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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と輝王①



 楽しかった修練の翌日……



「おはよ~」

 俺は欠伸をしながら自室のドアを開け、皆のいるリビングへと起きた。


 やはり朝のランニングの後の二度寝は堪えるな……

 眠い……

 だが……



「お、お、おお、おはよ……リュリュリュ、リュトくん……」


 震える手でカップを持ち、上手くお茶を飲めていないユイを見ていたら、眠気も吹き飛ぶってもんだ。

 ユイはガチガチに緊張している。



「だ、大丈夫……か?」

「う、うん? だ、大丈夫……だよ?」


 何故、疑問形?

 こりゃあかん……


「みんなは?」

「えっと……まだ寝てる……かな?」


 そうなのか?

 俺の二度寝より遅いのか?

 ん?


 テーブルの上に1枚の紙が置いてあり、俺はそれを手に取った。



『リュートへ ユイを頼む 3人で先に行く サクヤ』



 マジか!?

 何してんだあいつら!

 てか、輝王の部って何時からだっけ!?

 もう行かないとマズくないか!?


「ユイ! 3人はいつ頃出た!?」

「え……? まだ寝てないの?」


 ダメだ……

 3人が居た事も、手紙があった事すら知らなかったみたいだ……それで3人は諦めて、俺に丸投げしたのか……


「ユイ、急ぐぞ!!」

「えっ、どこに?」


 マジかよ……既に現実逃避している……


「闘技場に急ぐぞ!」

「?」


 ユイはあどけない表情で首を傾げてる。

 こうなったら……


 俺はユイの手首を掴んで立ち上がらせた。

 急いで闘技場に行かなくては!


「ど、どうしたのリュートくん!? お茶が溢れ……」


 お茶の心配してる場合か!

 俺は入り口ではなく窓の方へ向かうと、窓を全開に開けユイを抱き抱えた。


「きゃっ!?」

「急ぐぞ! 今日は輝王の……」

「イケメンの男の子に抱き抱えられるのは嬉しいけど、私はもうちょっとオラオラ系の顔が好みだから……」


 知るか!

 何故、急に好みの話!?


「しっかり掴まってろ!」

「……っ!?」


 俺はユイを抱えたまま、そのまま窓から飛び降りた。

 昨日の鎧王のデモンストレーションの時と一緒で、着地の瞬間に神器【魔名宝空】を発動させてフワリと地面に着地した。


「も、もう……いきなりでビックリ……っ!?」


 驚いてるユイには悪いが、そのまま闘技場に向かって駆け出した。

 眠かった事など忘れて完全に目が覚めた。


 遅刻して失格なんて事にはならないよな!?

 頼むから間に合ってくれ!



 そう願いながら、ユイを抱き抱えたまま街中を駆け、俺は闘技場を目指した。







「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」



 闘技場へ到着するとユイを抱き下ろした。

 大したことない距離だがめちゃ疲れた……

 俺は両膝に手を置いて、息を整える。

 


「ギリギリだったなリュート」


 顔を上げると、サクヤさんが立っていた。



「マジで……焦った……っす」

「ふむ……そろそろ時計の神器が欲しいところだな」

「それより……通信の神器が欲しい……っすね」


 改めて携帯が便利な事に気づかされた。

 通話にメール、時計にカメラ……

 翔兄の言った通りだ……

 異世界に来て思い知らされるとは……



「で、皆は?」

 大分、息も整ってきた。


「レーナとキョウなら既に観覧席に向かった。リュートも行くといい」

「サクヤさんは?」


「私はユイと一緒に受付に向かう。そこでグループ分けがされる。後は任せろ」

「了解……てか、それなら最初からユイも連れていって欲しかったっす」


「なに、ギリギリまで粘ろうかと思ってな。ユイ……大変だったろ?」

「大変でした……」


「リュートもまだ寝ていたし……少しでも落ち着けたらと思ったのだが…………ダメか?」

「ダメっすね……ガチガチに緊張し過ぎて、もはや現実逃避してます」



 呆けているユイを見つめると、サクヤさんは小さくため息をもらした。



「最悪の場合、輝王の部は諦めてくれ……迷宮初挑戦の時もあんな感じだったし、棄権も考えている……」

「マジか……」


 よく生き残れたな……


 でも棄権はして欲しくないな……

 じゃないとユイはこれから先、全部の事に逃げることになる……ユイにはそうなって欲しくない。

 でもこればかりは本人次第だしな……


「でもまぁ、応援はしっかりしますよ」

「ふっ、世話をかけるな」


 サクヤさんは小さく苦笑いするとユイを連れて受付へと向かった。

 俺はそれを見送ってから観覧席へと向かった。



 うん、俺に出来るのは精一杯応援する事だけだ!







「おっ、遅かったなリュー…ぶっ!?」



 何事もなかったかの様に声を掛けてきたキョウの顔を見ていたら、無性に腹立たしくなってきたのは言うまでもない。


 観覧席に座っているキョウとレイナを見つけると、真っ先にキョウの顔面に拳をお見舞いした。



「ちょっと、スッキリした」

「おいっ!!」



 しかしキョウも分かっているのか、それ以上の事は言ってこなかった。

 確信犯か……



「おはようございます竜斗樣(リュートさん)

「おはよ、レイナ(レーナ)


