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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
219/318

休みと思惑



 闘王祭11日目……


 今日は中休み……

 例年ならこの日は、鎧王や天王等のデモンストレーションを行うのだが、今年に限って言えばそれらは既に終わっているので、今日は普通にお休みとなってしまった。

 その代わりに、街では買い物客や、地方から来た人達で賑わっている。


 王都はかつてないほどの賑わいとなっていた。



 明日は闘王祭最後のイベント……闘王の部が行われる。


 今年は王者・ギルド【拳武】に、新進気鋭のギルド【刀剣愛好家】が挑むことになった。

 どちらが勝つのか……王都に住む人達は、この話題で大いに盛り上がった。


 例年と違い、何かが起こる……国民達はそう予感していた。





【竜斗・レイナ】



「本当にこれでいいの?」

「はい」


 竜斗の問いにレイナは嬉しそうに答えた。



「もっと良い店で、いい神器でも良かったのに……」

「おいこらリュート!! 俺の店を潰す気か!!」


 竜斗は店主に怒られた。



「んな大袈裟な……」

「馬鹿野郎!! 今やお前とレーナちゃんは【天王】と【武王】なんだぞ! お前らの何気ない一声で俺の店は潰れるんだぞ!!」


 竜斗とレイナは……馴染みの、いつもの店で買い物をしていた。

 レイナの籠手の神器【大和】が壊れた事により、新しい神器を買いに来ていたのだ。


 店の周りには、野次馬というか人だかりが出来ていた。



「まぁちゃんと買ったんだからいいだろ?」

「それについては、まいどあり……だ! 感謝してる! やっぱレーナちゃんを雇った俺の目に狂いはなかったぜ!!」


 竜斗とレイナが買い物をしたお店……

 それだけで売上はハネ上がる。

 店主は悪い顔で微笑んだ。



「…………皆さーーん! このお店で買うのはよくな……もがっ!?」

「ば、馬鹿野郎!! 止めてくれ!! 頼むから、な!!」


 店主は慌てて叫ぼうとする竜斗の口を抑えた。

 レイナはそれを見て小さく微笑んだ。



「仕方ない……いつもリィンゴくれてたからな。宣伝しとくよ、おっちゃん」

「お、棚ぼたか……いや~お前さんに余ったリィンゴをあげただけで……くくっ、ぼろ儲けの予感……」


 またほくそ笑む店主を、竜斗とレイナは冷ややかな目で見つめた。



「やっぱやめとくか……」

「そうですね、私がこのお店で働いた経歴も消しときますか……?」



「なっ!? た、頼む! そ、それだけは……っ!!」


 店主は土下座した。

 それは誰も見たことないほど美しい土下座だった。

 芸術の域にまで達していた。



「全く……反省しろよおっちゃん」

「そうですよ。普通にしてたら良いお店なんですから」


「ははっ、返す言葉もねぇ……」



 竜斗とレイナは楽しく買い物をして過ごした。






【四傑】



「ふっ! はっ! たっ!!」

 ミロクは体を動かし汗を流していた。


「精が出るなミロク」

 ゆっくりと歩み寄り、ミロクに声を掛けたのはエンマだった。


「まぁな……明日はいよいよだ……楽しみで楽しみで仕方ない」

 ミロクは体を止めると、タオルで汗を拭き取りながら微笑んだ。



 王都にある【真王城】……そこの中庭での会話だった。

 いるのはエンマとミロクの二人だけであった。



「お気に入りの奴らが出るそうだな……」

「ああ、ギルド【刀剣愛好家】だ……下手したら喰われかねん……くくっ」


「……元は神国のギルドだ。ギルマスはサクヤ・レイナルド。先々代・風王を母に持ち、姉は先代の風王だ。おまけに先代の雷王とは夫婦の関係との噂もある」


「……成る程。だからあれほどの剣さばきか……納得した」

「だが、お前の敵ではあるまい」


「どうかな……エンマはどうみる?」

「…………」


 エンマはしばし考え込んだ。

 ミロクはどこか嬉しそうにそれを見つめた。



「4対1で【拳武】の勝ちだな」

「ほぅ、それは随分身内贔屓だな」


「そんな事はない。お前とレーナとやらが戦うならそうなる」

