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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と鎧王⑦



 闘技場内にある舞台……そこにはミロクさんとキョウの二人しか立っていない。

 まぁ当然だけど……


 ミロクさんの両腕には金ピカの籠手の神器が発動されている。


 キョウは……



【吹き荒ぶ風】<盾/風/増殖・守護/B>



 Bランクで、二能力、属性有り。

 Bランクでは最高峰と言える。

 これも俺が創造した神器。


 キョウとユイと攻略した迷宮で手に入れた神珠の中では1番良いものの1つだ。

 まぁそれが俺が欲しいと思ったから手に入ったのだろう。

 確か本人の望む神珠が高確率で手に入るとかなんとか、昔ガオウが言ってたからな。



 後は……キョウが耐えれるかだ……




ーーーーーーーーーーーー




「またしても、(神器)1つか……」

「今の俺の集中力だと……盾と鎧2つ同時はキツいんすよ……」


「まぁいいだろう」

「それに……」


「それに?」

「これを防げれば……俺が鎧王だ」


 キョウは確信した。間違いなく防げれば鎧王の座が待っている。

 それにキョウは嘘をついた。

 盾と鎧同時に発動は出来る。ただし、魔力が持たない。

 今のキョウでは1回だけ可能。

 Bランクとはいえ……それ程までに竜斗の創造した神器は、今のキョウには荷が重かった。


 奥の手だった。


 だが、だからこそキョウは……これに耐えることが出来れば、同時に発動した3回目は防げると確信した。



「お前の力……見せてみろ!!」


 ミロクはただ真っ直ぐに駆けた。



「うおおおぉぉぉぉおおおおっっ!!」


 キョウは3回目用の魔力は残しつつの、今出せる最大の魔力を盾の神器に込めた。

 盾の神器から荒ぶる風が、吹き出す。


 しかし、ミロクは意にも介さず風の中を突っ切った。



「まじかぁぁああっっ!?」


 キョウは荒ぶる風を物ともしないミロクに驚愕した。



「そよ風だな」


 ミロクはキョウの眼前に立つと、先程と同じ様に拳を振り上げ、真っ直ぐに降り下ろした。


 ミロクの拳が盾に当たった瞬間だった!



「まだまだぁぁああっっ!!」


 キョウの叫びと同時に、盾の神器のもう1つの能力が発動した。



「な、んだと!?」


 ミロクはどんどんとキョウから離されていった。

 正確には、一列に並びながら増殖する盾に押し戻されていった。



『これは!? キョウ選手の盾がどんどんと増えていくっっ!!』


 クナの実況にも熱がこもる。



『ふぉ、ふぉ、ふぉ、やりおるわっ! 確かに離れてしまえば盾を壊されようと、自分にダメージはない。考えおる!』


 トーマスも称賛の言葉を送った。



『確かに試拳官の神器には、属性も能力もないです! しかもミロク様が拳を振り抜いた瞬間、それで攻撃は終了となります』


『2回攻撃すれば、ミロクの方が反則となるからのぉ』



「甘いっ!!」


 ミロクはそのまま拳を盾に当てたまま、振り抜いて壊そうとせずに、そのまま更にゆっくりと前に歩みだした。



「まじかっ!?」


 キョウが驚くのも無理はなかった。

 ミロクからしてみれば、Bランクの神器など問題ではなかった。

 拳を振り抜かなくても壊せる実力がありながら、敢えてせずに、そのままキョウの位置まで歩いて見せた。



ー観客達は大いに盛り上がったー



「あ、あんたホントにどんだけ化物なんだよ!?」


「さんざん言われてきた言葉だな」


 キョウが焦るなか、ミロクは笑みを溢しながら、着実にキョウへと近づいていった。



(くそっ、どうすればいいっ!? もっと魔力を込めて盾を増やすか!? だがそれだと3回目が…………考えろ! 考えるんだ! リュートなら、レーナならどうする!?)



