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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第七章【ギルド】
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夜風と結婚



 俺はホテル【刀治場】の最上階……の更に上、屋上にレイナと来ていた。


 闘王祭について話し合った後、夕食を摂り、今は2人で夜風に当たっている。

 屋上の端に座り、足をブラブラとさせながら、隣り合わせで座っている。



「どれくらいで帰れそうですか?」

「ん~Aランク以下なら1週間はかからないんじゃないかな?」

「なら、その間は姿を隠しておきますね」


 俺のスキル【変化】の効果は1日。レイナはその間、姿を隠して鍛練するそうだ。

 次のバイトまでは2週間あるし、多分問題ないとの事。



「ん……レイナが大丈夫って言うなら……」

「問題ありません」


 即答された。

 なら信じるしかない。



「ところで……良かったのですか? 剣王の部に出られなくて?」

「ああ、いいよ別に……折角の祭りなんだし、皆で楽しみたいしね」


「竜斗様がそう仰るなら……」

「ちょっとね……俺がいた世界の剣道の大会を思い出したんだ……」


「?」

 レイナは首を傾げた。


「それもね、団体戦だったんだけど……俺だけが勝って、皆は負けて、結局チームは負けたんだけど…………やっぱ皆で勝ちたいなぁって……だから皆が出たいのに出て、そんで皆で勝ちたいなって思ったんだ」


「……大丈夫です。ギルマスもキョウさんもユイさんも、皆さんお強いので、きっと楽しんで勝てますよ」

 レイナはニコリと微笑んだ。


 俺は愛おしくて堪らなくなりレイナを抱き寄せた。


「ありがと」

「……はい」




「ところで……今頃皆はどうしてますかね?」


「ん? ガオウ達の事?」

「はい」


「どうしてるかな? 一月経つけど……まだ復興作業してるかもね」

 言ってて申し訳なくなった。

 俺は復興を放棄してレイナを拐った。

 多分……いや絶対に皆怒ってるだろうな……


「ほんとですよ……せめて復興作業だけは手伝いたかったですね」

「う……」

 拐ったことは後悔してない。

 だから俺はレイナに謝らなかった。



「でも……お陰でユイさん達と出会えましたし、検問も通れましたし、人間の国も知ることが出来ましたし……何より、【拳聖】と戦えるのは楽しみです」

 レイナがいつの間にか戦闘民族になってしまった。


「なら、良かった」

「はい……」



 本当に今頃皆どうしてるかな?





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 アルカディア国、アルカディア城、地下【修練の間】。




 竜斗とレイナがアルカディア国を飛び出して約1ヶ月、【闘王祭】に向けて2人が行動している時、修練の間では2人の人物が修練に励んでいた。



【七大悪魔王】


 獅子族のガオウ・レヴィアタン。

 八咫族のサラ・アスモデウス。



 国の復興作業も順調で、今後SSランクの迷宮攻略を目指す2人は珍しく修練に励んでいた。


 ガオウは斧の神器を振るい、サラは鎌の神器を振るっていた。



「珍しいですな……サラ殿が我と修練するなど……」

「ふふっ、そうですね……大概はレイナかルキさんとしますからね」


 2人は互いに向かって駆けると、遠慮なく神器を振るった。

 互いの神器がぶつかると珍しく鍔迫り合いになった。



「くっ……やはり勝てませんか……」

 サラは斧を受け流すと、ガオウから距離を取った。


「本当にどうされたので? いつものサラ殿らしくない……かような無茶な攻撃をされるなど……」

 ガオウは、サラの動きにいつもの流麗さがない事に疑問を持った。



「…………1つガオウさんにお聞きしたいことが……」

「なんですかな?」


「竜斗さんがレイナを拐った事について、どう思われてます?」

「? どういう事ですか?」


「私も含めてですが……皆さんの意見は【竜斗さんが何かをしたくて、レイナがそれに付いていった】と言いましたが……ガオウさんはどう思われてます?」

 サラは神器を解除した。


「ふむ……我もそう考えてます。まぁ本当に拐った可能性もありますがな」

 ガオウも神器を解除し、顎を擦りながら答えた。


「ですね……竜斗さんなら本当にしそうです」

「全くです」


「で、ここからが本題です……」

「ん?」


「竜斗さんがレイナを拐ったとして……ガオウさんはどう思われてます?」

「それは、とんでもない事をしでかしおったと……まぁ今はそれほど怒ってはいないのですが……」


「…………嘘ですね?」

 サラは少しだけ俯いた。


「!?」

 ガオウは一瞬だけ体をビクリと動かした。


「ガオウさんは誰よりも1番長くレイナと一緒にいたと聞いてます……」

「それは……陛下が生まれた時から、お仕えしているので……」



「…………す、好きだったのでは?」

 サラは意を決して尋ねた。



「…………勿論、臣下として慕っております……」

 だがガオウは珍しくサラが何を聞きたいか察した。


「ですが、そうですな…………ふむ…………そうかもしれませんな…………」



 ガオウは初めて自分の気持ちに気づいた。

 いや、サラのお陰で気づかされた。

 自分が誰を慕っていたかを。



「初めて皆さんに出会った時……竜斗さんとゼノさんが、ガオウさんをからかっていましたが……私はなんとなく、そうではないと思ってました……」



 竜斗やゼノ……いや、皆がガオウはサラの事が好きだと思っていた。

 だが、サラだけはそうではないとずっと感じていた。

 ガオウは照れたように鼻をかいた。



「私には……ガオウさんは、レイナと竜斗さんのために身を引いたのだと感じてました……」


「まぁ陛下からしてみれば、我の事は眼中になかったでしょうな…………よくて兄ぐらいでしょうかね?」

 ガオウは微笑した。



「ただ、サラ殿は勘違いしておられる」

「?」


「確かにサラ殿に言われて気づきました……自分が誰を慕っていたかを……」

「…………」


「ですがそれは身を引いたのではなく、それ以上に大事にしたいモノが出来たからです」

「大事にしたいもの?」


「はい」



 ガオウは真っ直ぐにサラを見つめた。


 決して視線を逸らすことなく、ただサラだけを見つめた。




「わ、私……ですか?」

 サラはキョドった。



「はい、我にとっては陛下もアルカディアも民も……皆が大事です……ですが……その……1番は…………そ、その……あ、貴女です……」


 ガオウは恥ずかしさから、最後の方はなんとか絞り出すように声を発した。



「!?」


 ガオウの言葉にサラの顔は一瞬で真っ赤になった。



「わ、我は……サラ殿の事が好きです……陛下や誰よりもです……この気持ちに嘘はないです」

 ガオウはハッキリと言葉にした。



「わ、私もです……ずっと……ずっと前から慕っていました……」

 サラは俯いたまま答えた。



 この言葉にガオウの体は熱くなった。

 自分のせいで、大事な人が胸の中に想いを秘めていたのだと。

 申し訳なさと嬉しさで体が熱くなった。



「サラ殿……?」

「……はい」



「我と……結婚して下さい!」


「!?」



 ガオウは漢らしくプロポーズした。

 そして……



「はい」



 サラはそれを承諾した。




 数日後、復興作業の最中、アルカディア国では2人の結婚式が行われた。


 復興中にも関わらず、街は沢山の花飾りで彩られ、簡素ではあったが、この世界で1番花びらが舞った美しい式が執り行われた。




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