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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と鎧王⑥



『ガルデア選手、ミロク様の拳を受け止めたーー!!』



 はっ!?

 気がついたら、ガルデアは舞台上で少し後ずさっただけで、見事、攻撃を耐え終えた後だった。


 割れんばかりの大歓声。



『やりましたねトーマス様』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ、贔屓はしたくないが、ここまで誰も耐えれんかったからのぉ……中々にやりおるわ』


 解説の爺は嬉しそうに顎髭を撫でていた。


『これでガルデア選手に8ポイントが入ります!』


 あれ?

 Bランクって4ポイントじゃ?

 まさか……


「そのまさかだよリュートくん……」

 ユイが呆れた目でこちらを見ていた。


「まさか、今の防御を見ていなかったんですか!?」

 カルラ君が驚いた表情でこちらを見ていた。


「えっと……今のって……」

「「2回目」」


 ですよね。

 しまった……見てなかった……


「信じられません……今の見事な防御を見ていないなんて……」

「カルラ君……」

 ユイは首を横に振る。


「初出場で、ルールも聞かない……それがリュートくんだから……」

 諦めた表情でカルラ君に話すユイ。


 いや、あれは大会長の説明が長……っ!

 いや、言い訳は駄目だな……



「すみません……」

 深々と頭を下げた。

 あれ?

 なんで謝ったんだ俺?



『次で3回目……下手したらこれで鎧王が決まるかも知れませんね』

『まぁ後一人おるし解らんがの……』


『おっと!? ガルデア選手が選んだランクは……なんと、Aランクだーー!!』

「ふぅむ……あれに耐えれるかのぉ?」




ーーーーーーーーーーーー



「見事だガルデア殿」

 舞台上でミロクはガルデアに称賛の言葉を送った。


「なぁに、トーマス様の弟子としてこれくらいは……それに最低でもAランクを耐えなければ鎧王の名は名乗れまい」

「見事!」


 ミロクはAランクの籠手の神器を発動させた。


 ガルデアは鎧の神器の上に、更に鎧の神器を発動させた。

 少し部位が足りない様な鎧は、二つ目の鎧で補填された。



「多重発動か!?」

「いかにも!! 来い、拳聖!!」



 閃光にも似たミロクの拳が、ガルデアの腹を貫いた。



「ぐぅぅ……う……」

 ガルデアの膝が折れた。



『ああっと、流石のガルデア選手もAランクの攻撃には耐えられなかったか!?』

『流石じゃわい……だが』



 ガルデアはゆっくりと立ち上がった。



「な、なんとか……」

 ふらつきはあるもののガルデアは確かに立ち上がった。

 舞台上からも落ちていない。

 寧ろ、先程までより動きはなかった。ほぼその場に留まる事が出来ていた。



「見事だ!!」

 ミロクは高々と宣言した。



 その瞬間にガルデアに5ポイントが付与され、計13ポイントとなった。

 大歓声の中、ガルデアは勢いよく、その場に座り込んだ。



「なんと凄まじい威力だ……多重発動の鎧まで砕くとは……」

「いや、我が拳を防いだのだ……見事だガルデア殿」


 ミロクは座り込むガルデアの前に手を差し出した。


「……四神器【釈迦】だと私は死んでいたか?」

「だろうな……あれはミラでも防げるかどうかだ」


「なんと【守護神】でもか……まだまだだな……」

 ガルデアは差し出された手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。



 惜しみない拍手が2人に送られた。




ーーーーーーーーーーーー



「キョウ……死ぬ?」

「キョウ死ぬ」

「今日? 誰の事です?」


「キョウの事」

「今日の事?」

「いや、キョウ……」


「今日?」

「いや、今日キョウが死ぬかもって話……」

「恐々?」


「…………」

「…………」

「?」



 俺とユイとカルラ君の噛み合わない会話は終った。




『さぁ、鎧王の部最後の選手は……』


 俺はクナさんの実況に違和感を感じた。

 え、最後?

 予選1グループの最後って意味だよな?

 いやぁ、まさかな……



『ギルド【刀剣愛好家】、キョウ・シグレ選手だーー!! 昨日、見事【剣王】の座を獲得したサクヤ選手率いるギルド!! ここで、もし鎧王の座を手にすることが出来れば王手! 【闘王】へのチャンスも間違いないものとなります!』

『ふぉ、ふぉ、ふぉ、ステータスのランクはBらしいのぉ……なら、無理をしなければ鎧王にはなれんが……どうするのか楽しみじゃわい』




 俺とユイは精一杯の声でキョウの名を叫んだ。

 頑張れキョウ……


 俺の創造した神器よ……キョウを守ってくれ……



 舞台上でキョウが指定したランクは……




 Aランク。




 頑張れキョウ!