「はっ!?」


 キョウが思案していると、いつの間にかミロクは眼前に立っていた。



「なかなか、面白かったぞ……キョウ!!」


 ミロクは拳を振り抜いた。



「ぐわーーーーっっ!!」


 ミロクの拳は盾を貫き、キョウの腹部に炸裂した。



 キョウは勢いよく吹き飛ばされた。



(いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、いてぇ、マジで痛すぎだろ……死ぬ……!)



 吹き飛ばされながら、キョウは悶絶した。



ーそれはたまたまだったー



 吹き飛ばされる最中、偶然にもキョウの視界に一瞬だけ、ギルドの旗が見えた。

 泣きそうな顔のユイ……力一杯旗を振る竜斗(リュート)……




ーキョウの意識は途絶え、そこからの記憶はなかったー





「まだだああああああああああっっ!!」



 キョウは後ろに向かって盾を増殖させた。



 なぜそうしたかは分からない。

 本能としかいいようがなかった。

 自分の後ろに次々と現れる盾にぶつかりながら、キョウは吹き飛ばされ続けた。

 それは少しでも衝撃を緩和させようとした苦肉の策だった。

 実際には盾にぶつかる分のダメージがあるのだが、今のキョウにはそんなこと分からない。



 盾から発せられる風が更に吹き荒れた。


 闘技場内にいる誰もが目を開けていられなかった。


 風が落ち着くと、観客達はゆっくりと目を開け、舞台の方を見下ろした。




 そこに……キョウは立っていた。



 竜斗は勘違いしていたが、鎧王の部に場外はない。

 立ち上がれさえすれば良いのだ。



 そこには……舞台からは落ちてはいたが、ギリギリ壁にぶつからず、踏みとどまったキョウの姿があった。




ー観客達は大いに盛り上がったー



 耐えたのだと、誰もが確信した。




「…………見事だ、キョウ!!」


 舞台上にいるミロクの額に、ほんの僅か汗がつたった。




『キョウ選手、(こら)えたーー!!』


『ふぉ、ふぉ、ふぉ、天晴れじゃ!!』



 クナの実況と、トーマスの解説?に更に闘技場は盛り上がった。

 拍手と歓声がキョウに贈られた。




「やった、やった、やったね、リュートくん!」

「ああ、流石キョウだ!」


「キョウってば凄いよ!!」

 ユイはリュートに抱きついて誰よりも喜んだ。




『これでキョウ選手には5ポイントが付与され、計10ポイント!! 最後の攻撃もAランクを指定し、見事……耐えれば……って……あれ?』



 闘技場内はどよめきだした。



『キョウ……選手?』



 闘技場は打って変わって静まり返った。

 クナのマイクによって拡大された声にも、キョウからの反応がない。


 キョウはその場で立ったままだった。




「っ!?」


 異変に気づき真っ先に駆けたのはミロクだった。


 あっという間にキョウに近づき、その場に立ち尽くすキョウの肩に触れた。



 その瞬間、キョウは前のめりに倒れた。

 危険な倒れ方だった。




「急いで、治癒士を呼べーー!!」


 ミロクはありったけの声で叫んだ。



 観客はどよめき、クナもトーマスも危険だと勘づいた。

 慌てて動き出す大会運営側、治癒士も急いでキョウの元へと駆けた。




「ね、ねぇ……嘘よね……リュートくん……キョウ……気絶しただけだよね…………?」


 ユイはリュートの裾を僅かに引っ張りながら、カタカタと体を震わせた。

 その顔には血の気が引いていた。



「っ…………行こうっ! キョウのとこに!!」


 竜斗はユイを引っ張りながら、キョウの元へと駆けた。




 引っ張られるユイの視線は常に、倒れたままのキョウに向かれていた。

 治癒士やミロクに囲まれる中でも、キョウが起き上がる様子はなかった。




「きょおおおおぉぉぉぉっっ!!」




 ユイの泣き叫ぶ声だけが闘技場に響いた……




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