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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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幼女と若者



 あれから俺は闘技場内の中央フィールド(俺、命名)に飛び降りた。


 結構な高さだったため、普通だとグロい即死が待っている……が、一瞬だけ神器を発動させてフワリと着地した。

 飛翔や身体強化があれば便利だが……ないのだから仕方ない。それに……この神器の発動・解除の速さには結構自信がある。

 (ひとえ)に神速のスキルの効果かも……


 まぁいずれにせよ、俺が着地しただけで、闘技場内は沸き立っていた。

 俺はゆっくりと舞台上へと向かって歩き出した。



 すると、突然黄色い物体が俺の顔面に襲いかかってきた。


「ぶへっ!?」

 なんだ!?


「リュートおにいちゃん!」

 最近よく聞き慣れた女の子の声がした。


「メイちゃん!?」

 て、ことは……こいつはイエロースライムのゼウスか……

 俺はイエロースライムをがっちり掴まえて、顔から引き剥がした。


「おにいちゃん、デミストーションに出るんだ!」

 メイちゃんはニパッと笑いながら駆け寄ってきた。

 ちなみに、デモンストレーションな。


「まぁね……はい」

 俺は変になつかれたイエロースライムをメイちゃんに引き渡した。


「私もさっき出たよ」

「えっ……!?」


 マジか……おっさん何考えてんだ……メイちゃんみたいな小さい子を出さすなんて……父親失格だろ……


「ゼウスと!」

「…………」


 理解した。

 つまりイエロースライムが殴られた訳ね……ミロクさんに。

 可哀想に……もしかしてイエロースライム(こいつ)……虐められてんのか?

 だから毎回逃げ出すのか?


 怖くて聞けない……

 メイちゃん、恐ろしい子っ!!



 まぁ冗談は置いとくか……

「今からちょっと危なくなるから、離れてて」

 俺はメイちゃんに観覧席に行くよう促した。


「うん、おにいちゃんも頑張ってね」

「おう」


 メイちゃんはイエロースライムを抱き抱えながら、お母さんの元へと駆けていき、一緒に観覧席へと上がっていった。



『はぁ……はぁ……はぁ……イケメンと幼女……ご飯3杯はいける…………はっ!? な、なんでもありません、失礼しました!』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ、ふぉ』


 がっつり聞こえてましたよクナさん……クナさんって変〇だったのか……?




ーーーーーーーーーーーー


0008「イケメンと幼女……ご飯3杯はいける……」


取り巻き「「お、お姉さま……?」」


0008「……な、なんでもありませんわ……」


ーーーーーーーーーーーー




 俺は舞台上に上がっていった。

 舞台上には二人だけしかいない。



「お待たせしました、ミロクさん」

 俺は眼前に立つ人に軽く挨拶する。


「くく、よもやこの様な形で君と手合わせできるとはな」

 ミロクさんは不敵に笑ってる。


「まぁ色々とあって……本当はがっつり戦ってみたかったすけど」

「そうだな、こちらが一方的に殴るだけなのは些か申し訳ないな」


「いや~黙って殴られるつもりはないですね」

「くく、これだから君達は面白い……私如きどうとでもなる、そんな眼をしている」


「それはマジで思ってないですね」

 俺は訂正させる。

 そこまで失礼ではないです。


「まぁいいか……直ぐに分かる」

 ミロクさんはワクワクしてらっしゃる様子だ。



「ところで……今日のデモンストレーションの最高記録は?」

 俺はミロクさんに尋ねた。


「ザナードという、王院の子だ……確かCランク三回の計9ポイントだったかな」


 へぇ~……口だけじゃなさそうだ。

 下手なギルドの奴等より強いんじゃないか?


 俺はワクワクしながら、1つの神器だけを嵌めたまま、残りの神器を懐に仕舞った。



「で、どのランクにするのだ? まさか、Bランクなどにはしないだろうな……」

「Sランクで」



『…………えっ……今、なんて……?』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ、Sと言ったのぉ~』


『えーーーーっ!? リュ、リュート選手は確か……【天王の部】に出場する選手! ま、まさか……鎧王にて……い、いきなりSランクなんて……』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ、自信があるのは速さだけではないようじゃのぉ~……』



 闘技場全体がどよめいている。

 そりゃそうだ……結局、鎧王の部に出た選手からSランクを指定される事はなかった。

 それがデモンストレーションで観れるとは俄には信じ難いのだろう。



「……いいのか?」

 ミロクさんは訝しい顔でこちらを見ていた。


「はい」


「このランクに耐えられたのはミラだけだぞ」

「みたいですね」



『そうです! その通りです! 5年前……当時、王院初等部に通っていた、まだいたいけな少女が耐えて見せて以来です』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ、儂はあれを観て【守護神】の引退を決意したからのぉ~』


『そうでしたね……あれで、その少女ミランダちゃんは今代の【守護神】へと至り……今ではこの国の女王へと至っているのです!!』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ…………それと女王は関係なくね?』