ーーーーーーーーーーーー




「いいのか?」

 ミロクはキョウに尋ねた。


「ああ」

「レーナのいるギルドでも手加減はせんぞ」


「じゃないと困るな」

「?」


「俺は刀剣愛好家の古株なんでね……このギルドがリュートやレーナしか強い奴がいないとか思われたくないしな」

「心意気は良し!」



 ミロクは金ピカの拳の神器を発動させた。

 相対するキョウは、鎧の神器だけ。



「……死ぬぞ?」

「試してみて下さい」


「いいだろう」

 ミロクは駆け、瞬時にキョウの視界から消えた。


「っ!?」

「(反応が)遅い!!」


 キョウの眼前には、既に拳を振り上げたミロクの姿があった。


 ミロクは降り下ろすように、拳を突きだした。


 ミロクの強大な拳がキョウへと炸裂した。



『なんと!? キョウ選手……呆気なく終わってしまったーー!!』

『この程度か……』



 タメ息混じりの歓声が闘技場に響いた。

 誰もが終ったと感じた。

 2人だけを除いて……


 最初に違和感に気付いたのは、試拳官であるミロク本人。



「なっ!?」

 ミロクの拳は霞でも殴ったかの様に、虚しく突きだされたままだった。


 そのミロクの拳、僅か数十センチ、ズレた所にキョウは飄々と立っていた。



【霞の王】<鎧/風/蜃気楼/B>



 相手から自分の認識を僅かにズラす能力【蜃気楼】。

 

 ミロクは誰もいない所を殴った。

 いや、僅かにキョウの肩を霞めていた。

 キョウはその場から動いていない。

 ミロクが勝手に致命打にならない所を殴ったのだった。


 まさに、鎧王の部を根底から覆す様な神器であった。

 耐えるでも、ましてや避けるでもなく……相手が勝手に変な所を殴ってくれる神器であった。



「一応、(肩に)当たってますし……これって5ポイントですよね?」



 キョウの問いに、ミロクは唖然としていた。




『な、な、な、なんてこったーー!!』

『こりゃなんとも……』


『ミロク様が、まさか、攻撃を外すなんてーー!?』

『一本とられたのぉ……ふぉ、ふぉ、ふぉ!』



 反則スレスレだった。

 いや、キョウは反則していない。

 きちんと鎧の神器を発動し、黙って殴られたし、避けてもない。


 外した試拳官が悪い。



ーーーーーーーーーーーー




『…………あっと、ここで審議、審議です! 皆様、少々お待ちを!!』

 クナさんの周りに偉そうな人達が集まっていた。



「リュートくん……」

「まぁ、キョウが耐えるにはアレしか思い付かなかったからな……こうなることは予想できた」


「あれは……いやしかし……ルールは破っていない……だけど……」

 カルラ君もブツブツと呟きながら一人検証している。


 鎧王の部は……言わば耐えるだけの種目。

 人が吹き飛ばされても良し、立ち上がっても良し、完璧に防いでも良し、マンネリしなければ、どのような結果になっても大抵は盛り上がる。


 しかし、どうやら試拳官が攻撃を外すなんて事は過去になかったらしい。

 闘技場内はどよめいている。



 審議もかなり話し合っている。

 中々、話が纏まらない様子だった。


 すると……




『みな、聞いてくれ!』


 マイクの神器を持っていたのはミロクさんだった。


『私は試拳官失格だ! 今のは完全に私に非がある! 彼はルールを破っていない! よって……彼に5ポイントを付与したいと思う!』


 俺とユイは喜んだ……が、他の観客達はどうも納得していない様子だった。

 ちょっとヤバい雰囲気……?



『だが!』


 ミロクさんは言葉を続けた。


『次は外さん!』



 その瞬間、闘技場内は歓声に包まれた。



 惚れ惚れする程、マジでカッケーなあの人。



「かっこいい……」

 ユイが呟く。


 その気持ち分かるぞ。

 今のはカッコよ過ぎだ。


「流石……母上……」

 カルラ君も誉めている。


 盛り上げ上手な人だ。

 でも……マジで次は当てそうだ。

 どうする気だキョウ?



 キョウが次に指定したランクは……



 Aランク。



 勝負に出るみたいだ。




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