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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第七章【ギルド】
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ミラと結界



「あ、どうも」

 取り敢えず見上げた先にいる女の子に挨拶する俺。



「ど、どうもです……」

 女の子ミランダは戸惑いつつも挨拶を交わしてくれた。



「…………」

「…………」


 沈黙が流れる。

 取り敢えず依頼対象は捕獲したから、依頼主の女の子の元に連れていくか。



「あ、じゃあ俺行くから」

 ミランダに挨拶をして、俺はそのまま塔から飛び降りようとした。

 流石にいつまでも、刀の柄にぶら下がった状態はツラい。

 片手には大人しいイエロースライムが抱き抱えられている状態だし。



「あ、ま……」

 女の子は慌てたように何かを言いかけて、口をつぐんだ。


「あま?」

 俺は首を傾げた。


「あの……部屋に上がって……少しお話していきませんか?」

 ミランダは意を決したように、自分の部屋へと俺を誘ってきた。



「ええと……」

 この子はあの【四傑】の一人……ん~話くらいならしてもいいかな。


「じゃあ、お邪魔しようかな……」

 俺はお呼ばれされることにした。



「は、はい! 是非!」

 ミランダは嬉しそうにし、乗り出していた体を引っ込めて、部屋の中へと入っていった。



 俺はイエロースライムと顔?を見合わせた。

 こいつ……大人しいな。

 逃げ出す気配もない。

 ちょっと懐かれたのだろうか?


 兎にも角にも、俺はイエロースライムを抱き抱えたまま、窓へと飛翔した。

 窓に足を乗せると、刀と盾を解除して部屋の中へと入った。




「……お邪魔します」

「はい」


 ミランダは部屋の中央で立ったまま出迎えてくれた。



 部屋の中を見回すと、綺麗に整えられていた。

 置いてある家具も可愛らしく、年相応な感じがするのだが……微妙に違和感を感じた。

 なんか……生活感がないような。

 綺麗に整えられ過ぎて逆に気持ち悪い。



「やはり変ですか?」

「!?」

 心の中を読まれた様で俺はドキッとした。


「この部屋から出ることはないので、掃除しかすることがないのです」

 ミランダは苦笑していた。



 ん~……今のは嘘だな。

 それなら寧ろ生活感が出てきそうだし。

 この部屋は……どの家具も全く使っておらず、ただ置かれているだけの飾り物の気がする。

 綺麗なベッドすら使っていないのか?

 そんなこと有り得るのだろうか?



「あ、自己紹介がまだでした……」

「そういやそうだな」


「私の名前はミランダです……ミラって呼んでいただければ」

「俺はリュート、よろしくミラ」


「!?」

「どしたミラ?」

 ミラは驚いた顔をしている。


「い、いえ……そう呼んで頂けたのは久しぶりでしたので……」

「そうなんだ」

 

「それに……」

「それに?」


「私の名前を聞いても驚かないんですね?」

「だってミラはミラだろ?」


「そ、そうですね……」



 まぁ内心はドキドキしておりますよ。

 神眼を使ったから、ミラのステータスは確認済み。四傑の一人……【守護神】。

 彼女のスキルを視たらそれがよく分かる……防御特化と言えばいいのだろうか?


 激強だ……

 プリンガといい……ミラといい……この世界の15歳はどうなっているのだろうか……




「あの……リュートさんは王都の人ではないのですか?」

「ああ、違うよ。【刀剣愛好家】ってギルドに所属してて、神国から来た。王都には今日到着したばかり」


 そう考えたら疲れてきた。

 そろそろ帰ろうかな。

 イエロースライムは俺の頭の上に移動してるし、部屋の中を動き回る気配はない。

 ほんと大人しいなコイツ。

 なんで迷子になってたんだ?



「神国から……それで私のことを?」

 ミラはぶつぶつと小声で呟いている。


「ミラ?」

「は、はい……!?」

 ミラは焦ったようにこっちに視線を戻してくれた。


「ミラはどうしてこんな【塔】に? ここが家なの?」

「あ……いえ……それは……ちょっと事情があって……」

「ふ~ん、そうなんだ……」


 ふむ……分からん。

 てっきり【守護神】の名に相応しく、ここから王都を守護しているのかと思ったけど、そうではないみたいだ。

 だって彼女、神器発動してないし。てか、ミラの持つ神器の名前が気になる。

 ナイチンゲールって……



「ところでリュートさんはとてもお強いのですね」

「あ、分かる? 鍛えてるから、今日も1日街の中走り回ったし」


「い、いえ、そうではなくて……塔の周りには【結界】が張られていたと思うのですが……あんな簡単に砕くなんて……」

「ああ、あれか……」


 刀を投げたら簡単に砕けたやつね。

 そこまでの結界ではなかったな。



「ミラが出した結界なの?」

 然り気無く探りを入れる。


「い、いえ……私()では……」


 だろうな。

 恐らく彼女が張る結界ならもっとエゲつない結界(モノ)になってる気がする。

 さっきの結界は精々ランクAかそこそこ……


 ならミラはここに閉じ込められてるのか?




「ミランダ様っーー!!」

 突如、入り口の外より叫び声がした。駆けながら近づいてくる。



「ど、どうしましょう……もう見張りの方が来るなんて!?」

 ミラは慌てている。


 ならそろそろ、おいとましますか。

 イエロースライムも俺の頭の上でグッタリしてるし。



「なら、俺行くね。イエロースライム(こいつ)飼い主に届けないといけないから」

 俺は入ってきた窓から身を乗り出した。


「あ、そうだったのですね……」

 ミラは少し寂しそうな表情を見せた。



「また遊びに来るから」

「!? ほ、本当ですか?」


「ああ、あの程度の結界なら簡単に砕けるし……それに」

「それに?」


「またミラとお話したいし」

「!?」


 ミラはそのまま俯いた。

 ん?

 どした急に……



「や、約束ですよ……」

「おう、了解。ギルドの依頼がない時は遊びに来るよ」


 そういやソラちゃんとルークとも遊ぶ約束やらなんやらしたけど、神国戦からすっかり忘れてた。

 怒ってるかな……?




「ミランダ様ぁああ!!」

 近づいてくる見張りの方とやらが、迫ってきている。



「じゃあ、またね」

「はい、お待ちしてます」



 俺が小さく手を振ると、ミラも嬉しそうに小さく手を振ってくれた。

 俺は魔名宝空を発動させて、一気に【居住区】まで飛翔した。

 




ーーーーーーーーーーーー




「ミランダ王妃様っ!!」

 大声と共にミラの部屋の扉は勢いよく開かれた。


「どうしたのです?」

 ミラは窓際に立ち、何事もなかったかのように(たたず)んでいた。


「あ、いえ……し、失礼致しました…………その……塔の結界が破壊されたもので……何かあったのではと……」

 若い兵士の男は、ミラのあまりに堂々とした立ち姿に、ただただ圧倒された。


「あの程度の結界、大したことないでしょうに……いつ砕けてもおかしくないのでは?」

「も、申し訳ありません……【守護神】様……」


 ミラが作り出す結界と比べたら、児戯に等しいレベルの結界。それが分かっているから兵士はそれ以上何も言えなくなった。




「そろそろ休みたいので、出ていって貰えるかしら?」

「は、はい……失礼致しました……」


 兵士は入ってきた時とは逆に、ゆっくりと扉を閉め、その場を後にした。




 ミラはそのまま窓から街の方を見下ろした。

 夕日が沈みかけ、街には灯りが灯り始めた。

 ミラはそれがいつもより綺麗に見えた。



「リュート様……」


 ミラは頬を赤らめて小さく呟いた。




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