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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と輝王③



 輝王の部。



 それは、闘王祭の中では異彩を放つ部門であった。


 闘技場のフィールド中央に置かれた1体の木偶人形。

 それを囲うようにして引かれた大きな円の線。

 参加者はこの線の外側より、人形に向かって神器を用い技を放つ。


 人形は当然Eランクの神器で出来ていた。

 技を浴びた人形は跡形もなく壊れるが、能力【自動修復】により、すぐに直る。

 全くもって意味不明の、しょうもない神器であった。


 そして輝王の部には5人の審査員がいる。

 1人の持ち点は最高10点。

 最大で50点の評価がされる。


 参加者は予選で2回チャレンジ出来、得点の良い方で審査される。

 技に納得いかなかった者は、再度同じ技を繰り出してもいいし、別の技でチャレンジする事も可能だ。


 グループ内の上位数名が決勝へと進み、今度は10人の審査員から審査される。

 最大で100点で評価される。

 決勝では1度しかチャレンジ出来ない。

 同じ技をするも良し、奥の手を出すも良しだ。



 ただし……今年は輝王の部の参加者が多く、250人を分けた予選10グループの内、各グループ上位5名を選出する。

 それから更に上位の者で決勝を競うそうだ。

 つまり……


 予選……250名(10グループ中、各グループ上位5名。チャレンジ2回)

 準決勝……50名(5グループ中、上位2名。チャレンジ2回)

 決勝……10名(チャレンジ1回)


 の、3段階。

 決勝まで勝ち残り【輝王】を取るためには、最大で5回もの技を披露しなくてはならない。





 なんて説明を、実況席のアイナさんが説明した後、俺が頭の中で整理しながらも着々と輝王の部は進行されていた。


 炎属性の神器で、人形を燃やす者。

 風属性の神器で、鎌鼬を発生させ切り刻む者。

 雷属性の神器で、人形に雷を落とし黒焦げにする者。

 地属性の神器で、地面を勢いよく盛り上げ吹き飛ばす者。

 中には、光を破裂させ眩しくフィールドを照す者もいた。



 俺は観ていて面白いのだが、闘技場全体を見ると反応はそれほどでもなかった。

 毎年やっているからか、みんな似たような感じだと言わんばかりで、盛り上がりにかける感じだった。

 しかも今年はそれが250人×2回……退屈なのだろう。


 点数も、5点や4点ばかり……たまに6点が出るくらいだ。

 ふぅむ……敵を倒しつつも魅せる技となると、難しいのだろうか?

 神眼で視ると能力が無いものや、パッとしないものもある。

 皆は何の目的で迷宮を攻略し、神珠を手に入れるのだろうか?

 欲しい神珠が高確率で手に入るのが迷宮なのでは?



「あぁ……そりゃお前……迷宮でそんな事考えながら戦えるやつなんてそうはいねぇ~よ」

「?」


 またしても独り言を発していたようだ……

 俺の疑問にキョウが答えてくれた。


「神国でもそうだったが、迷宮攻略なんて生半可な実力じゃギルド側が承認してくれねぇ~し……よしんば受けれても迷宮は1日毎に階層が増えていくからな」


 なるほど。

 1日毎に難易度が上がる迷宮を攻略できる奴が少ないのか。


「だから大抵の奴は金を貯めて、市場に出てる神器を買うのさ」


 なるほどね。

 それに……


「迷宮攻略で得られる神珠はAランク以下で一個、Sランクで二個だからな」


 だな。

 冒険者の数に対して圧倒的に神器が不足してんのか。

 よしんば買えても、余り物の低ランク神器って訳か。



「ん? そういえば……迷宮ってSSランクになって、ある程度したら消えるって聞いたけど……その時、迷宮にいたらどうなるんだ?」

「知らなかったのか………………消えるんだ」


「え?」

「だから、迷宮と一緒に消えちまうんだよ」


 マジか……


「実際はどうなるのか知らねぇが誰1人帰ってきた者はいねぇ……そりゃそうだ、皆消えるんだからな」


 ごもっとも。


「まぁ……帝国の六花仙、薔薇のゼータは迷宮脱出の神器を持ってるって噂だし、もしかしたら何か知ってるのかもな」


 ギリギリで脱出するって事か?

