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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と輝王④


久々、夜勤です。

間違えました……久々、更新です。




 いけ好かない奴が立ち去り、周りの連中も解散し始める中、俺達はその場に佇んでいた。

 誰1人、喋ろうとしない。

 そんな中……



「リュート・テンゲン……」


 不意に呼ばれ、声のする方へ振り返った。


「何?」


 声の主は先程、ユイとサクヤさんに絡んできた……ギルド【風林火山陰雷】の1人、ドワーフ族のガルデアだった。



「先程はすまぬ……」

 見るとガルデアだけではなく、カイルと連れの法衣を纏った女性も謝罪してきた。


「すみません……」

「ご、ごめんなさい……」


「…………俺に謝っても仕方なくない?」

 後で我ながらよくない態度だったと反省する……

 この時は八つ当たりに近い、返しだったと思う。


「……その通りだな」

 ガルデアは頭をガリガリと掻いた後、ユイに謝罪した。




「なんなのだアイツは!」

 サクヤさんは【剣王の部】で戦った相手……カイルに当たり散らした。


「申し訳ありません、トーマス様のお孫様で……正直、自分達も手を焼いています……」

「君がアレと同じギルドとは思いたくもない!」


 サクヤさんのカイルへの評価は高い。

 本気で戦ったからこそ、カイルの強さを誰よりも感じて、認めているのだろう。



「レ、レイヴンさんがいれば……まだ、大人しいのですが……」

 法衣の女性はオドオドしながら喋っていた。


「レイヴン?」

「あ……私達のギルドの【火】の称号をトーマス様より授かった人です。レイヴンさんは私達のリーダーで、次のギルマスになる予定の御方です」


 なるほど、さっきの……エルガーって奴も、そのレイヴンさんには頭が上がらない訳だ。

 ところで……



「あ、申し遅れました……私はフィリオスの娘、フィラ・フィフィフ・フィリスと申します」

「フィ……! 長っ! 多っ!」


 あまりのフィの多さに驚いた。

 フィラは名乗りながら被っていたフードを剥ぐった。


「「!?」」

 その姿に誰もが驚いた。


 フィラの髪は綺麗な金髪で、耳が尖っていた。

 顔も整っていて綺麗だった。


「エルフ!?」

「はい」


「彼女も自分と同じで、祖先に英霊を持つ者だ。彼女の祖母も英祖ショーマのパーティーに属していたそうだ」

 ガルデアが説明してくれる。


 そうだ、この機会に是非ショーマについて聞いてみよう。


「良かったらショーマについて教えてくれない?」

「それは構わんが……出来たら闘王祭の後が良いのだが……」


「なんで?」

「一応、今は戦う者同士だからな」


 確かに。


「なら闘王祭が終わったらで」

「了解だ、我もそなたと話してみたいと思っていた」


 ガルデアと約束を取り付けた。

 すっかり忘れていたが、やっと王国に来た目的の1つを達成できそうだ。


 一頻り話し終わると、3人は謝りながらエルガーって奴の後を追っていった。




「大丈夫かユ……」

「ホント、ムカつく!!」


 サクヤさんがユイに声を掛けようとしたが、黙りだったユイは突如大きな声で怒鳴り始めた。


「なんなのよアイツ!」

「ユ、ユイ……?」


「いいわよ! やってやるわよ! 見てなさい!」

 ガルルと狂犬の様な声を出しながら、ユイはエルガーが立ち去っていった方を睨んでいた。


 不意にユイと目があった。


「なによ?」

「いえ、別に……」


「ならさっさと観覧席に行く!」

「は、はい!」


 めっちゃ睨まれた。

 こえぇ……


「サクヤさんもレーナも!」

「「は、はい……」」


 俺とレイナとサクヤさんは駆け足でその場から立ち去った。

 チラリと後ろを振り返ると……まだこっちを睨んでいた。

 でも……


「あの様子だと、案外いけるかもな」

「ですね」

「ああ、あんなユイは見たことがないな」


 何かが吹っ切れたのかもしれない。

 キョウの事であんなに怒るなんてな。

 そういや2人って幼馴染みらしいけど、実際のところどんな関係なんだろ?

