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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第一章【はじまり】
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人間と妖光



「おいおい、一体どこのどいつ誰だぁ? Sランクの迷宮を攻略したのは?」


 俺達が無事に迷宮から地上に転移し空を見上げていたら、後方より耳障りな声がした。



 俺達が後ろを振り返ると多数の人がいた。

 20人~30人くらいはいるだろうか……だがその殆んどは魔族の者達であった。

 魔族は全員もれなく首に禍禍しい首輪をしている。

 みな草原に座り込み目は虚ろで表情がなかった。もはや生きてることを諦めてる……そんな顔だった。


 そしてそんな魔族を囲むようにして立っていたのが【人間】であった。

 こっちの世界に来て初めて人間を見た。


 だが俺の彼らに対する第一印象は最悪だった。



 人間の数は全部で5人。

 その内3人の身なりは汚く髪もボサボサで、無精髭を生やしていた。

 だが俺が彼らに嫌悪したのはそんなことではなく、3人ともがもれなく魔族を痛め付けているのだ。

 殴っている者、足蹴にしている者、見ていて不快だった。


 魔族も抵抗する気がなく、痛めつけられている仲間を助けようとしない。



「おい、やめろよ!!」


 俺は大声を上げた。

 その声に怒気を含ませて。



「あ~~ん……誰だテメェ?」


 汚ならしい男の一人が反応して掴んでいた魔族を突き放し、こちらに向かってこようとした。


「待て」

 すると一人の男がそれを制止させた。



 制止させた男はこの中では若干小綺麗で、見た目も武人といった感じで寡黙そうな男だった。

 この中では唯一マトモそうな男ではあった。


「し、しかしオークスさん……」

「そうそう、オークスの旦那のいう通り、不用意に近づくなっての」


 男の声を遮るように話し始めた男……こいつの声が一番耳障りであった。

 格好はこの中で浮くぐらい綺麗に整えられ、その身には沢山の宝石でできたアクセサリーを身に纏っていた。

 最初の声も恐らくこいつであった。



「しっかし、変なパーティーだよなぁ~」

「そうだな……彼はどうみても人間だが、残りの4匹は魔族だな」



 もし俺に怒りゲージがあったのなら、確実に今の発言で1段階上がった。


(4()って言ったのか今……)



「だよなぁ~……だが鎖や首輪の神器をしてないみたいなんだよなぁ~」

「ふむ……確かに。だがジェガンよ、彼が別の種類の神器を保有して拘束している可能性もあるぞ」


「まぁその可能性もあるけどな~……鎖や首輪以外で能力【捕縛】の神器は見たことねぇ~からなぁ~」



 しばしの沈黙が続くとジェガンと呼ばれた男が俺の方を指差した。

「だがオークスの旦那よぉ~あれはどう説明する?」


 不意にみんなの視線が俺に集まった。

 その時、俺もやっと自分の身に起こっていることに気づいた。

 ルルが俺の後ろに隠れて服を引っ張っていた。

 長いウサ耳は閉じられ、小さな体が小刻みに震えていた。歯をガチガチと鳴らし、目の焦点は合っていなかった。


「ルル?」

 俺が呼び掛けても反応がない。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 ルルは過呼吸みたいに呼吸を荒くしていく。


「ルル!」

 俺は強く声をかけた。


 ハッとしたようにルルから反応が返ってきた。

「りゅ、竜斗様……」

 ルルは怯えている……掴んだ服は更に強く握られた。


 きっと人間が怖いんだ。

 ルルだけではなく、レイナ達もさっきから黙ったままだ。

 ルルほど怯えた様子はないが、みな警戒している。


 俺は優しくルルの頭に手を置いた。



「なぁ~そこのお前、その魔族はお前のかぁ~?」

 気持ち悪い声で俺に問いかけてきた。


「……かまだ」

「あぁん? 何て言ったぁ~?」


「俺の仲間だ!! 物扱いするな!!」



 沈黙の後、突如奴等は笑いだした。



「はぁ~? 魔族が仲間ぁ~? お前バカかぁ~」



 俺の怒りゲージが1段階上がった。

 神眼を使おうか考えたが、下手にあいつらにこちらの情報を渡したくなかった。

 俺は小声でみんなにも、情報を与えないよう促した。



「何こそこそやってんだぁ~? まぁいいかぁ……ところでお前がSランクの迷宮を攻略したのか?」

「だったらどうした?」


「そのパーティーで?」

「そうだ」


「ぷっ、おいおい冗談はよせ。仮にお前がSランクとしてもだ、たった一人で攻略出来るわけないだろ?」


「だからみんなで……」

「冗談はよせって言ったろ」

 ジェガンは俺の言葉を遮ってきた。


「常識的に考えて魔族にAランクがいるとは思えねぇ……いや何匹かいるのは知ってるが、そこの4匹全部がAランクとは到底思えねぇ」


「だが現に彼らは迷宮を攻略している」

 オークスが答える。


「そうなんだよなぁ~、だから変なパーティーなんだよ……おい、ザジ!」


「なんすか、ジェガンさん」

 魔族を足蹴にしていた別の男が答えた。


「分かってんだろ、お前の【観察眼】であいつら視ろ」

「うっす」



 俺は小声でレイナに観察眼が何か聞いた。

 どうやら人の名前、種族、クラス、ランクが分かるらしい。

 まずいな……俺達の事を知られるわけには……倒すか?

