ランクとランク
色々あったけど、俺達は無事【王国ギルド】へと登録出来た。
「ふむ、では私は宿の確保をしてくる。キョウとユイは街へ買い出し、リュートとレーナは【個人登録】をしてくれ。後程、ギルド本部前に集合だ」
「「了解」」
サクヤさんの指示で俺達は三手に別れた。
先程の指示通り、俺とレーナは隣の受付カウンターへと移った。
「さ、先程は失礼致しました……改めましてギルド受付係のアイナです」
アイナさんはゴマをするように、改めて自己紹介してきた。
まぁ王国に属する以上、【拳聖】の名は伊達じゃなかったってことだ。
「いいっすよ、気にしてないっす……ギルマスが紹介状出すのが遅かったんだし」
これ以上イジメるようなことはしない。
「そ、そう言って頂けると幸いです……」
「ところで個人登録って?」
「ゴホン……」
アイナさんは、咳払いし姿勢を正した。
「先程【王国ギルド】へと登録されましたが、お二人はまだギルドに属しておりません……ですので今から【ギルドへの登録】をして頂きます」
なんとなく分かった。
「では改めて【観察】させて頂きますね……」
アイナさんの【観察眼】がじっと俺達を見つめる。
それとアイナさんは、上等そうな紙に何やら書き出した。
「よ~兄ちゃん……まさかギルドに登録するんじゃないだろうな?」
いきなり後ろから声をかけられた。
3人くらいの男が俺とレイナの後ろに立ってる。
多分…… 恐らく……としか言えない。
だって振り向いてないし。
「するよ~その為に来たんだし」
「はっ、笑わせんな! てめえみたいなクソガキがギルドに登録されたら、俺達まで低く見られんだぞ!」
「あ、ごめん」
俺は謝った。
「…………」
「…………」
「わ、分かってんなら登録なんかせずに、ママの所に帰るんだな!」
「いや~それが……向こうがあちこち飛び回ってるから中々会えないんだよ」
「…………」
「…………可哀想に……」
「おい! 何、真に受けてやがる!」
「俺には……これしか金を稼ぐ方法がないからさ……仕方ないんだ……」
ちょっと悲しげに。
「うぅ健気だ……」
「あっし、感動したっす!」
「うぉい! てめぇら、騙されんな!?」
そんなやり取りをしていたら、俺達のステータスを紙に書き写していたアイナさんの手が止まった。
「……はい、無事に終了です。神器の方は記入していませんが、それ以外はこちらの方で控えさせて頂きました」
「は~い」
「分かりました」
「おいっ! 受付のネエチャンまで俺らを無視すんな!」
リーダー格っぽい男だけがわめき散らしている。
「ところでアイナさん……」
「はい、何でしょうか?」
「【闘王祭】の出場資格ってランクD以上って聞いたんだけど、それってどうやって上げんの?」
「おいおい、まさかお前ら登録して直ぐに闘王祭に出場する気じゃないだろうなぁ?」
「はい、リュート様とレーナ様はたった今【ギルドへ登録】されましたので、【ギルド個人ランクE】となっております」
「ん? それってステータスのランクとは別ってこと?」
「はい、別でございます」
「おぉいっ! 無視してんじゃねー!」
「【ギルドランク】は下からE・D・C・B・A・Sと上がっていきます。【ギルド個人ランク】も同じで……そのギルドに属するメンバーの方のギルド個人ランクを全て足し、メンバー数で割ったランクが、【ギルドランク】へとなります」
「へ~要は俺ら5人の【ギルド個人ランク】を足して、5で割ったランクが【ギルドランク】になるわけね」
「左様でございます。ちなみにメンバー数が30人を基準に+と-に区分されます」
「それって……」
「はい、例にしますと……30人以上で【ギルドランクA+】。29人以下ですと【ギルドランクA-】となります」
「おいおい、そんな事も知らねぇのかよ」
「了解。ちなみにギルド個人ランクはどうやって上げんの?」
「それは依頼をこなして頂ければ自然と上がります。ただ、ご自分のランクより上の依頼は受注できないものとなっております」
「ふ~ん」
「おい、そろそろ泣くぞ……」
「あ、それとギルド内にて【パーティー】を組めば、その中で1番ランクが高い方の、ランクの依頼を受けることができます」
「なるほどね、了解」
「申し訳御座いません……こちらから説明しなければいけない事を、質問にお答えする形で答えてしまって……」
アイナさんは謝ってきた。
仕事熱心な方だ。
「………………」
「ギルドメンバー以外の方とは組めないのでしょうか?」
レイナが良い質問した。
「問題ありません……ただし評価は依頼を受けたギルドへとなりますので、報酬などその辺りの事は当人同士の合意で行っていただいております」
成る程、勝手にしろと。
そして俺はここでようやく、さっきから独り言が、やかましいおっさんに振り向いた。
「おっさん」
「………………あ、俺か!?」
おっさんしかいないだろ。
「…………もしかして泣いてた?」
「な、泣いてねぇし!!」
「声をかけられたおっさんはどこか嬉しそうだった」
「なぜに語り部口調!?」
うむ、ナレーションとは言わないか……
にしても、とんだ拍子抜けだ。
胸ぐら掴んでくるぐらいの輩かと思ってたけど、存外良い人そうだ。
おっさんは汚れた鎧を纏っているが、どこか気品もあり……顔を見たら口が悪そうなキャラは演技だというのがよく分かる。
後輩思いのおっさん……てキャラだな。
だからアイナさんも止めに入らず無視したのだろう。
「おっす、俺リュート。ギルド【刀剣愛好家】のメンバーで、【ギルド個人ランクE】の駆け出しなんで、よろしく!」
「…………お前、変わった奴だな……」
「誉め言葉として受け取ろう」
「まぁいいか…………なんか注意しようとしたのが馬鹿らしくなってきたぜ」
「だろうな、おっさん分かりやすすぎ」
「ザイルだ」
「ん?」
「ギルド【拳武】のザイルだ……ある人に頼まれて様子を見に来たんだが……余計なお世話だったみたいだ」
「!?」
アイナさんが驚いてる。
おっさんもしかしてそこそこ有名人?
「ある人?」
「闘王祭に出るつもりなんだろ? ならその内、嫌でも知ると思うぜ」
「成る程……」
拳聖ミロクさんのお使いかな?
違うか。
ミロクさんの部下に、こんなおっさんがいる筈がない。
「なんか失礼な事考えてないか?」
案外、勘はいいみたいだ。
「まぁいい……ギルドはそんなに甘くないから精々気を付けろよ」
おっさんは手をヒラヒラと振りながら、仲間の2人を連れて去っていった。
おっさん何がしたかったんだ……
まぁいいか。
ここでの用事も済んだな。
「取り敢えず、ギルド前に行って皆を待つ?」
「そうですね……リュートさんに付いていきます」
ふむ、晴れてギルドの一員。
すんなり、ギルドランクが上がればいいんだけど。
その辺りも話し合うんだろうな。
俺的にはそろそろ迷宮攻略して新しい神器が欲しいんだけどな。
俺とレイナは外へ出ることにした。