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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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貴族と平民


カルラくんのランクをC➡Dに変更しました。




「おいおい、こんなとこに劣等種がいるぜ」


 見ると、ブレザーの制服を着た若い男の子が5~6人、通路を闊歩して近づいてきた。



「ザ、ザナードくん……」


 またしてもカルラくんの知り合いのようだ。

 神眼で視ると、先頭でいかにも威張り散らしてそうな奴がザナードくん。

 茶髪をオールバックにし、目付きが鋭い。

 どう見ても主人公顔ではない。



「【くん】だぁ~……様をつけろよ【平民】」


 ザナードくんはどうやら貴族らしい。

 ニヤニヤと笑いながら、こちらを見下(みお)ろしている……いや、見下(みくだ)している。



「なによ、同じ【王院】の同級なんだから別にいいじゃない!」

 ルナちゃんが睨むようにしてザナードくんを見つめる。



「てめぇは黙ってろ、下位貴族が……叔父が四傑だからって、てめぇが偉い訳じゃないんだぜ」


 おや?

 ルナちゃんの叔父が四傑?

 てことは……英雄か死神の親戚になるな。

 どっちだろ……?



「劣等種って?」

 俺はカルラくんに尋ねた。


「…………ぼ、僕の事です」

 カルラくんは脚を(さす)りながら(うつむ)いた。


 そーゆー事ね……くだらない。

 ザナードくんは、見た目や言動通り、下らない奴だった。



「そもそも……てめぇみたいな、親が四傑だからって平民の分際で王院に通える事自体が間違ってんだよ!」

 ザナードくんは、イラついた表情でカルラくんを見下(みくだ)す。


「ちょっと! 王院は貴族制じゃないって、創立者【ショーマ】が決めた事なんだから、貴方の方が間違いよ!」

 ルナちゃんはザナードくんに食ってかかる。


「そうだな、俺が間違ってたな」

 ザナードくんは、あっさりと非を認めた。

 あれ?

 案外と良い奴……


「さっさと王院辞めろよ、脚無し……」

 ザナードくんは、カルラくんに顔を近づけて睨んだ。



 ですよね。

 良い奴な訳がなかった。



「あんたっ……言っていい事と悪い事がっ!」

 ルナちゃんはザナードくんの胸ぐらを掴んだ。


「おいおい、俺は事実を言っただけだぜ……」

 ザナードくんは胸ぐらを掴まれてもヘラヘラとしている。


「ぼ、僕は大丈夫だから、ルナちゃん……!」


「ほら、本人も言ってんだろ。平民で脚もない、ランクもDの落ちこぼれ、王院卒業後に騎士団に入れるとでも?」


 ザナードくんのランクは脅威のB。

 ルナちゃんとザナードくんの後ろにいる連中はC。

 そしてカルラくんのランクはD。


「まぁギルドって道もあるけど、それこそやっていけんのかよ! 誰も助けちゃくれないぜ親の七光」

「っ……」


 よくもまぁこれだけ悪口が出てくるもんだ。

 いじめっ子は人の弱点をつく天才だと改めて感心する。


 でも悪いけど……カルラくんは俺の将来のライバルだからな。



「口は災いの元……貴方は人を(けな)せる程、お強いので?」

 介入しようとしたが、先に口を出したのはレイナだった。



「あぁん誰だ、て、めぇ……」

 ザナードくんはルナちゃんの腕を振り払ってレイナを睨もうとしたが……レイナの発するかなり手加減した魔力に圧倒される。


「私から視たら、カルラさんも貴方も発展途上……どちらもまだまだです」

 レイナが軽く威嚇する。

 それだけでザナードくん達は圧倒される。


「ザ、ザナードさん……あの人……【拳姫】ですよ……」

 取り巻きの連中がザナードくんに小声で耳打ちする。


「なっ……なんで……そんな奴が……劣等種と……」


 いやいや、親が拳聖……幼馴染みの叔父が同じ四傑なら、世間的に言えばAランク冒険者と知り合いでもおかしくないだろ?



「き、綺麗だ……」

「すっげぇ~巨〇……」

「俺、ファンになる……」


 ザナードくんの取り巻き達は鼻の下を伸ばしてる。

 仕方ない……レイナは超絶美人だからな。



「ですから、お友達を貶す発言は感心しませんね」

 レイナは微笑むが、目が笑ってない。

 ガチ怒状態。


「う、うるさい……!」

 ザナードくんは慌てふためきながら、顔を真っ赤にさせている。

 レイナの可愛さにやられてしまったか……


「そ、それに事実だ、訂正するつもりはない! 現に鎧王の部に出場も出来ない奴は王院にいる資格なんてない!」

「ギルドに属していないのですから当然なのでは?」


「いや、今やってるデモンストレーション……王院生はアレに出ないといけない必須演習だ! それをこいつだけ……!」


 カルラくんだけ免除されたって事か?