「トーマス様の仰られる通りだ……冗談なら……」

「冗談に見えます?」


 俺は真剣な表情でミロクさんを見つめた。


「……愚問か」

「です」



 ミロクさんは1つ深呼吸すると、魔力を神器に込めて、今回初のSランク神器を発動させた。



【世界の果てまで】<籠手/無/無/S>



 虹色に輝く、見た目が派手なだけの神器だった。

 魔族は、こんな無駄な神器を創る人間にも劣っていたんだな……まぁ今では大した事ないだろうけど。


 俺も1つ深呼吸すると、神器を発動させた。



魔名宝空(マモルモノ)】<盾/風/守護/S>



 まぁ特殊スキル……魔眼持ちの奴等が視たらAランクに視えるけど、実際はこう。




「綺麗……」


 俺には聞こえなかったが、観覧席にいた殆どの人が呟いた言葉だった。

 美しいまでに機械的な翼。

 陽の光が反射し、神々しく輝いていた。




「やはり、その神器か……」

 どうやらミロクさんには分かっていたようだ。


 そりゃまぁ初出逢いの時に発動させてた神器だからな。

 寧ろここ1ヶ月……人前ではこの神器しか発動した記憶がない。

 キョウとユイと迷宮に行った時も、これで全部魔物を結界に閉じ込めて倒させたからな。



「まぁ盾、これしかないんで」

 鎧も胸当ても持ってないです。



『あ、あの可愛い顔が、も、もし潰れるなんて事になったら……』

『ふぉ? なったら?』

『王都中の女性が悲しみます!!』

『…………』




ーーーーーーーーーーーー




ーギルド専用観覧席ー



「はわわ……リュート様……ど、どうするのかしら?」

 ルナはもう訳がわからずパニクっていた。


「初めてみた……あのような美しい神器……」

 ザナードは素直な感想を述べた。


「うん……それに多分、着地の時に使ったのは風属性……もしかして移動時にも使えるのかな?」

 カルラは竜斗に言われた通りしっかりと視ていた。

 闘技場内の殆どの人が発動すら気づかなかった神器をちゃんと捉えていた。


「だが鎧王の部は、盾か鎧か胸当のみ……」

「うん、つまりあの翼は本来防御系の神器なんだ」


「あの背中にある翼でか?」

「そ、それは分からないけど……」



 いつの間にかカルラとザナードは二人で検証していた。

 レイナはそれを微笑ましそうに見つめ、ルナは2人を見て唖然としていた。

 レイナだけが気づいていた……竜斗の【王気<覚醒>】によるものだと。

 同時に恐怖もした……竜斗の無意識によるものだろうが、それでもザナードは変わりつつあると……

 レイナは寒気を覚えた……竜斗の懸念していた通り、王気のスキルは使い方を間違えたら危険だと。




「……良いことを教えてあげます」

 レイナは3人に向かって話始めた。


「あれは竜斗様(リュートさん)力のほんの一部です。リュートさんは速さに自信があり【天王】に出場し、あの見せかけだけの神器など簡単に防ぎ、尚且つあの神器はリュートさんの想像力によって大変優れています……しかし、」


「…………」

 3人は黙ってレイナの話を聞いた。


「忘れていませんか? リュートさんは本来、剣士です」


「あっ……」

 3人は思い出した。

 普段リュートをなんと呼んでいるか……誰が呼んだか……そう、天剣と。



「もしリュートさんが5部門に出られてたら、間違いなく4つの王になれます……それほどリュートさんはお強いです」

 レイナはニコリと微笑んだ。


「…………ち、因みに……と、とれない1つはなんです?」

 ザナードは意を決して尋ねた。


「武王ですね」

「な、何故?」


「勿論、私がいるからです。拳だけはリュートさんにもミロクさんにも敗けるつもりはないです!」

 レイナは、ミロクの子供であるカルラの目の前で堂々と宣言した。



 そして3人は直感で気づいた。

 この人達はヤバイと……

 強さの果てが感じ取れなかった。

 大して年も違わないのに自分達と何が違うのか……


 弱さを言い訳に強さを諦めたカルラ。

 他者を蹴落として悦に浸るザナード。

 強者に憧れるだけで目標にしないルナ。


 それではダメだと3人は気づいた。



 3人は真剣な表情で舞台を見下ろした。

 これから起こる出来事を1つも見逃さない為に。

 もうそこには……言い訳をする子も、他者を蹴落とす子も、憧れだけで終わらせる子もいなかった。



(竜斗様、頑張って下さい……ふふっ、頑張るなんて竜斗様には必要なかったですね……………私もしっかりと視させて頂きますね……ミロクさんの強さの片鱗を……)


 レイナは3人の様子を見て少しだけ微笑むと、3人以上に真剣な眼差しで舞台を見下ろした。




ーーーーーーーーーーーー




「ではいくぞ……」

 神器の効果なのか、ミロクさんの腕に発動されている神器は虹色に光輝いた。


「いつでもどうぞ」

 俺は事も無げに答えた。



 ミロクさんは駆け出すと、瞬く間に俺の眼前へと立ち、右拳を突き出した。

 俺はスローモーションのように、それに合わせて右の手を翳した。




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