 などと考えていたが、どうやら様子がおかしい。



「あれ? 変すっね? あいつらのステータスが視れないっす」

「あぁん……何言ってんだお前」


「大方、魔力を使いすぎたんだろ」

「ちっ、使えねぇ」


「変だな~そんな筈は……」



 どうやらステータスは視られなくて済んだが、どうやってこの場を切り抜けたらいいか俺は必死に考えていた。

 ルルの【ゲート】まではだいぶ距離があるし、ここで発動させても時間がかかる。


 それにあいつらは俺達を見過ごす気はないようだ。



「おい、お前らの中に魔眼を使える奴はいるか?」

 俺に最初に突っかかってきた奴が、捕らえてるであろう魔族から魔眼を使える奴を探していた。


「いえ、私達の中には……おりません」

 姿は見えないが魔族の中から透き通ったような綺麗な声が聞こえた。


「あぁん、ホント使えねぇな~魔族は!」

 すると男は適当に一番近くにいたドワーフの男を蹴った。


「ぐはっ」


「兄者!」

 隣にいた弟らしきドワーフが蹴った男を睨んだ。


「なんだテメェは……このザイガス様にたてつく気か?」

 ザイガスは弟の方を蹴りだした。


「この!」

「ぐっ……」


「魔族のくせに!」

「ぐはっ……」


「生意気なんだ、よ!!」

 最後に力強く蹴飛ばした。


「がっ……」

 ドワーフは気を失った。


「ったく、魔族の分際でこのザイガス様を睨み付けるなんて生意気な奴だ」

「やれやれ……ザイガス、大事な商品なんだ。あまり傷つけるなよ」


「分かってますよオークスの旦那」

 男はヘラヘラ笑って答えた。



 俺の怒りゲージは限界にきていた。



「いい加減にしろよ! なんでそんな酷いことが出来るんだ!」

「てめぇこそ何言ってんだ! てめぇだってそこにいる魔族共を奴隷にしてんだろ!?」


「だから違うって言ってんだろ! みんなは俺の大事な仲間で奴隷なんかじゃない!」

「ったく、この糞ガキが! いい加減に……」


「まぁ待てザイガス」

「オークスの旦那?」


「今の会話で思ったんだが、彼はホウライ国の者ではないかと推測する」

「へぇ~どうしてそう思ったぁ?」


「うむ。あそこは魔族を愛玩奴隷や性奴隷にしたりと、3国の中では比較的に魔族に対する扱いがゆるい。中には魔族を愛人にしたりする変わった人もいるそうだ。彼もその部類だと考える」


「なるほどねぇ~だけど違和感はあんだよねぇ~」

「?」


「あいつの……魔族に対する接し方は魔族を自分と同等、下手したら敬ってる気もあるんだよなぁ~」


「おぇ、気持ちワリィ……」

 ザイガスはわざとらしく吐きそうな演技をした。



--俺の怒りゲージはマックスだった--



「なんで……なんで魔族に対してそんな酷いことが出来るんだ?」

 俺は目線は合わせずに、(うつむ)き必死で怒りを抑えながら問うた。



「なんでって……そりゃこっちの台詞だ! てめぇこそゴミみたいな魔族に対して頭がおかしいんじゃねぇのか!?」


 するとザイガスはなめ回すようにレイナとルルを見た。


「……そうだな、おい糞ガキ! そこの魔族共がお前の奴隷じゃないなら、そいつら俺に寄越せよ!」



 何を言ってるんだこいつは……?

 俺は怒りで思考がうまく働いていなかった。



「このザイガス様がそこのメス2匹を貰ってやるよ。俺様の相手が出来るんだ、光栄だろ?」


「何言ってんだあんた……」

 俺は怒りで体を震わせた。


「見た感じ……珍しい魔人族に、人気の兎人族のメスだ。なんだったら買ってやってもいいぜ!」


「…………」

 俺は怒りで声も出なくなり、俯いたままだった。


「まぁ俺様が満足したらゴミのように売ってやるけどな。がーはっはっはっはっは、ゴミだが高く売れそうだぜ!」




「……………………くれ」


「あん?」


「もうあんた黙っててくれ!! 不快で! 不快で! 不快で! 不快で! 不快で堪らない! 気持ち悪くて死にそうだ!!」


「なっ、てめぇ…」



 俺は神器【絶刀・天魔】を発動させ、空を斬り、一瞬でザイガスの首を()ねた。


 ザイガスの首はボトリと地面に落ちた。



 俺はゆっくりと顔を上げ冷ややかな目で人間達を睨んだ。




--金色に輝く【神眼】は妖しく光っていた--




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