰もが静かに首を横に振った。




「先程は瞬殺出来なかったので、今度こそ瞬殺させて頂きます!!」

 レイナはガイスの方へ振り替えると、鋭く睨んだ。

 レイナ自身、もはや何に怒っているのか分かっていなかったが、ふつふつと怒りが込み上げてきていた。



「いいでしょう、先攻は譲り……」

「崩麗翔脚!!」


 レイナは間髪入れずに、跳び蹴りを繰り出した。



「ぐえっ!!」

 ガイスの腹へと叩き込まれた蹴りは強烈で、ガイスは後方へと蹴り飛ばされた。



 蹴り飛ばした後、レイナは少しだけ冷静になると、軽やかに静かに舞台へと着地した。

 そして蹴り飛ばされたガイスを見つめた。


 蹴り飛ばされたガイスだが、舞台から落ちることなく、ギリギリ踏みとどまった。


「ちっ」

 レイナは舌打ちした。



「な、中々やります……」

 ガイスは膝を着き、立ち上がろうとした。

 が……



「!?」

「崩麗旋脚!!」


 レイナは既にガイスの目の前に立っており、廻し蹴りを放っていた。



「のあっ!?」

 ガイスは辛くもエビ反りの様に上体を反らして、それを躱した。



「またっ!?」

 レイナは違和感を覚えた。

 今のを躱されたのもそうだが、先程の跳び蹴りも充分に仕留められる威力の筈だった。

 なのに、相手は未だ自分と相対していた。


「はぁ、はぁ、はぁ……さ、流石ですね……」

 ガイスの呼吸は乱れていた。



 舞台端での攻防。

 レイナからしてみれば、あと一歩。

 だがレイナは何故か仕留められる気がしなかった。



レイナ(レーナ)!!」

「っ!?」


 突如、竜斗の叫びでレイナはハッとした。

 レイナはガイスと距離を取るように跳躍した。



「ちっ、気づかれましたか」

 不意に変なところから声がした。


 そこは先程までレイナが居た場所だった。

 レイナは跳躍しながら、自分が先程までいた場所を見下ろした。


 信じられない事に、ガイスは拳を突き出しており……息を切らしていたガイスは、まるで蜃気楼の様に消えていった。

 レイナは辛くもガイスの拳を躱したのであった。



「こ、これは……!?」

 レイナは舞台へ着地するが、未だ状況が掴めていなかった。

 ガイスは何事もないように立っており、ダメージを負った様子もなかった。



「ふふ、信じられませんか【拳姫】。これは……」

「まさか【蜃気楼】?」


「…………」

 即答されたガイスは何も言えなかった。



 そう……ガイスの神器の能力は、竜斗がキョウの為に手に入れた神器と同じ【蜃気楼】であった。

 ミロクの認識すら僅かにズラした能力……厄介であった。

 レイナの額に汗がつたった。



 そしてレイナの懸念通り、レイナは苦戦した。



 再開された戦闘だが、レイナの攻撃は当たらなかった。

 繰り出される拳も蹴りも、全て霞を殴るように空振った。



「はぁ、はぁ、はぁ……」

「形勢逆転ですね」


 息を切らす、レイナ。

 反対にガイスは余裕そうにしていた。




『こ、これは何とも意外な展開になってしまったーー!! 華麗な動きから強烈な一撃を繰り出すレーナ選手の攻撃が当たらない!?』

『全力で放つ攻撃程、疲れる事はありませんからね』


 実況と解説により、闘技場は盛り上がる。




「まさか〇闘士のくせに、〇像拳を使うなんてな……」

 竜斗は呟いた。


「え、なに? 〇イント? 〇んぞう……なんて?」

 ユイは竜斗の言ってる事が理解出来なかった。


「要するに動きが速すぎて、そこに実体が残ってるかの様に錯覚するって事。まぁマツゲ君はそれを神器の能力でやってるんだけど……」

「へぇ…………?」


 ユイは説明されてもよく分からなかった。




「どうやらこの勝負は私の勝ちのようですね……そろそろ私の奥義で止めを刺させて頂きますよ!」