 今度聞いてるか。


 3人で微笑み合いながら観覧席に向かった。





「お待たせ」

「おう、遅かったな」


 キョウを見つけると、横の椅子に腰掛けた。


「ユイの奴どうでした?」

「ん? ああ、もしかしたら大丈夫かもしれん」


「どういう事です?」

「実はな……」


 サクヤさんは、事の顛末をキョウに話した。



「へ、へぇ……そんな事が……」

 怒ったユイなんて見たこと無いからか、話を聞いただけでキョウも驚いていた。


「ところで、今は何グループ目?」

「ああ、直に8グループ目が終わるところだ」


「結構終わってきたな」


 昼も過ぎた頃で、かなりのハイペースで輝王の部は進んでいる。

 あまりの人数に3日かけて行われると思ったが……聞いたところ、夕方と夜にかけて準決勝も行うそうだ。

 昨日を休みにせず、輝王の部にすれば良かったのに、かなり詰め込んだ1日になりそうだ。



「まぁ実際のところ、1回で終わる奴も結構いるしな」

「そうなんだ?」


「ああ。準決勝までに魔力を温存しときたい奴もいるだろうし、なにより……1回で進出を決めたら2回目はしなくていいしな」


 確かに……



 そして輝王の部は着々と進んでいった。


 9グループ目の後半に入り……その24人目……事件は起きた。






 闘技場は歓声に包まれていた。



「す、凄いな……」

「ああ……」

「なんて奴だ……」

「かなりの腕ですね」


 俺もキョウもサクヤさんもレイナも驚いた。



 闘技場の中心にいるのは、ギルド【風林火山陰雷】の1人……【林】のフィラだった。

 彼女の神器は弓。属性は水。

 矢に刃は付いていないとの事で失格にはならなかった。


 しかし、水を矢に変えると、上空に向け一射する。


 まるで豪雨の様に、人形に水の矢が降り注ぐ。


 矢が降り止むと、そこに人形は残っていなかった。正確には塵からゆっくりと自動修復されたのだが、降り終わった直後はフィラの姿しかなかった。


 矢を射る姿は凛としており、美形のエルフもあってか……得点は驚異の40点。

 5人の審査員が全員8点を出した、今日1番の得点だった。



「広域攻撃だな」

「はい、対多数を想定されていますね」


「ああ、しかもアレを一撃に込めたらかなりの威力になる。一対一でも有効だ」

「ですね……それに……」


「何と言っても命中精度だな」

「リュートの言う通りだ。人形を中心に、水の矢が降り注いだ箇所が綺麗な円になっている。見事だ」



 流石、爺のギルドだ。

 どいつもこいつも、一筋縄ではいかない。

 にしてもだ……


 エルフと弓……

 似合いすぎだろ!

 本人が選んだのか、誰かが選んだのか知らないが、分かってらっしゃる。


 ん……?


 ふと気になり、隣に座るレイナに顔を向けた。


「不潔ですよ竜斗様……」

「レ、レイナさん……?」


 顔は笑っているが、目が笑っていない。

 マジ怒状態。

 心でも読めるのだろうか……?


「そんなスキルは有りませんよ」

「!?」


 怖い……


「私がですか?」

「!?」


 …………。


「人は考える事を放棄してはいけませんよ」

「!?」


 すみません……


「……まぁ、いいでしょう」


 会話してないのに会話している……

 俺はレイナ一筋なんだけどな?

 なんで怒られるのだろうか?





『流石の一言ですね。フィラ選手、初出場にして驚異の40点。余裕で予選を勝ち進みました』

『そのようですね……ちなみに彼女が決勝まで勝ち残ったら、もっと凄いものが見れますよ』


『と、言いますと?』

『彼女の祖母が愛用していたと言われる神器の1つ……【神弓・与一】です』


『!? あの【四神器】に次ぐ……?』

『ふふっ……楽しみですね』



 アイナさんとミラ王妃のやり取りで、輝王の部は更に盛り上がり始めた。

 というより……ここまでが長すぎて、皆疲れていたのもあり……これからやっと盛り上がる、といった感じだ。

 やっと予選が終わる……皆の心境はこれかな?


 ふむ……にしても与一か……

 もうね、名前だけで凄い弓だと想像出来る。

 ユイが同じグループじゃなくて良かった。

 それだけ勝率も減るしな。


 でもユイの神器だって負けてない筈だ。

 キョウのと一緒で俺が創造した神器だし、上手くいけば凄い事になる……筈……だと思う。



 そして、輝王の部は予選最後の10グループ目に突入した。

 観客達もやっと予選が終わると思ったからか、大いに盛り上がっている。

 24人が終わり、最高得点は32点。5位は27点。

 つまりユイは28点取れば予選通過だ。




『いよいよ、輝王の部最後の1人となりました。最後はこの方……ギルド【刀剣愛好家】の1人、ユイ・カナタ選手です!』


 あれ?

 アイナさんの実況が心なしか気合いが入っているような……気のせいか。


『彼女はどのような技をするのですかね? あの方のギルドですから楽しみです』


『?』

 ミラの意味深な言葉にアイナさんは首を傾げる。



 盛り上がる闘技場の中、ユイはゆっくりと人形が置かれている中心へと近づいた。

 遠くからだが、ユイの体が震えている様子はない。



 頑張れユイ!



 


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