 リスクが有りすぎて試す気にはなれないな。

 今度帰ったら聞いてみるか。





 3人で雑談を交えながらも、着々と輝王の部は進行されていく。

 直に4グループ目が終わる。

 あ…………俺も何だか飽きてきた……



 輝王の部用に神器を発動させるなら、もうちょっと考えて欲しい。

 燃やすとか切り刻むとか、そんなのばかりで単調過ぎる。


 もっと派手なのは無いのだろうか?

 威力は審査対象外みたいだし、神器のランクは関係ないのだから、後は想像力だ。


 あ…………自分で創造した神器じゃないから大したことが出来ないのか……

 うーん……俺ならどうするかな……?

 俺ってば斬るしか能がないからな~選手達(ひと)の事は言えないな。

 なら、凄いインパクトがあれば勝ち残れるか?



天魔・絶刀(かたな)を巨大化させて爆属性で斬るとか……?」

 俺は小声で……誰も聞こえないくらいの声で呟いた。



 ふむ、闘技場が吹き飛ぶかもな……

 前に、ルキに会う前に帝国領にある城を斬ったけど……逆に次元属性はパッとしないかもな……ゼノが言ってたが、無属性と同じ扱いらしいし。


 にしても……暇だ……


 ユイの出番はまだかな?

 そういや、サクヤさんが来ないな……

 まだユイに付き添ってるのかな?