 う~ん、それは確かにあまり感心しないな。

 カルラくんも王院生なら、脚を言い訳にせず出るべきだ。

 王院生になった以上、それくらいの覚悟はするべきだ。


「それはあんた達がクラスで勝手に決めたことでしょ! なによ、必須演習って……馬鹿じゃないの! カルラをいじめたいだけでしょ!」



 そうでもなかった……

 ルナちゃんの憤慨もごもっともだ。



「い、いいんだよルナちゃん……事実、僕は出られないし……」

 カルラくんは悔しそうに拳を握りしめている。


「ふん……劣等種は大人しく王院を去ればいいんだ……それをいつまでも……!」

 ザナードくんが更にカルラくんを責め立てようとしたら、懐から何かカードみたいなのが、俺の目の前に落ちてきた。



「あっ……!?」

 ザナードくんが焦った様にこちらを見ている。


「ん、なにこれ?」

 俺はそのカードを拾って表記されてる内容に目を通した。



『王院中等部リュートファンクラブ・ナンバー0007』



「ぶはっ!」

 吹き出してしまった。


「か、返せ……あ、いや、返してください!!」

 ザナードくんは俺からカードを勢いよく取り上げた。


「あ、あんたが0007だったのね……欠番かと思ってたわ……」

 ルナちゃんの体はワナワナと震えている。


「ザナードくん……」



「う、うるさい……そ、そんな目でこっちを見るなっ!」



 つまりだ……ザナードくんは俺に憧れてて、普段馬鹿にしてるカルラくんと一緒にいたから面白くなかったと……まぁそれはたまたまかもしれないな。



「ふはっ!」

 思わず笑ってしまった。

 いけ好かない貴族の子供だと思ってたけど、存外可愛かった。


「わ、笑わないでくだ……!」

 ザナードくんは顔を真っ赤にさせていた。


 いや~仕方ないだろ。

 そこは普通レイナのファンだろ。

 レイナなら分かるけど、まさかの俺とか。


 俺は立ち上がってザナードくんの頭に手を乗せた。



「はわわっ!?」

「!? なんて羨まっ!」


 ザナードくんは照れ、ルナちゃんは歯軋りしている。



 こんな時カルラくんを贔屓したら、きっとザナードくんは道を踏み外す。

 小説みたいに嫉妬にかられたザナードくんは、誤った方法でカルラくんを傷つけるだろう。取り返しがつかなくなる方法で……


 さて、どうしようかな?


「ねぇ、俺の強さみたくない?」

「えっ?」


「カルラくんもルナちゃんもザナードくんも、俺の将来のライバルだろ? だったら俺の強さ知りたくない?」

「わ、私はファンですよ!」


「で、でもどうやって……?」

「なんで? 丁度いいのがあんじゃん」


「!? ま、まさか……」

 3人も取り巻きも焦ってる。


 訳のわからない展開に頭がついていってない様子。



 レイナがそっと俺に近づいてきた。


「よろしいのですか竜斗様(リュートさん)?」

「まぁ任せてよレイナ(レーナ)


「神器の能力も強さもバレますよ?」

「うん、いいんだ……ここで突き放したらザナードくんは道を踏み外す」


 きっとテンプレ展開が待ってる……けど、そうはさせない。

 上手くいくかは分からないけど、皆には仲良くして欲しい。



「そこでよく見てて」


 俺はカルラくんとザナードくんに言うと、前に歩き出した。

 観覧席の1番前に出ると、腰の高さくらいのフェンス?落下防止柵?の上に飛び乗った。



「クナさーーん、俺出ますっ!」


 俺は叫んだ。

 周りにいた連中は何事かと驚いただろう。



『おおっーーと!? ここでギルド専用観覧席より立候補者が……ってリュートさん!?』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ、ふぉ、こりゃたまげた』


『な、なんと……先程、鎧王の部2位になったキョウ選手! そのキョウ選手が所属するギルド【刀剣愛好家】! そのギルドのエース、最速で個人ランクがAになった一人……リュート・テンゲン選手がデモンストレーションに立候補だーーーーっっ!!』


 凄い実況で大注目を浴びた。

 予想以上に恥ずかしくなってきた。





ー闘技場、一般用観覧席ー


0008「鎧王の部も、デモンストレーションも粗方終わりましたね」

0015「そうですね、お姉さま」

0036「私はあまり好きではない種目ですわ、お姉さま」


0008「今年は拳聖・ミロク様が出られるし、クラスの男子達もデモンストレーションに出るとわめき散らしてましたから観に来ましたが……退屈でしたわ」

0055「ザナードさん達も大した事なかったでしたね」


0008「それは間違いですよ……ザナードさんは性格に難はありますが、実力は中等部で間違いなく上位です」

0055「も、申し訳ありません……」


0008「でも一般の方ばかりの参加で、ギルドの方達はデモンストレーションに参加されない様子……そろそろおいとましますか?」

0103「そうですね」



 ブレザーの制服に身を包む女子達……一団は、観覧席から立ちあがり、その場を後にしようとした。

 遠くの観覧席で誰かが参加を表明したが、気にも止めなかった。



0063「私は【輝王の部】が楽しみですわ、お姉さま」

0008「そうですね、あの部はとても美しいですわ」


0025「私は【武王の部】ですわ……麗しい【拳姫】様を是非、一目……」

0008「貴女はお二人のファンでしたね?」

0025「ですわ、お姉さま」


0008「(わたくし)はなんと言っても……」



『な、なんと……先程、鎧王の部2位になったキョウ選手! そのキョウ選手が所属するギルド【刀剣愛好家】! そのギルドのエース、最速で個人ランクがAになった一人……リュート・テンゲン選手がデモンストレーションに立候補だーーーーっっ!!』




0008「ぶーーーーっっ!?」


 お姉さまは卒倒した。



0015「お姉さま!?」

0025「お姉さま!?」

0036「お姉さま!?」

0055「お姉さま!?」

0063「お姉さま!?」

0103「お姉さま!?」


 取り巻きの女子達は、お姉さまを心配して駆け寄る。



0008「はっ!? こ、こうしてはいられないわ!! い、急いで全会員に通信神器で連絡を!! 緊急事態ですわ! 席の確保を最優先! 金に糸目はつけないで! それと音声拡大神器の準備! わたくし達の声援をありったけ届けるのです!!」


全員「「か、畏まりましたお姉さま!!」」


 それはもう見事なまでに美しく速く、全員が各々の役割を理解し行動を開始した。



0008「て、天が……震えるわ……」



 お姉さまは一人呟く……



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