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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第六章【聖都】
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小休止と御伽噺



「ふーー、ちょっと休憩」

 俺は急停止……は出来ないので、足でブレーキをかけた。地面には俺の足跡?が飛行機雲のように真っ直ぐと出来ていた。


「ごほっ、ごほっ、埃が……」

 土煙が舞い、俺に抱き抱えられているアーシャとレイナは咳き込んでいた。


「あ、ごめん」

 俺は二人を放した。



 辺りを見回すが何もない平地がどこまでも続いていた。後ろを振り返るとアルカ大森林は見えなかったが、微かに【霊峰アルカ】が見えていた。


 それから袋の神器に入ったままの、迷宮時の道具を取り出し、超々簡易テントを作り、小休止することにした。




「はい、レイナ」

 俺は淹れたてのお茶をコップに注いでレイナに渡した。


「ありがとうございます、竜斗様」

 レイナは受けとると、フーフーと冷ましながら、ゆっくりとお茶を飲み始めた。


 くそ、いちいち仕草が可愛いな。


「はい、アーシャ」

 俺はアーシャにもお茶を渡した。


「……どうもです」

 アーシャはぼんやりとお茶を見つめていた。


「どした?」

 何か思うところでもあるのだろうか?


「……いえ、私は神国産の最高級茶葉である、王家御用達の名葉【スレヌティーヌ】しか口には合わな……」

「いいから飲め!」


 なんだ、そんなことかよ。この際、水分補給は何でもいいし。



「確かにあれは美味しいですね」

 意外にも答えたのはレイナだった。


「ふふ、あれはまさに至高の一品です。香りもさることながら、口から喉……喉から胃へと流れ落ちる感覚がなんとも言えません」

 アーシャは嬉しそうに笑っていた。


「あれ?人間との交流はなかったんじゃないの?」

 俺はこっちの世界に来たばかりの頃聞いた話を思い出した。


「はい、魔族を助ける際に、人間側の荷物の中にあったので奪いました」

 レイナはニコリと微笑んだ。



 こえーよ!やってることが盗賊だ……まぁ皆を助ける際の戦利品なんだろうけど……嬉々として話されたら怖い。



「ところで竜斗様……」

「何?」


「失礼なんですが……今回は随分と冷静ですね」

「…………ん~、まぁね」


「理由を聞いても?」

「いや、怒ってるのは事実だよ。腸が煮えくり返りそうだし」


「それなのに?」

「ん……と、いくつか理由がある」


「理由ですか」

「うん、一つ目が【天啓】ってスキルかな……多分あれの誓約で皆が死ぬことはないからかな。後は俺が間に合えばいいだけだし」


「愚かですね天原竜斗、殺せないと言うことは、殺さなければそれ以外は何でも出来るということですよ」

「分かってる、でも俺はヒュースとレインバルトを信じてる」


「そうですね」

「まぁでもアーシャの言う通りで、傷つく可能性はあるだろうから、その分は皆を助けたら倍返ししてやる」



「二つ目は?」

「俺は……ディアネイラに敗けた」


「…………」

「ディアネイラは強い……まともには戦ってないけど、会話の中から神器を全部持ってきてなかったみたいだし、本当はどれぐらい強いのかも分かんない」


「……それだけではないですがね」

「分かってる、神眼も視れなかったし……そんな奴相手に、ジェガンの時みたいな状態だったら絶対に勝てない。だから俺は……」


「貴方、神眼をお持ちで!?」

 突然アーシャは立ち上がった。


 なんでそんなに驚くんだ?ああ、本能的に敵からステータスを視れなくしてたから知らなかったのか。


 俺は気を緩めた。


「視てみる?」

 こっちはアーシャが【魔眼<王>】の所持者だってもう知ってる。


「……ゴクリ」

 アーシャは唾を飲み込みながら俺を注視した。




「な、なんてスキルの持ち主ですか貴方……おまけにランクZERO……い、意味が分からない……」

 アーシャは愕然としていた。


「でもディアネイラは、俺のステータスを無理矢理視てた。それだけでもヤバイと思う」


 ついでに俺は二人にディアネイラのスキルも教えてあげた。



「馬鹿な!?お姉様の特殊スキルは【邪眼】、相手のステータスを視ることなどっ! そ、それに……お姉様のランクがS? 【属性持ち】? ありえない! お姉様のランクはAの筈です!!」


 ディアネイラは邪眼の持ち主だが、本当のスキルとランクをアーシャには教えていたみたいだ。まぁ実際には嘘だったみたいだけど、属性が無くて5つのスキル持ちだと思ってたみたいだ。



「ああ間違いない、だってスキルが6つあったし……でも俺はそれも違うと思う。確かにディアネイラは【操作】も【天啓】も使ってたけど本当はそうじゃない気がするんだ」


「た、確かにお姉様はAランクとしては異質の強さをお持ちでした……だけど…………こ、根拠はなんです天原竜斗!?」

「その前にアーシャに聞きたいことがある」


「な、なんです?」

「レイナは当然として、あんたを一緒に連れてきたのはそれが聞きたかったからだ。バアルから聞いた……魔族狩りは独立最大ギルドで、あらゆる情報を持ってるって」


「……そうですね、そう自負してるつもりです」

「聞きたいのは天魔戦争についてだ」


「天魔戦争ですか竜斗様?」

「うん、ディアネイラと戦う以上は知っておきたい」



「理由は分かりませんがいいでしょう、私が知っていることは教えてあげます…………あれは数百年前、」

「正確には999年前ね」


「…………ず、随分詳しいのですね」

「ディアネイラに聞いた」


「お姉さまが?」

「いいから続きを話して」



 それからアーシャは天魔戦争について教えてくれたが、以前ゼノが話してくれたお伽噺と同じ様な内容だった。違いと言えば人間目線で、悪魔に襲われた時は地獄絵図だったとかなんとか。



