酒場と加入
一応ブクマ300。ありがとうございます。
俺とレイナが助けた2人組は、手を合わせて祈っている。
近くにあった1番大きな木の下に、シュウと呼んでいた仲間の遺体を埋め、簡単な墓を建てて、今はしゃがみこみ祈りを捧げている。
俺とレイナは2人の少し後ろに立って、ただそれを見つめていた。
「……待たせて悪かったな」
男性はおもむろに立ちあがり、俺達に声をかけてきた。
「いや別にいいよ……仲間だったんだろ?」
「……ああ、まぁ腐れ縁ってやつだ」
暫くすると女性の方も立ちあがり、俺達に近づいてきた。
「先ずは礼をさせてくれ……ありがとう、本当に助かった」
「危ないところを助けて頂きありがとうございました」
2人は深々とお礼をした。
「自己紹介がまだだったな……俺はキョウ、ギルド【刀剣愛好家】の一人だ」
「同じく刀剣愛好家のユイよ、よろしく」
「俺は竜斗、こっちが……」
「はじめまして、レイナです」
俺達は軽く自己紹介した。
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【キョウ・シグレ】(27)
種族
【人間】
クラス
【ギルド<刀剣愛好家>】
ランク
【B】 潜在【A】
先天スキル
【剣才】【身体強化】
後天スキル
【属性<風>】【速度上昇】【ーー】
神器
【斬風刀】<刀/風/斬撃/B>
【小烏丸】<短刀/風/斬撃/B>
【凪】<鎧/無/守護/B>
【国境基地1764】<腕輪/次元/転移/B>
【ーー】
【ユイ・カナタ】(22)
種族
【人間】
クラス
【ギルド<刀剣愛好家>】
ランク
【B】
先天スキル
【剣才】
後天スキル
【属性<水>】【治癒】【解呪】
神器
【時雨月】<刀/水/無/B>
【五月雨】<杖/水/治癒/C>
【アクア】<腕輪/水/解呪/C>
【国境基地1765】<腕輪/次元/転移/B>
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「で、リュート達はどうしてこんなところに?」
「えっと……俺らホウライ王国へ行く途中だったんだ」
「そこへ、貴女方の悲鳴が聞こえてきたもので」
「そうだったの」
「なら、近くにある国境警備基地に行く途中だったのか?」
「……まぁね」
「なら折角だし私達と行きましょうよ」
「よろしいのですか?」
「ああ、俺らの仲間がそこで待ってる」
「ええと、キョウ達はそこを拠点にしてるのか?」
「いいえ、私達もホウライ王国を目指してたの……あそこは仮の拠点ね」
「あんたらには礼をしないといけないし、是非ギルマスに紹介させてくれ」
「ええと……」
俺はレイナの方をチラ見した。
「折角ですし、ご一緒させて下さい」
「決まり!」
ユイは嬉しそうにし、レイナの腕にくっついた。
はい、2人旅終了!!
早すぎだろ! まぁイチャイチャしたから暫くは大丈夫か……我慢できなくなったら、離れればいいか。
俺達は国境警備基地とやらへ向かって歩き出した。転移の神器を使えばいいものを……まぁ2人の魔力はまだそこまで回復してないようだし、転移したらなんかこう……趣がないしな。
色々と話ながら俺達は基地へと向かった。基地に到着すると、まさにだった。
重厚そうな壁に、重々しい門に、扉。
「どうやって入るの?」
「決まってんだろ」
キョウとユイは、神器を発動させた。そして俺達は一瞬で基地の中へと飛んだ。
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基地の中は想像していた風景と違っていた。
そこは、普通に街だった。後ろを振り返ると、先程いた場所から扉1枚挟んで転移したようだ。
「基本的には、結界の神器が発動されてて普通は中に入れないが……この神器なら、この基地の中に転移出来るって訳だ」
「へ~」
キョウは先程発動させた神器を見せてくれた。まぁ今はただの指輪にしか見えないけど。
「じゃあ行きましょ、ギルマス達は酒場で待ってると思うから」
ユイの案内で俺達は街の中に向かって歩き出した。
「す、凄いです」
レイナはキョロキョロと辺りを見回しながら歩いてる。
露天や食べ物屋、街行く人々を見てレイナは感動している。まぁ仕方ないか、恐らくレイナにとって人の街にまともに入るのはこれが初めてなのだから。
「ふふっ、変なレーナ……ここは神国軍の騎士達の街だから、寧ろ殺風景な筈よ……それを子供みたいに……ふふ」
「そんなことはありません、素晴らしいです」
それでも嬉しそうなレイナを見てユイも嬉しそうにしていた。
「おっ、あそこだ」
キョウが指差した。
ー酒場【神酒】ー
そう書かれた看板が入り口の扉の上に立て掛けられていた。
「おぉ~」
レイナではないが、俺も少なからず感動している。ビバ異世界!
酒場とか異世界転生物の定番だろ! ちょっとドキドキしている。輩に絡まれるのか? どう対処しようかな……ワクワク!
俺達は西部劇に出てきそうな両開きで出来た木の扉を押して中へと入っていった。
ーガヤガヤー
賑やかだった。
中はそこそこ広く、丸いテーブルが幾つもあり、各テーブルは沢山の人で賑わっていた。
可愛いウェイトレスさんらしき女性達は飲み物や食べ物をこれでもかという量を持ち、忙しなく運んでいる。
奥にはカウンターがあり、ハゲた渋いおっさんが、煙草らしきものを吹かしていた。
「なんだリュートも嬉しそうだな」
キョウはニヤニヤしながら俺を見てる。どうやら俺の顔も嬉しさを隠しきれなかったみたいだ。
ザ・異世界!
