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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
202/318

輝王終了と準備万端



 闘王祭6日目、闘技場は大いに湧いていた。


 輝王の部、決勝が、今まさに終わったところだ。



 今回の輝王は……ギルド【風林火山陰雷】、エルフ族のフィラとなった。


 準決勝も危なげなく勝ち進み……続く今日の決勝では、【神弓・与一】と呼ばれる神器を発動させ、超遠距離から矢を綺麗に一射すると、最高得点を叩きだしそのまま優勝を決めた。


 これでギルド【風林火山陰雷】は、【鎧王】と【輝王】の2つでリーチとなった。

 俺達のギルド【刀剣愛好家】は【剣王】の1つと、後がなくなった。



「ごめんね……みんな……私が……」

 ユイは申し訳なさそうに俯いた。


「大丈夫、後は任せろって」

「…………うん」


「ふむ、逆にスッキリしたぞ。後は勝てばいいだけの事だ」


 サクヤさん……それは……


「フォローになってませんよ、サクヤさん……」

「む? そうか?」



 サクヤさんの天然ぶりに俺達は笑いあった。


 正確にはギルド【風林火山陰雷】が必ず勝つとは限らないし、2:2で、残り1つの王を別のギルドが取れば、めんどくさい事になるのだが……

 だからこそ、俺とレイナが勝てばいいだけの話だ。




「おいおい、随分と余裕だな?」



 急にあのいけ好かない奴が俺達の前に現れた。

 今日は……一人みたいだ。

 ガルデアもカイルもいない。


「まさか、あの程度で棄権するなんてな。だったら最初から棄権しろって話だ、くくっ」

 エルガーは、そんなに面白いのか?ってくらい笑っていた。


 ユイは悔しそうに黙ってそれを聞いていた。



「貴さっー!?」

 サクヤさんが怒鳴ろうとしたが制止させた。

「リュート……?」


「おい、あんた……」

「あぁん?」


「あんた、何の部に出るんだ?」

 俺は冷静に尋ねた。


「は? 【天王の部】に決まってんだろ、【雷属性】は最高最速……」

「つまりアレだ……俺と戦うのが恐いから、ユイに突っかかってんだろ?」


「…………てめぇ、まさかそれで喧嘩売ってるつもりか?」

「安心しろよ。誰もテメェなんか注目しないくらい完膚なきまでにぶっちぎってやるから、とっとと消えろモブ野郎」


 モブって言葉を知ってるのかは知らないが、畳み掛けるように喧嘩を売った。

 意味を知ってかは知らないが、エルガーの額の血管は浮き出る程で、憤慨してると一目瞭然だった。



「今の言葉、後悔すんなよ! 風属性如きが、雷属性に速さで勝てると思ってんのか!!」


 誰がいつ風属性だけだと言った?

 まぁこいつ如き風属性で充分だけど、目にもの見せてやる。


「テメェは必ずユイの前で謝罪させてやるからな!」

「上等だ……糞餓鬼……」


 エルガーは舌打ちすると、どこかへ立ち去っていった。




「いや~驚いたな……」

 キョウの額から冷や汗が流れていた。


「何が?」

「リュートでも怒るんだな」


「そりゃ、あんだけ仲間を馬鹿にされたら誰でも怒るだろ」

「アタシもちょっと吃驚だよ……」


 ユイも苦笑いしている。


「あんな奴程度にユイが馬鹿にされるなんて可笑しな話だからな。ボコボコにしてユイの前に連れていってやる」

「いやいや、天王の部は速さ勝負だから……ボコボコになんて……」


「まぁ言葉のあや。それくらい圧倒的に勝つ!」


「ふふっ、仲間のために怒れる仲間がいて私は幸せだ。天王の部、楽しみにしているぞ」

「うっす!」



 俺達は立ちあがり席を後にした。



 明日からいよいよ、天王の部だ。

 ユイの為にも、ギルドの為にも絶対に勝つ。

 そういえば……


 アルカディアの皆は今頃どうしてるかな?

 この世界に来た最初の仲間。

 復興も終わって元気にしてるかな?