 ガイスはありったけの魔力を脚に集約させた。




「はぁ……はぁ……はぁ…………まさか、これほどとは……流石はミロクさんのギルド……一筋縄ではいきませんか……」

 レイナは疲労し、僅かに弱音を吐いた。


 だが……いつの間にか、ある1つの神器を握りしめていた。

 レイナ最強の神器【崩龍】。


「…………仕方無い、か……」

 レイナは覚悟を決めてソレを指へと嵌めた。



「!?」

『いけないっ!?』

『ミランダ王妃!?』

「!?」


 違和感に気付いたのは、ミロク。

 それと、実況席にいたミランダ王妃。ミラは勢いよく立ち上がると、どこかへ駆け出した。

 そして、ギルド【拳武】側にいる、フードを被る者。




「取って置きでしたが、仕方無いです……貴方も強かったです」

 レイナは体の力を抜いた。


「今更別の神器を嵌めた所で遅いですよ、私の魔力は完璧に練り上がっています!」

 ガイスは駆けた。

 レイナ目掛けて奥義の蹴りを繰り出そうとした。




「ダメだ、ガイス!!」

 静止させようと叫ぶミロクだが、遅かった。




「終わりです! 蹴麗輪舞脚・霞一文字!!」



 ガイスの廻し蹴りが放たれる。



「竜斗様のように一瞬で……」


 レイナは目を閉じ静かに魔力を込めながら、ブツブツと呟いた。

 竜斗の様に、神器を一瞬だけ発動させて直ぐに解除しようとしていた。

 それは計り知れない集中力を要した。


 だがレイナはやってのけた。




「魔神拳っ!!」




 居合い斬りのように、目にも止まらぬ速さの拳閃が放たれた。



 刹那、まるで空気の壁にぶつかるようにガイスの動きは止まった。

 そして……一瞬にしてガイスは後方へと吹き飛ばされた。

 声を挙げる暇さえなく、ガイスは気絶した

 観客席の最前列の壁は、放たれた拳閃と吹き飛ばされるガイスにより破壊された。


 だが、そこには結界を張るミラの姿があった。



「はぁ、はぁ、はぁ……よ、良かった……ま、間に合った……」


 ミラの巨大な結界により、観客に被害はなかった。

 だが、次の瞬間ミラの結界は粉々に砕けた。


「わ、私の結界が……!?」

 ミラは驚愕した。


 勿論、全力の結界ではなかったが自ら解除した訳でもないのに、結界は砕けた。

 それはレイナの攻撃の威力を物語っていた。

 かつて様々なSランク者の攻撃を防いだ結界……ミラはレイナに恐怖した。

 そして……レイナの攻撃も全力ではなかった。



 ミロクはレイナを見つめた。

 繰り出された攻撃後、直ぐにレイナの崩龍は解除された為、何が起こったかはわからない。

 だからこそ……ミロクの口元はかつてない程、緩んだ。


 恐怖と同時に早く戦ってみたい衝動に駆られた。



「…………」

 レイナは真っ直ぐに前を見つめていた。


 視線の先は、ガイス。

 壊れた壁の付近にて倒れるガイス。

 舞台からは落ちているが、もし殺してしまっていたらレイナの負けとなる。

 手加減はしたつもりだが……思った以上に威力が出てしまい、どうなったかよく分からなかった。



 闘技場全体が静寂に包まれる。

 全員が固唾を飲んで見守る。


 そして……



「がはっ! がはっ……はっ、はっ、はっ……」



 息を吹き返すように、ガイスが咳き込んだ。





『けっちゃーーく!! ガイス選手生きていました!! よって、闘王の部・第五試合……レーナ選手対ガイス選手……勝者は……レーナ選手だーーーー!!!!』




 闘技場から割れんばかりの大歓声が巻き起こった。





書類、書類、書類……うんざりです……(私事)


そういえば、そろそろ二次の発表ですかね?笑


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