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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と鎧王②


 本日、二話目。




「ふぉ、ふぉ、ふぉ……神器発動、【眠くな~る】!」


 元・守護神トーマス……いや、爺は両手を翳すと、いきなし神器を発動してきやがった。


 椅子に腰かけていたキョウとユイは、カクッと項垂れて眠りについた。

 俺とレイナは身構え、腕で遮るような仕草をしたが、特に変わりはなかった。



「ふぉ、ふぉ、ふぉ……やるのぉ~お主ら……」

 バルタン爺は顎髭を擦りながら感心していた。


「爺……てめぇ……」

 憤慨し、神器を発動しようとしたが、爺は片手を翳しそれを制止させた。


「まぁ待て……眠らせただけで、危害を加えるつもりはないわい」


 それが危害だ!


「この神器は儂と同格以上の者には効果がない」

「なら、なんでこんな事を……」


「まぁ聞け……最近の若いもんはせっかちで困る……」

 爺はどっこいしょとか言いながら、空いていた椅子に腰かける。



「それで御老人……何ようでしょうか……?」

 レイナが冷静に尋ねる。


「ふぉ、ふぉ……小僧と違って、お前さんは冷静で見所があるのぉ~ミロクが気にかけるだけはあるわい」


 悪かったな、見所がなくて……


「で?」

「ふむ……単刀直入に聞こう……お前さんら、闘王祭をどう思う?」


 単刀直入すぎだろ!

 意味が分からん!


「どう……とは?」

「ふむ……優勝出来ると思っておるのか?」


「当然です」

「根拠は?」


 レイナがチラリと俺の方に視線を送った。

 俺に説明しろと……別にいいけど。



「サクヤさんが【剣王】になった時点で俺らの勝ちは確定した」

「ほう?」


「仮にユイとキョウが負けても、俺とレイナ(レーナ)が勝って、3つの【王】を獲る。で、最後にギルド【拳武】に勝って俺らの優勝」

「ふむ……最後のは説明になっておらんが、拳武戦までは概ね儂と同じ意見じゃの……」


 ん?


