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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と天王②



 闘技場は未だ静まり返っていた。



 そんな中、



『な、な、な、な……』


 な?

 アイナさんが、壊れたロボットみたいに、なを繰り返している。




『……わ、私は、夢を見ているのでしょうか?』



 んな馬鹿な。



『圧倒的……そう、圧倒的としか言い様がありません!』

『……ですな。他の選手は未だ結界?に閉じ込められたままなのだから……』


『き、記録は……』


 アイナさんはゴール付近に設置されている神器……最後の測定器を見ている。



『言うまでもありませんね……』

『本当に信じられん……』


 測定器にはデカデカと数値が表示されていた。

 その数値を見ていた全員が固唾を飲んで見守っている。




『リュート選手、余裕で予選通過です!! お、おまけに……過去最速だったクウマ様の出された記録を、ぶっちぎりで更新の、歴代最速記録まで出してしまいましたーー!!』




 アイナさんは高らかに、俺の勝利を告げてくれた。

 割れんばかりの歓声を浴び、みんなに向かって愛想よく手を振った。


 おっと、忘れない内に神器も解除しなければ。

 にしても、やっぱ【嵐属性】の結界は誰も破れなかったか……

 Sランクの神器が二属性により、SSランクへと変化したのだから破られる訳がない。


 スタート位置では唖然としている選手……悔しがる選手……そそくさと立ち去る選手……等々。

 ふむ……

 余裕だったな。



 俺は観覧席にいる仲間に向かってブイサインをした。


 皆安心した顔で喜んでいる。

 はとが豆鉄砲喰らった様な顔をしていない。


 ないったらない……そう思いたい……



 だが実際にはレイナ以外は、驚きのあまり開いた口が塞がっていない。

 そんなに驚く事かな?

 まぁ歴代最速記録なのだから、驚くのは無理からぬ話だが、流石に驚き過ぎの気がする。



 俺は指で矢印を作り、レイナに控え室に行くと口パクで合図した。

 レイナはコクリと頷いた。

 よし、控え室で合流だな。



 固まったままの3人はレイナに任せて、俺はゴール付近にある通路を通り、控え室を目指した。






「お前、マジでなんなんだ!!」

「ふぅむ……勝つだろうとは思っていたが、よもや最速記録までだすとは……」

「凄すぎ……」



 控え室で寛いでいると、3人は勢いよく飛び込んできた。

 その後ろからレイナが微笑ましく見つめていた。



「いや、ぶっちぎりで勝つって言ったよね?」


「それにしたってお前……」

「はは、もうね……苦笑いしか出てこないよ……」

「これなら天王は間違いなさそうだな……」


「まぁ明日の決勝は、エルガーには何もさせずに勝つよ」


「あの結界か?」

「う~ん、いやチョット違うかな? 俺が勝って、アイツを最下位にさせる」


「そんな事出来んのかよ?」

「そうだよ……あれだけ大口叩いてたんだから、多分かなりの実力者だよ?」

「その通りだ。順位を調整する前に勝つことを優先するべきだ」


「そっか……アイツが予選で負ける可能性もあるもんな」


「え、無視……?」

「ダメだ……もうアイツを負かすことしか考えてないな」

「……だが、あの記録を出した後だと何も言えんな……」


 その通りです。



「まぁ観ててよ」


「頑張って下さい、竜斗様(リュートさん)

「おう!」







「す、凄かったです……!」

「ああ、流石はサクヤ殿のギルドに属する人だ」


 エルフのフィラと、カイルは自分達のギルドの控え室にて未だ興奮していた。


「天剣の名は伊達ではなかったですね」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、ふぉ……? それは関係なくね?」