「私達が知っている内容と同じですね」

「そうだね」


「私が知っているのはそれくらいですよ」

「そうなんだ……」


「ああ、そういえば……」

「ん?」


「天魔戦争を歴史的に研究してる人達がいます」

「へ~そうなんだ、会ってみたいな」


「まぁ無駄でしょう、研究は進んでいないというか……私からすればお伽噺が全てで、それ以上はないと思っています……ちなみに」

「ちなみに?」


「研究を開始したのは、ホウライ王国のかつての英雄【トウマ】の父親が最初だと言われています」

「へ~」


「トウマと言えば……その子孫である、今の【英雄】エンマさんは大層【ランクZERO】の迷宮にご執心だとか……何か関係しているかも知れませんね」

「ふ~ん……」


 気になるな……エンマか……確かマナさんの旦那さん、ソラちゃんの父親を殺した奴だ…………皇帝と英雄か……いつかは会わないと……



「それでいいですか?」

「あ、待って……まだ本題があった」


「本題?」

「うん、知ってたらでいいんだけど……」


「はぁ……」

「天使の名前って知ってる?」


「知っていますがそれが?」

「!! 頼む、教えて!!」


 俺はアーシャの両肩を掴んだ。



「竜斗様……」

 レイナが静かに呟いた。


 えっ?まさか怒ってる……?両肩掴んだだけだよ?それでも嫉妬するの?


「以前も竜斗様は名前を気になされましたね」


 以前?


「はい、私達を集めるときです」

「ああ、確かに……」


「それと関係が?」

「うん、俺の予想が正しかったらだけど……多分天使の名前ってミカエルとかじゃない?」


「よく知ってましたね」

「やっぱり……」

「??」


 俺は二人に俺の世界の外国の神話に出てくる悪魔と天使の名前を説明した。ついでにディアネイラが本人ではないかもしれないということを。



「天使ですか……でも天使は迷宮に転生したのでは?」

「うん、そうなんだけど……ディアネイラが、俺がラファエルを倒したって……考えられるのはランクZEROの迷宮かなって……」



 多分、全部繋がってる。



「まさか!? 王位継承の儀!?」

 突然アーシャが何かに気づいたみたいだった。


「王位継承の儀?」

「それなら……確かに……あれはEランクの迷宮を攻略するもの……しかしお姉様はEではなくZEROの迷宮へと入ってしまい、天使にその体を乗っ取られた……こ、これなら……確かに性格が変わられたのも説明できます……」



 アーシャって頭いいんだ……話からそう推測したみたいだ。でも多分そうだ。俺もそう思う。



「……天原竜斗」

「ん?」


「私にも聖都へ向かう理由が出来ました」


 うん、まぁ最初から連れていく気だったけど。



「悪魔に天使、異世界にランクZERO……知りたいことは山程ありますが……まずはあの優しかったお姉様を……天使から奪い返して見せます」


 優しかったんだディアネイラ……ちょっと戦いにくくなったな。



「なら目的はハッキリしましたね」

 レイナがニコリと微笑んだ。

「まず、期限内に聖都へと辿り着き……皆を助け、ディアネイラ(天使)を倒し、神国をネムリスに譲る事」


「なっ!? ネムを!?」

 アーシャはまた驚いていた。


 今日だけで何回驚いた事だろう。ちなみに七極聖を置いてきたのは、アルカディアにはネムがいるから必然的に皆と協力できると思ったからだ。



「い、意外と打算的なのですね……」

「そうか?でもアーシャって順応するの早くない?」


「そうですか?」

「うん、だって直接聞いた俺でさえまだ信じきれてはいないし、頭の中で色々と整理してるけど、まとまらないし」


「これでもギルドの長……情報を知り即断即決しなければ直ぐに敵に負けてしまいますからね」



 そうだな……でもまずは神国だ……これで全部片を付ける!



 そしたら……色々と世界を見て回りたいな……折角異世界に来たんだし……ああ、でも毎日レイナとイチャイチャしたいな……王様だし、無理かな……



「どうしました竜斗様?」

「ん……まぁちょっとね……全部片付いたらレイナに話したいことが沢山あるって考えてた……」


「そうですね……これが終われば取り敢えずは落ち着けるかと……」

「だね」



「……お二人は随分仲がよろしいのですね?」

 俺達の会話を聞いていたアーシャが尋ねてきた。


「そりゃそうだ」

「当然ですよ」



「「だって俺(私)達、婚約者だもん(ですから)」」




「……は?………………はぁああああぁぁっっ!?」




 今日1番の驚きだった。何故に?







今回もかなりの会話説明回になりました。


かなりというか……ほぼ?


今回は若干のほのぼの回で……いよいよ次回より聖都編クライマックスです。長かった……頑張ります。



追伸、完結ではないですよ笑


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