食後と早朝
飯を食べた後、一息ついてから俺達は、テーブルを囲うように、ソファでくつろいでいた。
「うむ、美味だったな」
「あの魚料理がとても美味しかった~」
「いや肉だろ」
「甘味がとても美味でした」
等々……本当にくつろいでいたところ、サクヤさんが話を切り出した。
「さて……ではこれからについて話し合いたいと思う。先ず、【闘王祭】だが、リュートとレーナがEランクの依頼を成功させた事でDランクへと昇格し、我がギルドはCランクへと至った」
俺達は全員頷いて、真面目にサクヤさんの話を聞いていた。
「明日には、闘王祭への出場を申し込もうと思う。その時に闘王祭の概要も聞くつもりだ」
「ギルマスに任せます」
キョウが答えるとサクヤさんは頷いた。
「取り敢えず明日も好きに行動して貰って構わないが、皆はどうするつもりだ?」
「昼間にも俺とユイは話し合ったんだが、俺達二人はランク昇格を目指したいと思います」
「はい、二人で行動しようかなと」
「私は明日も売り子の依頼があります。闘王祭まで定期的にありますが、それ以外は竜斗さんと行動しようかと……」
レイナは俺の方に振り向いた。
いいですか?的な視線だ。
「うん、俺は別に構わないよ……なら俺達二人もランク昇格を目指そうかな」
俺が答えるとレイナは嬉しそうにしていた。
「分かった、なら基本は各々で行動しよう……何かあった時、或いは何かする時は必ず事前に私に連絡してくれ……もう仲間は失いたくないんだ……」
サクヤさんは少しだけ悲しそうな顔をしていた。
俺達は照れ臭そうにしてお互いを見回した。
いいギルマスだ。
「「はい!」」
俺達はこの部屋の中にある、他の部屋へと入って、各々で休んだ。
本当に広くて部屋も沢山有りすぎる……本当に一部屋で5人が休める仕様になってる。
しかも風呂と便所もついてる。
何気にこれらも英雄トウマの父親が開発したそうだ。
つまり俺がこの世界に来て、初めて感じた疑問は解決された。この世界の便器は、俺のいた世界とほぼ酷似している。
確信へと変わる……
英雄トウマの父親は転生者だ。
何故、英雄と呼ばれないかは定かではないが、間違いなく世界を変えた人物だ。
てか、今日は沢山情報を知りすぎた……
なんか久々だ……頭の中がパンクしそうだ……なんだか……眠くなってきたよ……〇トラッシュ…………
俺はベッドに横になるとあっさり深い眠りについた。
ぐー……
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翌日、早めに目が覚めると俺は静かに部屋を後にした。
取り敢えず廊下の奥まで行き、あのエレベーター的な部屋に入ると、仲居さんがいた。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
「どちらまで?」
「え~と、ちょっと外に散歩をしに……」
「一階ですね……畏まりました」
仲居さんは微笑むと、あっという間に転移の神器を発動させた。
「え~と……俺らがいたのは何階ですか?」
「最上階の10階になっております」
うわ~セレブだな俺ら……
そこを買い取ったって……出来るのかそんなこと?
まぁサクヤさんは実際にやってのけた……
あの人ヤバイだろ……
俺は仲居さんに手を振りながらエレベーター?を後にすると、腕のストレッチをしながら外へと出た。
「……よし、取り敢えず南門まで走ろうかな」
俺達が入ってきた王都の門まで走ることにした。
朝のジョギングだ。
俺はゆっくりと駆け出した。
「……うん、空気が冷たくて気持ちいいな……」
俺の口から白い息が出る。
日本と同じで、まだ【一ノ月】だと体が温まるまでは寒い。
う~ん、金を貯めたらランニングウェア的なのが欲しいな。
中央の大広場を左折して、南を目指す。
この時間だとまだ街は寝静まっている。
なんか、いいな……この感じ……
商店街の方に出ると、何人かは店の準備で起きていた。
その中に見知った顔を見つけた。
「あれ? レイナ?」
俺はその場で足だけ動かして立ち止まった?。
「竜斗様?」
レイナは箱を開けて品数を数えていた。
「こんな朝早くから仕事?」
「はい……その代わり朝の準備が終わったら次は昼からなので」
えらいなぁ……こんな朝早くから。
あ……!
レイナなら俺の部屋に来そうとかちょっと思ったけど……それで昨日の夜は自分の部屋で休んだのか。
「竜斗様は?」
「う~ん、散歩がてらトレーニング……かな」
俺はニマッと笑った。
「ふふ、頑張って下さい」
「おう」
俺はレイナの頬に触れた。
ヒンヤリしてて気持ちいい。
変態か、俺は!?
照れ臭くなって、再度走り出そうとしたら何かが飛んできた。
俺はそれを片手で受け止めた。
……リンゴ?
「坊主がレーナちゃんの婚約者か?」
店の奥からガチムチのおっさんが出てきた。
「そうだけど、おっちゃんは?」
聞くまでもなかった。
社交辞令ってやつだ。
「レーナちゃんの依頼主ってとこだ」
見たら分かるな。
「これは?」
俺はリンゴ?をおっちゃんに見せた。
「こんな、朝早くから修練してるのは坊主だけだから……まぁそれでも食って精をつけてくれって意味だ」
「ん、ありがと」
「坊主……ホントに冒険者か?」
「そうだけど……」
俺はリンゴ?を一口かじった。
甘っ!!
「冒険者は荒くれ者が多いが、レーナちゃんといい坊主といい……変わった奴だ……」
しゃく、しゃく、しゃく、しゃく、うまっ!!
「言っとくけど俺かなり強いよ」
「だろうな、レーナちゃんも相当やりそうだ……長年、闘王祭を見てきたがアンタら二人はヤバイって俺の勘が言ってる」
やるな、おっちゃんの勘……しゃく。
「だからレーナを雇ったの?」
「まぁな……闘王祭に出るんだろ? レーナちゃんみたいな強そうな娘がうちの店で働いてたって聞いたら客が来そうだからな」
強かだな、おっちゃん……しゃく、しゃく。
「まぁ1番は別嬪さんだからだな、ハーハッハッ……!」
おっちゃんの高笑いは少しうるさかった。
しゃく、しゃく、しゃく……ごくん。
「ん、俺も出る予定だから応援してよ」
「レーナちゃんの次にな! そんかわり負けんなよ!」
「おう!」
「はい」
俺とレイナは笑顔で返事した。
俺はレイナとおっちゃんに手を振りながら再び走り出した。
良い人に雇われて、レイナの職場は良さげだった。
然り気無く、スキル【変化】を使ったからこれでまた1日持つだろ。
よし、やる気出てきた!
王都を一周するかな!
ダルい話が続きました……
これから徐々にテンション上げていきたいと思います。
あと数話書いたら、いよいよ新章【闘王祭】です。