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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第八章【闘王祭】
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闘王祭と剣王①



 割れんばかりの大歓声の中、俺達4人はギルド用の観覧席へと席についた。

 周りにも他のギルドのメンバーが、それぞれの段幕や旗を(かざ)している。

 旗にはギルドを表す紋様が多種多様に刻まれている。



「へ~……俺らのギルドにも紋様みたいなのってあるの?」

 俺は隣に座るキョウとユイに尋ねた。


「ああ【ギルド紋】のことか……あるにはあるが、袋の神器にいれたままだな」


 俺はキョウに手を差し出した。

 旗を振るから貸してくれ。


「……それがその……なんだ……袋の神器はユダとカーラが持ってたから……そのなんだ……今は……」

 キョウはばつが悪そうに口ごもった。


 つまり、無いとっ!


「すまん!」

「ごめんね……私もすっかり忘れてた……」


 2人に謝られたが無いもんは仕方ない。

 残念だ……



「まぁ闘王祭は何日もかけて行われるみたいなので、その間に用意すればいいのでは?」

 愛しいレイナからのナイスな提案。


 誰に頼めばいいかまた後でサクヤさんに相談しよう。



「てか、闘王祭って何日も行うんだ……1日で終わりじゃないんだね?」


「リュートくん……それも聞いてなかったんだ……」

 ユイが呆れてる。

「えっと確か……各部は予選と決勝の2日間ずつ行って、1日休みがあって最後に【闘王の部】があるの」


「つまり……4…」

「つまり、計12日間あるの」


 違った。

 つまり今日は【剣王の部】の予選だけみたいだ。

 てっきり今日で各予選全部行うのかと思った。



「で、明日は?」

「剣王の部の決勝だね」


 なるほど予選を先に全部終わらせる訳じゃなくて、各部門ずつ終わらせていく訳か。



「お、始まるぞ」

 キョウが言うのと同時に選手?が入場し始めた。



「ん?」


 よく見たら、先程までいたフィールドの中央だけが盛り上って舞台が出来ている。

 選手達は10人程で、順々に舞台へと上がっていった。



『さあ、いよいよ始まりましたっ!! 歴史ある闘王祭っ!! 最初に行われるのは例年通り【剣王の部】から!! 今年はどの剣士或いは戦士が【剣王】の称号を勝ち得るのか!? 実況は私、ギルド職員歴2年目、受付のクナがお送りします!!』


 突然の実況が始まった。

 実況は闘技場全体にまで響いていた。

 クナさんの手には黒い棒が握られていた。

 マイクかな?

 神眼で見たらあれも神器だった。


【マイク06】<棒/風/拡声/D>


 時計といい、王国にはフザけた神器しかないのだろうか?



 しかし俺の感想と違ってクナさんは大人気だった。

 そこかしこから「クナさん」の名が叫ばれている。

 クナさんがウィンクを1つすると、更に雄共が熱狂している。


 あざとい……



『さあさあ、解説にはギルド【拳武】のナンバー4、拳武一のイケメン……ガイス・ナイさんに来ていただいております』

『どうも』


 あ……あのイケメンは開催前に絡んできたマツゲくんだ。

 相も変わらず前髪を手を使わずファサッとしている。

 苦手なタイプだが、彼も大人気で黄色い声援が飛び交っている。

 反対に男からはブーイングの嵐。



『個人的には可愛い系の男の子が好みの私には苦手なタイプのガイスさんですが、その強さは間違いなく本物!! 過去には【天王の部】にて歴代第15位の速さを見せ、翌年には【輝王の部】にて歴代第18位の美しさを魅せて頂きました!』


 

 微妙だ……

 まぁ長い歴史からしたら偉業だけど、今年しか知らない俺にとっては微妙だ。



『まぁそれらは全て過去の記録です。我がギルドが【闘王】の称号を得てからは、挑まれる側なので挑戦出来ていませんが、間違いなく今なら凄い記録を出せますよ』


 ガイス……いや、マツゲくんは自信満々で豪語した。



『そうですか……では、各出場メンバーを紹介していきます!』


 クナさんはあっさりスルーした。

 やるな、クナさん。

 マツゲくんは笑顔のまま固まっている。



『先ずは【剣王の部】、予選1グループ、ギルド【迷宮探索神器創造】の1人…………!!』


 クナさんは次々と選手を読み上げていく。

 その度に歓声が沸き起こり、次第に闘技場は熱気に包まれていった。

 そんな中、最後に読み上げられる選手を、今か今かと俺達は待った。



『……最後は、新進気鋭のこのギルドだーー!! ギルド【刀剣愛好家(ブレイド・ラヴァーズ)】のギルドマスター、サクヤァァ……レイナルドォォ!!』

 クナさんは巻き舌風に、その名を叫んだ。


 俺達も割れんばかりの歓声に混じってサクヤさんの名を叫んだ。



『このホウライ王国に来たのが約1か月前、そのたった1か月でギルドをBランクへと押し上げた手腕! メンバーは5人と少ないが、サクヤ選手も含めその内3人はギルド個人ランクがAと強者揃い!! 個人的には一押しのギルドです!!』


 クナさんの思いがけない実況に、俺達のギルドは一般のお客さんからも注目を浴びた。

 これはいい結果を残せたら本当にメンバーが増えるのでは?

