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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第一章【はじまり】
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聴力と提案



 レイナはドキッとした。



 目が覚めると目の前には自分の婚約者が、無防備な寝顔を晒していたからだ。

 目の前で寝ている男の子の顔を眺めてから、体を動かそうとするが、まだ思うように動かない。潤滑油のなくなった機械のようにゆっくりと体の向きを変え、声のする方へ視線を向けた。


 まだ声も出そうにない。

 少し離れた場所で火を囲って話す3人の会話に耳を傾けた。


 どうやら自分が1日ぐらい寝ていた事、ここが地下19階だという事、そして自分がSランクになっていた事を知った。



 体は動かないが、魔力はほぼ全快みたいだった。



 レイナは特殊スキル【魔眼<王>】を発動させる。

 魔族の中でレイナしか所持していない、特殊スキルの中では神眼に次いでレアなスキルであった。


 能力は、その気になればなんでも視れた。

 迷宮、魔物、神器、神珠、人物、スキル、なんでもござれだった。


 下手したら神眼よりも優れていたがデメリットもあった。

 膨大な魔力を消費するのだ。

 レイナの先天スキル【魔皇】は、他の者を寄せ付けぬ圧倒的な魔力を保有するというスキルであった。


 そんな【魔皇】を所持しているレイナでさえ、【魔眼<王>】は1日に5回しか使えない、魔力消費が激しいスキルであった。

 もし仮にレイナが【魔皇】を所持していなかったら、【魔眼<王>】は1日に1回、よくて2回しか使えなかったであろう。



 レイナは自分のステータスを確認し、ランクが【S】になっていることを自覚した。

 小さな声で「本当にSになれた」と呟いた。



 しばらくステータスを眺めていたら、ふいに横から声がした。





【レイナ視点】



「もう起きて大丈夫なのか?」


 私はドキッとし、ゆっくりと声の方に顔を向けた。

「……竜斗様?」


「おう……それよりもう大丈夫なのか?」

「ええ、まだ上手く体は動かせませんが……大丈夫です」


「良かった……ごめんよ、俺がいきなり森羅万象を使ったからレイナに負担をかけた」

「いいんです。あの時、ああしたからバジリスクを倒せましたし、おかけでランク【S】になれました」


「それは……そうだけど……」

「いいんです、気にしないで下さい」


「……まぁレイナがそう言うなら……」

「ふふっ」



 私達は小さな声で話した。

 お互いの声が届く範囲程度の小さな声で。

 そして……自然と顔を竜斗様の方に寄せた。



「こんな時に不謹慎かな?」

「いえ……そんなことないです」


 3人に気付かれないように、静かに口唇を重ねた。


「んっ……」

「っ……」





【竜斗視点】



 ふいに頭の上の方から声がした。

「不謹慎です……」


 俺とレイナは驚き体を起こした。

「「ルル!?」」


「私、兎人族ですよ。全部聞こえてます」

 ルルは自分の耳をピコピコと動かす。



 俺達は顔を真っ赤にさせた。



「姫様と竜斗様、目を覚まされました!」

 ルルはガオウとゼノに聞こえるよう叫んだ。



「おぉ、それは良かった。姫様、なにか食べられそうですか?」

 ガオウが大声でレイナに尋ねてきた。


「え、ええ……大丈夫です……」


「なら、スープが出来ているのでお持ちいたします。竜斗、お主も食べるだろう?」


「ああ、頂くよ」

 俺が答えたら、次はゼノが茶化してきた。


「どうだったルル? イチャイチャしてたろ?」


 何を言ってるんだこいつは!



「ええ、イチャイチャされてました」


 ルルまで、何言ってんの!



「全く、時と場所を考えろよな」


 それは……そうだけど……



 レイナの顔は恥ずかしさで更に真っ赤になった。


 俺は体を起こして2人のいる火のある方へ向かおうとした。

 するとレイナが呼び止めた。



「待って下さい、私も行きます」

「無理するなよ、スープぐらい持ってくるよ」

「いえ、大丈夫です。私も皆のところで食べます」


 俺とルルは顔を見合わせてから、2人でレイナの体を支えて、ガオウとゼノの元にゆっくりと歩いた。





 食事が済むと俺達は、ルルが淹れてくれた紅茶みたいな飲み物を飲みながら、話をした。



「……でも驚きました。まさか本当にSランクになれるとは……」

「ええ、我らも驚いています」


「やっぱSランクの魔物を倒したのが大きいんだな」

「そうでしょうね、バジリスクはかなり強かったです」



 俺はみんなの話を聞いてから、あることに気づいた。


「……考えたんだけど、魔族の数って少ないんだよね?」


「まぁそうだが、突然どうしたのだ?」

「多分だけど、今まで魔族の中にSランクがいなかったのはそれが原因だと思う」


「なぜそう思う?」

「恐らくSランクの迷宮はAランク5人で挑むもんなんだ。でも魔族の数は少ない、その上いくつもの国に分かれてバラバラに暮らしてる。だからAランクの魔族も少ない。Aランクの魔族が5人もいないからSランクにも挑めない。結果、Sランクになれないから人間に遅れをとるんだ」


