表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
222/318

闘王祭と闘王②



「風雷剣舞・雷旋若柳!!」

「地水剛拳・烈破水爆!!」



 開始早々、闘技場は煙で包まれた。


 サクヤさんとラガンの攻撃により、四属性がぶつかり合い、物凄い衝撃となったのだ。

 粉塵が舞い、煙で舞台上の2人の様子が分からない……

 一体どうなってしまったのか……



 次第に煙が晴れていくと……戦いは既にほぼ決していた。



 2人は最初の一撃に全身全霊の力を込めていたのだ。

 2人ともその場から動こうとしなかった。

 いや、動けずにいた。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」



 お互いに舞台の端まで吹き飛ばされ、膝を付いていた。

 呼吸も荒く、神器すら解除されていた。



『おーっと、両者、全く動こうとしません! 見た感じダメージはないようですが……』

『恐らく、全魔力を先程の攻撃に込めたのです。動こうとしないのではなく、動けないのかと……』

『な、なるほど……確かに凄まじい攻撃でした』



 すると、ゆっくりと膝に手を置いたまま立ち上がったのはサクヤさんだった。



『サクヤ選手、立ち上がったーー!!』



 サクヤさんはゆっくりとラガンに歩み寄っていった。

 体をフラフラさせながらゆっくりと……

 対するラガンはその場から立ち上がれずにいた。


 2人ともどんだけだ……

 もう少しくらい魔力を残しておけばいいのに……



 サクヤさんは、ラガンの目の前までくると歩みを止めた。


「み、見事だ……剣王、サクヤ……」

 ラガンは小さく笑った。

 これ以上戦う意思はないようだ。


 そして……


 2人は同時に倒れた。

 サクヤさんは腕を翳して神器を発動させようとした瞬間、気を失い……

 ラガンも小さく笑った後、満足したように倒れた。



「サクヤさん!?」

「ラガンさん!?」


 俺は舞台に上がりサクヤさんの所まで駆けた。

 反対に向こうは、ザイルのおっちゃんがラガンを既に抱き抱えていた。


「サクヤさん、しっかり!」

「う、リュ…………ト……」


 良かった。

 微かに意識はあるみたいだ。



『おおっと! サクヤ選手、ラガン選手共に戦闘不能! 一試合目から波乱の幕開けとなってしまった! 闘王の部・第一試合は両者戦闘不能での決着だ!!』



 大歓声が2人に送られた。

 呆気なく終わったから、不満なのではと思ったが……どうやら、あのラガンと引き分けた事自体が凄いことらしい。

 惜しみない拍手が送られた。



 俺はサクヤさんを抱き抱えて、皆の所へ抱えていった。

 舞台を降りると直ぐにキョウとユイが駆けつけてくれて、サクヤさんを横たわらせてあげた。


「サクヤさん!」

「ギルマス、しっかり!」


「う……あ、ああ……だ、大丈夫……だ…………す、少し休めば……」

 サクヤさんは限界だったのか気を失った。


 直ぐに寝息が聞こえてきたので、そのまま休ませてあげることにした。

 魔力を使い果たしただけっぽいので、俺達は安心した。




『いや~それにしても凄かったですねミランダ王妃』

『ええ、そうですね。あの剛拳のラガンさんと引き分けるなんて凄いことです』



 実況席で、クナさんとミラの会話が続く中……

 俺達は舞台を挟んで並ぶ、ギルド【拳武】の連中と睨みあった。

 誰も何も言葉を発さない。

 向こうではミロクさんが何か言ってるが、ここからでは聞き取れなかった。






ギルド【拳武】側……



「ふふ、まさかラガンと引き分けるとは……これなら勝ち抜き戦にしなくても良かったな」

 ミロクは独り言のように呟いた。


「…………」

 ミロクの少し後ろに立つフードとマントを被った男は黙したままだった。



「まぁあのラガンさんと引き分けたのには驚いたけど、ここからは簡単にはいかせませんよ」

 そう言いながら前へと出たのは……【鉄拳】のザイルだった。



「そうですね。王者が立て続けに敗ける訳にはいきませんからね」

 少し皮肉を込めたガイス・ナイ。


