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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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六魔と猿王



「ふぅ……」

 ガオウはゆっくりと息を吐き、斧の神器を解除した。


「お疲れ様です」

 サラはゆっくりとガオウの元へ歩み寄った。


「ふむ、皆無事のようだな」

 アトラスは、辺りを見回すように警戒しながら2人へと近づいた。


「やれやれだね……」

 バアルは余裕そうにフヨフヨと宙に浮いていたが、疲労は明白だった。

 普段より明らかに口数が少なくなっていたからだ。


「……これほどとはな」

 ルキはその場に座り込んで呟いた。


「どういう意味だ?」

 ルキと背中合わせに座るゼノが尋ねた。





 ここは……迷宮47階層。


 種類は【山】。

 マンホールの様に地面に設置された扉を降りた先は、まさに異界という他なかった。


 降りた筈なのに6人は、気づくと山岳の麓に立っていた。

 見渡す限りの果てしない空。

 迷宮だからか、登れども登れども頂上に辿り着けない山。


 外にいるのか閉鎖的な空間にいるのか分からない感覚と、湧くように現れる無数の猿の軍団に襲われ……6人の疲労は限界だった。



 そして今は、罠により現れた100体以上の猿種の魔物を退けたばかりであった。


 ランクはB、名はバトルコング。

 アトラスより大きく、サラのように華麗に動き、ゼノのように変則的な動きもし、ルキのように洗練され、ガオウのように力強く、バアルのように思慮深い……おまけに群れで襲う習性もあった。