「一敗は?」


「リュートだな。直接見たわけではないが、聞いたところ相当らしいな。リュートの一敗で残りはおまえ達の勝ちだ」

「では……私が、リュートとレーナ以外と戦ったら?」


「結果は変わらん。3対2でおまえ達の勝ちだ、おまけに余裕だろうな」

「ふふ、流石だな英雄殿は……私も概ねそう予想している」


「過程を楽しむだけか?」

「どうかな……ふむ……最初から勝つと解っている勝負はつまらんな……」


 ミロクは少しだけ考え込んだ。

 何か面白く出来ないかと……



「エンマ、1つ提案があるのだが……」

「なんだ?」


「なに、四傑が敗けるわけにはいかんからな……保険でも掛けておこうかと……」

「?」






【??】



「行くのか?」

「ええ、いつ帝国が攻めてくるか分かりませんからね……」


「分かった。結果次第では私が帝国に行こう」

「助かります」


「直ぐに行動出来れば良いのだがな……」

「ここは慎重にいきましょう。あの方なら多少は引き延ばしてくれる筈です」


「そうだな。で、お前が見たアイツはどうする?」

「…………悔しいですが現状は放置で、下手をしたら負けてしまいますからね」


「ついに目覚めたか……まぁ自滅すると思うがな」

「だと良いのですが……」


「まぁ今は同胞の復活を優先だ」

「了解です…………」


「どうした?」

「結局、闘王祭は観に行かれませんでしたね?」


「まぁな。興味はあるが、それより優先する事は多々ある。明日の祭りも気が向けば行ってみるとしよう」


「分かりました。では、行って参ります」





【王院生】



「くそっ! 何なんだ、あの化け物は!?」

 王国ギルド本部の入り口の外でザナードはわめき散らした。


「まぁまぁ、仕方ないよザナードくん」

 カルラはそれをみてザナードを(なだ)めていた。


「まさか受付嬢に、あのような御方がおられるとは……」

 ファナはどうしたものかと悩んだいた。


「私達全く相手にされなかったね……」

 ルナはガックリと項垂(うなだ)れていた。



 四人は迷宮攻略をしようとギルドへと赴いた……

 が、受付歴20年の受付嬢マスター・ミカによって断念せざるを得なかった。

 優しそうな受付嬢なのに、手練れで、掴みかかろうとしたザナードを軽くあしらう程の実力者だった。



「くっ、まさか私達の名前を出しても駄目とは思いませんでしたわ」

「まぁ王院生だから仕方無いよファナちゃん……」


「ギルドの人達に同行するのもダメだったね……」

「当たり前だ。俺達4人を入れたら、同行できる人は1人だからな」


 迷宮に入れる数は限られている。

 迷宮に最初に入った人のランクで数が決まる。

 Aランクだと5人……定員ギリギリであった。

 承認される訳がない。



「だね……ねぇ諦めて普通に修練しない?」

「だから言ってるだろカルラ! それだといつまで経っても強くなれないって……迷宮攻略しかないんだ!」


「ならミラに頼む?」

「出来るか!」


「「だよね~……」」



 4人が文句を言いながら、ギルドから立ち去ろうとした時だった。

 不意に後ろから声を掛ける人物が現れた。



「迷宮攻略ですか……良かったら私がお手伝いしましょうか?」



「有り難い申し出だが、先程受付嬢に断られたば……か……り……」

 ザナードは振り返りながら喋ったが、次第に言葉を詰まらせた。



「クウマ叔父様!?」

 その人物を見て叫んだのはルナだった。


「お久しぶりです、ルナ。元気でしたか?」

 クウマはフードで顔を隠していたが、ニコリと微笑んだ。


「え、あ、はい……」

「ク、クウマ様が何故このような……」

「それより、今言った事は本当ですか!?」


 ザナードは、ルナとファナの言葉を遮った。



「勿論ですよ……あなた達のような、才能も未来もある若者の為にも付き合ってさしあげますよ」

「で、でも……」


 咄嗟の提案に、当然カルラは戸惑っていた。




「私が最初に迷宮に入れば、計6人は迷宮に入れますし……それに最初はEランクから徐々にランクを上げていけば問題ありません。私が無理だと判断すればそこで迷宮攻略は中止します……どうですか?」


