開会と長話
長い……
俺達みたいにギルドに属し、尚且つこの【闘王祭】に出場する人間は、【闘技場】の中央に集まっている。
陸上競技場を想像してもらえれば分かりやすい。いや、それよりもサッカー場に近い気がする。
まぁどちらも対して違いはないけど……
何が言いたいかといえば、闘技場とは名ばかりの運動場ってことだ。
観客席は多くの人から割れんばかりの歓声があがっている。
満員御礼?
大袈裟に言ったら隙間がないほどの人で埋め尽くされている。
凄い数の人だ……
剣道はどちらかと言えばマイナーになるから、この数の人に観られるのは、若干緊張する。
俺達が今立っているフィールドを囲むように観客席はあり、それが段々と高くなっている。
で、1番上の段は他と違い、金持ちや貴族なんかが座るVIP席となっている。
そして今、お偉いさんらしき人がフィールドの真ん中の端で、闘王祭の概要……ルールなどを説明している。
その前は、この闘王祭の歴史を話していた。
「………………」
長っ!!
マジでいい加減にしてくれ!
どんだけ話すんだってくらい、おっさんは話してる。
今は、この闘技場に何人くらい入るだの話してる。
周りを見渡すと、真面目に聞いてる奴もいれば、項垂れてる奴もいる。
ここはバシッと「長いぞ」と注意してやろう。
まさか校長や、大会の実行委員なんかより話が長い人種がいるとは思わなかった。
「話はそれくらいでいいんじゃないのか?」
ふと、どこからともなく気品ある声がした。
俺じゃないよ。
その声の持ち主は女性で、観客席の1番上に威風堂々と佇んでいた。
誰もがその女性に目を向けた。
「拳聖だ……」
誰かがそう呟いた瞬間だった。
一際大きな大歓声があがった。
「ヤバイだろ……!」
鼓膜が破けるかと思った。
「大会長、みな話を聞きに来たわけではない……みな……血湧き肉躍るバトルを見にきたんじゃないのか?」
拳聖……ミロクさんが喋る毎に大歓声が沸き起こる。
「ルールも例年通りだ、今更ルール説明など皆には不要なのでは? そうだろ皆!!」
ミロクさんは小さく笑っている。
また大歓声が沸き起こる。
にしても……よく通る声だ。
鍛えているからだろうか?
フィールド場にいる俺達にまでよく聞こえる。
「で、では……以上を持って開会の挨拶とする……」
可哀想に大会長はそそくさとその場から立ち去っていった。
今思えばきっと色々と挨拶を考えてたんだろうな。
それが纏まりきらずに全部話しちゃえ……みたいに感じになったのだろう。
俺達、出場者も控え室に向かいゾロゾロと解散し出した。
「いよいよだな」
歩きながらサクヤさんが、俺達に声をかける。
「き、緊張する~」
ユイは体を若干震わせた。
「まぁなるようなるさ」
キョウは開き直ってる。
「先ずは何の部から?」
「竜斗さん……話聞いてませんでしたね……」
レイナが呆れている。
だって長いんだもん。
「先ずは【剣王】。それから【鎧王】、【輝王】、【天王】で、最後に【武王】だよ、リュートくん」
ユイが説明してくれた。
「なら最初からいきなしギルマスか」
「任せておけ」
「ルールは?」
「リュートお前……本当に何も聞いてないんだな……」
キョウも呆れている。
だって大会長の話マジで長かったんだもん。
「えっと……確か今回参加するギルドが丁度50で、大体10人ずつのバトルロイヤル戦を5回行って……勝ち残った5人で最後またバトルロイヤル行うんだって」
ユイが分かりやすく説明してくれた。
つまり2回勝ち残れば【剣王】って訳だ。
そんな話をしていたら、闘技場内にある各控え室へと到着した。
部屋割りは、ギルドランクが高いほど良い部屋が割り当てられる。で、ギルド人数により部屋の大きさが決まっている。
俺達の部屋はまぁまぁの部屋だった。
簡易シャワー室的なのもあるし、小さいが2つ程ベッドがある寝室もあった。
真ん中にテーブルがあり、簡易椅子も人数分あった。
開始までまだ少し時間があるので、俺達は寛ぐことにした。
「結構いい部屋だな」
サクヤさんは満足気だった。
サクヤさんは……割りと逞しい。
俺達が寝泊まりしてる高級ホテル?の1フロアを買い取ったかと思えば、野宿が出来る逞しさもある。
豪快な人だ。
「そういえば私達4人ともBランク以上になりましたが、いつまであの宿に泊まっていいんですか?」
不意にレイナがサクヤさんに尋ねた。
「確かに……新人特典でBランクまでとか……」
「うっ……」
サクヤさんは口ごもった。
う?
「…………誰も加入してくれないのだ……」
サクヤさんは小声で呟いた。
「リュートとレーナのお陰で、そこそこ有名にはなったと思うのだが誰も入ってくれないのだ!」
サクヤさんが急に叫び出した。
「それは……元々この闘王祭で有名にする予定だったのでは?」
「確かに……だがその……なんだ……い、いきなり全員にあの部屋から居なくなられてはその……あれだ…………さ、寂しいだろ……」
兎かあんたは!
だが赤面するギルマスも珍しい。
まぁ、闘王祭後どうなるかは分からないが、暫くは同じ宿で寝泊まりしよう。
「あ、そろそろ時間になるよ~」
ユイが部屋に掛けられてる時計を見て教えてくれた
時計があるのか……
予想では恐らくこれも英雄トウマの父親が開発したと思われる。
ん?
俺は気になってその時計を【神眼】で視てみた。
【時計020】<腕輪/雷/測定/B>
なんだこれ?
まさかの神器だった。
しかも【神眼】で視れるって事は……つまり誰かが発動してるってことだ。
しかしあれだ……種類が腕輪なのに壁に掛けられてる……変な神器。おまけに能力が測定とか……本当に変な神器だ。
そんなこんなで俺達は控え室を出ることにした。
サクヤさんは先程のフィールドへ、俺達4人は選手用の観覧席へと向かった。
レ「頑張って下さいねギルマス」
キ「ガツンとかまして下さい!」
ユ「お、応援してます~」
俺「楽しんできて下さい」
「ふふっ、任せろ! 必ず我がギルドに【剣王】の座を持ち帰ると約束する!」
サクヤさんは自信満々だった。
だが気負ってる様子もない。
サクヤさんの後ろ姿は頼もしかった。
「じゃ俺らも行くか?」
「「は~い」」
サクヤさんを見送ると、キョウの引率で俺らも観覧席へと向かった。
よし、一生懸命応援するか……おっと、昨日買っておいたお菓子も忘れずに持っていかなければ……飲み物って売ってるのかな?
闘王祭……そうですね、全体像はオリンピックや陸上、体操みたいな感じを思い浮かべて頂けたら助かります。
各競技、各種目があるみたいな。
【剣王】……バトル。
【鎧王】……耐える。
【輝王】……魅せる。
【天王】……短距離走。
【武王】……バトル。
【闘王祭】……最後がガチバトル。
こんな流れです。
ただのバトルだけだと漫画や小説、数多くの作品にてやりつくしてるので、飽きるかなと……まぁ、本当の理由は対戦相手をいちいち書きたくないからです(笑)。