「……確かに、言われてみれば……」

「でも人間は数が多い。それだけAランクの奴もいるしSランクの迷宮に挑める。結果、Sランクが何人もいるって訳だな」


「……なら、なぜ人間の中にSSランクがいない?」

「それはいくつか理由があるな。例えばどの国もSランクが6人いないとか。潜在ランクがSランクまでだとか。後は……挑んだけどSSランクの魔物を倒せなかったとかかな」


「な、なるほどな」



 そして俺は今後どうするかの提案を口にした。



「だからさ、魔族の国を1つにしよう!」


「!?」×4

 みんなが驚き俺の顔を見た。



「そ、それは……確かに魔族の国を1つに出来れば、それにこしたことはないが……」

「だがそれだと、人間達から良い的になるぜ。なんせ魔族が1ヶ所に集まってくれてんだ。奴等からしたらこんな美味しい話はない」


「うん、それは俺も考えた。単純に魔族を全員集めたんじゃすぐに格好の標的にされる。だから国を1つにしていくのと同時に、7人のSSランクの魔族も集める」


「!?」

 みんなは更に驚いた。


「いやいや、何言ってんだ! そんなこと出来る筈がない!! それに……!?」

 ゼノが興奮してか俺の案を否定してきた。


 するとレイナがゼノを制止した。

「姫さん?」


「なぜ7人なのですか?」

 レイナは冷静に問いかけてきた。


「これはあくまで俺の予想なんだけど、多分この世界にはSSランクになれる魔族が最低でも7人はいる」

「その根拠は?」


「予想に根拠って言われても困るんだけど……しいて言うなら名前かな」

「名前……ですか?」


「うん。レイナとゼノとガオウの名前の中に、【サタン】【ルシファー】【レヴィアタン】ってあるだろ? 確か悪魔王の名前だったと思う」

「悪魔王……?」


「そう。俺もあんま詳しくないんだけど、確か前に翔兄…俺の兄貴から、そんな話を聞いたことがある」

「それは……そちらの世界の話ですか?」


 俺はコクリと頷いた。


「確か神話なんかの話で出てくる悪魔の中に凄い悪魔が何体かいるんだ。その中にルシファーとかサタンとかがいるって兄貴から聞いたことがある」

「…………」


 みんなは黙ったままだが、俺はそのまま話を続けた。


「だから、みんなに聞きたいことがある。それ次第でSSランクになれる魔族が7人いるか確信が持てるんだ……」

「……聞きたい事とは?」


「名前がちゃんとあってるか怪しいんだけど……魔族の中に【ベルゼバブ】【マモン】【ベルフェゴール】【アスモ……なんちゃら】って奴等はいる?」


「…………います」

 少し間が空いてレイナが答えてくれた。


「以前話した人間と戦ってる、2国の魔族の王の名前がマモンとベルフェゴールという者です」



 やっぱりいた!



「残念ながら、残りの2人に心当たりはありませんが……」

 レイナは3人の方を向くが、3人とも首を横に振った。


「いや、2人もいることが分かっただけで充分だ」

 間違いなく残りの2人もいる!



 俺の話を聞いてからレイナは何か考え事をしているみたいだった。



 少し興奮していた俺は我に返った。


「えっと……あくまで俺の予想で提案だから……考えてみて」



「確かにこのまま単純にSSランクになったとしても、私達以外の魔族が滅んだのでは……」

 レイナはぶつぶつと呟いていた。


「もしアルカディア国を拠点にするなら姫様が城に残って、残りの6人がそれぞれ3国に対して防衛も出来る……か」

 ガオウが国防について考えている。


 俺は頷いた。


「確かに現状我らは、城を空けることが多い」

「それは仕方ない。人間とマトモに戦える魔族が少なすぎ……る……」


 ゼノは自分で言って気付いた。

 数が少ないことで全部が中途半端になっている事に。

 国防も迷宮攻略も、魔族の数も質も。




 すると突如、迷宮が揺れ出した……



 迷宮のフロア数が【46】になり、俺達の迷宮攻略の2日目が終了した。



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