 6人の体力と魔力は限界で、その場で休息をとることにしたのであった。





「竜斗とレイナがいないだけで、ここまで苦戦するとは思わなかった……」

「元々、魔物は強い。竜斗のスキル【魔曲】があったからこそ、最近の迷宮攻略は楽だったんだ」


 ルキとゼノは、簡易的だが休むための場所を設置していた。



「勝利を呼び込むだっけ? もしかしたら魔物の弱体化も含まれてるのか?」

「どうかな……けど竜斗がいるとなんかこう……負ける気がしないって気になるな」


 アトラスと共に辺りを警戒するバアルがゼノに尋ねるが、答えは出なかった。



「確かに……かつて陛下とゼノとルルと我の4人でAランクの迷宮を攻略した時は、何度諦めそうになったか……」

「ははっ、鬼種か……確かにあれはヤバかったな……生きてるのが不思議だったな」


 ガオウとゼノは過去を思い出した。

 吸血鬼と戦った時は、本当にギリギリだった。



「そして今は私達だけ……これが迷宮の本来の強さなのでしょうか……」

「サラさんは迷宮2度目だっけ? 確かに竜斗(あいつ)との迷宮攻略の速さは尋常じゃなかったな」


 料理の下拵(したごしら)えをするサラの手がふと止まった。



「先程の魔物達もそうでしたが、42階層のSランクの魔物も凄まじく強かったです……」

「あいつらか……」





 サラ達が42階層で戦った魔物……


 Sランクで、数は2体……

 名は【狒狒(ひひ)】と【猩猩(しょうじょう)】。

 大型の魔物であった。


 6人がBランクの魔物達に苦戦したのも、先にこいつらと戦い消耗した為でもあった。

 休息は充分にとるつもりであったが、度々襲いかかる猿達に、否が応でも先に進まざるを得なかったからだ。



「あの時の……羅刹王や夜叉姫よりも遥かに強かったです……」

 サラは初めての迷宮で対峙した鬼種を思い出した。


「いえ、それはないです……」

 それを否定したのはルキであった。


「そうですか? しかし、以前よりも強くなった私達があれほど苦戦したのですよ?」

「恐らく竜斗のお陰です……実力的にはあまり差はないでしょう。猿の方が強く感じたのは、竜斗の神器【森羅万象】の【付加】の力を借りられたからです」


「つまり?」

「もし竜斗がいなかったら……私達は間違いなく夜叉姫に負けていました……」


「そう……ですね……」

 サラは納得した。




「そういや、その時の魔物は神器持ってたんだろ?」

「ああ、竜斗の【神鳴】と陛下の【銀鶴】だ」


 ゼノは重い空気を無くそうと僅かに話を変えた。


「ただでさえ、強ぇ魔物が神器も持ってんだ……そりゃ強い筈だぜ」

 ゼノは普段みたく、おちゃらけた感じで話し出した。


「神器を持つ魔物か……今まで見たことも聞いたこともないな」

 アトラスが呟く。


「恐らくSランクの挑戦者の神器を奪ったんだろうな」

「そんな事が可能なのか?」


「さあ……本人に聞くしかないな」

「確かに……」


 アトラスとゼノの会話も結局結論は出なかった。



 暫くして6人は食事を取り、交代で休んだ。






「サラ殿、大丈夫ですか?」

「ええ、問題ありません」


 今はサラとルキが休み、他の4人が見張りをしていた。

 簡易テントの中で2人は少しだけ距離をとっていた。

 ルキは臥床し、サラは上体だけ起こして自分のお腹を(さす)っていた。


 サラの着物を締める帯は、いつもより僅かに緩んでいた。



「しかし……まさか……」

「ふふっ、皆には内緒ですよ」


 サラは人差し指を口に当て、喋らないようルキに促した。



「余計な心配はかけたくないので」

「他に知っている者は?」


「ララさん、ルルさんだけです」

「ガオウ殿も知らないので?」


「はい、ビックリするかなと」

 サラは無邪気に笑って見せた。


「ははっ……」

 ルキは苦笑いするしかなかった。






 6人は充分に休息を取ると、再度山頂を目指し出した。

 休息の間に階層が1つ増えるも、特に気にも止めなかった。

 今回の迷宮攻略にて、何度階層が増えたか分からない程、6人は長く迷宮に入っていた。


 だが、それは確実に前へと進めている証しでもあった。

 神経を研ぎ澄まし、一歩一歩前へと歩を進めた。


 6人は間違いなく強くなっていた。

 竜斗もいない、レイナもいない……自分達よりも強い者がいない中、己と仲間の力でここまできた。

 間違いなく成長していた。



 階層が上がるにつれ、魔物と罠の数が激減した。

 迷宮は不気味な程静かで、6人の警戒レベルはマックスだった。

 次第に6人の口数も減り、ただ1つの事だけを考え、神経を研ぎ澄ましていた。



 この先に待つボスモンスター……


 SSランクの魔物……







「準備はいいか……?」



 ガオウの言葉に5人は頷いた。

 山頂へと辿り着くと、そこには何もなく、ただ妖しいほど不気味な鳥居があった。

 この先にいると、誰もが確信していた。



 そして……光に包まれながら6人は鳥居を(くぐ)った。






「キキッ、久方振りの来訪者だ!」



 6人の眼前には、胡座(あぐら)をかいて地面に座っている猿がいた。


 大きさは自分達とさほど変わらない……

 寧ろ人に近い姿をしていた。

 胸当を装着して、動きやすそうな服装をしていた。

 頭には輪っかを着け、尾はクネクネと動いていた。


 猿は楽しそうに笑っていたが、6人は警戒し一斉に神器を発動させた。



「キキッ、勇ましいな。これはオイラも本気でいかないと駄目かな?」



 猿はゆっくりと立ち上がった。

 座っていた時は分からなかったが、細身でスラッとし手足も長かった。

 服の隙間から全身に毛が生えていると(うかが)えた。

 髪は逆立たせた様に長く、後ろ髪は腰の位置まであった。


 そして何故か一礼し、飄々と前へと進んだ。



 6人は警戒し身構える。



「キキッ、礼節をかくとは愚かだな。先ずは……名乗れ」



 猿は歩みを止めて6人を威嚇した。

 先程までとは打って変わって猿の表情は険しいものとなった。



「……ガオウ・レヴィアタン」

「ルシファー・ゼノブレイズだ」

「サラ・アスモデウスです」

「竜騎士マモン・ルキウス・ドラグナーだ」

「バアル・ゼブル10世……」

「アトラス……ベルフェゴールだ」


 6人は威圧され名乗った。



「キキッ、良い。なら今度はこっちの番だな」



 猿は一転、ニパッと笑うと棍棒の神器を発動させた。


 6人はゴクリと唾を飲み込んだ。


 猿は棍棒の神器を片手で持つとクルクルと回転させ最後に構えた。



「オイラはこの迷宮の主にて猿達の王……」



 猿はグッと腰を屈めて、両脚に力を込めた。

 すると、一気に膨大な魔力が噴き出した。




「「っ、来るぞっ!!」」



 6人は神器にありったけの魔力を込めた。




齊天大聖(せいてんたいせい)だっ!!」





何故か、ちょっとテンション上がってしまいました……

続きを書きたい気もありますが、6人については一先ずこれで終わりです(笑)


次話は……アルカディア国かな?

その次は……王国?

で、武王を書きたいと思います。


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