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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第一章【はじまり】
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構えと属性



 迷宮のフロア数が【45】になってから十と数時間……俺達は前日同様ひたすら走った。


 前衛は相変わらずガオウとゼノ。

 後衛がルル。

 そしてそのすぐ後ろが俺だ。


 基本的には昨日と何も変わらない。

 魔物も別段強くなったわけではなく、ランク【E~C】の【蛇女】(ラミア)【大海蛇】(シーサーペント)といった魔物がメインだ。


 これらは昨日から戦っており別段問題はなかった。


 ただ気持ち、【ニーズヘッグ】等といったランク【A】の魔物の数が多くなったような気がした。

 慣れもあってか弱い魔物にかかる時間は短くなったが、レイナがいない分、強い魔物に対してかかる時間が大幅に伸びた。



 途中小休止を入れながら、それでも俺達はなんとか迷宮【地下18】まで来た。



「しかし、姫さんには驚かされたぜ。まさか既に目的を達してるなんてな」

「その通りだ。魔族の歴史上、誰も成し得てない前代未聞のSランクの域に到達されるとは……」

「そうですね。竜斗様がおられるので忘れてましたが、私達魔族の中にはいないですもんね」


「俺達も続くしかないな」

「ああ、そうだな」

「頑張って下さい」



 そんな会話をしながら俺たちは走った。

 この分なら予定より若干早く地下20階に着きそうだ。



「……どうした竜斗?」

 ガオウが俺に尋ねてきた。


「えっ!? 何!? ごめん、聞いてなかった……」

「いや、今日は口数が少ないと思ってな。何か思うところがあるのか?」


「いや、別にそんなのはないけど……」

「なら、集中力は切らすなよ」


「あ、ああ……」

「まぁ、あまり気張ってもしかたないがな」



「…………」

 確かに今日の俺は注意力が散漫だった……いや一点のみにおいて俺の神経は完璧なまでに研ぎ澄まされていた!


 理由は一目瞭然であった。



ーー背中にスライムが当たっているからだーー



 ガオウとゼノは前衛にて戦っている。

 後衛のルルも回復に専念している。

 となれば当然レイナを抱えて走るのは俺しかいない。

 お姫様抱っこで走るわけにはいかないので、背中にオンブである。


 つまり俺は地下11階からここまで常に背中から【レイナの胸】(スライムアタック)を喰らっているのだ。



 そしてこの感触がまたなんとも言えない。



 うおおぉぉぉぉおおおおおっっ!!!!



 俺の背中の声がそう叫んでいる。


 みんなが必死に戦っている。

 力無き者が簡単に命を落とす迷宮で、皆が必死に戦っているのに、俺はなんて不謹慎なことを考えているのだ。

 だが仕方がない。

 そう健全な男子高生にこれを耐えろというのが土台無理な話だ。



「まぁ、竜斗も男の子(・・・)だってことだ」

「……」


「破廉恥で不謹慎です……」

「……」



 ガオウは気付いてない感じだったが、ゼノとルルからは当然の様な言葉が出てきた。



 返す言葉もない……でも仕方ないじゃないか!

 だってムニムニでフワフワでポヨンポヨンなんだもん!

 スライムが離れたりくっついたりするんだ……こんなの耐えられる訳がない!!