 ホウライ王国にて、闘王祭が開催されている頃……アルカディア国では……



「準備出来ましたか?」

 城の前にて、兎人族のルルは集まっている面々に尋ねた。


「ああ、抜かりない」

 答えたのは獅子族のガオウだった。


「はい、大丈夫です」

 ガオウの傍らには、妻である八咫族のサラがいた。


「いよいよだな……」

 いつになく慎重な面持ちなのは、堕天族のゼノだった。


「なんだ? お前でも緊張しているのか?」

 横で微笑するのは竜人族のルキだった。


「SSランクに挑むのだ、誰でも緊張する。いや、戻ってこれな……」

「挑む前から弱腰は良くないな。竜斗に怒られるよ」


 機人族のアトラスの言葉を遮ったのは、蟲人族のバアルだった。




「皆さん、お気を付けて……」

「必ず生きて戻ってきて下さい」

「信じてます……」

「が、頑張って下さい!」


 城の前で見送る、ローゲやヒュース、各隊長達。


 そんな中……




「…………に、兄さん……」

 バアルに声を掛けたのは、妹のリリスだった。

 リリスはBランクへと至り、ナスカの代わりに新しく隊長へとなっていた。

 そしてこれが兄妹の久方振りの会話であった。


「……どうした?」

「ごめんなさい兄さん……私……」


「何も言わなくていいよリリス、分かってる」

「兄さん……」


「本当は……戦士にならずに静かに生きてほしかった」

「…………」


「でも……皆の力に、竜斗の力になりたかったんだろ? リリスの決めたことだ、僕はそれを見守る事にするよ」

 バアルは小さく笑った。


「兄さん……ありがとう……」

 リリスは涙を堪えた。


「僕らの留守の間、皆を頼むよ」

「はい!」


 やっと仲直り出来た兄妹であった。




「万事任せたぞ、ヒュース」

「はい、アトラス様もお気をつけて」


「安心しろ、奴を……死神を殺すまでは俺は死なん」

「…………アリス様の、為ですか?」


「そうだな……俺は……奴を倒さなければ先に進めん……俺の時はあの時に止まっている……」

「復讐は……アリス様が悲しみますよ……」


「分かっている……これからの、未来ある子達を守る為だ……俺は強くならねばならん」

「アトラス様……」


「2度とアリスの時の様な惨劇を起こさせない為にも……」

「…………分かりました、もう何も言いません。本当にお気をつけて。あ、それと……」


「?」

「帝国の、皇帝の動きが怪しいです……それも充分注意しておいて下さい」


「ウルか……了解した」

 アトラスは空を見上げ、何かを思案する様に目を閉じた。




「新婚そうそう死ぬなよ、おっさん」

「抜かせ、お前こそ油断していたら死ぬぞ」


「竜斗や姫さんにも報告しないとだしな?」

「そうだな」


 ゼノとガオウは笑いあっていた。


「お前は……」

「ん?」


「いや、なんでもない……背中は預けるぞ」

「何言ってんだ、俺の背中はルキに預けてる。おっさんの背中は奥さんに守ってもらえよ」


「きさっ……! はぁ、やれやれだ……」

「竜斗が前に言ってたが、「ため息ひとつで、幸せが1つ逃げてく」ってよ」


「…………」

 ルキとの関係を聞こうとしたガオウだったが、これ以上は喋らなかった。

 口ではゼノに絶対に勝てないと思ったからだ。




「しかし、本当に良かったのでサラ殿?」

「ええ、私だけ残る訳にはいきませんから」


「しかし……」

「私も竜斗さんが決めた一角ですよ。それに……」


「それに?」

「私がいない所で、ゼノさんとルキさんの関係が進展してたらと思うと、おちおち残っていられません」


「なっ!?」

「ふふっ……あちらと違い、こちらは私の勝ちですかね?」


 ルキは顔を真っ赤にさせて、サラはそれを見て微笑んだ。


「大丈夫です。必ず皆、生きて戻れると信じてます」

 サラは小さく自分のお腹をさすった。

 ルキはそれをただただ眺めた。


「決して無理は……」

「それは皆同じです、分かってます」


「……了解です」

「ふふっ」


 ルキとサラは微笑みあった。




「では、行ってくる!」


 竜斗命名の、七大悪魔王。

 レイナを除く6人は、皆に見送られながらSSランクの迷宮へと出立していった。






 ガオウ達は、スレイヤ神国協力の元、神国領内にある迷宮へと向かった。

 彼らの迷宮攻略の間、七極聖の何人かが彼等と入れ替わる様に、アルカディア国を守護する手筈となっている。

 結果的に杞憂で終わるのだが……これが急速に世界の変化を加速させていくのであった。



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