 ドワーフのガルデアと、ギルドマスターであるトーマスもであった。



「ところで……エルガーさんと、レイヴンさんは?」

 フィラは分かっているのに、控え室内を見回すした。


「エルガーさんは直に予選第4グループが始まる。レイヴンさんなら最初から来ていない」

 カイルが答える。


「ふぉ、ふぉ、ふぉ……予想通りであったが想像以上じゃったな」

「笑い事ですかギルマス……あれほどだと、恐らく天王は……」


 ガルデアは、開きなおっている感じのトーマスを見て呆れていた。



「まぁ、これでエルガー(あやつ)も上には上がいると思い知ったじゃろう」

 トーマスはこれで孫が成長してくれるだろうと期待した。



 が、


「簡単にいけばいいのですが……」

「確かに……」

「何かしでかしそうだな……」


 3人は不安そうに呟いた。







 闘技場内は興奮冷めやらぬ中、着々と闘王祭が進行されていった。

 そんな中、ある観覧席では……



「…………」

 ザナードの口はあんぐりと開けられたままだった。


「本当に凄い……あんなアッサリ、叔父様の記録を抜くなんて……」

 ルナはゴクリと唾をのみこんだ。


「アッサリかは分からないけど、本当に凄い……それにあの盾……防御の結界をあんな風に使うなんて……能力【噴射】もないのにどうやってあんなに風を……?」

 カルラは驚きながらも冷静に分析するよう努めていた。


 3人は並んで観覧席に座っていたが、最早、フィールドを駆ける他の選手の事など目にも入っていなかった。



「いえ、恐らく【球体の結界】にする一歩手前で止めているのです。それがあの盾から吹き荒れる風の正体ですわ」


 そんな3人の後ろから不意に声がした。

 それは結界を知るからこその言葉だった。



 3人は聞き覚えのある声に振り向いた。


「「ミラ!?」」

「ミラちゃん!? それに……」


「ふむ。それを速度上昇系のスキルを駆使することで、あのような疑似飛翔を可能にしている訳か……」


 ミラの隣にはよく知る人物もいた。


「「ミロク様!?」」

「母上!?」


 3人のあまりにも大きな驚きの声に、誰もが気づきザワザワと騒ぎ出した。

 当然である……この国のトップである4人の内の2人がいるのだから。



 しかし、2人はカルラ達の事すら相手にもせず、冷静に分析していた。


「しかし気になるのはあの籠手だな……?」

「ええ。それに、風の吹き荒れる大きさが尋常ではありません……」


 2人は席には座らず立ったまま闘技場、フィールドを眺めていた。

 正確には今行われている第4グループの試合など観ておらず、フィールドを眺めることで、先程行われた竜斗の試合を思い出していた。


「あの籠手は恐らく……能力【付加】か……」

「ミロクさん……まさか魔眼を……?」


「いや、私に魔眼がない事は知っているだろう? 能力【付加】の神器は何度か見たことがある、経験からそう判断した」


「では……2つの属性を……?」

「どうかな……それに以前、エンマ殿がリュートを視た時にレアスキルが異常に多いと言っていた……」


「?」

「ミラ覚えているか? 機械国の、機械王アトラスの側近……ヒュースという魔族を……」


「……はい、昨年のオークションを潰されましたから。まさか……!?」

「あやつは恐らくスキル【合魔】の持ち主だ。その証拠に見たこともない【氷】属性を扱っていた。恐らくリュートも持っている筈、あの風はただの【風属性】ではない……!」


「……エンマさんに聞いてみますか?」

「ああ、何か分かるかもしれん」



 2人はここでようやく、前に座る3人に目を向けた。


「……ふふ、どうだカルラ? やはりリュートは凄かっただろう?」

「は、はい!」


「……聞いたぞ、ランクが上がったそうだな?」

「はい。リュートさんに修練してもらいました」


 ミロクはポンッとカルラの頭に手を添えた。

 一見すると妹が兄の頭に手を乗せたように見えるが、この2人は親子である……


「いい顔になった、精進しなさい」

「っ、はい!!」


 暗く俯いてばかりの息子の成長を、母としてミロクは喜んだ。

 リュートの存在は気になる……だがそれでも母として息子を成長させてくれた事は、心から感謝していた。



「では皆さん、また……」

 ミラは3人に小さく手を振りながら、ミロクと共に立ち去っていった。





「「ぽかーん……」」

 ザナードとルナは呆気に取られていた。


「ザナードくん、ルナちゃん……!」

 カルラは意を決し立ち上がった。


「どうしたのカルラくん?」

「今から王院に行って修練しよう!」


「……今からか?」

「うん! やっぱ見てるだけじゃ、いつまでたってもあの2人やリュートさん達みたいに強くなれないよ」


「……いいだろう」

「私も!」


 ザナードとルナも笑顔で立ち上がった。



「それなら私も参加しますわ」

「ファナちゃん……?」


 今度は同じ王院生のファナが、3人に声をかけた。


「抜け駆けは許しませんわ」

「はいはい、取り巻きもいないことだし……別にいいわよ」


「何故貴女の許可が? 私はカルラさんの修練にお付き合いさせて頂くだけですわ」

「あんたってホント……っ!」


 相変わらず睨み合う2人……



「なら行くぞ!」

「「っ!?」」


 ザナードは2人の服を掴むと引っ張っていった。


「ははっ……」

 カルラは苦笑いしながら後を付いて歩いた。



「ちょっ!? ザナード離しなさいよっ!」

「わ、わたくしを引っ張らないで頂けますっ!!」



 4人は怒りながら、笑いながら、ふざけながら、王院の訓練場を目指した。

 必ず強くなると胸に秘めて……


 それは4人にとって……

 かけがえのない……

 黄金の様に眩しい時間……

 青春だった……





 そんな4人を……ただただ、じっと……気配を消して見つめる影があった……





申し訳ありません……

凄く悩んだのですが、敢えて記録の数値(秒数)は書きませんでした。


書き手として技量があれば良かったのですが……数値化すると、今までの動き(速さ)に辻褄が合わなくなるのではと感じたからです……


勢いで2秒とか1秒とか書けばテンションは上がったかも知れませんが……これからの事を考えると、戦闘力みたいな事になったら目も当てられなくなるので……


竜斗の速さは皆さんのご想像にお任せします……凄く速いとだけ!

本当に申し訳ありません……


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