 そうこうしていたら、地下19階に到着した。



 このフロアも10階と同じ様に広い空間だった。

 反対側には地下20階に続く階段が見えた。

 だが地下10階と違い、中ボスみたいな魔物等は見当たらなかった。


「どうする?」

 俺は皆に尋ねた。


「予定通り行くならもう一階ほど降りたいが、休むならこのように広い空間の方がいいのだが……」


 ガオウが悩むには理由があった。

 この迷宮という場所は戻ることが出来ないのだ。

 正確に言うなら前のフロアには戻れないのだ。

 一度入れば後はひたすら進むしかない。

 そしてこの様に休憩に適した広い空間は、決まった階層に在る訳ではなく完全にランダムなのだ。


 一応レイナの予定では1日10フロア。

 だが肝心のレイナはまだ眠ったままだ。

 余程体に堪えたのだろう……ほぼ24時間は寝ている。


 どうするか話し合いながらフロアの中央辺りまで行くと突如フロアが淡く光だした。



「!?」

「しまった!!」

「罠か!?」



 魔物【蛇女】(ラミア)が地面から出現してきた。

 しかもそれが1匹や2匹ではないのだ。

 俺達を取り囲む様に多数のラミアが出現してきた。


 上半身は女性、下半身は蛇。

 ゲーム等ではよく出てきそうだが、実際に見ると割りと気持ち悪かった。

 なんか「シャーシャー」言ってるし。


 一体何匹いるのか分からない。

 恐らく軽く百は超えるであろう。

 ランクが【C】とはいえ、流石にこの数を相手にするのは骨が折れそうだ。


 ラミアは一気に襲いかかってきた。

 ガオウとゼノが応戦する。

 一体一体はそれほど苦ではないが、この数は厳しかった。



「たくっ、魔力は温存したいんだけどな……」

「全くだ……どうするゼノ?」



 そう、2人はこれまで魔力を温存しながら戦っていた。

 レイナが倒れてからは、あの【A】ランクのニーズヘッグにでさえ、それぞれ神器1つだけで戦ってきたのだ。

 確かに時間はかかったが、かなりの魔力は温存できてるみたいだ。


 2人の努力を【C】ランク如きの魔物で無駄にさせたくなかった。



「ガオウ!」

 俺はガオウを呼んだ。


「どうした竜斗?」


「レイナを預かってくれ、俺がやる」

 そう言いながらレイナをガオウに預けた。


「どうする気だ?」


「試したいことがある。それに【C】ランクの魔物相手なら俺がやってもいいだろ?」

「それはそうだが……」


「俺が叫んだら上に跳んでくれ。巻き込まれるかもしれない」

「りょ、了解した」


 ルルを守るようにゼノとガオウが側に寄り、俺は少し前に出た。

 囲まれているのでどこが前か分からないが……



 俺は神眼と神器2つを同時に発動させた。



 刀の神器【絶刀・天魔】、籠手の神器【森羅万象】、スキル【神眼】。


 ラミアの攻撃が止み、俺を警戒している。



ーー蛇に睨まれた蛙ならぬ、竜<斗>に睨まれた蛇であったーー



 俺は森羅万象の能力【付加】で【蛇種】(スネーク)の弱点である風属性を絶刀・天魔に纏わせる。

 そして、そのまま刀を納刀した。

 鞘を腰にあて、柄に手を添える。

 少し足を広げて腰を落とした。



【居合の構え】+【風属性】


「抜刀・風の位 嵐斬龍(らんきりゅう)!!」



 俺は叫びながら、刀を滑らすように鞘から抜き、そのまま横薙ぎに一閃した。

 ゼノはルルを抱き抱え、ガオウもレイナをおぶさり、2人とも高く跳んだ。


 鎌鼬のような風の刃が、俺の眼前にいた半数のラミアを綺麗に真っ二つにした。



 ゼノとガオウが地面に着地した。


「す、凄いな……」

「いえ、凄すぎです……」


 ゼノとルルは呆気にとられた。



 俺はそのまま後ろを振り返り、残りのラミア’Sと対峙した。

 しかしラミア’Sが俺に襲い掛かることはなく、その場から逃げ出そうとした。

 地下18階へ上がる階段で詰まる多数のラミア。


 俺は絶刀・天魔を両手で握り締め振りかざした。

 そして能力【巨大化】により刀を大きくし、森羅万象の能力で今度は【炎属性】を纏わせた。



【上段の構え】+【炎属性】


「上段・()の位 迦楼羅(かるら)!!」



 そのままラミア’Sに向かって刀を降り下ろした。



--滅却--




 迷宮地下19階のフロアからラミアの姿は跡形もなく消えた。俺は神眼と神器を解除しながら、ゆっくりと皆のもとに近づいた。


「ねぇ最後の攻撃見てくれた? あれドラゴン戦の時の攻撃をヒントにやってみたんだけど。技名も迦楼羅にして……みたん……だけど……」


 3人は黙ったままだった。


「え~と……イマイチだった?」



「いやいやいやいやいやいや、ありえないです! あの数をたった二振りで倒すとか……」

「う……む。化け物とは思っていたが、ここまでくると最早、出てくる言葉が見つからぬ」

「マジでお前おかしいって……」



 返事が来たので安心した。


「上手くいって良かったよ」



「でもここまでくると、俺らっているのか?って話だよな」

 不意にゼノが愚痴をこぼした。


 ガオウとルルは黙ったままだ。


「……何言ってんの?」

 俺は少しイラッとし、強い口調になった。


「竜斗……?」



「1人で出来ることなんてたかが知れてるし、俺1人で魔族の国を守れるわけないだろ! レイナの夢は魔族の国を安定させることだろ? 決して迷宮の魔物を倒すことじゃない! それに今回の迷宮攻略だって人間から魔族の皆を守れるようになる為にみんなで強くなるって目的できたんだろ! それなのに……そんな(悲しい)こと言うなよ……」



 しばらく沈黙が続いた後、ガオウが俺の頭に手を置いてくれた。


「そうだな……竜斗の言う通りだ、我々皆で強くなろう」

 ガオウがゼノを睨んだ。


「! 分かった、分かったって……俺が悪かったよ。竜斗が強いから、つい愚痴をこぼしちまった……皆で強くなろう」


「はい、その通りです。わたし少し感動しました」



 俺はなぜか少しだけ高校3年の時の大会を思い出した。

 地区予選の団体戦で俺1人だけが勝って、後のメンバーが負けたことを。

 勿論勝つことだけが全てじゃないのは知ってる……けど、皆で勝ったことを共有出来たら、もっと楽しかった思い出になったであろうとも感じていた。



「それに、俺には分かるんだ! 神眼の力だとは思うけど、みんなはまだまだ強くなれるって! 単純にランクだけじゃなくて……なんか上手く言えないけど、レイナとガオウとゼノにはランクとは関係なく何かがあるって……」



 俺はこの時、無意識に神眼を発動させていた。

 後で聞いたらガオウとゼノはこの時、俺の神眼を見て背筋が凍る様だったと話してくれた。

 自分の全てを見透かされているような感覚だったらしい。



 しばらくして先に進むか、ここで休むか話していたら、不意に体に力が入らなくなった。


「あれ?」

 俺は地面に座り込んだ。


「ふむ、魔力の使いすぎだな」

「ははっ、どうやら連発は出来ないみたいだな」


「2人も抱えて先に進むわけには行かないし……決定だな」


 ゼノは前日同様神器【聖なる領域】を発動させた。



ーー2日目は、迷宮地下19階で休むことになったーー




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[気になる点] いや竜斗も前に俺いる?的なこと言ってたくない? 後半の竜斗めちゃくちゃキモいんだけど。
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