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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第六章【聖都】
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受継と誘拐



 こちらの世界で、年が明けた。



 魔族の中では特になんのことはない日だが、人間達にとっては、また新たな年を迎えることが出来た的な意味合いがある特別な時期だ。

 こちらの世界なら魔族の方が大事にしそうなものだが……数百年間それどころではなかったのだろう……。

 本当に生き死にが関わると、大晦日、初詣等々、している場合でもないし、寧ろ祝うという文化すらないのだろう。


 ただ今年は人間側も違っていた。

 スレイヤ神国は、女王ディアネイラ・スレイヤルが崩御し、それどころではなかった。

 国が悲しみに包まれ、大規模な葬儀が執り行われた。



 責任逃れではないのだが……俺達、魔族側は参列しなかった。



 一応アルカディア国が勝ち、ネムリスも魔族と人間との和解の道を選ぶつもりだが……俺達は対等で在るべきだ。

 もし一方的に押さえつければ、今度は逆の事が起きる。魔族が人間を虐げる日々だ。

 勿論、魔族は長い年月虐げられてきたから、すぐに人間を許すことなど出来ない。

 きっと人間側も同じだ。今まで魔族より上の存在だと思い込んで生きてきたのだから、すぐに魔族を受け入れることは無理だと思う。



 お互いが認めあえれるようになるには、まだ当分無理だ。



 ネムリスが新王になり、国民や周りから受け入れてもらうのに、最初から波風はたてない方がいいらしい。

 そうなのか?

 寧ろ最初こそ「私は魔族と平和に暮らします」的なマニフェストを発表した方がいいように思うけど……俺を除く全員から却下された。



 政治なんて分からないので、皆に任すよ……

 



 今は、新たな女王ネムリス・スレイヤルを王にするよう皆慌ただしく動き回っている。


 そういえば、ネムリスの姉でもあるアーシャ・スレイヤルは【七極聖・光王】の座に就いた。

 光王であったハクア・ホークという女性が行方不明で、ギルドを使って探しても行方が分からないそうだ。


 それと神国のギルドは1つのギルドを除き、全て解体された。

 あの処刑に携わったギルドはネムリスの意向で全て解体された。

 そしてただ1つのギルドとなった。



 【ギルド・微笑みの聖母(ディアネイラ)



 魔族狩り……を母体とした神国の全て(1つを除いて)のギルドを1つにしたギルドだ。

 勿論、ギルドマスターはアーシャ・スレイヤル。つまりアーシャは、



【七極聖<筆頭補佐>光王、兼、ギルド<微笑みの聖母>ギルドマスター】



 という、大変長ったらしい役職へと就いた。しかも王族にも戻ったらしく、更に役職が長い名前の人物へとなった。


 そういえばレインバルトも【水王】の座に戻った。今ネムリスの親衛は【光王隊】と【水王隊】がしている。

 代わりに国境での警備は、帝国側に【地王隊】と【雷王隊】それと【風王隊】が陣を展開している。

 そんで、王国側に【炎王隊】と【闇王隊】が、一応警戒の意味で配置される事になっている。


 それと魔人族で、我がアルカディア国の隊長の一人でもあるナスカ・クラウドは、スレイヤ神国に残りネムリスのお世話をする事になった。

 寂しいけど仕方ない。これからは魔族と神国が少しでも仲良く暮らせるよう尽力するそうだ。



 そんでアルカディア国で今、1番、大事(おおごと)になっている事がある……



 なんと、バアルの妹である【リリス・ゼブル】が隊に志願したのだ。あの処刑(未遂)で何か思うところがあったそうだ。

 まぁ彼女は潜在ランクがAもあるので、きっとナスカの代わりに隊長になってくれる筈だ。



 筈なのだが……絶賛兄妹喧嘩中だ。



 バアルが猛反対したのだが、リリスも譲らず、今もなお口すら聞いていない。

 リリスは半ば無理矢理隊に入ってきて、今はテトラとイヨから訓練を受けている。

 まぁうちも兄妹喧嘩してたから、何も言えないが、仲良くして欲しいものだ。



 後は特に何もないかな……皆慌ただしく復興作業をしている。



 ジェガン達の襲撃に始まって、ディアネイラ(ガブリエル)の攻撃により、城も半壊していた。

 ドワーフの兄弟ラスとカルの指示のもと着々と元に戻りつつある。流石は生きる伝説。



 今回の戦争での被害も……兵士だけで、非戦闘員からは出ていない。悲しくないといったら嘘だけど……皆は幸せそうだ。



 俺がこの世界……アルカに来て、一応の決着は着いた。



 神国が攻めてくるかも……これにより召喚され、レイナと【魔族の国を安定させるのを手伝ってほしい】という契約をした。

 現状、帝国は沈黙しており、王国は元々魔族に対して動く気配はない。

 魔族の国、アルカディアは一時の平和を手に入れた。


 なら……






 俺は【魔名宝空】を使い、城の1番高い場所より座り込むようにして、アルカディア国を眺めていた。

 空は相変わらずの黒雲に雷鳴……俺がここに来た時と何も変わっていない。物思いに(ふけ)っているのだから、空気を読んで夕陽くらい射し込んでくれればいいのに。




「ここにいらしたのですね竜斗様」

 レイナはスキル【飛翔】で俺の横に並んだ。


「ん」

 俺はレイナの方は向かず小さく頷いた。


「もうすぐ、日も落ちますよ……どうかされたのですか?」

「いや別に……」


「いいえ、絶対何かあります! 最近の竜斗様の様子はおかしいと皆が言っております!」

 俺が曖昧な態度をとったからか、レイナは自分の顔を俺の顔に近づけて力強く物申した。


 それでも俺は動じなかった。


「ねぇ……」

「はい、なんでしょう?」


「俺の提示した契約覚えてる?」

「当然です! 私が忘れると?」


「いや……ならいいんだ……」



「……最近の竜斗様は変です……あれから……ディアネイラが崩御し、私達もアルカディアに戻り、今はヒュースとローゲが神国と色々話し合いをして、皆が平和に暮らせています……なのに……」