 そして極めつけに……



『我がギルド【拳武】のギルマス……【四傑】の1人……ミロクさんもこのギルドのある人物に注目していますよ。是非彼女達には勝ち上がってきて欲しいものですね』


 マツゲくんの解説で会場内がどよめきだした。

 これは本当に注目されたな。



『ではいよいよ、剣王の部、予選1グループが始まります! ルールは皆知ってるな!? ルールは簡単、最後まで勝ち残ればいいだけだ! ただし、フィールド中央にある舞台から落ちたらその時点で失格! それと、剣王の部と武王の部は相手を殺してもオッケーだ!!』


 マジか!?

 とんでもルールだった!


『ギルドに属する以上、迷宮攻略、魔物討伐で命を落とす覚悟は出来てる筈だ!! 勿論、力量差による過剰な攻撃は、運営側の判断で止める場合もあります!! 皆さん節度ある斬り合いをして下さい!!』



「と、とんでもないルールだよね……私この部に出なくて良かった……」

 ユイは身震いしている。


 彼女は迷宮なんかで魔物と戦う覚悟は出来ているが、自分が殺される覚悟は出来ていない。

 甘えだ……多分それがギルド個人ランクAになれない理由に思える。

 まぁ俺が言えた義理ではないので敢えて言わない。

 覚悟が出来るまではキョウが支える事だろう。



「レーナは大丈夫? 【武王の部】は殴り合いの殺し合いだよ?」

 ユイはレイナに尋ねた。


「はい、覚悟は出来ています。勿論、私は誰も殺しませんけどね」

 レイナはニコリと微笑んだ。

 油断や慢心ではなく、強者から滲み出る余裕。

 流石だ……



 実況のクナさんや、解説のマツゲくんの進行が行われる中、俺は舞台上にいる選手を全員もれなく神眼で見回した。

 サクヤさんの敵に成り得る猛者を探した。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




【サクヤ視点】



 これは……いい傾向だ。

 私が勝てばきっとメンバーの勢いもつき、更に活躍すれば我がギルドにメンバーが増える事だろう。


 見ていてくれイカルガ……君の創ったギルドをきっと1番にしてみせる!



 まて!?



 いつからだ……?

 私の目的はそうではなかった……

 イカルガの創造した忘れ形見の神器を探し出すことだ……その為にSランクの迷宮に挑戦出来るメンバーを集め、育てることが目的だった筈だ……

 一体いつから……


 いや……答えなら出てる……

 あの2人が来てからだ……

 リュートとレーナに出会って、私の中の焦りが無くなったのだ。

 甘えかもしれんが……あの2人がいればきっと、時間の問題な気がする。

 だから私の心はこんなにも晴れやかで、余裕があるのか。



「ふふっ」

 思わず笑みが溢れた。


 そうか私は今楽しいんだ。

 あの時の……イカルガと共にギルドを立ち上げた時と同じ気分なんだ。

 だから……尚更……



「私は負けられん!!」



 皆の思いを強さに変えてみせる!!


 私は愛刀を二振り発動させた。


【風神】<刀/風/斬撃/A>

【雷神】<刀/雷/放電/A>



 舞台上に疎らに散る者達も各々神器を発動させている。

 剣に槍、刀、中には弓矢の者もいた。



 愚か!!


 刀こそ最強!!


 私は舞台を力強く踏みしめ、二振りの刀を力強く握りしめた。




『……それでは、予選第1試合…………始めっ!!』




 実況の女の子から開始の合図が叫ばれ、闘技場内も割れんばかりの大歓声があがった。


 私は駆けた。

 先ずは目前の屈強そうな男。

 手には斧の神器が握られている。



「雷降の太刀っ!!」



 私は雷王イカルガの得意とした剣技で刀を振り下ろした。

 男はよろめきながらも、それを辛くも受け止めた。



「剣舞・藤間っ!!」



 私は空かさず風王代々の剣舞の一つを男にお見舞いした。

 皆には言っていなかったが、私の母と姉は先々代・先代の風王。

 全ては会得出来ない未熟な私だが、雷王の剣技を合わせた私だけの剣技。

 これぞ……



「我流・風雷剣舞!!」



 私は何度も男を斬りつけた。

 男は膝から崩れていった。



「次っ!!」

 私は叫び、周りを見渡した。



「うおおっっ!!」

 別の男が剣を振りかぶりながら迫ってきていた。



「来いっ!!」

 私は刀を逆手に持ち替えた。



「風雷剣舞・雷旋若柳!!」



 独楽みたいに廻るように私は男を斬り刻んだ。


 よく解らないが、大歓声が沸き起こる。

 それが私に対してのものだと後で知った。



 見ていてくれイカルガ!

 私は勝ってみせる!

 そしていつの日か必ず見つけてみせる!

 君の創造した刀の神器……



 【神吹(かみふき)】と対をなす刀……



 【神鳴(かみなり)】を!!





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