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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と剣王⑦




『おっと~!? 最初に駆け出したのは、ヤサカ選手とヨーダ選手だーー!!』



 ヤサカは剣を両手で握りしめたまま、カイルに突撃する。

 ヨーダは短剣を二振り発動させて、サクヤに突撃した。


 が……



『サクヤ選手、カイル選手共に発動すらしていないぞ!?』



 サクヤとカイルは神器を発動させずに、その場から動こうとすらしなかった。



「舐めやがって……」

「後悔するなよ!」


 ヤサカとヨーダは同時に相手へ斬りかかった。



「風雷剣舞……」

 眼前にヨーダが迫ると、サクヤは小さく呟いた。


「…………」

 ヤサカがカイルに迫るが、カイルは無言だった。



「死ねぇっ!!」

「喰らえ!!」


 ヨーダは短剣を振るい、ヤサカは振りかぶっていた剣をカイル目掛けて真っ直ぐに振り下ろした。



「……雷昇板東っ!!」

 サクヤは一瞬にして、刀の神器【雷神】【風神】を発動させて、鞘に刀を納刀させたままヨーダを吹き飛ばした。


「……風の章・花」

 カイルは一瞬にして刀の神器を発動させると、抜刀し横薙ぎに刀を振るってヤサカを斬り飛ばした。



 開始前を彷彿させる静寂が闘技場を覆った。



『……は、速い! 速い!! 速すぎるぞ!! 開始早々、ヤサカ選手は場外に吹き飛ばされ、ヨーダ選手は舞台上で気絶してしまいました!! これで舞台上に残るは3人!!』


 クナはマイクを力強く握り締め、熱の入った実況をした。

 それを聞くと、再度闘技場は歓声に包まれ出した。



 斬り飛ばしたと同時に、サクヤとカイルは駆けた。

 申し合わせたかのように同時だった。

 駆ける最中、サクヤは両刀から鞘を外した。



「剣舞・西川!!」

「風の章・鳥!!」


 サクヤとカイル、互いの刀がぶつかり合う。

 流麗な動きを得意とする2人の攻撃とは思えないほど、2人の攻撃は激烈だった。



「さ、流石だ……」

「貴女こそ……」


 鍔迫り合いの最中、2人は小さく呟く。

 すると、2人の頭上を巨大な影が覆った。


「「!?」」


「俺を忘れるな!!」

 大男オルガが、大剣の神器を振りかぶっていた。



『おおっと!? オルガ選手、好機!! 2人は動けずにいるぞ!!』



「俺の勝ちだ!!」

 オルガは大剣を2人纏めて斬り飛ばすように思いきり振り下ろした。



「邪魔だ! 剣舞・若柳!!」

「邪魔です……風の章・風!!」


 サクヤとカイルは横薙ぎに刀を振るって、オルガを斬り飛ばした。

 オルガから大量の血が吹き出し、オルガはその場に倒れ込んだ。



『強い! 強い! 強い! 強い! サクヤ選手、カイル選手、強すぎるぞー!! 近年まれに見る強さだ!! これがAランクの強さなのか!?』


 クナの実況で、更に闘技場は熱気と歓声に包まれた。



「雷旋の太刀!!」

「風の章・風!!」


 斬り飛ばしたオルガを歯牙にもかけず、2人は更に斬り結んだ。

 旋回しながら斬る刀が再度ぶつかり合う。



「剣舞・藤間!!」

「風の章・月!!」


 突くと斬るを何度も繰り返す連続攻撃も綺麗にぶつかり合う。



「……風雷剣舞・雷降西川!!」

「……風の章・鳥!!」


 サクヤの風と雷の両刀が振り下ろされた。

 カイルも刀を振り下ろすが、刀がぶつかると、僅かに後退した。



『カイル選手、押し負けた!! これはサクヤ選手、優勢か!?』



「見事です……我が師の剣技に勝るとは……」

 カイルの額に汗がつたった。


「亡き夫と、亡き母が残した剣技だ……そう易々とは敗けん!」



「なるほど……いいでしょう……私も……本気を出します!」

 カイルは駆けた。

 その手に刀は握られておらず、無防備な状態だった。


「なっ!?」

 サクヤは困惑した。


「油断!!」

 カイルはサクヤの眼前で急停止すると、一瞬にして刀を発動させた。

 それは虚を突く、諸刃の技だった。



「風の章・花鳥風月!!」



 カイルの鮮やかな胴切りが綺麗にサクヤの腹を一閃した。



「がっ……はっ…………」

 サクヤはそのまま舞台上に倒れた。



『なんと!? カイル選手のまさかの一撃が、サクヤ選手を斬り裂いたーー!!』

『今のは完全にサクヤ選手の油断でしたね……しかし、まさか神器を解除して相手に突っ込むとは……危険な剣技だ……』



 割れんばかりの歓声が巻き起こる。



 薄れ行く意識の中、サクヤは負けを悟った。

(こ、ここまでか…………)