 ちょっと心配だし、探しに行くか。


 俺はすっと立ち上がった。



「? リュートどこへ行くんだ?」

「ちょっとサクヤさん探してこようかと」


「そう言われれば……まだユイさんの傍にいるのでしょうか?」

「どうかな……まぁちょっと見てくるよ」


「なら私もお供します」

 レイナも立ち上がった。


「もしユイが出てきたらよろしく」

 俺は留守番のキョウに、ギルド紋が刺繍されている旗を手渡した。


「おう、任せとけ」


 キョウを残してレイナと一緒に闘技場を歩き回る事にした。

 まぁ先ずはユイの所に行ってみるか。





「サクヤさんどこにおられるのでしょうか……」

「ん~やっぱユイのところじゃね?」


 闘技場内を散策するようにレイナと話ながら歩いていた。

 途中で売店コーナーを見つけたのでリィンゴのジュースをレイナと一緒に買って飲んだりした。


「ん、やはり甘いですね」

「だな」


 ある程度飲むと、飲みかけを持ちながら散策を再開した。


 もう少しで、朝一ユイとサクヤさんが向かったグループ分けを行った場所にたどり着く。

 俺達ギルドの控え室にもいなかったし、闘技場内では後はそこしか残っていない。


 俺とレイナはギルド用の控え室前の廊下を歩き続けた。

 廊下には沢山の選手達がまばらになって各々で過ごしていた。

 瞑想する者、トレーニングする者、仲間と話す者、等。



「|竜斗様……あれは何でしょう?」

「さぁ……ただ嫌な予感がするな……」


 レイナは前方の人だかりが出来ている場所を指差した。

 なにやら騒がしい……そして嫌な予感がする……



「ごめん、ちょっと通るよ」

「わっ!?」


 俺とレイナは人だかりを掻き分けながら前に進んだ。


「ごめんなさい、通らさせて下さい」

「うぉっ!?」


「はいはい、通らせて」

「!?」


 何度も謝りながら人だかりを進むとそこには……



「ふざけるな貴様っ!!」


 聞き覚えのある声が怒鳴り散らしていた。

 わーお……予想通りだ……


 サクヤさんとユイは四人組の男女に絡まれていた。

 サクヤさんと相対している先頭の男はいかにもガラの悪そうな男だった。


「あん? 別にふざけてないさ……くくっ」

 ガラの悪そうな男は、頭も悪そうな笑い方をしていた。


「だったら何故っ!!」

 サクヤさんは歯軋りしている。


「そんな体を震わせてる様な女は棄権させろって言っただけだろ? こっちは善意で言ってんだよ」

「貴様……っ!」


 サクヤさんは今にも襲いかかりそうな勢いだった。


「サクヤさんヤメてください……私はいいんです……」

 ユイは必死にサクヤさんを抑えている。



「ここにいるカイルを倒したアンタのギルドだ……どんだけ強いか期待してたのに拍子抜けもいいとこだ」

 ガラの悪そうな男は後ろを指差す。


 ん?

 あいつらは……


 よく見たら4人組の内の2人は、ギルド【風林火山陰雷】のメンバー。

 【風】のカイルと、ドワーフ族の【山】のガルデアだった。


 もう1人の法衣らしきものを着た女性は杖を両手で握りながら若干オロオロしていた。

 顔はフードを被っており見えないが、ステータスを見る限り彼女もギルドの一員だと思われる。


 で、先頭にいるガラの悪い男は、赤茶色の髪をオールバックにしていた。

 耳には沢山のピアスがされている。服装も、綺麗な高そうな鎧を要所々々に纏わせている。



「む、お主は?」

 ドワーフのガルデアが俺に気づいた。


「どうも」

 挨拶を交わす。


「リュートか!?」

「レーナも!?」


「お二人が心配で見に来ました」


 まぁ本当は暇だったからだけど……



「どうしたんですか?」


「こいつら……いや、こいつが絡んできたのだ」

 サクヤさんはキッとその人物が睨んだ。


「これは、これは、有名な【天剣】殿に、【拳姫】殿」

 先頭で絡んできた男はヘラヘラ笑っている。


「誰こいつ?」


「む……」

 先頭の男は少し面白くなさそうな顔をしてる。

「……流石、天剣。俺みたいな雑魚は興味ないってか」


「いや、そんな事一言も言ってないし……」

 なんだ、こいつ……


「俺はエルガー。トーマス・エルガー。ギルド【風林火山陰雷】の、【雷】のエルガーだ!」


 いや知らんし……

 ん?

 トーマス……?


「気づいたか。【元・守護神】トーマス・エルダーは俺の爺だ!」


 マジかよ……

 あれか……祖父の威光で威張り散らしてるパターンか?



「ところで、天剣の小僧……なんで、てめぇが【鎧王】に出なかった?」

「なんでって……」


 皆で話し合って決めたからとしか……


「てめぇが出てたら【鎧王】は取れたのにな。あんな雑魚を出すなんて」


「「!?」」


 こいつ……!


「てめぇ……っ!」

「なんだ怒ったのか? 事実だろうが……あれだな、てめぇら3人だけ強くて、そこの女と鎧王に出た2人は雑魚だって訳だ」


「っ!!」

「くくっ、図星かよ……おまけにそこの女なんて体を震わせてるしな。なんでギルドに入ってんだぁ?」


 ユイは体を震わせながら俯いたままだ。



「…………ゃない」

 ユイは小さく呟いた。


「あぁん?」


「キョウは雑魚じゃないっ!」


 !?

 ユイが怒鳴った!?


「確かに私は弱くてビビりだけど……キョウは雑魚なんかじゃない! 訂正してよ!!」

「くくっ、そうこなくっちゃな。爺が言った通り、俺らを楽しませてみろよ」



 俺らは4対4で対峙する。



『そこっ、何をしている!!』


 通路の遠くの方から怒鳴り声が聞こえる。

 衛兵かギルド職員だろう。



「ちっ、いいところだったのに……行くぞ」

 エルガーは興が冷めたのか、どこかに立ち去っていった。



 それに伴って、周りにいた野次馬達も解散し始めた。


 それにしてもだ……本当に……久しぶりだ……


 本気で不快になった……!



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