 朝の挨拶を交わすとレイナの隣に腰掛けた。

 うん、お互いの呼び方にも大分慣れてきた。2人の時と、皆が居る時で使い分けているが、最近では自然に言える。

 まぁその為に似た名前に変えているわけだが……上々と言えるだろう。


 レイナは今日も、王院のパンフレットを眺めている。

 余程、学校が気になっているようだ。

 俺は携帯の取説みたいに分厚いパンフレットを見ただけで、目眩がしそうだ……

 逆にレイナは全部読んでから使い始めるタイプっぽい……



「もう全部読んだ?」

「はい、ただ……まだ全部覚えれなくて……今は3回目です」


 絶句……

 1回読みきるだけでも信じられないのに、それを既に3周目だと……



「レーナは王院に入りたいのか?」

 流石のキョウもレイナが王院の事を気にしていると気づいたようだ。


「そうではありません……けど、気になってしまい……」

 レイナの歯切れが悪い。

 入りたいのではなく、建てたいと言えないからだ……まぁアルカディア国の事を話す訳にはいかないから仕方ない。



「ふ~ん……ところでーー」

 キョウは然して興味もないのか話題を変えてきた。



 キョウの、しょうもない話の相手はレイナに任せて、俺は辺りを見回した。

 既に闘技場は観客で一杯。

 心なしか闘技場が、鎧王の部の時よりキラキラしてる様に思える。

 俺らのいるギルド専用観覧席にも特に見知った顔はない。


 そういえば……何故、ギルドに所属していないカルラくんは専用観覧席(ここ)にいたのだろう……?

 ミロクさんがギルドに所属しているからかな?

 そのお陰で座れていたのかもな……で、それを見つけたルナちゃん……更にザナードくん……って訳か。



 なんにしても……昨日の修練は楽しかった。



 若くて才能溢れる子と戦うのはなんて楽しいのだろう。

 早くSランクになった彼らと戦いたい。



「なんか俺……ジジ臭いな……」

「何か言いましたか、リュートさん?」


「いや、なんでも……」

「?」


 レイナは首を傾げている。

 良かった……独り言を聞かれなくて……







 暫く皆で雑談を交わしている時だった。



『ご来場の皆様、今日で闘王祭は五日目です。昨日は例年にはない休日となりましたが、今日から2日間は……3種目【輝王の部】となっております』



 実況席からマイクを使ったアナウンスがされる。

 あれ……?

 いつものクナさんらしくない丁寧なアナウンスだった。



『申し訳ありません、本日より輝王の部、天王の部、の実況を務めます……ギルド職員のアイナです。皆様、よろしくお願い致します』



 なんと、いつもギルド本部でお世話になっているアイナさんに代わっていた。

 アイナさんも、クナさんに負けず劣らず声援が送られている。

 大人気だ……特に野郎から……



『解説にお越し頂きますは……な、なんと……わ、我が王国の母とも言える存在……そして……現・守護神の名を冠する四傑のお一人……【ミランダ・H・クラフト】樣です!!』


『ど、どうもです……』



 戸惑いが入り交じった歓声がミラに送られる。

 凄いな……どんどん解説者が豪華になっていく。

 天王の部は誰だろ?



『ミランダ樣は塔に籠られ、我が王都を結界にて守護して頂いておられますが、今回の闘王祭は是非ご観覧したいとの事です』

『…………ま、まぁ……そうです』



 ん?

 ミラは結界で守護していなかった筈だ……て、事は国民も何故ミラが幽閉されているかは知らないって事か……寧ろ、嘘の情報が伝わってる訳か。

 本人に理由を聞けたら1番なんだけど……結局教えてもらえなかったしな。



『ミランダ樣は……楽しみにしている部や、期待しているギルドはありますか?』

『そうですね……どの部も楽しみです。期待しているギルドは……はい、【刀剣愛好家】です』



 !?

 わーお……

 観覧席がざわつく……いや、闘技場全体がざわついている。



『トーマス樣も仰られていましたが……そこまでですか?』

『?』


『確かにギルド【刀剣愛好家】はギルドランクB-で、内3人が個人ランクAです。しかし、そこまで有名でもない筈です』



 アイナさんの言う通りだ。

 まだ【剣王】を取っただけだし、今までの依頼もそこまで凄いことをした訳ではない。

 観客の中にも沢山頷く人達がいる。



『ふふっ……ギルド【刀剣愛好家】には、【天剣】と【拳姫】と呼ばれる方がおられるそうです。既にファンクラブが王院にまであるそうですね』

『…………』


『皆、うすうす気付いてる筈です……自覚がないだけで、もう既に刀剣愛好家(あのギルド)に惹かれているのです』

『…………』


『かく言う私も惹かれています……それに』

『それに?』


『鎧王のデモンストレーションで、【天剣】がミロクさんのSランクを防いだそうではないですか』

『……その通りです』



『ふふっ、本当に楽しみです』




 ユイではないが……流石にミラにあそこまで言われたら、俺も少なからず緊張してきた。

 ユイは大丈夫かな……





~後日談?~



アイナ「まさかミランダ王妃まで、あのギルドに注目してるだなんて……」

クナ「どうすんのアイナ? 天王の部なんてした日には、あの人の人気は最高潮よ」


「うう……で、でもまだ、活躍すると決まった訳では……」

「希望的観測ね。デモンストレーションであれだけの事をしたんだから、既に注目株よ」


「…………」

「残念ね~貴女だけが知ってるギルドのつもりだったんだろうけど……既に王院にまでファンがいるみたいだし」


「うぅ……なんでなの?」

「そりゃ凄い人にはそれだけ王気(オーラ)があるもの……当然、これから凄くなる人にもね。皆のスキル嗅覚(はな)を舐めたらいけないってことね」


「どうしよう……」

「闘王祭が終わった時には女の10人や20人出来てるかもね」


「リュート樣はそんな不潔な事しません!」

「はいはい……それなら早いとこアプローチぐらいしなくちゃ」


「が、頑張る……」


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