「「サクヤさんっ!!」」


「……!?」



 一際大きな声が響いた。


 サクヤは声のした方に、ゆっくりと頭を動かした。

 そこには、サクヤにとってかけがえのない仲間が観覧席で立っていた。

 竜斗もレイナもキョウもユイも、誰もがサクヤの勝利を信じ、ただただ力強くサクヤを見つめていた。


 竜斗の手には自分達のギルドの旗が握られており、風に靡いていた。

 サクヤの目にそれが止まると、サクヤは僅かに笑みをこぼした。




「…………ま、まだだ……っ!」

 サクヤは最後の力を振り絞り、フラフラになりながら立ち上がった。



『サクヤ選手立ち上がったーー!!』

『これは……驚きましたね……あの傷で立ち上がるなんて……』




「……ま、まさか……花鳥風月を受けて立ち上がるなんて……貴女って人は……」

 勝利を確信していたカイルも、これには驚いた。



「私には……勿体ない仲間達だ……皆のためにも……負けられん……」

 だがサクヤは満身創痍だった。


「……今度こそ死にますよ?」

「是非もなし」


 カイルが戸惑う中、サクヤは体を震わせながら両刀を構えた。



「いいでしょう……剣士として全力で貴女を斬ります!」

「こいっ!!」



 カイルは駆けた。

 今度は刀を発動させたまま。

 その刀には、属性である風が纏われていた。それが一際大きく吹き荒れた。



「今こそ……剣舞最後の舞を……母さん……姉さん……イカルガ……私に……力を……」

 サクヤはうわ言のように呟いていた。



「風の章・花鳥風月っ!!」

 カイルの全身全霊の一振りが、サクヤを襲った。



「皆……私に力を…………風雷剣舞・雷刺藤間!」



 サクヤは【雷神】で突いた。

 が、カイルの刀はサクヤの突きだした腕を斬り飛ばした。

 サクヤの突きはカイルに当たらなかった。



 闘技場にいる誰もが決着したと感じた。


 4人を除いて……



「まだだっ! 剣舞終演・花柳!!」

「っ!?」



 残った片手で【風神】を逆手に持つと、サクヤは逆袈裟斬りを放った。

 本来なら両手を使い、逆手に持ち替えながら幾重にも斬る剣技であったが、サクヤは一振りだけしか出来なかった。

 だが、それで充分だった。


 カイルの体に斜めの一線が出来ると、そこから血が吹き出した。



「がっ……お、お見事…………っ!」



 カイルはそのまま地面に伏した。



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」



 サクヤの息は荒かった。

 血が滴り落ちる右手だが、極限状態のせいか、今はまだ痛みを感じていなかった。

 風神を握る左手は、カタカタと震えていたが手離しはしなかった。

 この後する事の為に……




 闘技場が静寂に包まれる中、サクヤはゆっくりと刀を天高く掲げた。



「私達の…………勝ちだっ!」



 サクヤは小さく、だが力強く呟いた。




『けっちゃーーーーくっ!! 決着っ! 決着っ! 決着っ! 決着ですっ!! 闘王祭、二日目っ! 見事【剣王の部】を制したのはっ! ギルド刀剣愛好家っ! サクヤ・レイナルド選手だぁぁぁぁああああっっ!!!!』




 クナの実況と同時に割れんばかりの大歓声が響いた。

 王都クラフトリア全体にまで響くのではないかと言わんばかりの大歓声だった。


 勝ったギルドも、負けたギルドも、観客も、貴族も、全員が、惜しみない歓声と拍手をサクヤに送った。

 サクヤにだけではなかった……剣王の部に出場した全選手に送られたものだった。




 サクヤは仲間の方に視線を送った。


 サクヤは仲間の4人が喜ぶ姿を確認すると、優しく微笑み、そのまま舞台上に倒れた。








 サラの花鳥風月と、カイルの花鳥風月は関係ありません……偶然同じ技名なのです。

 面倒だった訳ではないです……世界にはそんな偶然もあるのでは、と思いそうしただけです。

 本当は人の名前もしたいのですが、それは流石に混乱するので……躊躇っております。


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