「えっと…………お、いた……あそこだ」
キョウは辺りを見回して目的の人物を発見したようだ。
俺達はキョウについていった。
丸いテーブルの1つに3人の男女が座っていた。
「ギルマス、ただいま戻りました」
キョウは軽く挨拶した。
「随分時間がかかったな」
返事をしたのは、俺達からしたら1番奥に座す女性だった。
両脇には、それぞれ男女が2人座ってこちらを見ていた。てか、俺とレイナを。
「シュウとレンはどうした?」
「「…………」」
ギルマスの言葉にキョウとユイは一瞬体をビクつかせた。
「…………そうか」
その反応でギルマスは全て悟ったようだ。
「それで、そこの後ろにいる2人は?」
「あ、えっと迷宮攻略した後に魔物に襲われたところを助けてもらいました」
キョウが簡単に説明する。
「そうか……」
ギルマスはゆっくりと立ちあがり、俺達に近づいた。
「ギルド【刀剣愛好家】のギルドマスター、【サクヤ】だ。我がギルドメンバーを助けて頂き深く感謝する」
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【サクヤ・レイナルド】(34)
種族
【人間】
クラス
【ギルド<刀剣愛好家>ギルドマスター】
ランク
【A】 潜在【S】
先天スキル
【剣才】【身体強化】
後天スキル
【属性<風・雷>】【威圧】【ーー】
特殊スキル
【鑑定眼】
神器
【風神】<刀/風/斬撃/A>
【雷神】<刀/雷/放電/A>
【朔夜】<胸当/無/守護/A>
【国境基地1760】<腕輪/次元/転移/B>
【ーー】
※不可【|神吹<かみふき>】<刀/風/斬撃/S>
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神眼で視た。
サクヤさんは着物を来ており、名前も出立ちも和風っぽかった。髪は黒色で短くしており、年齢通りな感じの大人の女性だった。
ちなみに、キョウは緑色でショートモヒカンみたいな頭。こいつも着物の上に鎧を纏っている。
ユイは水色の髪をサイドテールにしており、彼女は少し巫女さんみたいな出立ちだ。
俺とレイナは軽く自己紹介した。その後、キョウとユイがサクヤさんに事の顛末を詳しく説明した。
「そうか……やはりか……」
サクヤさんは、深刻そうな顔をし、腕を組んで悩んでいる。
「はい、ここ最近の魔物の発生は異常です」
「レーナ達が助けてくれなかったら私達も……」
どうやらキョウとユイ……あと、シュウとレンって人の4人で迷宮調査兼攻略をしたそうだが……その帰りに大量の魔物……蜂に出くわしたそうだ。レンって人は迷宮で亡くなったそうだ。
にしても……確か魔物が迷宮の外に出るのは、迷宮がSSランク……50階層になって徐々に出てくるって前に聞いたような……
それがここ最近は異常に多いそうだ。しかも、SSランクになる前から出没するみたいだ。なんだろう……嫌な感じがする。
ふいにサクヤさんが俺達を見つめた。
「君達は確かホウライ王国を目指すと言っていたな?」
「はい、そのつもりです」
「どうだろうか……良かったら我がギルド【刀剣愛好家】に入るつもりはないか?」
「「!?」」
「私達は今現在、独立ギルドだ……知ってると思うがディアネイラ陛下が崩御され、新しいネムリス陛下の政策で神国ギルドは1つになった」
「ですね」
「独立ギルドは……その、なんだ……中々、依頼を斡旋してもらえなくてな……それで我々はホウライ王国を目指している訳だ」
なるほど……どうやらサクヤさん達は今いるギルドを解散させたくないみたいだ。他の神国ギルドは強制解散したらしいし。
だけど、独立ギルドのままだと中々仕事を斡旋・依頼されなくて困っていた訳だ。それでホウライ王国を目指して、王国ギルドに属するつもりらしい。
アーシャって凄いんだ。独立ギルドを、全ギルド最大規模にしてたし、仕事に困ってる感じでもなかった。まぁ実際にはディアネイラの後ろ盾が少なからずあっただろうけど、それでも流石だ。
「この通り……前ギルドマスターが死んで、私が引き継いだがメンバーも今やここにいる5人となってしまった。キョウとユイの話では2人ともかなりやるようだし、強いメンバーなら大歓迎だ」
おぉ~ギルドに勧誘されたぞ。感動だ。
「どうするレイナ?」
「そうですね……貴女方のギルドに入って検問は問題なく通れるのでしょうか? 独立ギルドみたいですし……」
「問題ない。既に検問への許可も降りている。寧ろ独立ギルドになったことで王国へ入りやすくなった」
「そうですか……なら私は構いません、後は竜斗さんが決めてください」
レイナは俺だけに向かって一瞬ウィンクした。
なんて頼りになる嫁(予定)なんだ! 決して俺達の素性が怪しまれない言い方で、さも向こう次第な感じで検問を通れるか聞くなんて。
愛してますレイナさん!
「じゃあ……折角だし、入ろう……かな?」
渋々入る感……しっかり演じられたかな?
「そ、そうか……それは良かった!」
サクヤさんは、胸を撫で下ろすようにしてホッと溜め息を吐いた。
そんなに嬉しいことなのだろうか? キョウとユイも嬉しそうにして歓迎してくれた。ただ後ろの2人は未だに黙したままだ。
「おっと、忘れるところだった……我がギルドには1つだけ加入条件があるのだ」
サクヤさんから、今更な事を言われた。マジかよ……条件とかあるのかよ……だ、大丈夫なのか……?
「条件は1つ……それは……」
「そ、それは……」
ゴクリ……
「刀を愛しているかだ!!」
最高だ、このギルド!
残念ながら……101部【極聖と女王】の前半に書いた2人は登場する事はなかったです。出すとか言っておきながら……申し訳ないです。