「そ、それでしたら……いえ、ですがやはり何かあっては……」

 受付嬢のミカは困惑した。


 当然だ、先程の4人が四傑の1人……死神クウマを引き連れてきたのだから。



「Aランク以下の迷宮で万が一など起こり得ません」

「で、ですが……」


「おやおや、貴女は私の実力を疑っていると?」

「け、決してそのような事は……!」


「彼らが何者かは分かりますよね? 家柄も血筋も才能も問題ありません、それに将来の若者達に迷宮を経験させておくのはとても良いことだと思いますがね?」

「…………で、でしたら、王国ギルド責任者であるエンマ様に一度確認を……」


「彼らはミランダ王妃のご学友ですよ? それでも貴女だけでは判断できないと? 貴女、何年受付嬢をやっているのです?」


「…………も、申し訳御座いません……わ、分かりました……クウマ様の迷宮攻略に同行するという事で問題ありませんか?」


 ミカは若干泣きそうであった。

 だが、受付嬢を束ねる者として毅然とした態度をとった。



「ええ、大丈夫です。それにEランクの迷宮ですよ? 安心してください」

 クウマはニコリと微笑んだ。


「……わ、分かりました。では、こちらの紙にサインの方を……」




「ね、大丈夫でしたでしょ?」

 ギルド本部の外でクウマは紙を小さく掲げた。


「はい、ありがとうございます!」

 ザナードは嬉しそうにお礼をした。


「で、でも本当に良かったのですか?」

 カルラは戸惑いながら尋ねた。


「心配はいりません。最初はEランクの迷宮です。攻略に半日もかかりませんし、いざとなれば私が助けるので安心して下さい」



 四傑にそう言われて安心しない者はいなかった。



「い、今から行くのですか?」

 ファナが尋ねた。


「いいえ、闘王祭が終わってからにしましょう。その方があなた達も都合が良いのでは?」

「「分かりました」」



 顔は見えないが、クウマはほくそ笑んだ。



(ガキ共は簡単で楽だ、こうも上手くいくとは……後は、あの方に連絡して……)



「そうそう、一応今回の件は特例ですので内緒でお願いします。受付嬢にも黙っておくように言ってあります。才能はあっても貴方達はまだ王院生……この意味は分かりますね?」


「「は、はい……ありがとうございます」」



「ふふ、では闘王祭後にまた……」

 クウマはその場から立ち去ろうとしたした。


「あ、あの……!」

 呼び止めたのはカルラだった。



「どうしました?」


「本当にありがとうございます……」

「いえいえ」


「あの……僕達……強くなれますか?」


「ええ、勿論です。目標はAランクの迷宮ですからね。貴方達ならきっと直ぐに強くなれます」

(くく……まぁAランクに行く前に全て終わりますけど……)


「が、頑張ります!」


「ふふ、頑張って下さい」

 クウマは今度こそ、その場から立ち去って行った。



 カルラ達はクウマを見送った後、4人で喜びあった。

 これでまた一歩強くなれる……そう信じた。

 ミラに、ミロクに、レイナに、竜斗に、また一歩近づける……と。

 迷宮攻略に胸を踊らせた……

 だから……





「……本当に楽しみです。早く会いたいですね……ラファエルさん」



 去り際にクウマが……いや、ウリエルが意味深に残したこの言葉を聞き逃してしまったのだ。

 4人の運命はこの時、明確に決定付けられた……


 4人を待ち受ける運命は残酷だった……





ぐはっ……やらかしました……

ネタバレ?になるかは分かりませんが、少し整理・説明を……


武王の部・予選の前の日にウリエルは迷宮攻略をしに行き……翌日には観覧席にいた事に……で、闘王祭後に接触するとか言いながら、既に接触してしまいました……

メタトロンは結局観に行かず……


思い付きで書いてる結果がこれです……

ギリギリ大丈夫かな……?


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