 レイナは悲しそうな顔をして口ごもった。


「肝心の……私達の希望である竜斗様が……毎日楽しくなさそうな顔をされては……」

「楽しく、か……」


「はい、まだ色々と問題はありますが……それでも私達はこの手で平和を勝ち取りました……」

「…………」



「……どうすれば元気になられますか?」

 レイナから一筋の涙が頬をつたった。



「ご、ごめん……別に楽しくないわけじゃないんだ……ただ……」

 俺は焦り、涙するレイナに謝った。


「ただ?」

 レイナは涙を拭い尋ねた。


「…………本当はしたいことがあるんだ……でも、それは出来ない事だから……だからもどかしい……」

 俺はここ最近の憤りを……愚痴を、ついレイナにこぼした。


「それは……出来ない事なのですか?」

「……うん」


「竜斗様でも?」

「ああ、寧ろ俺一人だと絶対に出来ない」


「ならっ! なら私が竜斗様を手伝います!」

「!?」


「竜斗様一人で出来ないなら私が手伝います! それならきっと出来る筈です! だって……」

「レイナ……」


「だって私達は婚約者……なのですから……」


 力強く言い放ったレイナだが、最後だけ顔を真っ赤にさせて照れ臭そうにしていた。



「……でもレイナはアルカディアの国主で、皆の王だ……それを……俺の我儘で手伝わせるわけには……」

「そんなの二の次です!! 私にとって竜斗様より大事な事なんてありません!!」



 レイナの言葉に衝撃を受けた。

 王としてそれはどうなんだ……と思うが何より、そう言ってくれて嬉しかった。


 俺の顔は綻んだ。



「やっと……笑ってくれた……」

「え?」


「竜斗様……あれから一度も笑っていませんでした……」

「そうか……」


 俺は照れ臭そうに頭をかいた。



「うん」

 俺はすっと立ち上がった。

「ありがとうレイナ……俺は……俺のしたいことをする!」


 レイナはニコリと微笑ましそうにして俺を見つめていた。


「だからレイナ、俺のしたいことを手伝ってくれ!」

「はい」



 よし、レイナの了承を得られた。なら後は実行するだけだ。



 俺はレイナを抱き抱えた。



「きゃっ!? りゅ、竜斗様……?」

 お姫様だっこで抱えられたレイナは顔を真っ赤にさせていた、


「先ずはどこにしようか……?」

 俺はぶつぶつ呟いた。


「あ、あの竜斗様……先ずはって……? どこかにいかれるのですか?」

 レイナは不安そうな顔をしている。



「よし、決めた! 先ずは……ホウライ王国だ!!」

「えっ!?」



「レイナ俺の契約は何だっけ?」

「そ、それは……【ずっと俺の傍にいてくれ……絶対に絶対だ】……ってまさか……」


 その言葉をレイナから聞いて俺は悪そうな顔をして笑った。



「ま、まさか……ですが……い、今から……?」

「おう」


「ふ、二人で……?」

「おう」


「えっとそれはいくら何でも……色々と問題を片付けて……皆とも話し合って……」

「却下!!」


「魔人族は契約重視なんだろ?」

「!?」


 レイナは先程までの自分の放った言葉の数々を思い出していた。



「で、でも色々と準備が……」

「それならもう済んで袋の神器に突っ込んでる」


 俺って用意周到。



「で、でも……」

「全部却下! もう決めたんだ! 俺はレイナと世界を見て回りたい!! それも、今から!!」



 俺は脚に力を込めて、魔名宝空の羽を羽ばたかせた。いつでも飛んで行けます!



「でも、でも…………っ!?」



 俺はレイナの口を塞いだ。



 どうやってか?

 そんなの俺の口から言わすな!




「……見てみたいんだ世界を……レイナと一緒に……それに、倒さないといけない奴らがいる……会ってみたい奴らがいるんだ」

 俺は優しくレイナを見つめた。


「ず、ずるいです……」

 レイナは顔を真っ赤にさせて俯いた。



「ごめんねレイナ、俺我が儘なんだ」

「……分かりました。私は竜斗様についていきます……どこまでも……」



 俺達は暫く見つめあった。そして、



 俺は力強く塔を蹴って、そのままホウライ王国の方に向かって飛び出した。誰にも見られる事なく。




 その日、夕暮れ時、俺は王を(さら)った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




【みんなのレイナを誘拐します、探さないで下さい。

                  天原竜斗。


 追伸 それと、一年くらいしたら帰る予定なのでご安心を(笑)】





「「「なぁああああぁぁにぃぃいいいいっっ!!!!?」」」




 あの後みんなが、いなくなった俺とレイナを探し、俺の書き残したメモを見つけた時の叫びが国中に響いた事を……俺は知らなかった。







 長かったです。

 ジェガンがマナさんを斬る話(本当はソラちゃんが)、竜斗対レイナ(本来なら痴話喧嘩から)、ダコバスに捕らえられるララ(残酷にならなかった)、そして竜斗のレイナを誘拐する話……ここまで繋げるのに随分と掛かりました。



 次話より、いよいよ【ギルド編】そして【王国編】です。

 一応の話や今後の設定などは大まかですが考えたのでなんとかなるかな?

 おかしなところ多々あるかと思いますが、今後も暖かい眼で、見守って下さい。



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