「そういうことだ、たまには気が合うじゃねぇかガイス」

「……頼みましたよザイルさん」


「ふむ、王者の力……見せつけてこいザイル!」

「了解、マイマスター!!」



 そう力強く言い放ち、ザイルは舞台へと上がった。

 同時に歓声が沸き起こる。



「パパー! 頑張ってー!!」



 観覧席から一際大きな声で声援が送られ、ザイルは後ろを振り返った。

 観覧席にいる妻と娘。

 娘のメイの膝の上には、イエロースライムのゼウスが抱き抱えられていた。


 ザイルは娘に向かって大きく手を振った。


 育児のため一時は現役を退いたザイルだが、再び闘王祭へと帰ってきた。

 ザイルは大きく深呼吸した。



「ふぅ……このピリピリした空気……いいな……久々に熱くなってきたぜ……」

 ザイルはゆっくり前へと振り向いた。


 そこには、いつの間にか対戦相手が目の前に立っていた。

 ギルド【刀剣愛好家】の次鋒……キョウ・シグレ。



「悪いけどリュートをぶちのめさないといけないんでね。あんたには早々に負けてもらうぜ」


「そう簡単にうちのエースとやれると思うなよ」



 ザイルとキョウは睨みあった。



「いいねぇ~、どうしてこうアンタらは俺達を熱くさせてくれる」

 ザイルの拳に魔力が集まる。


 キョウも負けじと魔力を込める。



『それでは第二試合……ザイル選手対キョウ選手……試合……始め!!』





 クナさんの合図と同時にザイルのおっちゃんと、キョウは神器を発動させた。



 キョウが発動させたのは刀と盾の神器。

 【斬風刀】と【吹き荒ぶ風】。


 ザイルが発動させたのは、先程のラガンと同じ籠手の神器。

 神眼で視ると、これまた二属性……炎と地属性だった。

 おまけにザイルのスキルの中に驚異のスキルがあった。

 スキル【合魔】


「マジか!?」



 そんな中、2人はお互い目掛けて突進した。



「ダメだキョウ!!」

 俺は叫んだ。


 ユイはビクッとし、驚いた。

 レイナは……気づいたみたいだ。

 俺と同じで焦っている。



 だが……遅かった。

 2人の攻撃がぶつかり合う。

 キョウの斬撃と、ザイルの拳が。


 結果……キョウの刀は粉砕され、そのまま吹き飛ばされた。



「うそ……」

 ユイが信じられない……といった顔をしていたが、俺とレイナは予想できていた。




『出ました、ザイル選手の必殺拳! その拳はあらゆるモノを粉砕し、あらゆる攻撃を受け止める! 属性最大の硬さ、【鋼】属性!! 【鉄拳】の名は伊達ではない!!』


 クナさんは興奮したように実況する。




「はが、ね……?」

 ユイは知らないのか、キョトンとしている。


「ああ……炎と地の、二属性をスキル【合魔】で合わせると生まれる驚異の属性だ。俺もよく使うから知ってる……」



 過去にはレイナやガオウ達ですら斬り飛ばした鋼属性。

 ザイルはAランクで、キョウはBランク。

 ただでさえ2人にはランク差があるのに、二属性を使われたらこうなる事は目に見えていた。

 おまけに風と炎での相性も最悪。


 見た目だけの神器とはいえ、あのミロクさんの攻撃を防いでみせたキョウだが……正面からまともにぶつかり合っては勝てる筈がなかった。


 くそっ!

 鎧の神器【霞の王】で、先制攻撃を躱すようにアドバイスすれば良かった。



「言っとくけど、鎧王の時に出してた鎧は無駄だぜ。初見だったらまだしも、注意してればなんの事はない」

「!?」


 考えを読まれた……

 見ると……ザイルのおっちゃんは、キョウの服を掴んでいた。

 キョウは……既に気を失っていた。



「これで終わりだ」

 おっちゃんは、キョウをそのまま舞台下へと投げた。



『な、なんと第二試合も呆気なく決着だーー!! 勝ったのは、ギルド【拳武】、ザイル選手!!』



 クナさんの実況で、二試合目は決した。

 大歓声の中、ザイルは俺達の方へと近づいてきた。

 ザイルは舞台からは降りず、俺達を見下ろした。


 いや……俺を。



「上がってこいリュート……俺と戦え!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