「それは……敗けを認めると?」

「まぁ……儂の【眠くな~る】で眠らなかった者が2人おったら終わりじゃと思っておったが……本当におるとはのぉ……」

 爺は困った顔をしている。


「まこと世界は広いのぉ……未だ見ぬ強者がおるとは……」

 爺は長い髭をゆっくりと擦る。

「……因にだがお前さんら2人はどの部に出るつもりじゃ?」


「武王です」

「天王」


「ふぉ、ふぉ、ふぉ……こりゃまいったな……小僧が遅いのを期待するしかなさそうじゃ……」

「なんで? レーナに勝つつもりは?」


「頭悪いのぉ~お主、Sランクの儂の【眠くな~る】に耐えれるお嬢ちゃんに、儂の弟子が勝てると? ミロクが惚れ込む程じゃ……当然、武の心得も?」

「あります」


「ほれ、詰みじゃ」

 爽やかな程、爺はあっさりと諦めた。



「それで、俺が遅いの期待するしかないって訳か……」

「そう言う事じゃ……ちなみにじゃが、お主【速度上昇】系のスキルは?」


「神速」

「終わた……」



 爺はテーブルに置いてあった、湯呑みにお茶を注ぐと、両手を添え丁寧に飲み始めた。

 めっちゃ、くつろいでる。



「クウマの小僧がおればのぉ~……ズズッ」

「それって四傑の死神?」


「そうじゃ、あやつも儂の弟子でのぉ~ギルドで【風】の称号を与えておった……まぁ本人の属性は【地】じゃったがのぉ~……ズズッ」


 爺はアッサリと四傑の属性をバラした。

 俺とレイナは話を聞きながら、お茶を自分の湯呑みに注いで飲み始める。



「確か【天王の部】の最速記録保持者……ズズッ」

「その通りじゃ……ズズッ」


「何故ギルドをお辞めに?」

「王の……ああ、この国の本当の王の事じゃが……王の命令を無視してギルドを脱退させられたのじゃ……まぁ強さは本物じゃから【四傑】ではおれたのじゃが……」


「どんな命令を?」

「なんじゃったかのぉ~?」


 爺……


「おお、そうじゃ! 確か魔族を捕らえよ、の命令を無視して殺したのが原因じゃ」

 爺は思い出せた事でスッキリしたのか、妙に嬉しそうだ。


「何年前じゃったかの~当時、絶世と謳われたアリス・ベルフェゴールと言う機人族の女を殺したんじゃ」


「っ!?」

 知ってはいたが、思いがけず出てきたその名を聞いて俺は、驚いてしまった。


「あれは酷い作戦じゃった……魔族博愛のこの国で魔族殺しは御法度じゃ……それを、あんな……」


 ん?

 ちょっと待て……

 変だ……今違和感が……



「魔族博愛……?」


「そうじゃよ」

 爺は首を傾げた。


「でも奴隷オークション……」

「ああ、あれか……あれは今の王が悪い……確かにホウライ王国(わしら)は過去数百年魔族を奴隷にしてきた……それは良い意味で魔族を守るためじゃ……」


 でも確かホウライ王国は、魔族を愛玩奴隷にしてきたって……


「まぁ……見返りを求める者は数多くいると言う事じゃ……神国は殺し、帝国は労働に…………守ってやる代わりに……と思う下衆な輩はどこにでもいる訳じゃ……」

「……この国で働く魔族は?」


 レイナが重い口を開いた。


「……あれは正確には奴隷ではない……過去にこの国が雇った魔族の子孫じゃ……」

「でも首輪や鎖が……」


「そりゃ魔族が悪い! いや、すまん……正確にはアリスを殺したクウマが悪いのじゃ……アリスの兄である機械王アトラスを怒らせたからじゃ……この国は、何度もアトラスの襲撃にあってのぉ~……最近はめっきり無くなったが、そりゃもう鬼気迫るものじゃった……去年の奴隷オークションは途中で潰されたしのぉ~」



 そうか、その時にアザゼルとリリスは逃げ出したのか。

 【七ノ月】に行われる【美麗杯】……その後に行われる奴隷オークション……正確には分からんが時期的には合ってるか……



 ん?

 なんだ、今のもなんか違和感が……?

 なんで爺は謝ったんだ?



「まぁアトラスが攻撃してくるから、用心の為に仕方なく、首輪をつけさせたのじゃ……」

「そうでしたか……」


 なるほど……だから、王都にいる魔族はそこまで悲観していなかったのか……念のための鎖や首輪で、実質的には奴隷の扱いを受けてはいないのか……


「まぁ……実際に陰で魔族に何をしているか分からん連中は沢山おる…………腐った国じゃ……」

 爺は最後、小声で呟き聞き取れなかった。



「おっと……儂はそろそろ行くかのぉ~【眠くな~る】の効果も切れる頃じゃわい」

 爺は本当の意味で重い腰を上げた。

 腰をトントンと叩いている。


 でも分かった……やはり、この国はまだ希望がある。

 魔族を保護しようとする良い国だったんだ。

 それを一部の人間が勘違いし……徐々に広がっていって……今に至る訳だ。

 魔族に対する偏見は神国程はない。


 今の元凶……俺の予想ではこの国の…………そいつを何とかすれば何とかなるかも……

 多分……英雄エンマが奴隷売買に関わっていたのも、そいつが原因だ。


 根は深そうだけど……意外にも原因がわかった事で、少しだけモヤモヤしていたことが晴れてきた。

 爺には感謝だな。



 俺とレイナは爺を見送ろうとした。



「おっと……! 大事な事を忘れるところじゃったわい……」

 爺は惚けたように立ち止まった。


「「?」」


「頑固爺はまだ生きとるか?」

 爺はレイナに尋ねる。


「?」

 レイナは何の事か分からず首を傾げた。



「ロウガ・アルカディア……お前さんの爺の事じゃよ、レ()ナ嬢」



 本当に最初から最後まで爆弾をぶっ込んでくる爺だった。




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